迷って、もがいて、乗り越えて
~仕事と育児の両立に奮闘する従業員座談会~

少子高齢化や共働き世帯の増加を背景に、仕事と家庭を両立できるよう環境を整備する「両立支援」が求められています。
Hondaでは、制度などの環境面の充実を図るだけでなく、下の図のように、キャリア軸をベースとした育児期支援の全体像を描き、入社、妊娠・出産前など各フェーズで継続的な支援を行っています。
それぞれの取り組みを通じ、従業員一人ひとりが自分らしいライフスタイルを見つけ自分自身が望むキャリアを築けるような体制の盤石化を図っています。

八木 彰一、小栁 恵子、知花 修

CROSS TALK

Hondaの従業員は実際どのように仕事と家庭を両立し、キャリアを構築しているのでしょうか。さまざまな葛藤や苦難がある中、仕事と育児の両立に奮闘する従業員で座談会を行いました。

八木 彰一

八木 彰一Shoichi Yagi

四輪生産本部 生産統括部 鈴鹿製作所 エンジン工場 エンジン管理課

  • 入社

    2008年

  • 家族

    妻と子供3人(7歳、5歳、2歳)

  • 育休

    第3子:2023年3月~5月(約1カ月)/2023年9月~2024年1月(約3カ月) ※2回分割取得

  • 近況

    当初は、育休取得に抵抗があったが、第3子で初めて育休を取得。その後、第2子の長期入院で、育休を再び取得。家事育児スキルに加え、視点や人生の優先順位に変化が。

小栁 恵子

小栁 恵子Keiko Koyanagi

コーポレート管理本部 デジタル統括部 IT戦略企画部 人材開発課

  • 入社

    2005年

  • 家族

    夫と子供3人(11歳、7歳、2歳)

  • 育休

    第1子:2013年7月~2014年4月(約10カ月)、第2子:2017年9月~2018年11月(約1年2カ月)、第3子:2022年2月~2023年4月(約1年2カ月)

  • 近況

    3度の産休育休からの復帰を経験し、目指すキャリアの実現に向け奮闘中。第3子から、夫との育児家事協力体制が整い始め、今では夫婦でバランスよく分担できている。

知花 修

知花 修Osamu Chibana

コーポレート管理本部 人事統括部 総務部 総務一課

  • 入社

    2010年

  • 家族

    妻と子供2人(6歳、4歳)

  • 育休

    第2子: 2020年6月~8月(約1カ月)

  • 近況

    第2子で初めて育休を取得。第1子の時は育児家事のハードさに困惑していたが、現在は家事力・育児力がワンオペでもまわせるレベルにまでアップ。

1 直面した育児はとまどいの連続

——育児に直面して、キャリアに対する考え方に変化はありましたか?

八木 彰一

私は第1子と第2子のときは、育児を妻に任せ、育休を取るという発想がありませんでした。第3子が生まれるとなり、さすがに育休を取得せざるを得ない状況になり、どのように仕事と育児を両立するか、難しい判断を迫られました。

当時は、周囲と自分を比較し「キャリアが遅れてしまうのでは」と不安がありました。私は2回目の育休を取ったときにようやく、妻ともお互いの仕事のことやこれからの生き方について話し合い、家族の中での自分の役割が見えてきました。育休を取得する前と後で生活がガラッと変わり、キャリアの優先順位に変化がありましたね。

知花 修

私の場合は、結婚当初から妻とは仕事も育児もフェアにやろうと話していたのですが、第1子のときは育休を取っていませんでした。いざ生まれてみると、朝も昼も夜もない、3時間おきに起きるという新生児の育児がこんなに大変なのかと、金槌で頭を叩かれるような感覚でした。夜遅くまで仕事をして疲れて帰宅すると、妻が泣きながら泣いている子供を抱っこしていて・・・。私が働いている間も妻が、独りで責任を負っている現実に気付かされました。「名もなき家事・育児」がこんなにもあるのかということが身にしみてわかり、意識が変わりました

当時は多忙な部署にいて、このままでは生活が破綻すると考え、どのように仕事と育児を両立すべきか思い悩んでいました。ちょうどその頃、チャレンジ公募で以前から挑戦したかった業務を見つけ、働き方の見直しもできそうな部署だったため、思い切って応募し異動が叶いました。その後、第2子の時は育休を取得して、働き方も改善され、今では妻と同等に育児も仕事も分担しています

