森を知る。森を守る。 Honda KANKYO SCHOOL
山登りや虫とりができるのは、きれいな森があるから。
また、森は水や空気をきれいにし、雨による災害から私たちを守ってくれます。
その森は今、林業のすいたいや地球温暖化などで失われています。
「今、じぶんにできること」
森のことを知って、一人ひとりが森を守るココロをもとう!
ROLE OF FORESTS
森の役割
森の土は水をためこみ、その水は川を通じて私たちのもとに届きます。森の木は二酸化炭素を吸収して酸素を出し、空気をきれいにして地球温暖化防止にも役立っています。また、健康な森にはたくさんの生き物がくらし、しっかりと張られた木の根は土砂災害を防ぎます。
このように、私たちのくらしになくてはならない森ですが、今さまざまな問題が起きています。
地球全体でみると、人が木材利用のために木を切りすぎたり、新しい町や施設(しせつ)、農場などをつくるために森をこわしたりする問題です。そして日本では、人がスギやヒノキを植えたまま放置し、森をあらしてしまう問題が起きています。さらに、その森がスギやヒノキだらけになることで、生き物にもくらしづらい環境になっているのです。
COLUMN
森の環境コラム
- 春になると増える黄砂の影響って?
- 春になると車が黄色い砂でよごれているのを見たことがあるかな?これは黄砂(こうさ)といって、ユーラシア大陸…
- 近い将来、ゴミの行き場がなくなる!?
- 日本で1年間に出るゴミの量は4274万トン(東京ドーム約115はい分)。1日1人あたり918gのゴミを出しているよ…
- 北極圏の森林火災は地球からのSOS!?
- オーストラリアやアメリカなど世界中で大規模な森林火災が発生。広大な森が焼失し、多くの生き物がぎせいになってい…
- コオロギが世界の食料危機を救う!?
- 牛肉や豚肉は私たちの大事なたんぱく源。しかし近年では人口の増加と共に肉の必要量が増加。経済発展している国で肉…
- 猛暑が増えてセミや蚊も夏バテ気味!?
- 最近は35℃以上の猛暑(もうしょ)日が増え、セミや蚊(か)も夏バテ状態。なぜなら、これら昆虫(こんちゅう)には…
- 便利な食生活が地球の負担になっている!?
- みんなは「旬産旬消」(しゅんさんしゅんしょう)って知ってる?旬産旬消とは、地元でとれた旬(=最も多くとれる時期)…
- ヒートアイランド現象で都市の桜に異変が…!?
- 2021年の東京の桜の開花日は3月14日。1960年代までは4月に開花していたけど、近年はヒートアイランド現象や地球温暖…
- 便利な生活が生物多様性をこわしている!?
- 地球には豊かな生物多様性(いろいろな生物が関わり合って生きていること)がありますが、近年ではそれが失われているよ…
- アマゾンの熱帯雨林が大豆畑に変わっていく!?
- 世界では、全人口が必要な量の2倍もの食料を生産していますが、何とその1/3の年間13億トンが捨てられているよ!そして…
- おいしいウナギが絶めつのピンチ…!?
- 私たちが食べているニホンウナギは、日本から南にはるばる泳いで、グアムがあるマリアナ諸島沖で産卵するよ。卵はふ化すると海…
- 地球の砂ばく化で森や湖が消えている!?
- 地球の陸地の約43%をしめるかんそう地域では人口が急増。その結果、この地域の限られた自然をめぐり、家ちくが草を食べつくし…
- 遺伝子を知って自然を守ろう!
- 私たち人間はもちろん、すべての生き物は細ぼうの中に「遺伝子」をもっているよ。 遺伝子は生き物の設計図のようなもので、進化…
- ポリネーターが減ると食料不足になる!?
- みんなは「ポリネーター」って知ってる?植物の花粉を運んで受粉させるハチやチョウ、小動物や鳥などのことで、植物の90%がポ…
- 私たちの生活が熱帯林をこわしている!?
