製品 2023.12.21

VEZEL DESIGNERS TALK〜そっと優しく、五感を誘う空間づくり〜[アーカイブ掲載]

VEZEL DESIGNERS TALK〜そっと優しく、五感を誘う空間づくり〜[アーカイブ掲載]

2021年4月、「AMP UP YOUR LIFE(日々の生活の愉しさを増幅させる)」をコンセプトに新型VEZELが誕生しました。この度、新型VEZEL開発に携わったデザイナーたちに集まってもらい、座談会を開催。デザイナーたちが何を考え、何を議論したのか、彼らの本音で語ってもらうことで、新型VEZELのデザインへの想いを紐解いてみましょう。

Hondaデザイナーが考えるHondaらしさ

最初にそれぞれの立場で考えるHondaらしさについて教えてください。

柳本
柳本

Hondaは学歴とか年齢にあまり関係なく活躍できる会社だと思います。いい意味で基本的に実力主義なんです。

左から柳本、廣田、斧山 左から柳本、廣田、斧山
 斧山
斧山

本当にそうですよね。私は中途採用なんですが、そんな視点から感じるのは、Hondaはチャレンジングスピリットがあるということですね。デザインはもとより、各部門でアイデア募集やコンペが頻繁に行われているんです。Hondaでは誰もが企画段階から関わることができる。従業員が社会に役立つアイデアを提案して採用されると社内ベンチャーとして起業することもできるんです。

廣田
廣田

Hondaには「ワイガヤ」という、立場に関係なくいろいろな意見を交換する場があるんです。人ってみんな価値観やバックグラウンドが違っていて、多様な意見がありますよね。だから様々な立場や年齢の仲間の意見を聞いている。チームメンバーは皆、開発者や作り手である前に一人の消費者でもあるからなんです。個の意見を常に尊重し、他の領域であってもみんなで本気で考えるという昔からの社風や、立場の強い人の発言力ではなく良いものは良いという判断軸で開発ができる環境があるから、Hondaではユーザーに近い立場の考え方が反映されやすいんだと思います。

柳本
柳本

良いモノをつくるためなら、他の部門にも意見を言うし、言える空気がありますよね。

 斧山
斧山

柳本さんは良い意味で他部門とよく議論をしていますよね(笑)。

柳本
柳本

確かに、やる気がある人に仕事が回ってくるというHondaの社風も影響していると思いますね。結果的にそんなことも現在の実力主義というHondaらしさの土壌になっているんだと思います。

廣田
廣田

ちなみに私が初めてHondaらしさに触れたのは、子どもの頃に乗った初代CIVICで、見た目は小さなクルマなのに車内は広くて快適でそのギャップに幼いながらも驚きました。あとは学生時代に見たSTEP WGNやODYSSEYでは、シート一つとってもアレンジ次第で友達とコミュニケーションを取りやすくなるし、車中泊までできる。移動中でも行った先でも、常にクルマにワクワクが詰まっていたんです。クルマの先にある生活の広がりまで含めた商品提案をする、私が考えるHondaらしさって、そういう部分だと思いますね。

柳本
柳本

確かに、それってHondaらしさですね。

初代CIVICエクステリア 初代CIVICエクステリア
初代CIVICインテリア 初代CIVICインテリア

ライフスタイルが変化する中でHondaが提供する価値

Hondaは市場に合わせてクルマをつくるというより、クルマをつくることでニーズそのものを創出すると聞いたことがあります。どんなライフスタイルを提案するかまで考えて、クルマをつくっているのでしょうか?

