NS500の技術仕様とレース
text=KIYOKAZU IMAI
HRCの礎を築いた3気筒車
1983年、ホンダに初の最高峰クラス個人タイトルをもたらす
1気筒あたりの排気量は166.2cc
120度等間隔爆発のV型3気筒エンジン
1982年と1983年のロードレース世界選手権500ccクラスにおける、ホンダのワークスマシンがNS500である。
エンジンは2ストロークのV型3気筒で、総排気量は498.6cc。1気筒あたりの排気量は166.2ccであり、ボア×ストロークは62.6mm×54.0mm。各気筒がクランク回転角120度ごとに点火される等間隔爆発だった。
このV型3気筒は、V字の谷のところを前方に向ける格好で車体に積まれた。上向きの2気筒(1番・3番シリンダー)と下向きの1気筒(2番シリンダー)の挟み角(Vアングル)は112度で、谷のところに3気筒分のキャブレターがまとめて配置された。112度という数値は、車体搭載上の要件から導き出したものだったが、後にホンダは1987年以降のNSR500のV型4気筒エンジンでもこのVアングルを採用した。
キャブレターはスライドバルブ強制開閉式のケーヒンPEで、吸気方式はピストンリードバルブ。こうした技術は、ホンダが1970年代からモトクロッサー用2ストロークエンジンで磨いてきていたものであった。それらを受け継いでNS500に採用することで、新開発のロードレーサー用2ストロークエンジンながらも、短期間での熟成を狙った。