- 地球の赤道付近にある熱帯林。この森林では生物の多様性が保たれ、また地球から出る二酸化炭素を酸素に変える重要な役割を果たして…
- 里山があれると、どんな問題があるの?
- みんなは〝里山〟って知ってる?里山は、田んぼや畑、たきぎや炭に活用する森など、数百年もの間、人が暮らしに利用するために手を…
- シカが森を枯らしてしまう!?
- 世界で野生動物による森林ひ害が起きているけど、日本ではその約3/4がシカによるもの! シカが植物を食べつくし、森が元に戻らないく…
- どうして人工林には世話が必要なの?
- 日本の森は何と半分が人工林!木材を利用するために植えたスギやヒノキなどの森で、人が植えて育てるので〝木の畑〟ともいわれている…
- 森の木を切りすぎると、海の魚が減ってしまう!?
- 人間が手入れをせず、自然な状態で健康を保っている森を「自然林」といいます。「自然林」は地面と木が土台になってできていて、そ…
春になると増える黄砂の影響って?
春になると車が黄色い砂でよごれているのを見たことがあるかな?
これは黄砂(こうさ)といって、ユーラシア大陸の乾燥(かんそう)・半乾燥地域で、強風によって巻き上げられた土や鉱物粒子(こうぶつりゅうし)が、偏西風(へんせいふう)に乗って飛んできたもの。近年では土地の劣化(れっか)で砂漠化(さばくか)が進み、黄砂が増えているよ。
黄砂の増加で、発生域では家畜(かちく)や農作物の被害が増大。黄砂が飛来する日本では、車や洗濯物が汚れるほか、アレルギーを引き起こすなど健康被害が問題になっています。また、黄砂は雲を作って雨を降らせたり、海のプランクトンの栄養になったりすることから、地球環境への影響も心配されています。
黄砂が発生する国では、劣化した土地を回復させるため、人や家畜の立ち入りを制限したり、各国の政府や企業(きぎょう)と協力して植林をしたりと、さまざまな取り組みをしています。私たちも、気象庁の黄砂情報を確認する、黄砂を観察するなどして、身近な問題としてとらえよう。砂漠化をもたらす過放牧を防ぐため、ウールなど動物性素材の服は、適切な土地管理のもとで作られたRWS※認証の製品やリサイクル素材を使った製品を選ぶこともおすすめだよ。
※レスポンシブル・ウール・スタンダード。羊と牧草地の福利に対処するための国際基準。
Hondaも、砂漠化が進む中国 内モンゴル地区で植林活動に取り組んでいます。
詳細はこちら
近い将来、ゴミの行き場がなくなる!?
日本で1年間に出るゴミの量は4274万トン(東京ドーム約115はい分)。1日1人あたり918gのゴミを出しているよ(令和元年度)。ゴミは、半分が再び資源として利用されたり、肥料として自然にかえされたりしますが、残り半分は燃やすなどされてから最終処分場にうめられます。
物を大量に作り、大量に使い、大量に捨てる〝使い捨て生活〟を送った結果、ゴミの量が増え、最終処分場はあと約21年でいっぱいに(平成30年度末時点)。資源として輸出してきたプラスチックゴミが、受け入れ先の国で自国の環境を守るため輸入禁止になったこともあり、日本はこのままだとゴミの行き場がなくなってしまうかもしれません。
ゴミの増加で、ゴミを燃やす際に出る二酸化炭素量も増え、地球温暖化を進めています。また、ゴミを森や川に捨てる不法投棄(ふほうとうき)も後を絶たず、森林破壊を招いています。ゴミを出さないためには、3R(スリーアール)と呼ばれる、リデュース(ゴミを減らす)・リユース(くり返し使う)・リサイクル(資源の再利用)を心がけ、〝使い捨て生活〟を改めることが大切です。とくにリデュースに力を入れ、すいとうを持参する、不用品は捨てずに人にゆずる、食べ残しをなくすなどして、ゴミの発生を減らそう。
北極圏の森林火災は地球からのSOS!?
