DREAMS 水谷彰宏


空の移動を、
もっと身近にする
「Honda eVTOL」

水谷彰宏

本田技術研究所 先進技術研究所 新モビリティ領域
2011年に新卒でHondaに入社したものの一度転職し、重工メーカーでジェットエンジンの開発に携わったのち個人用eVTOL開発を行うスタートアップを共同創業。
その後、eVTOLの社会実装により主体的に携わりたいと考え、2020年に再度Hondaに就職し、eVTOLの機体開発に関わる。


水谷さん、あなたの夢は?

僕の夢は、新しい飛行機をつくることです。いつか自分の孫を新しい飛行機に乗せて、『これは俺がつくったんだぞ』と自慢することです。


夢を追いかける原動力は?

単純に飛行機が好きだからです。

二十歳のときに飛行機をつくりたいと思ったときから、大きい飛行機よりは、小型の個人が移動できるような飛行機をつくりたいと考えていました。

それは、空を自由に飛ぶのが楽しいな、楽しそうだなと思ったからです。eVTOLも自分が操縦するような飛行機ではないかもしれないけど、ジャンボジェットみたいに何百人と一緒に同じところに移動するのではなく、自分が移動したいところに、自分が移動したいときに、より自由に移動できるという、自分にとっても、世の中にとっても、より魅力的な乗り物になるのではないかなと考えています。

飛行機そのものや飛ぶことを、もっと身近にできたらうれしいです。

大学で航空機の勉強をして、航空機をつくっている会社に行って、そこで経験を積んで、航空機をつくってと想像してました。しかし実際は、大学では機械を専攻してたり、(航空宇宙工学科に)受からなかったので(笑)大学を卒業してから、最初は航空機をつくっている部署に行けなくて、車を開発していて。そこからこれじゃダメだと思って、違う会社で航空機のエンジンの開発に携わりました。でも、航空機のエンジンだけじゃなくて、航空機全体を開発したかったので、自分たちでベンチャーをつくって、航空機をつくり始めてみたり。そこだとたくさんの人に乗ってもらえるような飛行機をつくるのは難しいと思ったので、たまたま縁があってHondaに帰ってきて、今ここでeVTOLをつくれています。自分の夢を決めたときは、こんなふうなキャリアで、自分のやりたいことを達成できるようなところに行けるとは全然想像していなかったのですが、諦めなかった。やりたいやりたいと思って、なんとかやれないかっていろんな道を考えてた結果、ラッキーなことに今、色々な人に助けてもらったお陰で、それを達成できるかもしれない場所にいられてるという、そういう感じですね。車の経験も、エンジンの経験も、ベンチャーの経験も、今となってはむしろ自分の強みになっていますし、全ての経験が今の仕事に活きています。


夢を追い求める中で苦労したことは?

原因不明のトラブルがおきてしまって、もう正直ダメだと思ったところもありました。けれども他の周りのみんなが諦めないでやっていこうとするのを見て、諦めないでやったらいい解決手段が見つかってなんとかなった、ということがあります。

何度ももうダメだと思いました。そういう経験は何度もしました。思い出すのは、もうダメだと思ったときに、一人で車で海岸に行って、しばらく海を眺めて落ち着いてから戻ったら、みんながまた一生懸命、作業し始めていて。その仲間が頑張ってる姿を見て、自分も諦めないという気持ちを、もう一回奮い立たせることができたことがありました。仲間のお陰で諦めないという気持ちを奮い立たせることができた経験は、何度もあります。やっぱり、既存の航空機と全然違うものなので、これまでの飛行機の常識が通用しない部分がたくさんあるんですよね。そういうところは、飛行機以外の経験をしてきた人、Hondaの中にいる自動車の人とか、バイクの人とか、汎用機の人とかいろんな人がいるので、そういう人たちと、みんなで知恵を出し合って、問題を解決していくということが難しさでもあり、面白いところでもあるかなと思います。


次はどんな挑戦をしますか?

飛行機そのものもそうですが、飛行機に乗る経験を身近にしたいです。今でいうタクシーに乗るくらいの感覚で、飛行機に乗れる社会をつくりたい。そのために必要とされる、美しい飛行機をつくっていきたいですね。住むところが広がる、働く場所も広がる。日本に限って言うと、地方っていう概念がなくなっていくと思うんですよね。そもそもオンラインで通勤する必要がなくなっているところもありますけど、なんだかんだこうして実際の場所に来て物を触ったり、人に会うことは無くならないと思うんです。

自分の家の近くから、行きたいところの近くまで素早く移動できて、かつ安く移動できたら、移動のハードルがすごく下がるし、遠くに住むことのデメリットがすごく小さくなります。そうすると、都心と地方みたいなものが、どんどんなくなっていって、住むところも、働くところも、自由になってくるかなと思ってます。

まだeVTOLは試作段階なので、これからさらに研究開発を重ねてeVTOLを実際に世に出したいです。飛行機だけじゃなくて、それを運用するというか、それを取り巻く仕組みだったり、運航のシステム、そういうものを全部ひっくるめてつくっていきたいです。

#ThePowerOfDreams#HowWeMoveYou