Innovation 2023/01/16
「環境負荷ゼロの循環型社会」の実現へ。新設“水素事業開発部”のチャレンジ
「2050年にすべての製品・企業活動を通じてカーボンニュートラル」を目指すHondaでは、水素の利活用を拡大することで社会のカーボンニュートラル化に貢献したいと考えています。この新たなチャレンジに本格的に取り組むべく2022年4月に水素事業開発部が発足、その最前線で新規事業開発に取り組む宮澤と村上が、Hondaで水素事業に携わる醍醐味を語りました。
宮澤 昌也Masaya Miyazawa
事業開発本部 事業開発統括部 水素事業開発部 事業・営業企画課
自動車部品メーカーから、2013年本田技術研究所に中途入社。量産車の開発を担当した後、2019年よりエンジン解析技術開発のプロジェクトリーダーを担当、2021年より本田技研工業の経営企画部へ異動、エンジニアから事業企画職にキャリアチェンジ。自己啓発でMBAを取得、2022年より現在の所属となる。
村上 博則Hironori Murakami
事業開発本部 事業開発統括部 水素事業開発部 商品技術企画課
トラックメーカーでエンジン開発を担当、2015年本田技術研究所に中途入社。ディーゼルエンジンの開発を担当した後、ガソリンエンジンのR(Research)研究に携わる。その後電動化を推進する部署に異動し、2022年より水素事業開発部の発足に伴い本田技研工業へ異動、現在の所属となる。
“未来のHondaを支える柱となるために”水素事業化への挑戦
水素事業開発部は、Hondaが20年来培ってきた技術の詰まった「燃料電池スタック」の外販、及び水素供給を含めた周辺サービスの事業化で、二輪・四輪・パワープロダクトといったHondaの既存事業に続く、「未来のHondaを支える柱」としての成長が期待されています。
その実現に向け、栃木の研究所から異動した技術者と、既存事業からの営業メンバーが集結し水素事業開発部はスタートしました。
その新組織の中で、事業・営業企画課の宮澤と商品技術企画課の村上は、ともに水素戦略を立案する重要な役割を担っています。また併行して商用車メーカーとの協業推進や、自治体・商社とタッグを組んだ実証実験の推進、他国での定置電源の可能性調査など幅広い業務に携わっています。
「Hondaは再生可能エネルギー由来の電気に加え、水素やカーボンを利活用することでカーボンニュートラル社会の実現を目指しています。私たちは水素サイクルを担当しており、どのような世界を目指し、そのためにどういう商品やサービスをつくるか、足元から長期までの戦略を考えています。
まずは燃料電池の用途を拡大し、FCEV(燃料電池自動車)や商用トラック、定置電源、建設機械、可搬形電源などの商品がどのようなお客様にマッチするか、また広めていくために何をすべきかといった戦略を主に考えています」
「燃料電池をパワートレインに採用した商用トラックの共同研究をいすゞ自動車株式会社様と行うなど、水素の事業はさまざまな会社と協同して推進していく必要があります。私は事業・営業企画課なので、お客様やパートナー様に直接声をかける役割を担うことが多いですね。既存のパートナー様との関係構築だけでなく、新たな協力先を開拓することもあります」
「私は実証実験を行う際、要件を踏まえて仕様を変更したりアドバイスしたりする技術的な窓口を担当しています。本田技術研究所とお客様をつなぎ、意思疎通をはかるのが、商品技術企画課の役割です」
水素事業開発部では、営業職と技術者がそれぞれの強みを活かしながら、新事業開発へ取り組んでいます。
“松明は自分の手で”日々難しさを感じながらもトライ&エラーを繰り返した先にある達成感
やることすべてが新しいといっても過言ではない水素事業開発は、難しいことの連続です。宮澤も村上も、それぞれ壁に直面しながら1つひとつの課題に取り組んできました。
「カーボンニュートラルという世界規模の目標を達成するためには、Honda1社ではたどり着けないソリューションが多くあります。そのため、社外の方を巻き込んで仕事を進めなければなりません。
また、どこかのコミュニティにHondaが入ればいいわけではなく、Hondaが舵を取りながら周りの企業を巻き込み、リーダーとしてプロジェクトを回していかなければならない。経験はないですし、止まることなく走り続けていかないといけないので、難易度は高いです。とはいえ、Hondaが持っているリソースを活かした新規事業開発は取り組んでみたかったので、やりがいを感じています」
