Sustainable impacts 2023/12/25
安心の最大化が使命──サイバーセキュリティでモビリティの進化を支える
インターネット社会において、社内のシステムはもちろん、製品を守るためにもサイバーセキュリティの向上は欠かせません。その砦となるデジタル統括部サイバーセキュリティ推進部で日々、リスクの最小化と安心の最大化に取り組む後藤、中山、溝内、村井が、仕事のやりがいやHondaならではの魅力を語ります。
後藤 一敏Kazutoshi Goto
コーポレート管理本部 デジタル統括部 サイバーセキュリティ推進部 セキュリティ支援課
IT企業を経て、2005年にHondaへ入社。研究所や(株)ホンダモーターサイクルジャパンでキャリアを積み、現在はサイバーセキュリティ対策のロードマップ策定などを行う。
中山 知大Tomohiro Nakayama
コーポレート管理本部 デジタル統括部 サイバーセキュリティ推進部 セキュリティ支援課
IT関連企業でネットワークセキュリティ製品の保守・運用業務を担当した後、2022年にHondaへ入社。脆弱性・脅威情報を収集し、各部門への対応依頼を担当する。
溝内 健太郎Kentaro Mizouchi
コーポレート管理本部 デジタル統括部 サイバーセキュリティ推進部 セキュリティ推進課
2011年新卒入社。埼玉製作所にて生産管理システムの開発・運用に携わった後、海外トレーニーや海外現地法人のシステム開発業務を経て、2021年からHonda製品のサイバーセキュリティ向上のためのグローバルポリシー策定などを担当。
村井 唯Yui Murai
コーポレート管理本部 デジタル統括部 サイバーセキュリティ推進部 セキュリティ推進課
2010年新卒入社。人事系システムの開発・運用などを担当。産休・育休を経て2022年よりセキュリティ推進課へ配属。サイバーセキュリティ品質をグローバルで統一・向上するためのプロジェクトに携わる。
セキュリティ推進には、相手の目線に立った伝える力が不可欠
サイバーセキュリティを統括し、Hondaとステークホルダーの価値と安心の最大化、リスクの最小化を実現することがデジタル統括部サイバーセキュリティ推進部のミッションです。
「Hondaのサイバーセキュリティポリシーは、大きく2つの領域があります。1つめは、人事システムや経理システムなどの業務システムを守る『IT領域』。2つめは、クルマの各機能を制御するECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)などHonda製品を守る『製品領域』。
デジタル統括部は各領域を統括し、適切かつ一貫性のある対応をとるための方針や戦略の策定から、脆弱性のチェック、セキュリティリテラシーの底上げまでを担っています」
幅広い領域でハッキングなどの脅威を防止するために活動するサイバーセキュリティ推進部。その業務は主に、セキュリティ支援とセキュリティ推進からなります。
「中山さんと私が所属するセキュリティ支援課は、IT領域におけるセキュリティ対策のロードマップを描き、発見された脆弱性やインシデントへの対応を行っています」
「その中で私は、脆弱性情報を公開しているデータベースから情報収集したり、ログイン情報や機密情報が流出していないかを調べたりして、対応が必要な場合は関係部署への指示を行う業務をしています」
「溝内さんと私が所属しているセキュリティ推進課は、IT領域と製品領域において、グローバルポリシーを策定し、それを世界各地の拠点に周知・徹底させていくこと、またサイバーセキュリティ委員会の運営などが主な役割です」
セキュリティの支援、推進においては、「統一性」が求められるため、両課の連携が必須。また、開発からアフターサービスまで関わってくる上、グローバルに展開する必要があり、関係部署も多岐にわたります。そのため、大切なのは「相手側の視点を意識したコミュニケーション」だと話します。
「私は今、サイバーセキュリティに関する基準や業務プロセスをグローバルで統一させるため、アジア太平洋地域や中国、北米などに展開するプロジェクトに関わっています。
