Honda Stories

 

イノベーション 2023.10.09

未来に宿題を残さない。生産設備のエネルギー削減を実現

未来に宿題を残さない。生産設備のエネルギー削減を実現

「設備メンテナンスを通じて製品の品質をあげたい」という想いから、生産設備の保全を約10年間担当してきた林。現在は、保全業務で培った知識と経験を活かし、Honda寄居工場で部品製造設備のエネルギー削減に取り組んでいます。「未来に宿題は残したくない」と語る林に、カーボンニュートラル実現にかける想いや、Hondaの企業風土、今後のビジョンについて話を聞きました。

林 哲男(はやし てつお)

四輪事業本部 生産統括部 埼玉製作所 完成車工場
合成樹脂モジュール(寄居)管理グループ
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保全でもエネルギー削減でも。設備を通じて貢献する

最初に、林さんがHondaに入社した経緯を教えてください。

林

幼少期からクルマが好きで、Honda製品のファンだった父の影響でHondaに興味を持ったのが最初のきっかけです。工業高等専門科に入学し、卒業研究ではディーゼルエンジンを扱いました。「卒業後は自動車メーカーで働きたい」と漠然と考えていたのですが、当時Hondaがアコード・ディーゼルをヨーロッパで発売していたこともあり、この会社でディーゼル自動車を開発できたら面白そうだと思い、入社試験を受けました。

ただ、商品開発やエンジン領域の部門はやはり花形で、配属の難易度が高いんですよ。最終的には保全の仕事に配属されたのですが、先輩社員の方の話を内定式で聞いて、保全というかたちでもものづくりに貢献できることを知り、この仕事で頑張っていこうと決めました。

保全というのは、具体的にどんな仕事なんでしょうか?

林

わかりやすく言うと、「設備のお医者さん」のイメージですね。工場設備のメンテナンスを行い、生産の効率化や不良品の削減といった、現場の人たちからの「もっとこうしたい」という声に応えるのが保全の仕事です。現場の方が作業しやすくなれば、結果的に製品の品質を高められる。そういった意味で、ものづくりの一端を担っている大事な仕事だと思います。

寄居工場において生産設備のエネルギー削減に取り組んでいる林

現在は、Hondaの寄居四輪完成車工場で働かれているとのことですが、ここではどのようなお仕事をされているのでしょうか?

林

寄居工場は製造拠点の他に、「人と環境に配慮した工場」として、Hondaの技術を世界に発信する役目も担っています。そのなかでも、四輪のバンパーとインパネを製造する部署で、管轄内でのエネルギー使用量削減や、基盤強化のための既存設備の更新・改造を行っています。

一例としては、モジュール(部品)の設備ごとにエネルギーを「見える化」するシステムを導入しました。2年前に私がシステムの更新を行いまして、現場の人にとってもさらにわかりやすく、エネルギーロスが視認できるようになりました。他にも、バンパー塗装に使う空調設備やインパネの品質検査工程のエネルギー削減を行っていて、現在はシミュレーションを取り入れながら、コストをかけずに最大の効果を出すための最適な方法も探っているところです。

信頼してくれるから、チャレンジできる

林さんは、環境負荷を抑えた生産技術の構築、生産体質の強化を目指す「寄居カーボンニュートラルプロジェクト」のメンバーにも抜擢されていますね。このプロジェクトに対するやりがいや思いを教えてもらえますか?

林

入社当時から、環境課題の解決に貢献したいという想いがあったので、こういったかたちで直接貢献できていることは非常に嬉しいです。生産工場のカーボンニュートラル実現には高いハードルがいくつもありますが、だからこそ電化設備の導入やエネルギー削減の方法を模索することにやりがいを感じています。

また、プロジェクトの施策にあたっては、Honda以外の他メーカー様や他業種の方の協力を得ながら取り組んでいます。会社の垣根を超えて協力しあうことで、取り組みの幅も広がって楽しいですね。

寄居工場において生産設備のエネルギー削減に取り組んでいる林

林さんから見て、Hondaの強みや魅力はどんなところにあると思いますか?

林

Hondaの企業風土の一つとして、チャレンジ精神があります。カーボンニュートラルプロジェクトにおいても、チームで知恵を出し合っていると「こうすれば実現できるんじゃないか」「もっと頑張ってみようか」と盛り上がっていくんですよ。さらに高みを目指したいという思いを社内で共有しているので、自然と打開策が生まれてくることも多いですね。

あとは、立場にかかわらず人の意見を尊重する文化がHondaの魅力だと思います。私の直属の上司は、部下の意見や希望を否定せず、むしろ全面的に信用して業務を任せてくれるんです。ここまで信じてもらえると、下手なことできませんよね(笑)。信頼されている分、こちらとしてもその期待に応えたいという思いで仕事をしています。

上司の方の存在が大きいんですね。

林

そうですね。Hondaに入社した最初の5年間は、どれだけ上司に助けてもらったか。その頃の私は、上司にとっては正直、いてもいなくても変わらないような存在だったと思うんです。でも5年ほど経ってから、毎週のように中国出張に行っていた時期に、その方から「林がいないと仕事が進まなくて困っちゃうよ」と言われたんですよ。あの時は「ようやく必要としてもらえる存在になれた」と思い、うれしかったですね。「これで恩返しをしていけるぞ」と。

受け継がれてきた意志を次の世代へ

寄居工場において生産設備のエネルギー削減に取り組んでいる林

林さんの今後のビジョンを教えてください。

林

2050年までに生産工場のカーボンニュートラルを実現することが最優先の目標です。これはHondaのミッションでもありますし、日本政府が掲げる目標でもあるので、他のメーカーさんや他業種の方々とも技術を共有し、確実に達成したいと思っています。

あまり知られていないかもしれませんが、Hondaは1972年に「CVCCエンジン」を開発し、ハードルの高い排ガス規制法を世界に先駆けてクリアしたという歴史を持っています。当時からHondaの環境意識は高く、次世代により良いものを残したいという思いから開発された背景があるんです。

今回、生産工場のカーボンニュートラルのプロジェクトを進める上で、Hondaの中で受け継がれてきたこの意志を次の世代につないでいきたいと考えています。私自身も子どもがいますし、未来に「宿題」は残したくない。だからこそ、我々がやるべきことをやっていく必要があると思っているんです。

ビジョンを達成するために、実践したいことはありますか?

林

これからの5年は、寄居で得られた経験をもとに、生産工場のカーボンニュートラル実現に向けての意識を社内外かかわらず波及させていきたいです。まずは寄居で実証し、自分たちがやってきたことを後輩にも伝えていく。さらには培ってきた技術やノウハウを地域にも伝えて、世の中の環境意識を底上げしていけたらと考えています。寄居工場には「環境トップランナーになる」というミッションもあるので、それを体現していきたいですね。

寄居カーボンニュートラルプロジェクトのメンバーは、私を含めてみんなが「選ばれたからには絶対最後までやり切る」という強い意思を持っています。今後も、「私たちの頑張りが絶対に未来の地球のためになるんだ」という想いで、日々の業務に取り組んでいきたいと思います。

寄居工場において生産設備のエネルギー削減に取り組んでいる林


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