Social contributions 2023/03/27
研究開発環境を追求──施設管理を通じてHondaの未来を形作るエンジニアの挑戦
研究開発拠点においては、施設・設備といった環境が成果に大きな影響を及ぼすものです。前職でも生産拠点の施設管理に携わってきた山本は、現在Honda二輪車の研究開発を担う朝霞で、開発環境の最適化に挑んでいます。電気領域に特化し、自身の強みを発揮しながら開発環境の未来を描く山本が、これまで歩んできた挑戦の日々とは。
山本 祐輔Yusuke Yamamoto
二輪・パワープロダクツ事業本部 ものづくり統括部 開発基盤改革部 開発環境改革課
大手電機メーカーにおける国内外工場の施設管理・企画のキャリアを経て、2020年Hondaに中途入社。研究開発拠点敷地内の施設管理を担い、研究開発環境の最適化に貢献する。電気領域において専門性を持ち、脱炭素化に向けた施設改善プロジェクトを電力の視点からリードする立場でもある。
Hondaの二輪車を生み出す研究開発を、施設の管理や改善を通じて支援する
Hondaの研究所のひとつであり、二輪車の研究開発を主に行う朝霞拠点(以下、朝霞)。その建屋・設備の維持・管理や最適化を通じて開発環境を支えているのが、開発環境改革課です。山本は同課の施設・エネルギーグループの一員として、電気領域に関わる管理業務全般を担当しています。
山本「組織のビジョンとして掲げられているのは、『開発資源の最適化を図り、価値創造の最大化に貢献すること』です。私たちは実際の研究開発に直接は関わりませんが、建物や設備を最適化することで研究開発に貢献しています。
施設や設備の維持管理は主要業務ですが、そのほか研究開発をより加速させるための環境を検討することも私たちの大切な役割です。研究内容やサステナビリティの観点から改善案を模索し、施設が最適な形で進化し続けられるよう、改善プロジェクトをリードしています」
山本は前職でも大手電機メーカーの工場管理に携わっていました。海外の生産拠点を担当し、現地に足を運びながらプロジェクト立案やマネジメントを行った経験が、やがて自身のキャリアの見直しや転職活動にもつながったと振り返ります。
山本「工場全体を俯瞰するようなプロジェクトは多く経験したものの、専門領域に特化した仕事はそれほど多くありませんでした。ちょうど前職の施設管理チームが縮小する時期と重なったこともあり、専門領域を深めたいという思いから転職を検討するようになったんです。もともと高圧・特別高圧を扱う領域に興味があったので、自身が思い描くエンジニア像を目指せる転職先を探しました」
そして転職活動中、Hondaに転職した先輩から聞いた言葉が、山本の心を動かします。
山本「Hondaはあきらめず、どんなことにでもチャレンジする環境だと聞きました。たとえ失敗してもチャレンジする姿勢そのものを尊重するという話を受け、そんな職場で働いてみたいと思ったんです」
果敢な挑戦を受け入れる環境で、専門領域を深めたい。山本が胸に抱いた希望は、Hondaの環境や業務内容と合致するものでした。
電気領域に特化したエンジニアとして施設改善に携わり、難易度の高い課題に挑戦する
朝霞の施設管理に関わるようになり、山本は希望通り電気領域のプロジェクトに携わるようになります。山本がその中でも魅力を感じたのは、特別高圧・高圧の電気領域において自分自身の専門性を発揮できる領域でした。
山本「研究開発拠点や生産拠点では、一般家庭と比べて多大なエネルギーを用います。その際、小さい電圧しか対応できないと引き込むケーブルが太くなってしまうため、より高い電圧を引き込める対応が求められます。
しかしこの業務は危険性を伴うので、実行においては担当者の資格取得や高い専門性が必要です。こういった挑戦は前職では任せてもらえず、叶いませんでした。一方Hondaは、『すべて任せる』というスタンスでした」
現在、資格取得に向けて勉強に励んでいる山本。各現場において当事者意識をもって課題を発見し、専門知識を深めながらその解決のために挑戦することができています。加えて、長年の歴史を重ねた朝霞の施設をより良くしていくためのプロジェクトでも、自身の能力を発揮することができました。
山本「変電所と呼ばれる電気設備の更新に携わることができました。施設内には変電所が数十箇所あり、高電圧から低電圧へ変圧し、必要な場所に送電するための変換機能を担っています。その老朽化に伴う現場調査や仕様設計、開発影響を最小限に抑えた更新作業を行えるようにプロジェクトをマネジメントすることが私の役割でした。メーカーさんとも連携しつつ自分なりに取り組めたことで、やりがいを感じられたプロジェクトのひとつでした」
この経験を通じ、専門領域の知識を深めるだけでなく、Hondaの電気に対する基本的な考え方も知ることができたと振り返る山本。電気主任技術者からの手ほどきを受けつつ、二輪車の研究開発拠点という独自性も含めて、自身の担当拠点への理解を深めていきました。
