「社会にポジティブな影響を与える仕事がしたい」と話す中尾。2019年12月にHondaを退職し、スタートアップで事業運営などに従事した後、2024年に再入社しました。これまでの経験を活かして現在はブランディングに携わるなかで感じる仕事のやりがい、そして再入社したことで見えたHondaの魅力を聞きました。

社会に影響を与えられる仕事がしたい。人を大事にするものづくりに惹かれてHondaへ

学生時代はデザイン工学部に通っていた中尾。デザインシンキングをベースに、人間工学やユーザビリティの知識を活用し、ユーザーにとって使いやすいモノ・システム作りを行う人間中心設計（Human-Centered Design）を学んでいました。

中尾「私が所属していたのは、広く社会課題の解決をテーマにした研究室。たとえば、公衆電話の新しいあり方を提示したり、日本の伝統文化を後世に残していく仕組みを考えたり。

そのなかで私が制作したのは、一枚の金属プレートからパーツを組み上げて金属の昆虫標本を創るプロダクト。これは、組み立てる工程を楽しみながら昆虫の構造の緻密さ・美しさを理解してもらい、環境問題に意識を向けてもらうことを目的としていました」

この経験から、社会課題を解決できるような仕事に就きたいと就職活動をしていた中尾。日本において大きな産業である自動車業界に興味を持ちます。

中尾「完成車メーカーであれば、社会や人びとの暮らしに広く影響を与えられる仕事ができるのではないかと考えました。私自身、昔からクルマに乗るのが好きで、愛犬を連れて家族でいろいろな所に出かけた経験があります。その楽しい記憶と、社会課題を解決したいという想いが交わった時に、完成車メーカーという選択肢が出てきたのです」

なかでもHondaを選んだ理由は、教授の勧めで参加したインターンシップでの体験でした。

中尾「商品コンセプトやターゲットユーザーを自分で設定した上で、その人にとって使いやすいクルマを提案するという内容でした。印象的だったのは、かっこいいデザインのクルマを提案すればいいわけではなく、生活での困りごとを改善したり、社会課題解決の視点を入れてみたりすることが求められたこと。人を大事にしたアプローチの仕方は、まさに私のやりたいことでした。

その時に接した社員の方々がとても魅力的で、一緒に働きたいと思ったことも決め手です」

2015年に入社後は、四輪の研究開発を行う部署でパッケージレイアウトデザインを担当したほか、自動運転車の将来的な体験価値の研究、EV（電気自動車）の車内空間の企画などにも携わります。

中尾「パッケージレイアウトデザインは、人の使い勝手や体験価値視点でクルマの基本骨格を考える仕事。どんなドライブ体験をしてほしいかという目線で、人間の座る位置や車内空間・視界・荷室の広さなどを考えます。

誰にどんな価値を届けたいかでできあがるクルマが大きく変わるため、『コンセプトは何か』を必ず問われました。でも、それを形にしていくのがおもしろかったですね」

動物を取り巻く社会課題への想いが再燃。理念に共感し、スタートアップへ転職

入社の決め手にもなった、人を尊重するHondaの文化。それは仕事をする上でも実感することが多かったと言います。

中尾「とくに印象的だったのは、積極的な発言が歓迎されること。役職や立場に関係なく、自分の意思をしっかりと持って発言すれば、周りが真摯に聞いてくれるんです。チャレンジを受け入れる文化は、Hondaらしさだと思いました」

5年ほど経験を積んだ2020年。中尾はペット系のサービスを展開するスタートアップへ転職します。きっかけは、幼い頃から深い愛情を持っている動物と、動物を取り巻く社会課題への関心でした。

中尾「昔から犬が好きで、犬や猫の殺処分問題にも心を痛めていました。社会人になり数年が経ち、自分の責任で愛犬を迎えたことで、再び自分のなかで関心が高まってきたんです。そんな時、この企業の存在を知り、『人と動物がともに生きる社会をつくる』という理念に強く共感しました。

当時担当していた仕事はすぐに量産化が進むものではなかったこともあり、『挑戦も失敗もしやすい20代のうちに、社会に何かアウトプットできる仕事がしたい』と転職を決めました」

入社後は、主に保護犬・保護猫のマッチングサイトの運営を担当。Webサイトのデザインをはじめ、掲載する保護団体の審査や登録基準の策定、利用者間のトラブル対応、SNS運用など、事業に関わる業務は何でも行ったと振り返ります。

中尾「保護団体と犬猫を迎えたい方の双方が安心して利用できるようUI/UXを改善したり、より信頼性の高いプラットフォームをめざして利用者の審査基準や利用ルールを見直したり。啓発活動にも力を入れていたので、SNSでの発信や協力企業とのタイアップ企画の推進も行っていました。

SNSの運営ではフォロワー数を1年で20倍に増やすことができ、結果的に譲渡数の増加にもつながりました。なかなかご縁のない子に家族が見つかった時や、保護団体の方から直接感謝の言葉をいただいた時は、何よりもうれしかったです」

一方で、ペットフードのD2Cサービス運営においては、ECサイトや広告のランディングページのデザイン業務なども担当。流入数や売上率などの数値を見ながら導線設計やデザインの改善を行う作業は非常にやりがいがあったと話します。