小栁 恵子

私は入社時から結婚後もずっと働き続けたいと思っていたので、夫にも結婚前からそのことは伝えていました。チーフ試験を受けるまでは仕事を優先して夫婦ふたりの時間を楽しみたいと考えていたので、出産のタイミングも含め、人生設計は細かく組み立てていた方だと思います。

育休でブランクができることに不安を感じるのもよくわかります。でも取ってしまえばそこからまたスタートするしかないので、過去より未来に目を向け、自分が何をできるかを大事にした方がいいと思っています。私はキャリア研修をきっかけに、仕事だけをキャリアと捉えるのではなくて、人生全体をトータルでキャリアと捉える思考に変わっていきました。だから、育休を取ったことでキャリアが遅れたとはまったく思っていなくて、ブランクも含めて自分のキャリアだという認識でいます。

2 育休取得に向けて、職場巻き込み大作戦

——育休を取得するとき、職場でどんなことを意識していましたか?

八木 彰一

育休を初めて取るにあたっては、上司に半年前に伝えていました。仕事で関わるメンバーには自分から積極的に育休を話題に出すようにして、いつから自分が不在になるのかを意識的に周知し、ポジティブに職場を巻き込むように努めました。当時、三交替の職場のチームリーダーでしたが、ジョブローテーションのタイミングで後任に引き継ぎ、育休復帰後は別の業務で経験を積むことができました。

小栁 恵子

周知するって大事なことですよね。私は育休を取得する以前に、日頃から「子供も欲しいしキャリアも諦めたくない」と積極的に上司へ意思表示をしていました。第3子の産休前には「戻ってきたら全力で頑張るので応援してください!」と伝え、復帰後にも改めて上司に「次のステップを目指しています」と伝えてきました。伝えるときはドキドキしますが、きちんと自分の意志を伝えたことはとても良かったと今は思います。

知花 修

私の場合は、第1子のときと同じ失敗は繰り返したくない、父親として、新生児期から、責任と使命感を持って育児をしたいという強い想いがあり、当時の上司に勇気を出して、自分の状況や気持ちを率直に伝えました。上司も同僚も理解を示してくれて、今でも職場の人たちには感謝の気持ちがあります。

3 会社の制度、どう活用する?

——子供の体調不良など予測不能なトラブルもあると思いますが、どのように工夫して乗り越えていますか?

小栁 恵子

第1子や第2子の頃は、ファミリーサポートを利用したり、それぞれの両親を頼ったり、いろいろな手を借りていましたね。振り返れば、常に時間がなくて焦っていた気がします。リモートワークができるようになってから、だいぶ予定が調整しやすくなりました。10年前と比べると社内の制度も充実してきて、短時間勤務もありますし、拠点によっては常設託児所祝日稼働日の一時保育もあるので、今は本当に子育てがしやすい環境だと思います。

八木 彰一

私はリモートでできる仕事ではない分、1時間単位で取れる看護休暇はとても助かっています。1時間早く帰れるだけでも、家のこと、子供のことを妻と分担できるので。実際に育休を取得して気付いたのが、自分が抜けるときも、事前に報連相や引き継ぎをきちんとしていれば、仕事は回るということです。困りごとが発生したとき、自分の中で完結して苦しまずに、上司や同僚とコミュニケーションを取ることが大事だと感じています。

第2子の予期せぬ長期入院で二回目の育休を取ったときは十分な準備期間がなく、急な休みで職場に迷惑をかけたことがありました。その時は半休でしのいでいた事情もあり、自分から効率的な仕事の進め方を提案し、短い時間で業務を終えられるよう工夫しましたね。

知花 修

子供が1~3歳の頃は、私もリモートワークや看護休暇でしのいでいました。ただ、業務上、お互いどうしても出社しなければならない場合は、その都度調整して、家族と協力しながら乗り切っています

ファミリー・サポート・センター事業(通称ファミサポ)

ファミリー・サポート・センター事業は、子供の送迎や預かりなど、子育ての「援助を受けたい人(依頼会員)」と「援助を行いたい人(提供会員)」が、地域で相互援助を行う仕組み。センターは区市町村または区市町村から委託等を受けた法人が運営し、会員同士のマッチングなどを実施。依頼できる内容は、保育施設、学童クラブ、習い事等への子供の送迎、子供の短時間での預かりがある。利用可能なサービスは、区市町村により異なる。

4 トライアンドエラー、家族との話し合いがカギを握る

——家事育児を分担できるようになるまで、パートナーとどのようにすり合わせましたか?

