先が見えない不安や、思うように過ごせない閉塞感が続く日々だからこそ、クルマはこれまでどおり安心できる場所でありたい。
昨年末にマイナーモデルチェンジを行ったN-BOXと、同時に発売されたオプションアイテム「くるますく」。これらには「快適で安心安全な移動を提供したい」という共通の想いが込められています。
使う人のためにできることを徹底的に考え、ユニークなアイデアをカタチにしていく。Hondaならではの、ものづくりに対する姿勢が垣間見えるストーリーをご紹介します。
安心を少しでも早く届けたい
コロナ禍によって、社会規範や人の意識が大きく変わった一年。特に、触れる空気にも気を配りたいという意識は、これまでにないほど高まっています。そうしたニーズに応えるため、昨年12月に発売された商品が「くるますく」です。
「くるますく」は、車両標準装備のエアクリーンフィルターに重ねて設置し、キャッチしたウイルス飛沫を特殊な表面形状でダメージを与え、ウイルスを減少させるというHondaの純正アクセサリー。
ちょっとかわいい名前の「くるますく」は、エアコン内気循環で効果を発揮し、窓を開けて換気しにくい季節でも快適で安心な移動を提供するためのアイテム。第三者機関によるテストでも高い性能が確認されています。
なぜこの商品を開発し、N-BOXと同時に発売したのでしょうか。「くるますく」開発の背景にある想いと奮闘を、開発責任者の越後隆治に聞きました。
今、モビリティメーカーにできることはなんだろう?
メンバーで話し合いを重ね「新型コロナウイルスに感染してしまった方を、安全に搬送するための車両を提供しよう」と、決定します。それからわずか2週間後には、感染拡大傾向にあった東京地区へ、第1号となる搬送車の提供にこぎつけます。
「通常であればもっと時間がかかるはずだったものを、今回は社内外の調整を最短ルートで突っ切って、2週間という短期間で開発・提供ができました。開発自体もそうですが、チーム内に特殊車両の専門家がいたことも大きかったです。おかげで車両の保安基準を満たすといった法的な部分も、分担してクリアすることができました。それでも2週間というのは、振り返ってみてもよくできたなあと思います。三現主義※1に基づいて、現物での高速検証を進めてくれた仲間たちや、それを理解し支援してくれた上司のおかげです。『これを必要とする人に早く届けたい』という共通の使命感の元、全員が必死でもがいていました」
※1 現場、現物、現実を重視する姿勢
その後、搬送車の提供を実現したチームを母体として、さらに多くのお客様に安心をお届けするためのワーキンググループが発足。そこで次のアイデアが生まれます。
「コロナ禍で目に見えないモノに対する不安というものが急速に広まっていったと思います。人との接触や自由な移動にも制限が生まれ、誰もが不安や心配を抱えていく社会環境のなかで、『せめてクルマの中では、お客様にこれまで通り安心した時間を過ごしてほしい』という声が上がってきました。そこで考え出されたのが『くるますく』です」
「『くるますく』の企画が具体化したのは2020年の6月ごろ。これを、すでに12月発売が決定していたN-BOXのマイナーモデルチェンジと同時発売することを目標にしました。こういった商品の開発には数年かかることを考えると、約半年という期間は非常に短いといえます。ただ今回の場合、ウイルスが流行りやすい冬には完成させたい、多くのお客様がいらっしゃり、子どもたちが乗る機会も多いN-BOXというクルマに間に合わせたい、という想いが強くありました。少しでも多くのお客様へ、少しでも早く安心を届けたかったんです」
越後ら有志の奮闘により、12月のN-BOX発売に間に合いました。
より幅広いお客様に届けるため、他の車種への対応を目指しています。
「人間中心」の思想で生まれたN-BOX
「くるますく」は安心のため、人のために生まれたアイテムですが、最初の“パートナー”となったN-BOXも、もちろん根底にある想いは同じです。
N-BOXから始まるHondaのNシリーズは、多彩なライフスタイルに合わせた軽自動車4車種をラインアップ。Nシリーズ開発コンセプトの一つには「すべてをお客様目線で考える」というものがあります。
お客様が困っていることはなんだ? 心配していることはなんだ? どうすればそれを解消できる?
