Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える

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悲願のプロジェクト成功を目指し、AWDの電動化技術開発に取り組む若手社員の挑戦

Hondaでは、年次に関わらず誰もが積極的に挑戦できる環境があります。AWDの電動化技術開発プロジェクトで、若手ながら中心メンバーとなって活躍しているエンジニアの木藤もその一人。木藤のこれまでの歩みやHondaで電動化技術の研究開発に取り組む魅力、そしてお客様への想いに迫ります。

木藤 亮Akira Kito

四輪事業本部 ものづくりセンターパワーユニット開発統括部 パワーユニット開発二部 小型ドライブユニット開発課

2014年にHondaへ新卒入社して以来、四輪の電動系で開発の経験を積む。2017年には海外トレーニー制度を利用してドイツのHonda R&D Europe (Deutschland)G.M.B.H. に半年間駐在。2020年4月より現在の所属となり、AWDの電動化技術開発に携わる。

Honda車に惚れ込んだきっかけは、モータースポーツ

世界的なカーボンニュートラルの加速に合わせ、自動車業界では四輪車の電動化が進められています。HondaもBEV(バッテリー式電動自動車)の普及に対応するため、競争力のある電動AWD*システムの開発に注力しています。

*All Wheel Driveの略。全輪駆動。いわゆる四輪駆動のことを指す

木藤は、AWDの電動化技術開発の中心メンバーとしてプロジェクトを進めている社員です。

木藤 「僕が現在開発しているのは、タイヤを駆動させるためのモーターを自分で持っているユニットを使用した電動AWDシステムです。もともとHondaは、AWD車を含めた電動化に積極的に取り組んできました。機械的な接続により動力を得ていた従来の仕様から、前輪と後輪をそれぞれ個別にモーターで駆動する電動のAWD技術を開発しています」

学生時代は機械工学を専攻し、設計方法論や設計理論などのプロセス研究を中心に学んでいた木藤。Hondaに入社したきっかけは、大学の自動車部でHonda車に触れたことでした。

木藤 「自動車部でレースをするためのクルマは大体Honda車が使われていたんです。特に僕が参加していたジムカーナ*という競技では、Honda車の速さは圧倒的でした。そこで完全にHondaに惹かれましたね」

*舗装路面に設定されたコースを、競技車両が1台ずつ走行するタイムトライアル競技

2014年にHondaへ入社した木藤は、四輪の電動駆動系をメインとして経験を積み重ねてきました。

木藤 「Hondaの特に駆動系の部署は、ジョブローテーションしていくつかの所属で経験を重ねるというのが基本的な流れです。そのためいくつかのグループを渡り歩きましたが、基本的にはずっとAWDシステムの業務に携わっています。

一度電動の将来技術開発を行う部署が立ち上がったときは、そちらにも異動しました。20年、30年先の技術を検討するような貴重な経験を積むことができました。2017年頃には海外トレーニー制度を利用して半年間ドイツのHonda R&D Europeに行き、電動車の解析に携わりました」

緻密な制御ができる電動AWDを開発できれば、お客様に新たな価値を提供できる

前輪と後輪がそれぞれ別のモーターを持っている電動AWD車は、従来のAWD車よりも制御の自由度が高いことによる難しさがあるものの、その分やりがいがあると木藤は考えています。

木藤 「従来のAWD車は基本的に前方、もしくは後方にエンジンがあり、そこからどのように他方へパワーを配分するか、という考え方でした。機械的な接続によりパワーを配分しているため、どうしても構造上の制約がありました。

電動AWDでは前輪後輪それぞれを個別に制御できるため、できることの幅が広くなるのが特徴です。二つの動力発生源を協調して制御する必要があるなど開発の難しさもありますが、可能性を秘めた技術領域だと感じていますね」

電動AWDの開発を進めて、前後輪の制御をさらに緻密にできるようになれば、運転時にクルマの動きを細かくコントロールできるようになります。それは、お客様への新たな価値提供につながるのです。

木藤 「AWD車というと滑りやすい路面などを走行する際に力を発揮するイメージが強いと思いますが、現在開発しているシステムでは、もっと幅広い領域で価値を発揮できるようにしたいと考えています。

一般のお客様が普段使いされる場面で、思ったとおりに走るとか、クルマの動き自体が滑らかだと感じてくださるような、運転に不慣れな方でも乗りやすいクルマを実現していきたいと思います」

電動AWD車では従来お客様に喜んでいただいていた性能を大切にしつつ、新たな価値も提供できるようなクルマにすることを目標としています。

木藤 「従来のAWD車では、たとえば雪道など滑りやすい路面でも思いどおりに加速できることや、普段通りに安心して運転できることを土台としており、それはHondaのAWD車を選んでくれるお客様に今後も絶対提供しなければならない部分です。

一方、従来のAWD車が提供してきた価値に加えて、ドライ路面でも思い通りに気持ちよくクルマが曲がったり、加減速時も滑らかにクルマが動いたりといった新たな価値の提供にも、今回開発している電動AWD車では取り組んでいきたいと考えています」