八木 彰一

第1子、第2子のときは妻に任せてばかりだったので、最低限スケジュールは共有してほしいと言われ、それ以来、アプリで予定を共有して把握するようにしています。基本スタイルは、事前連絡、スケジュール共有、家事分担の3つ。自分では家事をそこそこやっていた方だと思っていたのですが、妻に話を聞くと、私がやっていた家事の量は、実際やるべき量の2分の1程度だったそうです…。

ほかにも、子供を寝かす時間について、私は21時くらいに寝ればいいと思っていましたが、妻は20時には布団に入って絵本を読んで寝かしたいと思っていたようで…そういう細かい意識のずれが多々あるので、お互いの意識をすり合わせるのには時間がかかります。衝突を繰り返しながら、トライアンドエラーでやってきました。予定を共有するだけではダメで、その背景にある気持ちの部分も共有することが大事なんだと気づきましたね。

知花 修

私は妻に怒られながら教えてもらい、ひとつひとつ家事と育児を覚えていきました不満な点があれば正直に伝えて、お互い納得がいくまで話し合うようにしてきました。今は妻が2〜3日いなくても、子供と過ごせるくらいになりました。家のことをちゃんとできるようになると、男性でも家の中で立場が保てるんですよ。

小栁 恵子

夫はもともと仕事人間だったのですが、第2子が生まれた後、家業を継ぐために会社員を辞めることになりました。夫の働く時間がフレキシブルになったことは大きな転機になり、夫も家事育児に参加するようになりました。第1子と第2子の時はワンオペ感がありましたが、第3子が誕生してからは夫との家事と育児の分担バランスが取れるようになり、サポートがなくても成り立つようになりました。

うちは夫と私で家事を担当する日を分けるスタイルで、相手が家事担当の日に、それぞれがうまく息抜きするようにしています。やってほしいなと思うことは、タイミングを見計らって少しずつ伝えるようにしています。ときには子供に伝達役になってもらうことも(笑)。うまく伝えればだんだん板についてくるので、その繰り返しで分担のバランスが良くなっているように感じますね。

5 育児とキャリアの両立、私の最適解は?

——仕事と育児の両立にあたり、現時点での最適解はありますか?

小栁 恵子

私はまだ最適解に行き着いてなくて、道半ばでゴールが見えてない…というのが正直な答えです。子供が小学校に上がれば環境も変わりますし、受験が始まればまた違う課題が見えてきます。そのときそのときでバランスが取れればいいなと思っています何が最適というよりかは、前より良くなっていればOKくらいのスタンスでいますね

八木 彰一

2回の育休で妻とじっくり話す時間ができ、自分の人生をどう生きたいかを話し合い、マインドや優先順位が変わりました。もともと仕事の優先順位は高く、キャリアを大切にしたい気持ちに変わりはないですが、家族や子供のウエイトは重くなってきています。現時点では、家族、特に子供、そして仕事、自分みたいな優先順位です。何の為に仕事をしているのかを考えたときに今は家族が一番に来ます。少し前は仕事が一番だったと思います。考えるタイミングで変わると思いますが、なんとなく今の優先順位で動いています。

知花 修

家族ができて、子供ができて、家族で過ごす時間がとても価値のあるものだと理解しました。そうするとやっぱり仕事だけじゃなくて、「家庭」「生活」のところもちゃんとうまく回せるようにしたいと思うようになりました。親として成長しなきゃいけないと意識も変わりました。ただ、私も最適解はまだわからないです。それでも、妻と毎日の生活、育児についてお互いの不満をゼロにするためのコミュニケーションと努力を続けることが大切で、子供との日々の接し方も工夫しています。これによりQOL(クオリティ・オブ・ライフ)は向上し、仕事にも良いリズムで、好循環が生まれていると感じます

——育児はキャリアにどのようにプラスになっていると感じていますか?

知花 修

子供と触れ合う時間は自分の人生に色を添えてくれます。人生の質が上がり、毎日が楽しいです。

小栁 恵子

やはり見られている目が増えれば増えるほど頑張ろうって思います。「ママ、カッコいい」と言われたいという思いでやっているところは往々にあります。応援してくれるという安心感とともに、子供といることで仕事が頑張れるというのはすごくありますね。

八木 彰一

自分の家族がいかに笑顔で暮らせるかを想像すると、より仕事を頑張ろうと思いますし、キャリアアップに繋がっていると感じます。育児が仕事の制約になることも時にはありますが、原動力になっていること部分が大きいですね。

6 出産、育児を迎える方へのメッセージ

——育児中、もしくはこれから育児を迎える方たちに、どんなことを伝えたいですか?