オーストラリアやアメリカなど世界中で大規模な森林火災が発生。広大な森が焼失し、多くの生き物がぎせいになっているよ。何と北極圏(ほっきょくけん)でも火災が多発。地面に積もったススで太陽光の吸収が高まり、氷や永久凍土(えいきゅうとうど)がとけています。また、炭素の多い泥炭(でいたん)地からは大量の二酸化炭素が出て、永久凍土からはメタンが放たれるなど、温室効果ガスによる地球温暖化の進行も問題になっています。
森林火災は、落ち葉同士のまさつや落雷(らくらい)による発火でたまに起こりますが、最近は地球温暖化で森がかわき、火災が起こりやすくなっています。とくに北極圏は温暖化が進んでいるため、そのえいきょうを強く受けます。さらに、森林開発で生態系が失われていることも火災を広げています。いろいろな動植物からなる生物多様性の豊かな森は水分量が多いのに対し、プランテーション(大規模農園)のような1種類の木が等間隔(とうかんかく)に並ぶ森は、木の根が浅く、こけも生えづらいため水分量が少なく、いったん火災が起こると燃え広がりやすいからです。
森林火災を減らすには地球温暖化対策が何より重要です。私たちも改めて省エネに努めよう。例えば照明を白熱電球からLED電球に変えると年間約1/6の電力量に節電できるよ。また、豊かな森の保全も大切。適切な森林管理のもとで作られるFSC認証などの製品を選ぶようにしよう!
コオロギが世界の食料危機を救う!?
牛肉や豚肉は私たちの大事なたんぱく源。しかし近年では人口の増加と共に肉の必要量が増加。経済発展している国で肉食が増えていることもあり、世界的な食肉不足が心配されているよ。
それなら家畜(かちく)を増やせばいいと思うかもしれませんが、世界ではエサとなる大豆を育てるためアマゾンなどで多くの森林が伐採(ばっさい)され、農地に変えられ、環境破壊を招いています。また、牛のゲップにふくまれる温室効果ガスのメタンガスは、二酸化炭素の約25倍もの温室効果をもち、地球温暖化を進めてしまうため、際限なく家畜を増やすことは難しいのです。
そこで最近では、肉の代わりとなるたんぱく質食材が開発されています。例えば「昆虫食」は昆虫を加工したもので、栄養価が高く環境への負荷が少ないのがとくちょうです。とくにコオロギは飼育が簡単で成長が早く、環境への負荷も大幅に低く生産できる食材として期待されています。他にも、大豆など植物から作る「代替(だいたい)肉」や、牛などの細胞(さいぼう)を取り出し、体外で人工的にその細胞(肉)を増やして作る「培養(ばいよう)肉」などが登場しています。
私たちも今までの食事を見直し、肉食にかたよらずバランスのとれた食事を心がけよう。また、機会があれば昆虫食などを試してみてもいいですね。
猛暑が増えてセミや蚊も夏バテ気味!?
最近は35℃以上の猛暑(もうしょ)日が増え、セミや蚊(か)も夏バテ状態。なぜなら、これら昆虫(こんちゅう)には 体温調節機能がなく、気温のえいきょうを受けやすいからです。また、昆虫の数も減っていて、とくにカブトムシやハチは、ほ乳類の8倍もの速さで減少。主な原因は森林はかいなどですが、地球温暖化も関係しているといわれています。一方で、環境への適応力が高いイエダニやゴキブリは増えているそう。
猛暑日は、今後も地球温暖化の進行と共に増え続けると予測されています。すると、南方の昆虫が北方に移動し、元々北方にいた昆虫の暮らしをおびやかしたり、デング熱をもたらすヒトスジシマカのように、ウイルスを運ぶ昆虫が感染を広げたりするおそれがあります。また、春から夏にかけて気温が上がると害虫が大量発生し、農作物や人工林に大きなひがいをあたえる可能性もあるのです。
猛暑日を減らすには、地球温暖化を防ぐことが大事。冷房(れいぼう)時の室温は28℃を目安に する、シャワーは不必要に流しっぱなしにしないなど、夏も省エネを心がけよう。一人ひとりの行動が、私たち人間だけでなく昆虫を守ることにもつながるよ。
便利な食生活が地球の負担になっている!?