電動AWD車のアドバンテージを活かし、胸を張って世に送り出せるBEVの開発を目指す

Hondaは電動のAWD車に早くから取り組んでおり、これまでレジェンドやNSXといった電動AWD車をいち早く世に送り出してきました。しかし、何もかもが順調に進んできたわけでもなく、過去には自身が携わってきたプロジェクトが頓挫したこともありました。

木藤 「ある開発プロジェクトが中止になったときは、悔しい想いをしましたね。はじめて自分が主担当になる機会が多いプロジェクトだったので、世の中に出せなかったことはショックでした。

だからこそ、今携わっているプロジェクトでは商品を発表してお客様に届けるところまでやりきりたいと思います。胸を張って世の中に出せるように、開発を続けていきたいですね」

目標達成のためには、皆が同じ方向を見て協力することが不可欠です。制御の幅が広い電動AWDをどのような方向性に活用していくべきか、日々考えを巡らせています。

木藤 「どうしても細かい技術的な話、“何ができる”という話に寄りがちですが、先輩方から『お客様に提供したい価値が何なのかをきちんと議論すべきだ』と口酸っぱくアドバイスをもらっているので、まずはそこを考えています。クルマでどんな価値を提供したいか、そのために電動AWDでどういうことができるかをしっかり議論しているところですね。

自分たちがやりたいこと、新しい技術や制御だけを詰め込んでも、お客様が価値を感じられなければ意味がありません。Hondaが持っているアドバンテージはしっかりと活かしたうえで、お客様が嬉しいと感じてくださることは何かを明確にし、普段お使いいただく際に価値を感じていただけるように検討することが大事だと思っています」

運転のしやすさだけではなく、助手席や後部座席の乗り心地の良さなどもお客様にとっては価値になります。運転以外の価値も含めて、何を提供していくのかを突き詰めて考えているのです。

木藤 「駆動系だけでクルマができるわけではないので、他部署の方々と議論しながらクルマ1台をどのように動かすのがいいのか検討しています。方向性を皆で共有して議論を深めるのは大変さもありますが、楽しみながら進めているところです」

若手にもチャンスがあるHondaで、クルマだけにとらわれない価値を提供したい

▲ドイツ駐在時 現地アソシエイトとのミーティング風景(本人提供写真)

Hondaで電動化技術の研究開発に取り組む魅力は、若手にもどんどんチャンスが回ってくることだと木藤は考えています。

木藤 「先輩たちは『本当は自分でやりたい』と言いつつ、積極的に僕のような若手に仕事を任せてくれます。日頃の業務だけでなく、海外トレーニー先でも若手に任せてくれる環境があることを実感しました。

ドイツの研究所に商品企画チームのプロジェクトリーダーが訪れる機会がありました。当時は入社4年目でしたが、その打ち合わせに参加させてもらいました。商品のコンセプトを考えている源流の方々とご一緒することができて、貴重な経験となりました」

若手も挑戦できる環境を活かし、駐在時は学会にもよく行っていた木藤。ドイツの自動車メーカーの社員と話す機会があり、そこで学んだ考え方は現在のプロジェクトにも活きています。

木藤 「ドイツの自動車メーカーの方とヨーロッパのお客様に好まれるクルマの動きについて話をしているときに、『クルマの動きに対してのイメージは慣れによる影響が大きいから、昔の商品を知らない若い人たちには関係ない』と言っていたのが印象的でした。

エンジン車にしか乗ったことがない人にとって電動車は違和感を覚えることもあるかもしれません。しかし、過渡期においては、これまでのベースにとらわれず、ゼロからクルマの在り方を考え直す良い機会となります。お客様の価値も、視野を広げて考えなければならないと思っています」

これからのHondaを支える研究開発に取り組む木藤は、今後クルマだけに限らない価値提供をしていきたいと考えています。

木藤 「僕は学生時代、電動ではないクルマで走りを楽しんでいましたが、Hondaに入社してからは驚くほど電動車に気持ちが傾きました。電動車は力強い一方で静かに走行し、思いどおりに動きます。

さらに、電動車を“動く蓄電池”として活用しエネルギーサービスと組み合わせることで、クルマが地球全体の大きなエネルギーの枠組みのひとつになるという素敵な話もあります。

たとえば家に太陽光発電設備や充電コードを取り付ければ、電動車で電力を蓄えることも可能です。Honda eMaaS*というコンセプトでもいわれているように、視野を広く持ってクルマだけにとらわれない価値をお客様に提供していきたいと考えています」

* EaaS(Energy as a Serviceの略。次世代電力供給・エネルギー最適化サービス)と MaaS(Mobility as a Serviceの略。次世代移動サービス)を融合させたHonda独自のコンセプト。2019年に事業化に向けた提案と市場実証実験を進めていくことを発表

常にお客様にとっての価値を考え、それを提供するためのクルマを開発しようと知恵を絞っている木藤。

プロジェクト成功と新たな価値創出を目指し、挑戦の日々は続きます。

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