廣田
廣田

そうですね。Hondaのクルマの開発では、まず人の心や気持ちを考えるところから始まります。新型VEZELの開発ではGeneration C(以下、Gen C)層をターゲットに想定し、その人たちの価値観やライフスタイルに目を向けて、その気持ちや考え方をクルマにどう落とし込むかを考えました。

ライフスタイルが変化する中でHondaが提供する価値
Generation Cとは? Casual (カジュアル)
Challenge (チャレンジ)
Community (コミュニティ)
Connection (コネクション)
Creation (クリエイション)
Curation (キュレーション)

これらのCから始まるキーワード群に連動した価値観を大切にし、様々なSNSやデバイスを日常で使いこなす層。社会の中で、自分の立ち位置を日常的に意識している新しい価値観を持つ。Generation Cは、特定のブランドの考え方に共感してそれを生活の中に取り込むことで、ライフスタイルを充実させたり、商品と接したときに自分の生活がどう向上できるかを考えたりしている。

今回の新型VEZELでは「信頼」「美しさ」「気軽な愉しさ」というキーワードがあると聞いています。なかでも「気軽な愉しさ」というのはクルマづくりのキーワードとしては聞き慣れないんですが、これはHondaのつくってきたプロダクト全般に言えることなんでしょうか?

柳本
柳本

そう思います。Hondaはユーザーの立場や目線で発想しています。例えば子育て中の親の立場など、ユーザーの気持ちを汲み取ってそれを具現化するのが得意なんです。ユーザーの生活シーンを想像し、日常の使い勝手を踏まえた仕様にすることで、クルマへの愛着や気軽さが生まれたり。人に役立ち喜ばれるモノやコトを、スタイリングや機能に反映させることで、クルマに乗る愉しさが育まれたり。そういう研究をしたことで、新型VEZELでは小型SUVという枠の中で、機能性とプロポーションのバランスを取ることに成功しました。それが結果として気軽に愉しく使っていただけるクルマにつながっていると思います。

 斧山
斧山

確かに「気軽な愉しさ」ってHondaの持ってる魅力だと思います。Gen Cの調査の中でも、「新しい発見や刺激が人生には大切」というお客様が多かったんです。日常生活の中でシンプルや上質ということだけでなくプラスαを望む価値観が、Hondaと親和性があるんだと思います。

SUVのベースの価値を生み出し続ける、VEZELらしさとは?

新型VEZELは先代からどのような「VEZELらしさ」を継承したのでしょうか?

 斧山
斧山

初代VEZELはコンパクトかつスタイリッシュでありながら、4人がちゃんと乗れて日々の使い勝手もいいSUVとして支持を得て、市場を牽引してきました。今回もこの部分はしっかりと継承しています。

新型VEZELはどの部分がアップデートされているのですか。

柳本
柳本

「美しさ」や「気持ちよさ」という感性領域をさらに伸ばしました。「美しさ」で言えば、例えば視認性が高く操作もしやすいスイッチや計器類が並び、爽快な運転視界もあることで、ドライバーの所作からクルマの動き自体も、もっとスマートに美しく変わっていきます。乗る人をクルマが引き立てる、そういったアップデートを全面的に施しました。

 斧山
斧山

Hondaでは、デザイナーは美しさを追及するだけでなく、面白いことや新しい価値を生み出せることが役割だと考えているんです。だから今回も世の中にない新しい価値を日々考えてましたよね。

廣田
廣田

うん確かにそうでしたね。新型VEZELの「気持ちよさ」って、「五感に訴える価値観」のことなんです。

VEZEL VEZEL

五感ですか。具体的にはどんなことでしょうか?

廣田
廣田

新型VEZELでは、感性に触れる部分を大きく進化させました。開発初期にチームで話したのは、オープンカーの「光と風」を感じる爽快感をSUVに入れたいねって。風で言えば、開発者の一人が高原を吹き抜ける心地よいそよ風を思い描き、肌に優しい自然の風を再現したいという想いから、そよ風の「気持ちよさ」という開発が始まりました。

柳本
柳本

「太陽光」で言えば、私、ずっとオープンスポーツカーのS2000に乗っていて、太陽を浴びる心地よさが昔から大好きなんです。雨と雪以外はずっとオープンのままで、小雨くらいなら高速道路もオープンのほうが意外と気持ちいいんですけど、妻にあきれられるからそんなときは幌を閉じたり(笑)。