出典:家庭生活のライフサイクルエネルギー : 生活資源のライフサイクルエネルギーに関する調査
みんなは「旬産旬消」(しゅんさんしゅんしょう)って知ってる?
旬産旬消とは、地元でとれた旬(=最も多くとれる時期)のものを旬の時期に食べること。つまり、地元でとれたものを地元で食べる「地産地消」に旬の条件を加えたものです。ほかに、地元でとれたものを地元に伝わる食べ方で味わう「土産土法」という言葉もあるよ。どの言葉も地元の食べものをすすめています。
地元でとれたものを地元で食べれば、遠くまで食べものを運ぶ必要がなくなり、輸送による二酸化炭素が減って地球温暖化を防ぐことにつながります。また、日本は野菜の約20%、果物の約60%を輸入しているけれど、国産のものを食べて輸入を減らせば、海外からの輸送による二酸化炭素も減らせます。さらに、旬のものは太陽のエネルギーを利用して作るので、省エネにもなります。
たとえば夏なら、トマトやきゅうり、ピーマンなどが旬。旬のものはおいしく、栄養価が高く、値段も安いので、積極的に食べたいもの。地元の農産物は、農協の直売所や道の駅などで手に入るので、旬産旬消を心がけよう。最近はスーパーでも地元の農産物を置いているところが増えているよ。学校の給食でも地元の農産物を多く取り入れているので、こんだて表をチェックしてみてね。
ヒートアイランド現象で都市の桜に異変が…!?
2021年の東京の桜の開花日は3月14日。1960年代までは4月に開花していたけど、近年はヒートアイランド現象や地球温暖化のえいきょうで開花時期が早まっているよ。ヒートアイランド現象とは都市の気温が周辺部よりも上がる現象のこと。東京の気温はこの100年で3℃も上がっています。気温が上がると熱中症(ねっちゅうしょう)が増加する他、大雨が増えたり、病原体をもつ生物が北上したりする心配も。また、エアコンによる電力消費で二酸化炭素が増え、地球温暖化も進みます。
植物は水をためこみ、気温が上がると水を蒸発させ、地表や大気の熱をうばって気温を下げます。しかし、都市は植物が少ないため、熱がこもったままの状態に。加えて、建物だらけの都市は風通しが悪いこと、都市に多いコンクリートの建物やアスファルトの道路は熱をためやすいこと、人間の活動による気温の上昇もヒートアイランド現象を招く原因となっています。
ヒートアイランド現象を防ぐには緑を増やす「緑化」が効果的。東京都では広い土地に建物を建てる場合、一部に植物を植える決まりにしています。また、学校の校庭を芝生(しばふ)にする取り組みもしているよ。私たちも植物を育て、地域の緑を増やそう!
便利な生活が生物多様性をこわしている!?
地球には豊かな生物多様性(いろいろな生物が関わり合って生きていること)がありますが、近年ではそれが失われているよ。その中でも、生物多様性が特に豊かな場所にもかかわらず7割以上自然が減少してしまった地域を、警告の意味をこめて『生物多様性ホットスポット』と呼んでいます。2020年までに世界で36カ所が選定されていて、その中には何と日本列島も。これ以上生物多様性を減らさないためには、この地域を守ることが重要といわれています。
生物多様性が減った原因は、森林ばっ採や気候変動、象牙(ぞうげ)やペット販売で問題となっている商業目的での野生動物の過度な利用など。他には、人と物の往来が活発になり、日本では積み荷にヒアリがまぎれたり、ペットとしてインコが輸入されたりと、外来種が持ちこまれる機会が増えたこともえいきょうしています。
これらを引き起こしているのは、元を正すと人間です。物をたくさん作ってたくさん使い、たくさん捨てる生活を改めないと生物は減り続け、私たちも食料やきれいな水などの自然のめぐみを受けられなくなるでしょう。生物多様性を守るためにも、使い捨てをやめる、長持ちする物を選ぶなどして、物を大事に使おう。最近は物を作る会社も、生産するだけでなくリサイクルやリユース(再使用)にも力を入れているよ。
アマゾンの熱帯雨林が大豆畑に変わっていく!?
