Working abroad 2024/04/01
バングラデシュでキラキラ輝くHondaブランドを──“泥臭い”仕事も駐在の醍醐味
バングラデシュにある二輪の生産拠点に駐在し、生産サポートをはじめ部品の現地調達化や輸出ビジネス立ち上げなどに挑戦している名須川 開渡。新興国ならではの環境に悪戦苦闘しながらも、Hondaが輝くための土台作りに励んでいます。駐在経験で感じる仕事の醍醐味、見えてきた今後の展望とは。
名須川 開渡Kaito Nasukawa
Bangladesh Honda Private Limited
商社で建設機械の部品調達や自動車メーカーへの出向を経験し、2021年10月Hondaへキャリア入社。海外拠点で生産された二輪完成車の輸入管理、国内販売店への供給改善などに取り組んだ後、2023年7月よりバングラデシュに駐在。
経営視点を持ってビジネス拡大や外貨調達に貢献する
2023年7月からバングラデシュに駐在している名須川。現地スタッフが350名ほど働く二輪の生産工場で、生産活動に必要な金型などの輸入サポート業務や部品の現地調達化を主に担当しています。
生産領域の日本人駐在員は名須川を含めて4名。少数精鋭のため、全員一丸となって専門領域外のことにも幅広く取り組み、ビジネスを作りあげる必要があります。名須川も、そのための重要な業務を担っています。一つは、部品の現地調達化。
名須川「今、部品の多くは輸入で賄っていますが、よりお客様に満足いただける価格で提供していくには、コストを下げるためにバングラデシュ国内での現地調達化が必要です。現地のサプライヤーさんにサンプル品を作ってもらいながら、品質・コスト・供給を満足できる調達先を開拓しています」
もう一つは、生産したバイクを国外へ輸出するビジネスの立ち上げ。この背景には、Hondaのビジネス拡大はもちろん、社会貢献という側面もあります。
名須川「バングラデシュは、まだ経済や政治の状況が不安定な部分があり、外貨確保の課題があります。部品の現地調達化も、外貨を使わないための取り組みの一つですが、私たちが輸出ビジネスで外貨をしっかり稼ぐことができれば、バングラデシュ社会にも貢献できると考えています。そのための基盤作りに挑戦しています」
幅広い視野が求められるものの、現場に関わる仕事だけではなく、「経営」の視点を持ってビジネスを作りあげることができる点も、海外駐在のやりがいだと名須川は話します。
名須川「これまで、工場は“運営”するものだと思っていました。それは、従業員や必要なコストを管理しながら、どのバイクをいつ何台作るかという観点です。
しかし、事業として成り立たせるためには工場こそ“経営”の視点を持つことが必要と気づかされました。工場をどう活かすのか、ビジネスを拡大していくにはどんな施策を生産領域で講じていかなければいけないのか。そういった視点で仕事ができることは、おもしろいですね」
慣れない環境で大変な思いをすることも日常茶飯事だと話す名須川。そんな困難も含め、バングラデシュでの生活を楽しんでいます。
名須川「渋滞がひどくて通勤に4時間かかることもありますし、停電が起きてエレベーターに閉じ込められるということも。でも、週末にはローカルマーケットに食材を探しに行ったり、街を散策したり、自分なりの楽しみを見つけて気分転換しています」
自社製品に誇りと愛着を持つ姿に惹かれ、商社からメーカーへ
前職は商社に勤めていた名須川。建築機械や特装車の部品を海外調達する業務でキャリアをスタートしました。その後、自動車メーカーへ出向。中近東やアフリカ、中南米といった市場に、補修部品を供給する業務を担当します。
転職を考えるようになったのは、この出向経験がきっかけになったと振り返ります。
名須川「これまで取引先であったメーカー側の業務を経験したことで、メーカー内の動きや関係各所との連携の仕方がよく理解できました。加えて、部品お取引先様やメーカー海外拠点など幅広く担当させていただき、大変貴重な経験ができました。
再び商社に戻って補修部品ビジネスを担当していたのですが、『自身のやりたいことは商社よりもメーカー側に多いのかもしれない』と感じる気持ちが日々強くなっていました」
同時に、激務に追われる働き方も変えたいと考えていた名須川。異動希望を出してはいたものの、なかなかかなわない状況のなか、メーカーへの転職を決意します。それは、出向時代に感じたメーカーならではとも言える社員の様子に惹かれたからです。
名須川「自社製品への愛着の強さが印象的でした。商社が扱うのは他社の製品で、かつ机上の業務も多いですが、メーカーは自分たちでモノを作れる。その力はやはり大きいですよね。とくに製造開発に関わる人たちは、自分が作ったものに誇りを持っていました。
自社の製品が多くのお客様へ使われて、さまざまな形で反応が返ってくる。その実感を持てることに魅力を感じました」
特定の製品にこだわらず、幅広い事業領域を持っているメーカーで挑戦したい──その想いから次のステージに選んだ先が、Hondaでした。