中尾「それまでのスキルを活かすというよりは未知の挑戦ばかりでしたが、新たなキャリアを築くことができたと思っています」

再び転機が訪れたのは2023年。会社の経営状況が変わり、体制が大きく変化。中尾は仕事を通して自身の想いをかなえる難しさを感じたと言います。

中尾「ひとつのスタートアップが業界の根本的な課題解決に挑むことの厳しさを知りました。自分が感じる社会課題に貢献する方法は、仕事だけではない。個人的な支援など、別の形で関わることもできるのではないかと考えるようになりました」

ステップアップをめざして再びHondaへ。培った総合力でブランディングに挑戦

そんな折、Hondaがブランディングに関わる人材を募集しているという話を耳にします。

中尾「前職では会社のミッションに深く共感するメンバーが集まっていたからこそ、デザインや言葉選び、自分自身の言動まで、『この会社のブランドとして適切かどうか』を考える意識が浸透していました。

そういったブランディングの重要性を実感してきたなかで、さまざまな経験を経た次のステップとして、この領域に挑戦するのはおもしろそうだと感じたのです。もちろん、知っている先輩たちがいる安心感もありました」

以前の部署とは異なるため、また新しい挑戦が始まります。もちろん不安もあったと言いますが、「むしろその方がいいと思った」と話します。

中尾「経営層と距離の近い部署なので、提案や報告にもこれまで以上のスキルが求められます。正直、そこに不安はありました。

でも、Hondaを離れていた時期がある分、元の部署に戻ったり、以前と近い仕事をしたりするとなると、同期や後輩との差を感じてしまうのではないかと考えたのです。それならば、新しい環境も魅力的です」

現在は、コーポレートブランディング戦略を担う部署に所属し、ふたつのプロジェクトを担当。ひとつが、PMO（プロジェクトマネジメントオフィス）として関わっている環境領域のブランディング。

中尾「Hondaはさまざまな環境の取り組みを行っていますが、より広い層に認知・共感いただくためにはどのような発信をすべきかを検討しています。

なかでも、関係部署を巻き込みながらチームを作り、消費者にとってより身近なテーマである“リサイクル”に着目した発信施策を企画中です。たとえば、Hondaの企業活動に伴って出てくるさまざまな廃材を活用した取り組みができないかと考えています」

もうひとつは、Hondaが運営するラグビーチームのブランディング。より興行性の高いチームをめざして、デザイン面から関わることが中尾の役割です。

中尾「ブランドのコアバリュー策定や商品開発を担当しています。とくに商品開発においては、より幅広い世代に受け入れられるようなグッズの企画やデザインを行っています」

幅広い業務に携わるなかで、これまで培ってきた知見を活かせていると言います。

中尾「事業運営、SNS運用、UI/UXデザインなどを経験したことで得た総合的な力があることは、何かを発信する上で大いに活きると感じます。加えて、Hondaの文化を知っているため、何を求められているのかを感覚的に理解できますし、以前から知っている社員がたくさんいることも、仕事のしやすさにつながっていると思います」

挑戦を歓迎するHondaの文化のなか、社会にポジティブな影響を与えられる仕事を

大規模な組織とスタートアップ。どちらも経験した中尾は、それぞれのやりがいがあると話します。

中尾「前職も今も、幅広く業務を経験できる点は変わりません。スタートアップでは、自分のアイデアをすぐに経営者に提案し、その場で意思決定されるスピード感があった一方、大きな組織では承認までの過程が増えるという違いはあります。けれど、世の中への影響力が大きく、自分の関わったものを広く届けられることは魅力的です」

やりがいだけではなく、一度外部に出たからこそ感じる変化も。

中尾「スタートアップを経験したことで、『挑戦し続けなければ廃れてしまう』という危機意識が身につきました。

Hondaに戻ってきてからは、中国系の新興メーカーが存在感を増すなど、意識すべき競合企業が変化していることを感じます。Hondaのブランドがこれからも続いてほしいからこそ、業界の変化を幅広い視野で捉え、新たなブランド価値につながるような提案をしていきたいと思っています」

業界全体の変化に伴い、組織体制も柔軟に変えながら進化しているHondaですが、もちろん変わらない魅力もあると続けます。

中尾「チャレンジを歓迎する風土や、新しい提案を積極的に受け入れる姿勢は変わっていません。私自身、自主性や自律性を求められる文化が好きで、働き方も含めて自由度の高い環境が合っていると感じています」

社会課題解決への想いを胸にキャリアを歩んできた中尾。これからも、その想いは変わりません。

中尾「使命感を持って働きたいと思っています。環境領域であれば、自分たち人間だけでなく動物たちにとっても良い地球であるために貢献したいという使命感がありますし、スポーツであれば観戦を通した新しい体験価値を提供することで、人びとの“楽しい”や“わくわく”を増やしていくことに貢献したい。社会にポジティブな影響を与えられる仕事に携わっていきたいと考えています」

そして最後に、Hondaへの再入社を検討している人へ、こんなメッセージを送ります。

中尾「私自身、Hondaに戻ってみて業務の幅が想像以上に広く、可能性も大きいと気がつきました。また、Hondaは事業領域も広いため、キャリアを積みながらさまざまなチャンスが巡ってきます。

Hondaに戻るべきか、今の職種を続けるべきかと迷うこともあると思いますが、入社してからもキャリアパスを考えるチャンスがたくさんあるので、まずは飛び込んでみるのもいいと思います」

誰の幸せのために、そしてより良い社会に向かうために──使命感を胸に、これまで培ってきた総合力で、自分の可能性も広げていきます。

※ 記載内容は2025年2月時点のものです

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