Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える

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モビリティ業界のおもしろさを知ってほしい──出張授業で学生に送るエール

2023年10月16日、早稲田大学早稲田キャンパスで開催された出張授業。Hondaの青山・小栗・四竈の3名が、学生に向けて講演を行いました。

講演後のパネルディスカッションでは、「モビリティ業界が社会に与える影響力」、「仕事を通じて成長していくおもしろさ」についてそれぞれが語ったうえで、学生から積極的に寄せられた質問にも回答。今回は、当日のパネルディスカッションの様子をレポートします。

青山 真二Shinji Aoyama

本田技研工業 取締役 代表執行役副社長 兼 最高執行責任者

1986年入社。二輪営業担当からキャリアをスタートさせ、欧州・アジア・北米などで責任者を担当。キャリアの半分以上は海外で仕事をする。さまざまな地域での経験に加えて、二輪や四輪など幅広い事業領域に関わり、現在に至る。

小栗 浩輔Kosuke Oguri

本田技研工業 電動事業開発本部 BEV開発センターエネルギーシステムデザイン開発統括部 統括部長

2001年に入社し、電気系のエンジニアとしてキャリアを積む。四輪開発センター(当時)では、世界初となる量産車向けリチウムイオンバッテリーを開発。Honda R&D Americas, Inc.での駐在などの経験を経て、現在に至る。

四竈 真人Mahito Shikama

本田技研工業 電動事業開発本部 BEV開発センター ソフトウェアデファインドモビリティ開発統括部 統括部長

2002年に入社し、エンジンの制御開発に携わる。Honda R&D Americas, Inc.に駐在し市場品質に携わり、帰国後ハイブリッド制御開発を行ったあと、2015年から自動運転開発のプロジェクトリーダーを担当。先進安全・知能化ソリューション領域の経験を経て、現在に至る。

正解のない激変の時代だからこそ、「詳しくないこと」が強みになり得る

パネルディスカッションの1つめのテーマとして掲げられたのは、「モビリティ業界が社会に与える影響力」です。激変するモビリティ業界は、社会にどのような影響を与えるのでしょうか。

参加した学生にモビリティ業界のイメージを聞いたところ、「移動手段など交通系に特化している」、「最先端の技術が研究されていて、自分のような自動車に詳しくない者からすると何をしているかよくわからない」といった意見も。これを受けて、パネラーの3名がモビリティのイメージや影響力について語りました。

青山

「本日の講演では、従来の時代で個人の乗り物であったモビリティが、『データやエネルギーでつながっていく社会のなかでのモビリティ』に変わっていっていることをお話しました。

皆さんのように都市部にいると、パーソナルモビリティで移動すること自体にあまり馴染みがないかもしれません。しかし、グローバルで世の中を見てみると、たとえばアメリカの都市部以外ではクルマが必須です。アジアの国々でも、二輪車が生活の豊かさに直結している事例は数多くあります。モビリティが社会や生活のベースになっているという事実も、ぜひ皆さんに知ってもらいたいですね」

四竈

「何をやっているのかわかりづらいというお話でしたが、われわれも、激変しているこの状況において何をやれば正解なのかはわかっていません。しかし、答えがない以上、そこにはチャンスが広がっています。

昔から自動車関連の仕事に取り組んできた人だけが強いわけではなく、異業種で専門性が異なる人のほうが新たな価値を生み出せるかもしれない。先ほど『自分のような自動車に詳しくない者』という発言もありましましたが、それはとても重要な素養だと思います。知らないからこそ、知らないことの強みを意識してもらいたいですね」

青山

「とくにモビリティ業界は将来が予想しにくい時代になっていると思います。たとえば現在Hondaは電動化戦略として、液体リチウムイオン電池の調達や次世代電池の開発を行っています。しかし、シナリオは1本道ではなく、代案も多く存在します。正解が決まっているわけではないので、わかりにくい時代とも言えるかもしれません。

これは自動車関連だけに限ったことではなく、社会全体、さらに言えば日本だけでなくグローバルで大きく構造が変わろうとしているタイミングなんだと思います」

小栗

「社会全体で変わっていかなければいけないという認識は、皆さんにも伝わっているのだろうなと思いますし、これから会社を選ぶうえでも意識するポイントになるのかもしれません」

主体性を持って働くと、やりたいことができるチャンスも巡ってくる

パネルディスカッションの2つめのテーマとして掲げられたのは、「仕事を通じて成長していくおもしろさ」。学生から「仕事ではずっと同じことをやらなければならず、やることを簡単に変えられないイメージがある」という意見が出たことで、Hondaでの働き方について3名が語りました。