 斧山
斧山

柳本さんは真冬でもオープンですよね。

柳本
柳本

そうなんだよ。だから60歳を過ぎた後で体力的に厳しくなったときに乗るクルマを考えたとき、直の風を受けることなく、パノラマルーフ仕様(ガラスルーフ)で太陽を感じられて開放感がある新型VEZELがいいという結論に至ったので、途中から「将来このクルマに乗ろう!」って思って開発してました(笑)。

廣田
廣田

そうでしたね。オープンカーのように全身で外の世界を感じながら走る感覚、そんな体験をSUVで感じてもらいたいって柳本さんは話してましたね。新型VEZELは、オープンカー好きの俺のためのクルマなんだって。

パノラマルーフ パノラマルーフ
S2000 S2000

デザイナー一人ひとりが思う、私だけのVEZELのワンシーン

皆さんが思い浮かべる新型VEZELに乗っているワンシーンを教えてください。

 斧山
斧山

この間、実際に新型VEZELに乗って驚いたことがありました。パノラマルーフ仕様の後席に座ったときに、視界が広いから外の景色が愉しめて爽快感があって、守られている感覚やゆったり座れる心地よさまで感じられて、すごくリラックスできたんです。まるでお嬢様になったような気持ち。これまでに味わったことのない感じというか、おもてなし感がすごいんです。

柳本
柳本

自分で運転するより後席の方がいいんですか?

 斧山
斧山

絶対後ろが特等席だと思います。このクラスのSUVでは珍しいんですが、4席がすべて快適でゆったり座れて、前後席の会話のしやすさを考慮した室内空間があるんです。室内はより広く見えるように工夫されているので窮屈さもなくて。そんな空間だから、もっと贅沢にゆったりと後席でくつろぎたい。だから私が想像するワンシーンは、大人数でレジャーとかにみんなでワイワイ行くシーンですかね。みんなで乗って気軽に会話を愉しめて、仲間同士の愉しさや一体感も感じられるから。私は絶対後席で!

柳本
柳本

後席からの視界にはこだわったので、これはうれしい意見ですね。

廣田
廣田

そうですね、インテリアの細部のバランス感も徹底して仕上げましたから。私の場合は、新緑の中、光を浴びながら後席に家族を乗せて走るいつもと違う時間ですね。あとは、雨の日でもパノラマルーフから見える雨粒が気持ちを愉しくしてくれる。五感に新しい刺激を受けることで、いつもと違った視点を持てるきっかけが生まれる。それが前向きな気持ちになれる糸口としてつながればいいな、と。このクルマと接することで多くの人に笑顔が増えればいいなと思います。

パノラマルーフ パノラマルーフ
柳本
柳本

私が思い描くシーンは、友人たちとドライブ中にレストランに立ち寄って、食事を愉しんだ後に、気軽に運転を代わってもらえるようなライフスタイルです。新型VEZELには乗る人の「美しさ」と調和するように、日常での「使いやすさ」「見やすさ」「分かりやすさ」を考慮したデザインを施しているので、気軽に運転しやすいし、運転を任せた人にも任せられた人にも安心感が生まれやすいんですよ。

廣田
廣田

だから日々の生活の愉しさがAMP UP(増幅)して、仲間ともっとつながりを深められたり、それによって自分も一層成長できたり。毎日の気軽な愉しさが詰まっていると思いますね。

(株)本田技術研究所デザインセンターオートモービルデザイン開発室所属の3人のデザイナー

廣田貴士(ひろた たかし)

廣田貴士(ひろた たかし)

さらに表示
柳本佳久(やなぎもと よしひさ)

柳本佳久(やなぎもと よしひさ)

さらに表示
 斧山真弓(おのやま まゆみ)

斧山真弓(おのやま まゆみ)

さらに表示

この記事は2021年10月15日に公開されたものの再掲となります。

Index