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吉村 ホンダの目標は、存在を期待される企業であり続けることだとうかがっています。21世紀に向けてどのような企業の姿を描いておられますか。
吉野 言葉はやや古いのですが、やはり企業は世のため人のため、それを一つの正義として追いかけ、取り組んでいないと永続的な存在とはいえないと思います。 それを掲げることで、従業員のもっている個々のさまざまな能力とベクトルを合わせられると思っています。 そのためには、ホンダという企業が時代をリードして、切り開いていくような役割を少しでも果たせたらいいと考えています。20世紀の例で言えば、やはりマスキー法施行に対するCVCCです。当時何度もアメリカの公聴会に出ましたが、そこで「ホンダができると言っているのになぜやれないんだ」といったことを他メーカーが厳しく指摘されるわけです。結局、アメリカのメーカーも取り組むことになり、ホンダが時代を引っ張るという役割を果たしたわけです。その後も時代の先端を走る役割を果たし続けることを目指してきたと思います。
吉村 それでは21世紀にホンダが描く夢と挑戦は何でしょうか。 吉野 それは安全と環境です。栃木に昨年3月、「屋内型全方位衝突実験施設」を作りました。この施設ではあらゆる状況での衝突実験が可能であり、また、乗員ダミーの改造ではない歩行者のダミー人形をもっているのはホンダだけです。日本は歩行者の犠牲者が相当多いですから、万一の場合、強者が弱者の被害をどう軽減できるのかということで、たとえばボンネットなどに人間がどのようにぶつかるかテストしているわけです。そうしたデータをもとに、人がぶつかった瞬間に車体が歪むことによって衝撃を和らげるような構造のクルマをホンダは作っています。
そして、これから加速度的な高齢化社会を迎えるにあたり、高齢者の安全が当然、大きな課題になってきます。高齢者が運転者の場合、たとえば真夜中、雨が降っていても前方に歩行者がいることを検知できて、それを警告できる技術が実用化できればと思います。また操作系一つにしても、見え方にしても、ドアを開けて座るということにしても、高齢者にとって使い勝手をよりよくする。そうしたことを一つひとつきちんと追求したいと考えています。
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