「仕事を進めるうえで、社外だけでなく社内の意見をまとめることも難しいと感じました。アイデアを出し合ったとしても、実行にうつすためには背景や目的、Hondaのポジショニング、ありたい姿などを明確にしつつ、そこに行き着くためのロジックをある程度含んだ1本のストーリーを示して周りを説得しなければなりません。その部分のマインドチェンジも含めて理解を得ていくのは、時間もかかるし容易なことではないですね。
研究所は『技術』視点で考え、私たちは『ビジネス(事業)』として考えるという違いもあるので、相互理解が得られにくい場合もあります。私は研究所で働いていた頃からビジネスとして考えるよう心掛けていたので異動によってこれまで以上に話しやすくなりましたが、それでも方向性を決めて、それぞれの協力を得て推進していくことは大変だと日々感じています」
手探り状態で挑戦することも多い水素事業開発部の仕事ですが、異動してから1年足らずの現在、ふたりとも少しずつ達成感が得られるようになってきています。
「私はこれまで約半年、トラックを作ってくれる方と水素を運んでくれる方、インフラを作ってくれる方をつなげるところで奮闘していたんですが、ようやくひとつのプロジェクトが形になりつつあります。
推進にあたっては、いろいろなパートナー様とコンタクトし続けることを常に大切にしてきました。また、あるときは営業、あるときはエンジニア、あるときは戦略家として振る舞うような、今まで自分が勉強してきたものを状況によって変えながら出していくことができたのは、MBAでの学びが活かされたところですね」
「私はどちらかというと社内調整がメインタスクで、前提条件を決めてほしいと任されることが多くあります。とはいえ、はじめてだから誰もわからないことばかりなんですよね。そのため先を読みながら腹を括って『これでいきます』と自ら発信するようにしています。石橋をたたきながらも意思決定をできるようになったのは、昔に比べると成長したところですね。
コミュニケーションを充分にとることで、皆さんが抱えていることを引き出すよう心がけて、チームのやりたいことを実現するようにしています。お互いの立場を理解しつつ本音で話していくことで、少しずつ進んでいると思います」
“ノープレー・ノーエラーを排せ” Hondaで水素事業に取り組む醍醐味
苦労も多い新規事業開発ですが、宮澤と村上は水素事業開発部での仕事に魅力を感じています。
「私は学生時代から、資本主義における弱者を強者に変える仕組みがないか、それを助けるモノを作れないかずっと考えてきました。水素はエネルギー資源を持たない国でもエネルギーを生み出せるようになるため、弱者が強者に変わる可能性を持っていると思います。
日本でも水素でエネルギーを生み出すことができれば、より豊かな国になっていくと思いますし、日本がもっと発展できる世界を作れる可能性がある。それに期待しています」
「私はこれまでクルマの研究開発に携わってきたので、クルマに関することを考えると、これまでの経験と照らし合わせることでバイアスがかかり、自ずと可能性を狭めてしまう部分があります。一方、水素についてはあまり知らない分、先入観がなく、まだ広く普及していないため新しいアイデアが入る余地も多いと思います。
知らぬがゆえにやってしまおうというモチベーションが高まるので、いろいろなチャレンジができるのがおもしろいですね」
それぞれがおもしろさを感じている水素事業を、Hondaで行う意味。それを突き詰めていくと、Hondaの魅力が改めてわかりました。
「Hondaで新事業開発をする醍醐味は、いろいろなアセットを活かせるところです。たとえばHondaは既存ビジネスで培ってきたブランド力があるので、新規事業をはじめるためパートナー様に問い合わせをした際も快く話を聞いてくださいます。また、社内に専門性の高い方がたくさんいるので、わからないことがあっても周囲に聞けばわかります。
物事を解決するためのアセットが豊富にあるため、水素のような新規事業もやりやすいと感じますね。うまく活用して新しいことをしたい方は、Hondaでどこまでも仕事を広げてのびのびと力を発揮できるのではないかと思います」