小栗

「会社は組織なので、アウトプットを出すために分担して仕事をします。そのため基本的に仕事を簡単には変えられませんが、Hondaは懐が広い会社だと私は感じています。

たとえば私が現在携わっていることは、上から勝手にお題が落ちてくるわけではなく、誰かが「こういうことがやりたい」と主張して進めるんです。それがすぐに実現できるかどうかは別として、「おもしろいからやってみろ」とチャレンジを促すカルチャーがHondaにはあります。

結局、自分で世の中を見て、これをやるべきだという仮説を作れるかどうかが重要です。Hondaに入社したら好きなことができると保証するわけではありませんが、チャンスがある会社だと思いますね」

青山

「Hondaという会社では、いろいろな仕事に携われます。私は営業からキャリアをスタートしたので、どちらかというと組織のことより1人でたくさん売上を上げることを考えて働いていました(笑)。しかし当時は予想もしていませんでしたが、文系だった私が、今はバッテリーやソフトウェアの話をする仲間に入れてもらっています。可能性が無限に広がっているおもしろい会社だと思いますね」

四竈

「やりたいことができるかどうかも大切ですが、入社後の40年でやりたいことがずっと変わらないのか、という点も気にしたほうがいいかもしれません。40年も経つと、時代がものすごく変わります。社会貢献したい、誰かの役に立ちたいという根本の想いは変わらないかもしれませんが、それをどうやって実現するかは40年のなかで変わる可能性が高いと思います。

そう考えると、いろいろなことを経験することが大切です。たとえば入社してから主体性を持って仕事していると、いろいろなことを任されるようになる。そのうちアイデアを思いついて提案したら、あいつが言うことだからやらせてみようというサイクルが生まれる。

会社にはそういった営みが必ず存在しているので、やりたいことを絶対やるために入社するんだと決めつけず、長い人生をフレキシブルに考えてみてもいいんじゃないでしょうか」

やりたいことが明確でなくても、社会貢献したいという根本の想いがあればいい

2つめのテーマでは、学生に向けて「社会に出てどのようなことを成し遂げたいか」という質問も投げかけました。「現在化学を学んでおり、将来的には社会に貢献できる活動がしたいと考えているものの、やりたいことは詳しく決まっていない」と話す学生に対し、3名がエールを送りました。

小栗

「Hondaでは、もともと触媒研究していた人が電池の研究をしていたり、エンジンの研究に携わっていた人がバッテリー開発に関わっていたりするケースが多くあります。

見た目は全然違いますが、たとえばエンジンとFC(燃料電池)は中で起こっている現象が燃焼反応か化学反応かという違いだけで、吸排気や温度管理など似ている部分は多いんです。アプリケーションが違うとまったく違う技術に見えることはありますが、因数分解すると共通項があり、最後はものの原理に近づいていくんですよね。特に化学の領域はテクノロジーのベースになるため、活躍のフィールドは山ほどあります」

青山

「先ほど申し上げたとおり、私もここ2、3年でバッテリーやソフトウェアの関連の仕事に携わるようになりましたが、それ以前の30数年は今とは異なる領域に関わっていました。この数年で新たな発見が増え、貢献する手段も変化しています。

今、何をしたいかが明確ではなくても、化学を通じて世界に貢献できそうな道に進めばいいんです。化学をベースにして、世の中の役に立つことがしたい。学生のうちは、まずそれくらいで十分だと思います」

四竈

「青山さんが言うように、学生のうちにこれをやりたいと決まっている人はそれでいいと思いますが、決まっていなくても社会貢献したいという想いが根本にあることが重要だと思います。

社会人になると、給料をもらいます。その給料は、会社が社会に貢献していただいた対価の一部です。つまり、社会貢献が基本になっている。だからこそ、社会貢献がしたいという想いが根本にあれば、それをどう実現するかはいろいろな経験のなかで探していけばいいと思います」

組織や職位に関係なく議論する「ワイガヤ文化」は他社に負けないHondaの魅力

▲出張授業当日は、早稲田キャンパスにて車両展示も行いました

パネルディスカッション後半では、フリーQ&Aを実施。クルマが好きでF1も見ているという学生からは、「Hondaの内燃機関の技術は素晴らしいが、講演ではEV(電気自動車)にシフトしていく流れがあると聞いた。クルマ好きとして、この先の展望に希望があるのかお聞きしたい」という質問が寄せられ、3名が回答しました。