世界では、全人口が必要な量の2倍もの食料を生産していますが、何とその1/3の年間13億トンが捨てられているよ!
そして、食料を生産するため森がこわされ、農地に変わっています。とくに、肉の消費量は50年前の5倍に増え、家ちくのエサ「大豆ミール」の原料である大豆を生産するための農地拡大が活発に。ブラジルではアマゾンの熱帯雨林が大豆畑に変わり、日本列島より大きい面積(42万ヘクタール)の森林がばっ採されました。食料の多くを輸入する日本にとっても他人事ではない問題です。
しかし、農業自体が悪いわけではなく、タイのカレン族のように、ばっ採→農業→森にもどすということをくり返し、農地を持続的に使っている地域もあります。日本も里山(人が手入れをした森や林)では人と自然が共に暮らしています。そこで今、こうした里山をお手本にし、人の手が入った自然環境の持続的利用を世界に広めていく取り組み「satoyamaイニシアティブ」が、環境省を中心にして行われています。
私たち消費者も、食料は必要な分だけ買う、外食では料理をたのみすぎないなど、余分な消費はひかえ、食料をむだにしない努力をしよう。適切な消費が世界の森を守ることにつながります。
おいしいウナギが絶めつのピンチ…!?
私たちが食べているニホンウナギは、日本から南にはるばる泳いで、グアムがあるマリアナ諸島沖で産卵するよ。卵はふ化すると海流に乗って成長し、小指ほどのシラスウナギという子どもの状態で日本にもどり、川を上って大人のウナギになります。シラスウナギをあみですくって人工の池で育てたのが、よくお店に出回る養しょくのウナギ。近年ではこのシラスウナギや、川や海でとれる大人のウナギ が激減していて、ニホンウナギの絶めつが心配されています。
主な原因はとりすぎ。また最近では、特に水害を防ぐために作られる、川をコンクリートで固めた護岸や せき(水量を調節するために水をせき止める仕切り)などのえいきょうとも言われています。ウナギは砂利や落ち葉の中にひそんでえものをねらいますが、コンクリートではかくれる場所がありません。さらに、せきはウナギが川を上るのをさまたげるなど、日本の川はウナギにとってどんどん住みづらくなっているのです。
ただ最近では、こういった人工物にたよらず、川に段差を作り、水の流れをおだやかにして水害を防ぐなど、防災と環境の両方を考えた川作りが始まっています。みんなもこの取り組みを応えんすると共に、ゴミを捨てない、見つけたら拾うようにして、生き物が住みやすい川にしよう!
地球の砂ばく化で森や湖が消えている!?
地球の陸地の約43%をしめるかんそう地域では人口が急増。その結果、この地域の限られた自然をめぐり、家ちくが草を食べつくしたり、農地を使いすぎたりして(過耕作)、土地があれる「砂ばく化」が進んでいるよ。温暖化による気候変動で雨が減り、土地が回復しづらくなっていることも原因のひとつです。特にアフリカとアジアが深刻で、例えばアフリカのチャド湖はかつて世界第6位の面積でしたが、今では干からびて1/5の大きさになってしまいました。
砂ばく化で土地があれると農作物などの生産量が減って食べるものがなくなり、多くの人が貧しさに苦しみます。また、新たな土地を求めて人が移動し、元からいた人と争いを起こすほか、土地の使いすぎをくり返して砂ばく化を広げます。これは食料の半分近くをかんそう地域の生産にたよる世界の人々にとっても大問題です。
日本では、砂ばく化が進む国に土地を持続的に利用するための技術を提供しています。私たちも買い物では、土地を休ませて過耕作を防ぐなど、正しい管理のもとで作られた印である、国際フェアトレード認証ラベルやFSCラベルのついた製品を選ぶようにしよう!