地域によって既存のプロセスも違えば課題も違いますので、同じセキュリティ基準をその地域に合わせてどう展開するかを一緒に考えていくことを大切にしています。伝え方ひとつとっても、ベストな方法は地域ごとに違うんですよね」
「そうですね。私自身、以前はアプリケーション開発の部門にいたこともありますから、自分が相手側の立場になった時に、どう伝えてもらったら実行できるのかを考えるようにしています」
「脆弱性への対応も、伝え方はポイントです。細かい依頼をしなくてはいけない場合もありますが、ITに関する知識レベルは人それぞれです。なるべく専門的な用語を使わず、誤解を与えない伝え方を心がけています」
「私たちはセキュリティ戦略の展開を担っているため、実行部隊の協力を得る必要があります。根気強くコミュニケーションを取りながら他部門を巻き込んでいく力が求められる仕事ですよね」
グローバルな舞台で活躍したい。夢に近づくため、ものづくりのHondaへ
Hondaのサイバーセキュリティにおいてグローバルに寄与する4人。溝内と村井は新卒でHondaへと入社しています。就職先としてHondaを選んだキーワードは、「グローバル」そして「空飛ぶクルマ」です。
「まずモビリティが好きだったということ、そしてグローバルで活躍できる場があることが決め手でした。大学生のころから英語が得意だったこともあり、世界を舞台に働きたいと思っていたんです」
「私は大学で宇宙の研究をしていたり、飛行機が好きだったりするので、『空飛ぶクルマ』を作りたいという夢があります。その夢を話すと入社当初は笑われることもあったのですが、ものづくりで世界一をめざしているHondaなら、夢に近づけるのではないかと思いました。今では航空事業だけでなく、宇宙事業にも取り組む会社になっているので、自分の会社がそれを実現しているのが嬉しいですね」
一方で、後藤と中山は他社でのキャリアを経ての入社。きっかけは、学生時代からの憧れと、クルマという身近な存在に縁を感じたことでした。
「以前は、コンピュータ会社でサーバーをセットアップしたり処理したりする仕事をしていました。ただ、ルーティンに近い業務だったこともあり、大学時代に学んだCADのアルゴリズムを活かせる仕事に挑戦してみようと思い、転職を考えるようになりました。
私は理工学部出身なのですが、Hondaは高い技術力や業界の先頭で挑戦を続ける企業風土が魅力的であり、憧れの会社だったんです。転職を考えた当時、ちょうどCAD関連の職種を募集していたこともあり、入社を決めました」
「私は、前職ではネットワークセキュリティ機器の運用や保守を担当していました。どうしても夜勤がある仕事なので、働き方を変えたいと思ったことが転職のきっかけです。また、後藤さんと同じく、決まったフローに沿って進めることが重要な仕事だったため、新しいことにチャレンジしてみたいと思いました。
そんな中、Hondaの求人を知りました。これまで家族が乗ってきたクルマがHonda車ばかりだったこともあり、なんだか縁を感じたことが入社の決め手です」
実際に入社してみると、ワークライフバランスが実現しやすく、思い描いていた生活ができているという中山。仕事においても、新しいやりがいを見つけています。
「さまざまな部署と関わりながら仕事を進めるという経験も、施策を推進するための仕組みづくりという経験もこれまでなかったことなので、新鮮な気持ちで取り組めています。
もちろん、関わる部署が多い分、調整に苦労することもありますが、施策一つひとつの規模も大きく、そこにチャレンジできていることはやりがいの一つです」
敷かれたレールはない。専門性を高めながら、安心安全を守るための道筋を作る
万が一サイバー攻撃などの脅威にさらされれば、経営に影響するだけでなく、お客様の安全にも直結するため、その砦としての役割を担う部署での仕事は難しさやプレッシャーもあります。しかし、グローバルに仕事ができることは、この部署でのやりがいの一つだと口を揃えます。
「私自身、これまでは国内を対象にした仕事が多かったので、Hondaとして世界に視野を広げて仕事ができることが魅力だと感じています」