青山

「Hondaは、『2040年までにEV・FCEV販売比率をグローバルで100%とする』という目標*を掲げています。これからどのように世の中が変わっていくのか、予測するのはなかなか難しいですが、方向性としては四輪車、二輪車ともにEVやFCEVに向かっていきます。

とはいえ、内燃機関なのかバッテリーなのかは、実は本質的にあまり大きな差がないんですよね。むしろ本日お話ししたように、今はデータやエネルギーでつながる世界に向かっていく時代です。バッテリーEVも楽しいですよとお伝えします」

参考記事:Hondaのカーボンニュートラル実現に向けた電動化戦略とは?

別の学生からは「Hondaが国内外の競合他社に絶対負けていない部分と、もう少し頑張らなければいけない部分を教えてほしい」という質問があり、3名それぞれが日頃から抱えている想いを語りました。

小栗

「絶対に負けていないのは、エンジンです。F1で勝つというのがわかりやすいですが、短期間で優勝まで持っていく力があるのは我ながらすごいと感じました。

頑張らなければいけない部分は、バッテリーですね。その認識のもと、この数年でかなり力を注いでいます。研究開発などいろいろ仕込んで、結果が出るのは5、6年後です。5年後に本当に勝っているかはわかりませんが、誰よりも力を入れているので、結果を私自身も楽しみにしています」

四竈

「小栗の言うとおり、エンジンは負けていないと思いますね。また、エンジンに関わって育った人間がたくさんいるのも、Hondaの強みです。

頑張らなければいけないのは、その才能豊かな人たちを縦横無尽に活躍させてあげることだと思っています。能力ある人たちがこれまで以上に活躍できるよう、場を整えることが必要ですね」

青山

「Hondaには、組織や職位関係なくカジュアルにコミュニケーションを取るワイガヤ文化があります。コミュニケーションを通じて知恵を上げていくのは、他社に負けないHondaのいいところだと思います」

よく学びよく遊ぶことは、社会人になってからの成長につながる

パネルディスカッションの最後には、パネラーの3名が学生にメッセージを送りました。

四竈

「先ほどやりたいことが明確に決まっていない方に、それでいいという話をしました。なぜなら、時代がものすごい勢いで変わるからです。激変の時代に必要なのは、おそらくポータビリティのある能力を磨いていくことだと思います。

私は学生時代に実験をしていた時、結果が出てから悩みに悩んで考察を加えていました。それを教授のところに持っていくと、自分が悩んでいた考察が教授の口から一瞬で出てくるんです。そのような考察力を身につけておけば何をやったとしても役に立つと、今になって思います。

長い人生においてずっと役に立つ基本的な能力を学生のうちに鍛えておくと、社会人になってからも成長曲線の傾きを立てていくことができます。そのためにはよく遊び学ぶことが重要だと思うので、全力で学生生活を満喫してもらいたいですね」

小栗

「私は学生時代モーターの研究室にいたのですが、Hondaに入社後、モーターに携わっていないんです。社内制度を活用してペンシルベニア州立大学へ留学し、ハイブリッドの開発をした結果、電池の重要性を知りました。それから、自分でいいのかと思いながらもHondaの電池の責任者として仕事をしています。

仕事をする際は何らかの自分の専門性を突き詰めて、そこからどう広げていくかが大切です。何をどう広げていくかを楽しむ余裕を持つと、長い社会人人生も楽しめるんじゃないかと思います。学生時代は専門性を突き詰めながら勉強以外のことも楽しんで、自分の視野やキャパシティを広げてもらいたいですね」

青山

「皆さんには若いうちからいろいろなことにチャレンジしてほしいと思う一方で、社会人になって年齢を重ねてからも、チャレンジする姿勢は持ち続けてもらいたいと思っています。

私は40年近くHondaで仕事をしていますが、ここ2、3年はそれまでの30数年が一体何だったんだろうというくらい、勉強することが多い時代になっています。皆さんが社会に出て仕事をするなかで時代がどのように変遷していくかはわかりませんが、いつのタイミングでも最大限、一生懸命に何でもいいからやる姿勢は持ち続けてもらいたいです。遊びでも勉強でもいいのでとにかく一生懸命に取り組み、学生生活をさらに楽しんでもらえたらと思います。本日はありがとうございました」

※ 記載内容は2023年10月時点のものです

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