遺伝子を知って自然を守ろう!
私たち人間はもちろん、すべての生き物は細ぼうの中に「遺伝子」をもっているよ。 遺伝子は生き物の設計図のようなもので、進化の歴史がつまっています。
生き物の進化は、暮らしている環境などのえいきょうを受け、生き残るために適応しながら、長い時間をかけて進んでいきます。また、同じ種類の生き物でも、住む地域が異なり、おたがいの交流がなければ、それぞれの進化の道を歩み、将来は別々の種類になる可能性があります。
たとえば同じゲンジボタルでも住む地域が異なると別の進化をたどります。そのため、他の地域から持ってきたゲンジボタルを川に放すと、もとからいるゲンジボタルと子どもをつくることで、「かく乱」といって遺伝子が混ざり合って変化し、もとの遺伝子は失われてしまうかもしれません。
地域に暮らす生き物の生活を守り、自然な進化をさまたげないためにも、異なる地域の生き物はむやみに「放さない」「植えない」ようにしよう。
ポリネーターが減ると食料不足になる!?
みんなは「ポリネーター」って知ってる?植物の花粉を運んで受粉させるハチやチョウ、小動物や鳥などのことで、植物の90%がポリネーターによる受粉にはんしょく(子孫を増やすこと)を頼っているよ。でも今、これらの生き物は農薬や森林破かい、異常気象などで激減。日本ではミツバチが約30年前と比べて26%も減り、世界的にもハチやチョウが絶めつ寸前になっています。
私たちの食べ物の2/3以上は、ポリネーターの活やくによって支えられています。ポリネーターが減ると、野菜や果物、ナッツの生産が難しくなって価格が上がり、気軽に食べられなくなるでしょう。実際、中国ではポリネーターが不足し、人の手で受粉したり、ドローンで花粉をまいたりするのでお金や労力がかかり、農作物の価格が上がっています。
ヨーロッパをはじめ世界ではポリネーターに害のある農薬を減らそうという動きがあり、日本でも2020年4月から農薬の安全基準が厳しくなります。私たちも農薬や化学肥料を使わない有機野菜を買うなどしてポリネーターを守ろう!
私たちの生活が熱帯林をこわしている!?
地球の赤道付近にある熱帯林。この森林では生物の多様性が保たれ、また地球から出る二酸化炭素を酸素に変える重要な役割を果たしているよ。ところが、熱帯林はプランテーション(農地への転用)や過度なばっ採、非伝統的な焼き畑農業、森林火災などで、ここ20年減り続けています。
このうちプランテーションには、実は私たちの生活も大きく関わっています。プランテーションで多くさいばいされるアブラヤシはパーム油の原料。パーム油は安くて使い勝手がよいため、ポテトチップスやパンなどの食品から石けんや洗ざいなどの製品まで、身のまわりのさまざまなものに使われているのです。
パーム油は他の油より効率的に生産できますが、利益を上げるためにむやみに熱帯林を農地にしてしまうことなどが問題になっています。そこで今、農地を適切に管理し、パーム油を効率的に生産する取り組みが始められ、そのあかしであるRSPO認証のパーム油への切りかえが進んでいます。私たちもRSPOマークのついた商品を選ぶようにし、熱帯林を守る活動に参加しよう!
里山があれると、どんな問題があるの?
みんなは〝里山〟って知ってる?