名須川「Hondaは、クルマやバイクだけではなく、航空機やパワープロダクツなどさまざまな事業領域を持っています。また、これまで海外を相手に仕事をすることが多かったため、グローバルに展開しているHondaなら自分の経験を活かせると感じました。
もちろん、製造現場を持っているからこそ、社員の働き方をしっかり管理していて、ワークライフバランスを整えられる点も決め手になりました」
初めての環境に初めての仕事。だからこそ、どんな場面も成長の糧になる
Honda入社後は、主にベトナム、タイ、中国で生産しているバイクを輸入し、在庫管理したのち国内の販売店に供給する業務に従事。商社での経験を活かした仕事で活躍するなか、転機が訪れます。バングラデシュへの駐在が決まったのです。
それまで関わりのなかった国であることに加えて、名須川には赴任前に準備しておかないといけないことがありました。それは、生産現場を理解することです。
名須川「バングラデシュで担当するのは生産領域、工場側の仕事です。けれど、それまでHondaでは輸入業務しかしていませんから、生産現場のことはわかりません。
そこで、熊本製作所で急きょ勉強させてもらうことに。そもそも二輪車はどうやって作っているのか、溶接や塗装、組み立てなどの生産ラインを見せてもらいました」
駐在が始まるまであまり時間がなかったこともあり、必要最低限の準備をしてバングラデシュへ。初めての環境に初めての仕事。想像していた以上に苦労が多かったと話します。
名須川「日本語で説明されたとしても理解できないことが多く、目の前で行われていることが正しいかどうかもわからない。周りの人たちの仕事を見ながら模索してきました」
そんな状況だからこそ、名須川はどんな場面も自身の成長のきっかけにしています。
名須川「現地スタッフと会議や会話をする際、私がコミュニケーションサポートする機会があります。サポートするためには自身が理解していなければいけませんから、教えてもらったり情報を得たりする機会が自然と増えるんです。まずは自身にできることを探しながら、いろいろなことを学んでいます」
もちろん、文化や国民性の違いに戸惑うことも。仕事の進め方や責任の所在など、こちらの意図を理解してもらおうと思っても、お互いに母国語ではない英語で会話をしているため、なかなか伝わらないもどかしさを感じていると言います。
名須川「一人ひとりと目を見て話したり、文字や図に起こしながら伝えたりなど、少しずつ納得してもらい、信用を積み重ねていくことを日々繰り返しています。最近では、現地スタッフから相談される機会も増えていて、嬉しいですね」
キラキラ輝くHondaブランドの屋台骨には、“泥臭い”事業がまだまだある
新興国として政治や経済の状況も日々変化しているバングラデシュ。Hondaの新工場も2018年にできたばかりで、国と共に成長しているところ。だからこそ、取り組むべき施策がたくさんある、誰も手をつけていないことを見つけて輝かせるやりがいがあると話します。
名須川「Hondaに対して、『世界でブランドを確立したメーカー』というイメージを持っている方も多いと思います。けれど、バングラデシュではまだシェアも低く、生活の足としてHondaのバイクを根付かせようとしている段階。将来に向けて、“泥臭く”仕事をしているんです。キラキラと輝いているHondaの屋台骨には、こういった拠点や事業がまだまだあることを知ってもらえたら。
私もこれまでの駐在員が蒔いてきた種が芽吹くよう、しっかりと土台を作っていきたいと考えています。まずは、いま取り組んでいる部品の現地調達化と輸出ビジネスを形にすること。将来に向けて一つでも二つでもビジネスの種を残したいですね」
手探りながら、初めての領域に果敢に挑戦してきた名須川。生産現場に携わることで、お客様との距離の近さもやりがいになっています。
名須川「これまで、お客様の反応をダイレクトに感じる機会は少なかったのですが、営業担当者などからお客様の声を聞くことができるのは嬉しいですよね。
国の規模も小さいので、新機種をリリースするとニュースになったりもします。その反響を見て、必要とされていると肌で感じることができます。人びとの生活を豊かにしたい、買う喜びを感じてほしいというHondaのフィロソフィーを実感しています」
名須川の駐在期間は、数年間の限られた時間。その先の目標を聞いてみると、「新しい仕事を作っていきたい」と意気込みます。
名須川「具体的にはイメージできていませんが、将来的には事業も地域も超えた形で新たなビジネスを作ってみたいですね。Hondaは今、さまざまな企業とタッグを組み始めています。そういった変化のなかで、商社での勤務経験があるキャリアを活かして、さらにビジネスの裾野を広げていきたいと考えています」
Hondaを、さらに多くの人々の生活に根付いたブランドへ──。まずはバングラデシュで、Hondaが一層輝くための舞台作りに奮闘します。
※ 記載内容は2023年12月時点のものです