知花 修

家事や育児にどれだけ父親と母親が関わるかということは、家庭によって事情が異なるので正解はひとつではありませんが、パートナーとコミュニケーションをしっかり取り、役割分担し、お互いが納得できる生活スタイルを構築することが大切だと思います。

小栁 恵子

仕事と育児の両立は、スポットで捉えると問題は山積みかもしれませんが、長い目でみたら、人生の本当に一部分でしかありません。子供の存在が仕事を頑張る原動力にもなるし、生きる上での心の許容度も上がり、パートナーとの関係性も深まります。焦らず一つ一つ乗り越えてください。会社の制度を上手に活用しながら、自分にあった環境を作って、人生を歩んでほしいです。

八木 彰一

まず、育児は100%を目指さなくて大丈夫です!初めての育児で悩むことも多く、周りと比較してナーバスな気持ちになることもあるかもしれません。人は人、自分は自分。仕事や家庭の状況はそれぞれです。まず自分の“現場”、自分の周囲、自分の子供、パートナーをよく見る。そこからが本当のスタートだと思います。

   Q & A

Q家事育児のお役立ちグッズやアプリがあれば教えてください

八木 彰一

予定共有アプリ「TimeTree」を使っています。
家族間のスケジュール共有が楽にできました。無料版を使っていますが、十分です。子供の習い事、通院、土曜出勤など、これ見ながら妻と話しています。

小栁 恵子

知母時 CHIBOJI(鼻水吸引器)は本当に役立ちました。
鼻水をとても簡単に、そしてとても良く取れます。3人目で知り、1人目から欲しかったです。

知花 修

レシピ本でオススメなのが、『虚無レシピ』(リュウジ 著)、『リュウジ式至高のレシピ2 人生でいちばん美味しい!基本の料理100』(リュウジ 著)です。最小限の手間・時間で最大限おいしい料理をたくさん作れるように工夫しています。

Q家事が苦手です。どうやったら苦手意識がなくなりますか?

八木 彰一

おかゆやご飯だけは自分で作って、あとはレトルトや冷凍食品をフル活用していました。最初はおかゆもレトルトでしたね。

知花 修

私は今では料理を毎日担当していますが、最初は加減がわかっておらず、料理研究家のレシピを見て作っていました。これは毎日できないと気づき、パッと作れる時短レシピを参考になりました。手を抜くところは抜くようになりました。

Q仕事に育児に…と忙しいイメージですが、どのようにリフレッシュし、また、時間を捻出していますか?

小栁 恵子

三男が小さい時期(復職前)は、地域の一時預かりを活用して自分の時間を作っていました。現在はお酒が好きなので、キッチンで飲みながらの夕食作りがストレス発散になっています。家族からのクレームもありません(笑)。また、子供が宿題をやっているときに『ママも勉強しよう!』と自己研鑽の時間にあてています。もともと朝方で、5時に起きて自分の時間を作り、隙間時間にリフレッシュする工夫をしています。ネイルを子供と一緒に選ぶのも楽しいです。


一時預かり事業

一時預かり事業は、区市町村が実施する子育て支援事業の一つ。保護者の習い事、ショッピングのほか、育児疲れで子供から離れたいときなど、理由を問わず利用できる。ただし、利用理由を要件とする区市町村や、区市町村によっては事業を実施していない場合がある。

MESSAGE

仕事と育児の両立に不安を感じている皆さまへ

「迷って、もがいて、乗り越えて ~仕事と育児の両立に奮闘する従業員座談会~」はいかがでしたか?
キャリアとは人生そのもので、仕事と生活両方のサイクルがうまく循環することで、働きがいが高まります。育児期は時間の制約ができ、働き方が変わり、思い通りに事が進まず、キャリアが一進一退しているように感じるかもしれません。
キャリアの主人公は、あなたご自身です。パートナーや職場との対話を通じ、自身のキャリアについてとことん考え、制度を上手に活用しながら、自分らしいキャリアを実現しましょう。

キャリア・多様性推進室より

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