乗り物好きの父のもとで育ち、モビリティ開発を夢見てHondaに入社したという米山。アサインされた新規事業開発において安全領域の重要性に気がつき、現在はアジア地域での「危険認知プログラム」の開発を担当し、タイでの二輪車事故防止に取り組んでいます。タイの交通安全に向けた夢、取り組みの難しさ、そしてHondaが今後も世界で戦っていくために必要なこととは。熱い想いを聞きました。

米山 綾人(よねやま あやと)

電動事業開発本部 二輪・パワープロダクツ電動事業開発統括部
UX・ソフトウェアコネクテッド開発部 ソフトウェア・コア技術開発課
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アジア地域の二輪車事故をなくしたい

初めに、米山さんがHondaに入社したきっかけを教えてください。

米山
米山

乗り物を愛する父を見て育ち、モビリティづくりに携わりたいと思うようになったのが最初のきっかけです。開発の知識を身につけるため、大学では工学を学び、就職活動の際もモビリティ業界を軸に企業を見ていました。

その中でもHondaを選んだのは、自動車事業だけでなくバイク事業があったからです。開発において、四輪より二輪の方が全体の部品数は少ないので、自分が担当する領域も多く、プロダクトに深くかかわることができると感じたのです。また、Hondaは二輪と四輪の両方を扱っているので、事業間での知見やノウハウを共有できる点も魅力だなと。そうした理由から、エンジニアとして入社し、エンジン設計にかかわってきました。

現在は、エンジン設計にとどまらず、主にアジア地域で安全領域の事業を担当しているとのことですが、どんな目標を持っていますか?

米山
米山

入社時は、自分が携わった製品でお客様を笑顔にしたいという一心で働いてました。現在はその夢からもう一歩進んで、お客様に製品を届けるだけではなく、「製品がもたらす不幸をなくす」という目標を掲げています。

アジア地域では、Hondaの二輪車が生活の一部として親しまれています。二輪車がお客様の生活の可能性を広げていることは意義深く、喜ばしいことではあるのですが、一方で、二輪車の事故が日々起きていることもまた事実です。社会に幸せを提供しようと思うのなら、二輪車を販売する以上、事故をなくす責任がある。そういった想いで、現在は安全領域の業務に携わっています。

タイの二輪車事故防止を目指して、「危険認知プログラム」を開発する米山

Hondaとしても「交通事故死者ゼロ」を目標としていますね。交通事故防止のために、アジア領域では具体的にどういった取り組みをしていますか?

米山
米山

タイ政府のインフラカメラを活用した「危険認知プログラム」の開発プロジェクトを進めています。タイ国内の路上には政府が所有しているカメラが数万とあるのですが、そのカメラ映像から取得したデータを活用し、察知した危険を運転中のお客様に通知するといった事故防止のシステムを開発しています。

例えば、前方に停まっている駐車車両や逆走車両、歩行者の存在をスマートフォンアプリで知らせるというものです。2022年に、Hondaの試験場に一般のお客様を招いて、動作テストを行いました。2023年中には、公道での実証実験を予定しています。

現在取り組んでいる「危険認知プログラム」のプロジェクトにおいて、クリアするべきミッションはありますか?

米山
米山

まずは、タイの二輪ユーザー全員に安全を提供するという目標があるので、タイ特有の交通事情やインフラ整備の問題を、現地政府と手を組んで解決していく必要がありますね。そのためには、予定している公道での実証実験において、事故削減効果を試算し、そのデータをタイ政府に示す必要があります。それにより、量産化に向けた理解と協力をいただくことが重要だと考えています。

協力することでしか得られない成果がある

米山さんから見て、Hondaという会社の魅力はどういった点にあると思いますか?

米山
米山

経験が浅い若手であっても、夢を実現するためのリソースを与えてもらえるのは、Hondaならではの環境だと思います。新しいことに挑戦する文化が社内に浸透しているので、他の社員に協力をお願いするときにも「面倒くさいからやりたくない」と言われたことはほとんどないんです。私自身もそういった話が来たときは、なるべく挑戦するようにしていますね。

タイの二輪車事故防止を目指して、「危険認知プログラム」を開発する米山

Hondaに入社してから大変だったこと、困難を乗り越えたエピソードがあれば教えてください。

米山
米山

まだまだ若手だったときにアサインされた「クリエーションラボ」というHonda社内の施策には、本当にいろいろと考えさせられました。施策内では新規事業の提案を行っていたのですが、それまでは経験も浅く、定型業務しかしてこなかったこともあって、なかなか思うような提案ができませんでした。

ですが、チームで「社会課題のためにHondaとして何ができるのか、何が強みなのか」を考え抜いて安全領域に関する提案を行って。結果的には、会社の目指すものと合致していたこともあり、最終的には採択してもらうことができました。自分で一から考えて提案を行った経験はとても印象に残っていますし、当時の企画が現在取り組んでいる「危険認知プログラム」につながっていると思うと感慨深いですね。

他にも、自分にはない専門性を持った社員の方に協力をあおぎ、社内に働きかけていくという手法をとれるようになったことも、この施策から得られたことの一つです。まさに今担当しているタイの事業に関しても、海外の交通事情やユーザーの調査に詳しい方に協力いただきながら進めているんですよ。やはり、自分一人でできることって限られていますし、人に協力してもらったほうが、自分の部署だけで進めるより良い成果が出せるということを改めて実感しているところですね。

「世界で戦えるHonda」であり続ける

今後、叶えていきたい夢はありますか?

米山
米山

アジア地域での安全リテラシーの教育に力を入れていきたいです。というのも、交通事故の現場を見ると、「事故に遭った人にも非があるのでは」と思ってしまうようなケースが非常に多いんですよ。例えば、明らかに前からクルマが来ているのに右折してしまうとか。これはリテラシーの問題で、マインドセットが変わらないと事故は減っていきません。

日本では、あおり運転がニュースになることも多いですが、一般の方の間で「あおり運転は危ない」ということをきちんと認識されていますよね。同じように、タイを含むアジア地域の人々にも、共通認識として「危ない運転」と「安全な運転」をしっかり知ってもらうことがまず必要です。根本から変えていくためにも、安全リテラシーの教育に注力していきたいです。

タイの二輪車事故防止を目指して、「危険認知プログラム」を開発する米山

今後、Hondaにはどんな会社であってほしいですか?

米山
米山

お客様の生活の可能性を広げる企業であり続けてほしいです。そのためには、ハードウェアだけではなく、ソフトウェアの領域でも世界と戦える企業になる必要があります。ソフトウェア領域にもしっかり投資を行い、人材やスキルを確保することで、内製化が可能な環境を構築することが重要です。

ハードウェア開発を長年行ってきたHondaには、「製品を世に出すときは、100%の完成度であるべき」という思想があると感じるんです。しかしながら、ソフトウェア開発においては、最低限の価値が届けられる状態のものを世に出してからお客様の意見を反映して、徐々にアップデートしていくようなグローバルスタンダードの手法で取り組んでみたいと個人的には思っています。新しい領域を切り開いていくためにも、「失敗」をネガティブなものと捉えず、楽しみながらチャレンジを続けていきたいですね。

タイの二輪車事故防止を目指して、「危険認知プログラム」を開発する米山

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