膨大な数の部品からできあがるクルマ。品質の高い部品を適正な価格で安定的に調達するためには、世界中とつながりながら戦略を立てていく必要があります。コストや納期の管理から取引先の生産ライン改善まで幅広く取り組む相田と今崎に、購買・調達に関わる魅力ややりがいを聞きました。
相田 一樹Kazuki Aida
四輪事業本部 サプライチェーン購買統括部 完成車調達技術部 完成車調達技術1課
他完成車メーカーで板金部品設計や海外での新機種立ち上げなどに従事した後、2017年にHondaへ入社し、グローバル機種のコスト管理や取引先戦略に携わる。2022年より現職。
今崎 寿美Hisami Imazaki
四輪事業本部 サプライチェーン購買統括部 パワーユニット調達技術部 パワーユニット調達技術2課
電気・通信機器メーカーでの調達業務を経て、2018年にHondaへ入社。購買・調達領域で、国内外のサプライヤーと関わりながら電動化に向けた部品戦略構築のコスト管理などに幅広く携わる。
相反する要望に耳を傾け、互いを高める橋渡しをするのが購買・調達部門の役割
さまざまな部品から構成されているHondaの製品。その部品の多くは、国内外のサプライヤーが製造したものを購入しています。たとえばクルマを例にとると、1台に使われている部品のおよそ80%、1万8,000点ほどが該当します。
相田と今崎の仕事は、部品の購買・調達。仕事の領域は幅広く、品質・コスト・納期のコントロールはもちろん、購買戦略の立案や製造段階まで含めたライフサイクル全体の開発にも及びます。
そのなかで今崎が主に担当するのは、コストに関わる領域です。
「クルマに使う部品を、どのお取引先からどういった商流で購入するのか、対他競争力をどう発揮していくのか、量産に向けてどのように供給数を確保していくのかという戦略を立てています。
こちら側の意見だけを主張するのではなく、お取引先の立場に立った時にどう考えるのか、折衷案は何かといったことを意識しながら交渉するのも私の仕事。コスト面を重視することはもちろん、品質は担保されているのか、製造体制に問題はないかなど、さまざまな観点を持ちバランスの良い選択をすることが大切です」
相田が担当するのは、主にHondaのグループ会社であるサプライヤーの生産改善。Honda向けの製造ラインをどう作っていくかという戦略を共に描いています。
製造ラインの計画にまで関わるのは、取引先であるサプライヤーとHondaそれぞれが永続的に発展していくための取り組みです。
「サプライヤーさんは、Hondaの設計部門や技術部門からの要望を受けて製造するわけですが、こちらの要望だけを通していては、生産体制が悪化してしまう可能性があります。
そのため、お取引先の意見を吸い上げながら、コスト面を含めて最適な方法を作り上げる必要があるのです。設計部門や技術部門に言うべきことがあれば、私たちが緩衝材となって折衝し、いろいろな機種で応用が効くような汎用性の高い生産ラインを作ることに取り組んでいます」
購買・調達の仕事は、設計部門とサプライヤー、海外と日本など、相反する要望を持つ関係者の橋渡し。相田も、双方の意見に寄り添いながら、互いを高めあうように仕事を進めることが大事だと話します。
「私の場合、グループ会社とのやりとりがメインです。グループ会社は、いわばHondaの家族の一部。表面的な優しさだけでなく、さらに良くなってほしいという気持ちで仕事をするようしています」
グローバルな舞台で能動的に仕事がしたい。新たな可能性を求めてHondaへ
相田がHondaへ入社したのは2017年。以前は、別の完成車メーカーに勤務し、板金部門の設計者として海外の新機種立ち上げなどに従事していました。Hondaに興味を持ったのは、海外での出会いがきっかけです。
「現地のお取引先で、Hondaの担当者に出会う機会があったのですが、当時私がいた会社とは購買部門の立ち位置が異なると知り、興味が湧きました。
その後、Hondaに勤める知人らに話を聞くうちに、Hondaのさまざまな取り組みにさらに興味を持ったのです」
転職を決意したのは、キャリア10年目のこと。自分なりに達成感を得て、ここからもう1回新しいことに挑戦したいと思うようになったと話します。
「昔から海外で仕事をしたいと思っていて、実際に海外へ長期出張することも多くありました。Hondaは前職以上にグローバルに展開しているため、さらに新しい可能性があるのではないかと思ったのです」
一方の今崎は、電気・通信機器メーカーを経て2018年にHondaへ入社。前職でも調達を担当していましたが、転職を考え始めたのは「もっと将来の選択肢を広げたい」と考えたことでした。
「前職でも、部品の調達業務に従事していました。主な業務は部品の納期管理や発注・検収作業など。職場環境には恵まれていましたが、次第に、『携わる仕事に自分の意思を反映し、主導的に幅広く購買や調達に関わりたい』『20代のうちにさらにスキルアップして、将来の選択肢を広げたい』と思うようになったのです」
新たなステージとしてHondaを選んだのは、相田と同じく「グローバル」がキーワードでした。
「いずれ海外に出て、グローバルに仕事をしてみたいという想いがあったので、購買・調達を軸に、そのチャンスが大きい会社を探していました。そのなかで、Hondaの購買は自分の意志や考えを持って仕事ができる環境であることに惹かれて、入社を決意しました」