以前は、社内向けのアプリ開発などに従事していた村井。協力し合いながら同じ目標に向かって邁進するというスタイルでしたが、現在は仕事の進め方や観点も変わってきたと話します。とくに、中国のジョイント・ベンチャー(Honda以外にも出資者がいる企業)との仕事が印象的だと言います。
「グループ会社ではあるものの、それぞれに優先したいことがある中で、ときには交渉が必要になることも。論理的に話を組み立てながら、融合できる部分を探り、相手が納得してくれるよう説明するという、戦略的な進め方も身につけなければいけません。
協力会社も含めた関係者みんなのアイデアを重ねながらベストなものを作っていく過程で、自分の成長を感じることができています」
これまでと異なる視点を養うこと以外にも、常に新しい技術を追いかけること、そして自分たちの手で作っていくことも仕事のおもしろさです。
「サイバーセキュリティ推進部は比較的新しくできた部署ということもあり、課題も含めて自分たちで見つけて、自分たちで対策を練っていくというおもしろさがあります。
私自身、今までインフラ関係で培ってきた知見を総動員しながら、さらに知識も視点も広げ続けていかなければいけない。それが難しさでもあり、魅力です」
「私たちの仕事には、まずはこれを実施して、次にこの工程があって、というようなレールがないんです。むしろ、そのレールを敷くことが仕事。
私は異動してすぐに、車両のデジタル化進展に伴って自動車メーカーを対象に策定された『UN-R155法規』への対応をしたのですが、一から勉強しつつ、今までの経験をどう活かせるか試行錯誤しながら取り組めた、良い経験でした。
実は、国際的な資格であるセキュリティプロフェッショナル認定資格(CISSP)も取得したんです。勉強しているうちに、自分に合っている分野だなと感じて、日に日に興味が増しています」
さらに価値ある部署をめざし、セキュリティの自動化に挑戦したい
インターネットへの接続機能を有した「コネクテッドカー」が普及するなど、お客様に安全・快適にクルマを使っていただくため、サイバーセキュリティの重要性はこれまで以上に高まっています。
「サイバー攻撃の種類もどんどん増えていて、高度化しています。私たちがそこに対応していくための知識やスキルを身につけていくことはもちろん、ときには外部企業とも連携しながら、より強固な体制を作っていく必要が出てくると思います。
そのときに、必要なメンバーをアサインし、社内にきちんと展開していけるよう、まずは目の前の仕事にしっかり取り組み、調整力を磨いていきたいと考えています」
資格を取得するなど、セキュリティの専門家への階段を着々と上っている溝内も、クルマの進化を見据えて自らの未来を描きます。
「クルマを車両の外にあるサーバーとつなげながらお客様にサービスを届けるという流れは、さらに加速していくはずです。そのなかで、『Hondaのサイバーセキュリティといえば溝内だ』と言われるくらいの第一人者をめざしたいですね。
そして、その知見を活かして、いずれサービスを作る側の仕事にも携わりたいと思っています」
長年、「空飛ぶクルマ」を作るという夢を抱いている村井も、セキュリティの面からそのチャンスをつかむことをめざしています。
「当社は、自由な移動の喜びを提供するために『HondaJet(ホンダジェット)』や『Honda eVTOL』を開発していますし、宇宙事業にも取り組んでいます。空を飛ぶものの安全を担保するために、サイバーセキュリティのスペシャリストとして関わってみたいですね」
常に新たな脅威が迫っているからこそ、対策の効率化や共通化も必要。後藤は、そのための仕組み作りにも挑戦したいと話します。
「サイバーセキュリティは、まだまだ手動で行わなければいけない部分も多くあり、必然的に工数がかかります。けれど、それでは疲弊してしまう。自動化していく仕組みを作ることができれば、さらに部署の価値を発揮できるはずです。
いろいろなものを吸収してチャレンジしていける人と、その世界を作っていきたいと考えています」
専門知識とコミュニケーション、そして自らレールを敷いていく開拓力で世界をつなぎながら、安全・安心を守る4人。さらに自らを高めながら、モビリティの進化を支えます。
※ 記載内容は2023年11月時点のものです