世界初、Hondaの二輪車用エアバッグシステムとは
ライダーが前へ投げ出されるような前面衝突のとき、その勢いを弱めるクッションの役割を果たすものです。
現実の事故データを検証して開発
バイクの死傷事故は、正面からの衝突により、ライダーが前へ投げ出され、相手のクルマや路面等とぶつかって大きな傷害を負うケースが多いという事故データの分析から、「投げ出される勢いを抑える」ことを二輪車用エアバッグの役割としました。
Hondaの二輪車用エアバッグならではの工夫
バイクの場合、背面にエアバッグをしっかり支えるものがありません。そこでHondaは、エアバッグにベルトを付け、車体とつなぐことで背面に支えがなくても、エアバッグをしっかり支えるようにしました。
バイクは、衝突の角度などにより姿勢が変化しやすく衝突時の状態もさまざまに変化します。
前面衝突時における、二輪車の姿勢の変化
そこでHondaは、二輪車専用ダミーを用いて、国際規格で定められた実車衝突テストに独自のテスト条件を追加し、多くの衝突実験を実施。さらに、高精度で衝突を再現するコンピューターシミュレーションにより、様々な衝突状態を解析しました。
その結果、より安定してライダーを受け止められるV字形状の大型エアバッグを開発。2005年に、量産二輪車用エアバッグを技術発表し、2006年に、世界初の二輪車用エアバッグを搭載したゴールドウイング〈エアバッグ〉を発売しました。
それでは、二輪車用エアバッグの開き方を見てみましょう
ご注意
二輪車用エアバッグシステムは、前方向からの、設定値以上の激しい衝撃を感知したときのみ作動します。基本的に側面方向や後ろ方向からの衝突、および転倒時には作動しません。衝突にはさまざまな要素がありますので、斜め前方向からの衝突や、トラックに潜り込んでしまうような衝突時など、エアバッグが作動してもライダーの負傷を軽減できないことがあります。また、前輪が深い穴や溝に落ちたり縁石などに衝突して激しい衝撃が発生した時には作動する場合があります
早くから二輪車ライダーの安全に着目したHondaは、1990年から研究に着手し、事故の実態分析にもとづいてテストを重ね世界で初めて量産二輪車用エアバッグシステムを実現しました。前面からの激しい衝突で頭や胸に起こりうる傷害の軽減をめざす先進の安全技術です。
二輪車用エアバッグ作動のプロセス
二輪車用エアバッグシステムの制御の流れ
Hondaの二輪車用エアバッグは、前面衝突時にライダーが前方へ投げ出されてしまうような衝突と判定した場合に作動しライダーの傷害軽減を図るシステムです。
編集後記(2007年6月)
Hondaは、1987年に国産車として初めてのSRSエアバッグをレジェンドに搭載して販売を開始しました。研究着手から発売までにかかった時間は16年。 二輪車用エアバッグも、1990年に研究に着手し、量産・販売開始が2006年(北米向け)であり、期せずして四輪と同じ16年です。
「二輪の場合は事故を起こさないことが大事で、衝突時の乗員保護を求めるのは無理だ」というような声も聞こえるなか、そのような意見に甘んじていてはいけないと、1989年にライダー保護研究のプロジェクトがスタート。そして種々手法の検討結果から、たいへんなことになりそうだと思いながら研究することにしたのが二輪車用エアバッグシステムです。
二輪車用エアバッグでも、四輪車用SRSエアバッグシステムの基本コンポ-ネントやエアバッグ素材は使えますが、バッグをどのように使ってどのような効果が得られるのかという根本的なむずかしさがあります。以下のような浮き沈みが何度もありました。
初めてフルシステムを装備した二輪車を試作し、静止状態の四輪車への衝突テストを実施したときは、思惑どおり、設計どおりの見事なシステムの作動とエアバッグの働き。これはすばらしいと感激して有頂天になりました。
そこで、走行中の四輪車への衝突実験や、二輪車の衝突角度を様々に変えての実験も含めた、本格的なエアバッグの効果確認テストを開始。ところが、衝突形態の一部で思惑を外れる結果となったのです。
どうすればいいのか、どうできるのか先が見えず。でもギブアップもしたくありません。あの手この手と手を尽くし、1年がかりで、ようやく課題を解決することができました。
粘りに粘って16年、とうとう開発完了、2006年に量産・発売にこぎつけました。もしものとき、ライダーの傷害を軽減できるように多くの事故形態を想定したエアバッグシステムとなっています。
Hondaは、ライダーの安全に対する意識を向上させるための「ゼロ次安全」から、ABSやCBSなど、事故を未然に防ぐための「一次安全」、今回ご紹介したエアバッグのように、事故が発生してしまったときにもライダーの傷害を軽減する「二次安全」まで、これからも二輪車に関する安全技術の開発に取り組んでいきます。
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