将来を見据えた戦略を立てることで、取引先の未来を一緒に描く
挑戦の幅を広げるためにHondaへ──新たなフィールドで仕事をするなかで、困難にぶつかりながらも成長を実感しているふたり。今崎は、自身の成長につながった経験として、電動車のバッテリー調達に関するプロジェクトを挙げます。
「コスト低減のために、これまでの輸送ルートを変更するというプロジェクトです。それに伴い、輸送者も輸送条件も変わることになりました。各国にいるサプライヤー窓口の方々、Honda購買・工場部門の方々、そして開発部門や物流部門など、多くの関係者が関わるため、すべてをまとめて意思決定していく必要があったんです」
それぞれに要望が異なる状況で、ベストな方向へ導くにはどうするべきか。段取りを組み、どこまでを誰がやるかという役割を振り分けるなど、プロジェクト体制の構築から始めなくてはならず、苦労も大きかったと振り返ります。
「一つの結論を出すために、皆の意見をまとめながらファシリテートしていくことは難しかったですが、相手に納得してもらう伝え方、相手の要望を予測しながら物事を進める力が身についたと感じます。関わる人たちの状況を考えて仕事をすることが習慣化できたプロジェクトでした」
Hondaに入社以来、今崎が担当しているコスト業務を中心に担当してきた相田は、現在チャレンジしているサプライヤーの生産改善が、自分にとって新たな挑戦だと話します。
「コスト業務をしていたときは、どうしても発注側である私たちの方が強い立場になりがちですし、新しいラインをどう作っていくのかは、お取引先に考えてもらうことが多かったんです。
けれど今は、どういう生産ラインを引くべきかを一緒に考えていく立場。ロボットは何台必要で、どういった仕様にすれば理想のラインが作れるかを相談していくことは、購買というより戦略立案という色が強いかもしれません」
だからこそ、未来に向けて目線を合わせること、そして「一緒に仕事をしたい」と思ってもらえるようなアプローチが大切だと続けます。
「交渉ごとですから、言うべきことは言わなければいけない。けれど根底には、お互いに魅力ある会社作りをしていきたいという気持ちを持っています。目先のことがかなえばいいというだけではなく、15年先を見て、どういった改善をしていくべきかという目線を持った発言であること。それがHondaと一緒に歩みたいと思っていただくために重要だと感じます」
成果が目に見えることがやりがい。意志を持ちながらも他者を尊重して結果を出す
世界中の多くの人たちと関わりながら、購買・調達の仕事に邁進する相田と今崎。サプライヤーと共に未来を描く相田は、そこが一番のやりがいだと話します。
「今取り組んでいる機種だけではなく、将来を見据えた生産ラインをどう作っていくのかは、次のHondaの担当者につながることはもちろん、お取引先の未来を創ることでもあります。どちらの未来も背負っているのだという責任を感じながらも、長期的な視点で働けることは楽しいです」
また今崎は、この仕事のやりがいは「結果が目に見える形になること」だと言います
「自分で確かめられる結果が3つあるんです。1つめは、こちらの想いが伝わり、交渉がうまくいったとき。2つめは、自分が担当した部品を使ったクルマを街で見ること。『あのときの皆の苦労がこのクルマに詰まっているんだな』と感慨深いものがあります。3つめは、決算情報。コストダウンできれば数字として結果が出るので、会社に貢献できたと実感できます」
ふたりに共通するのは、自分の想いを強く持ち、関係する部署や会社、人びとの意見をまとめていく力。芯を持つことは、Hondaで働くうえでとても重要なポイントだと語ります。
「トップダウンとボトムアップの両方を兼ね備えているのがHondaの特徴。トップダウンの案件にしろ、ボトムアップで作っていくものにしろ、どう形にしていくかを自分たちで考えて進めていくことが求められます。自己主張しつつも、相手を尊重できるバランス感覚が必要です」
「そうですね。言われたことをただやるのではなく、『なぜこれをするのか』『どうするのが良いのか』という自分の意志を持って取り組む人が多いですよね。
私たちの部署には、国籍もキャリアも年齢もさまざまで、多様なバックグラウンドを持つ方が集まっています。皆の経験や知見を持ち寄ることで相乗効果を生み出せる環境がありますが、だからこそ自分の指針が必要です」
自分なりの道を作りながら進んできたふたり。入社の理由でもある「グローバルに活躍する」を実現するための目標も抱いています。
「30代のうちに海外駐在を経験したいですね。そのうえで、家庭と仕事を両立して活躍できる女性社員のロールモデルになれるといいなと思っています。会社として女性の活躍の場を増やす取り組みもしていますが、まずは一個人として評価してもらい、結果的に後輩たちの道標になれれば嬉しいです」
「私は、自分が海外で勤務することにこだわらず、皆がグローバルに活躍できるための土壌を日本で作っていきたいと考えています。私自身、購買の枠にとらわれずに物事を考えられるようになってきたと感じるので、同じように俯瞰的な視点を持てる方と共に、その環境作りを目指したいですね」
良いものを、適正な価格で永続的に調達する──関わる人たちと共に未来を描きながら、Hondaのものづくりを支えます。
※記載内容は2023年12月時点のものです