山本「入社当初は二輪自体に対する知識が浅かったため、二輪車の研究開発装置について一から勉強しました。また、拠点の敷地面積が広いので、はじめの頃は突発的な現場対応に行く道すがら迷子になってしまったこともありましたね(笑)。そんな苦労もありながらでしたが、Hondaで二輪車の研究開発に関わることができる今の職場には、とても魅力を感じています。
私は前職で東南アジア出張に行く機会が多かったのですが、そこではバイクがインフラとして生活に浸透しており、Hondaのバイクをたくさん目にしてきました。海外の人々の生活を支えるプロダクトに携われているという実感は、働いていて強く感じるところです」
真摯で専門性の高いメンバーと協力できるからこそ、大きな課題にも向き合える
開発環境改革課はファシリティマネジメント*を通じた研究開発サポートのほか、もうひとつ重要な役割を担っています。それは、脱炭素に向けた取り組みです。
*企業・団体等が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動
山本「Honda全体で脱炭素に向けた積極的な取り組みがあるなかで、私の所属する拠点でも具体な数字目標を掲げながらその達成のための施策を検討しています。太陽光発電の設備を設けるといった取り組みは、その一例です。もちろんこれは一拠点で完結するものではなく、拠点を跨いだプロジェクトとなるため、各拠点の電気担当が集い、意見を出し合いながら最適解を検討しています。
また、老朽化した設備を更新する際には、より効率的な仕組みを導入することで段階的に炭素の消費を減らしていくといった積み重ねも必要だと思っているので、長期的な視点を持ちながら取り組んでいます」
さまざまなレイヤーの課題を持ちつつ、施設・設備の最適解を模索する日々。難易度の高い課題に向き合う山本を支えるのは、周囲の頼もしいメンバーの存在です。
山本「共に働いているメンバーは、各々の専門性を発揮しながら、真摯に、全力で課題に取り組むところが共通しています。私の場合は電気ですが、そのほか建築、機械といったさまざまな領域のスペシャリストが集っています。みんなで協力し、横のつながりを活かしながら業務に臨めることが、この環境のいいところです」
また、施設管理へのHonda全体の意識の高さも、山本の挑戦意欲や働くモチベーションにつながっています。
山本「施設管理に対する社内の期待値は非常に高く、現場の課題を解決する存在として周囲から頼ってもらえていることを嬉しく思います。
そして私たちが担当する朝霞は、研究開発拠点なので、ある意味『挑戦することが当たり前』の場所です。前例のないことに挑み続ける開発メンバーに対し、いかに最適なプランを提供し、環境を整えていくかが、私たちのチームにおける日々の挑戦ですね」
本質的な課題を見極め、マルチエンジニアとしての価値発揮をめざす
今後自身が挑戦していきたいこととして、山本はふたつの軸を掲げます。
山本「まず、電気領域に対して誰にも負けないくらい強みを持ちたいと考えています。高圧・特別高圧の電気設備を維持管理していくための資格取得も、そのひとつのステップですね。そしてさらなる目標が、マルチエンジニアとして活躍することです。ひとつの領域に強みを持つのは、エンジニアとして当たり前のことだと思うので、これからはほかの領域にも知見を広げ、“広く・深く”を両立するプロフェッショナルをめざしたいです。
現在働いている環境では、領域を跨いだ異動もできますし、上司の方針としても自分の専門外の分野に知見を広げていくことを後押ししてくれています。その環境を活かしつつ、今後も柔軟に働いていきたいと思っています」
これまで指導にあたってくれた上司や先輩の姿を通じて、さまざまな側面に知識や経験を持つエンジニアの強さを体感してきた山本。掲げた目標は新たな挑戦の扉を開くものですが、一方、仕事において大切にしてきた価値観は、長いキャリアのなかでも変わりません。
山本「本質が何なのか、常に考えて行動してきました。たとえば現場から『電源がここに欲しい』と要望があったとしても、その要望を突き詰めていくと、作業の効率化が課題だとわかることもあります。
こうした課題の本質を把握し、そこから最適化の提案を考え、実行していくことが何より大切です。この意識は前職のころから上司に叩き込まれて貫いてきたもので、施設管理に携わる者の責務でもあります」
2023年3月現在、敷地内に新しい建物を建てるプロジェクトを2件同時に担当している山本は、大きな裁量も持たせてくれるHondaで活躍するための要件として「前向きにリードする力」を挙げます。
山本「もちろん挑戦には失敗もつきものですが、それでも『私がやっていく』と前に出て、強く引っ張ってくれるような方と一緒に働きたいです。Hondaでできる仕事は、これからも山ほどあります。専門職でキャリアを培った方にとっては、転職そのものが大きな挑戦になると思いますが、その不安はHondaで払拭できると思います」
Hondaの二輪車の原点ともいえる研究拠点で、専門性を発揮しながら挑戦し続ける山本。その働きは、現場の働きやすさを向上することで二輪車の開発を加速させるとともに、サステナビリティの高い未来の職場環境をつくっていきます。