里山は、田んぼや畑、たきぎや炭に活用する森など、数百年もの間、人が暮らしに利用するために手を入れて保たれてきた環境。例えば田んぼの水がカエルの産卵場所になるなど、田畑を耕し、木を切ったりといった、人間の活動が結果的に生き物の生育環境を整えているよ。でも今は燃料や食料、衣類、道具を作るために原油を使うようになり、里山での生産が縮小。里山周辺地域の高れい化や人口減少もあって里山を利用する人が減り、あれている場所が増えています。
里山があれると多くの生き物は暮らしにくくなり、絶めつのピンチに。たとえばノウサギは1年に平均で5.7%、チョウ類のオオムラサキは16.1%も数が減っているそう。それから、山と街の境目にあった里山が消えることで野生動物が街に出ぼつすることが増え、人が危険な目にあったり、農作物のひ害がでたりしています。また、里山で育まれてきた行事や芸能、道具作りのちえなどの伝統文化も失われつつあります。
このような問題の重大性に気づいた人たちによって、里山を守る活動がスタート。里山を積極的に利用したり、生き物の生態を調査したりと、国や市民、会社、さまざまな立場の人が協力して取り組んでいるよ。
シカが森を枯らしてしまう!?
世界で野生動物による森林ひ害が起きているけど、日本ではその約3/4がシカによるもの!
シカが植物を食べつくし、森が元に戻らないくらい破かいされているのです。
シカによる森林ひ害が増えているのは次のような原因から。
・人間が昔ほどシカ肉を食べなくなった。
・天敵のオオカミが絶めつした。
・森の積雪量が減り、寒さで死ぬシカが減少。また雪で行けなかった場所にも行けるようになって植物を食べられるようになり、生息はん囲が広がった。
結果、もともと何でも食べるため、うえ死にしづらく、2さいから子鹿が産めてはんしょく力の強いシカが、ばく発的に増えてしまったのです。そして、森はシカによって植物を食べつくされ、新しい木を育む力を失い、土がむきだしになってあれ果て、森に住む動植物も極たんに限られてしまいました。
そこで、シカによる森林ひ害がある森では、シカに食べられたくない植物はさくで囲って守ったり、シカの数を減らす試みを行ったりしています。まだひ害のない森では、シカが増えすぎないように生息数を管理する取り組みが始まっているよ。
どうして人工林には世話が必要なの?
写真はイメージです
日本の森は何と半分が人工林!
木材を利用するために植えたスギやヒノキなどの森で、人が植えて育てるので〝木の畑〟ともいわれているよ。戦後、自然な森(自然林)を切り開いてつくったのだけど、まもなく外国の木が安く手に入るようになったので、多くの人工林が放置されてしまったのです。
人工林は人が世話をしないと、ひょろひょろの木がびっしり生えてしまいます。そうすると地面まで日光が届かないので、ほかの植物が育ちません。そういう森では生き物の種類が少なくなり、また木が密集して根が広がらないので雨をためられず、土砂くずれを起こしやすくなります。
一方、外国から安い木材を大量に買うことで、外国の森をこわしている可能性もあります。
人工林を健康な森にするには、人が適切に管理することが大切です。私たちも、木でできたものを大切に使ったり、日本の木で作られたものを選んだりしてお手伝いしよう!
森の木を切りすぎると、海の魚が減ってしまう!?
人が手入れをしないで自然なまま健康を保っている森を「自然林」といいます。
自然林は地面と木が土台になってできていて、たくさんの生き物がくらしています。落ち葉は土の中の生き物の力で土に変わり、土の栄養分は川に乗って海に流れ、海藻(かいそう)や貝、プランクトンなど海の生態系を支える生き物の栄養になります。また、大雨が降っても落ち葉や草がクッションになって土がけずられるのをおさえ、土の中は木の根がしっかり張られているためくずれにくく、水もためられます。
だから、もし自然林の木を切りすぎてしまうと、その森に住む生き物がくらせなくなり、海の生き物までも減ってしまうことにつながります。また、木が減ると土が流れやすくなり、土砂くずれなども発生しやすくなるでしょう。
森や海の生き物にとっても、人間にとっても、
自然林の木は切らずにそのままにしておくのが一番なのです。