「もともとHondaは比較的自分がやりたいことをやりやすい会社ではありますが、そのなかでも新規事業は誰もやったことがなく答えもないので、“とりあえずやってみろ”という雰囲気が常にあり、自分にとってはとても働きやすい環境だと感じます。部長からも、既存事業の枠組みやしがらみに捕らわれないこと、Do(実行)を最重要視すること、常にリーチングアウトを心掛けることは、事あるごとにアドバイスがあります」
個人の強み・違いを活かした組織で働く楽しさ
2013年にHondaへ入社した宮澤は、前職で自動車部品メーカーに勤めていました。
「前職では、乗り心地に関わる部分の解析や開発を担当していたんです。Hondaに入社してからも、エンジンの振動や騒音、乗り心地を担当するエンジニアとして働いていました。量産車の開発に4年ほど携わったあと、研究に携わりたくなり、先進技術研究所に異動したんです。そこで振動や騒音の解析の研究を2年ほど担当しました」
その後、技術を研究するだけでなく自分が作った技術を世の中に広めるビジネスがしたいと考えた宮澤は、MBAを取得しながら事業企画職にキャリアチェンジ。2021年7月に経営企画部に異動し、2022年4月からは水素事業開発部で事業企画や経営企画に携わっています。
「研究をしているとき、自分が携わった技術を、このあとどうやって世の中に広げているんだろうと興味を持ったんですよね。そこで事業寄りの仕事にチャレンジしていきました」
2015年に入社した村上もまた、転職を経てHondaで働くことになりました。
「前職ではトラックメーカーのエンジン開発を担っていました。Hondaに入社してからも、最初はディーゼルエンジンの開発を担当していたんです。その後ガソリンエンジンのR(Research)研究に携わってから、電動化を進めている部署へ異動しました。その後2年経ってから水素事業開発部に来ました」
研究に携わってきたからこそ、事業戦略にも興味を持った村上。
「自分の技術を使うより、どうすれば物事を動かしていけるかといったことに興味がありました。研究所ではいろいろなテーマを研究していますが、残念ながら市場に出ないうちに頓挫してしまうこともあります。私は、一生懸命やったのに何も実を結ばずに終わっていくほど不幸なことはないと思っているんです。
研究したものを世に出すためには、上流側からしっかりしていかなければならない。そこに自分も貢献できるように戦略側に携わりたいと思うようになりました」
水素事業開発部には、宮澤や村上のように多彩なキャリアパスを持った人材が多数在籍しています。
「水素事業開発部にいる営業は8割程度が転職者で、営業、エンジニア、知的財産などいろいろなバックグラウンドを持つメンバーがいます。今まで一緒に仕事をしたことがない方が集まって働いているので、新しい考え方を学べるのはおもしろいですね」
「ここまで経歴が異なるメンバーが集まる部署は、Hondaとしても珍しいと思います。「Hondaで新しいビジネスを生み出そう」という高い志を持った、メンバーが多く働いておりエンジニアと営業が集まって一体となってやっていく試みも新しいですね」
今後のさらなる成長が期待されるHondaの水素事業開発部では、外販ビジネスの経験や、水素エコシステムの形成の即戦力となるスキルを持った人材を求めています。
「私たちの部署では、テンプレのような働き方ではなく『得意なところをお願い』という形が多いので、これまで培ってきたスキルがある方は存分に発揮できます。組織がどんどん育っていっているからこそ、自分のスキルを活かして活躍できると思います」
「これから新しく入ってくる方には、コミュニケーション能力が必要かもしれません。マニュアルがないなかで、構想しながら手を動かし、皆でそれぞれの頭にあることを話しながらどんどん仕事を進めていくので」
「確かに、研究所より事業開発部のほうがコミュニケーション能力の発揮を求められるかもしれませんね。研究所だと技術ベースで話をすることが多いですが、戦略を考えるうえでは技術以上にさまざまな立場のメンバーと意思疎通をはかりながらプロジェクトをまとめていくことが必要だと思います」
新たな未来に向けて戦略を考え、社内外で連携を強化しながら取り組みを進めるHondaの水素事業開発部。
自ら道を開拓し、苦労を乗り越えた先にはきっとこれまでとは異なる景色が広がっているはず──Hondaの未来を一緒につくりたいと思う方々と働けることを楽しみにしています。
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