お客様の声に耳を澄ませ、議論を重ねて試乗と開発を繰り返し、ときには失敗しながらも、とにかく乗る人の安心と快適を納得するまで突き詰める。
そうして生まれたのがN-BOXであり、Nシリーズです。
Nシリーズの安心安全への追及は、Honda SENSINGの全タイプ標準装備という形でも表れています。
Honda SENSINGの様々な安全機能についてはこちら
先進の安全運転支援システムであるHonda SENSINGはレーダーで周囲の状態をキャッチし、衝突を予測してブレーキをかけたり、前のクルマに適度な距離でついていったりと、多彩な機能を搭載。見通しの悪い場所や夜間での走行もレーダーでしっかりサポートし、より広い時間・場所でのドライブを可能にします。
技術のチカラでドライバーの負担を軽減し、快適で安全な走行をお届けしています。
Honda SENSINGは「事故を減らすための機能」ですが、「万が一事故に遭ったときの被害を減らす機能」も、Honda独自の安全技術「G-CON」など、Nシリーズにはしっかりと備わっています。
他にもここでは伝えきれない事故回避・事故軽減の機能がNシリーズには詰まっていますが、これらはすべて事故の被害者・加害者になる人を一人でも減らすため。そしてクルマの帰りを待つ人の心配を少しでも減らすため。クルマにかかわるすべての人が持つ不安を和らげるために搭載されています。
そしてN-BOXが減らす不安は、事故に関すること・目に見えるものだけに限りません。シート素材には、抗ウイルス※2・抗アレル性能※3を持つ「アレルクリーンプラス」を採用。スギ花粉やダニの死骸などのアレル物質や、インフルエンザなどのウイルスを不活性化します。
※2 病気の治療や予防を目的とするものや、ウイルスの働きを抑制するものではありません。
※3 ダニアレルゲン94.3%、スギ花粉アレルゲン82.0%を不活性化。Honda社内実車測定値。
さらにはイオンを放出して空気を浄化するプラズマクラスター、紫外線を99%カットする360°スーパーUV・IRカット、そして「くるますく」も。Hondaはお客様が感じる、見えない不安の解消にも取り組んできました。
そして安全性に並ぶN-BOX最大のポイントはその広さ。
スライドドアも広くとり、荷物を抱えたままでも乗り降りをスムーズに。荷室スペースの地上高は低くして、自転車もラクに積み込み。助手席のスーパースライドシートの位置を調整することで前後座席の距離が詰まり、ドライブ中の会話もより楽しく…。
日々のちょっとした不便を取り除くため、軽乗用車最大級※4という広さをしっかりと活かしています。
※4 Honda調べ
昔もこれからも、「人間中心」のものづくり
N-BOXが誕生したのは2011年。発売から早くも10周年を迎えますが、「人を中心としたクルマづくり」というコンセプトは当時も今も変わりません。
N-BOXの発売前に掲げられた、Nシリーズ共通のキーワードがあります。
「もう一度、客室(キャビン)から設計をはじめました。」
これは1966年に発売されたN360の新聞広告に載ったコピー「先ず客室(キャビン)から設計をはじめました」をもじったもの。
今から50年以上も前、「軽自動車は狭くて当たり前」という時代。そこに登場したN360の広さは、当時としては常識外れといえるものでした。異例の室内空間を実現したのは「大人4人がラクに座れる空間を先につくってしまおう」という、とことんまで人間を最優先した考え方。
当時の技術者たちは、その無鉄砲にも思えるコンセプトを妥協なく実現させ、今なお愛されるクルマを作り上げました。
人のための室内空間は最大限に。メカニズムは最小限に。「M・M思想」(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)と呼ばれるHondaエンジニアの合言葉を、N360の想いを受け継ぐNシリーズ“長男”のN-BOXは、その広さで十分に体現しています。
今も昔もHonda従業員が常に考えているのは「快適で安心安全な移動を提供したい」ということ。その気持ちはN-BOXに代表されるクルマはもちろん、「くるますく」のようなオプションアイテム一つひとつにまで、しっかりと込められています。
※新型コロナウイルス感染症対策を実施した上で取材・撮影を実施しています。
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「『くるますく』の開発チームは、もともと新型コロナウイルス感染者の搬送車両を開発したチームから派生してスタートしたんです。2020年4月、一度目の緊急事態宣言が発令されて働きたくても働けないというモヤモヤの中、私の周囲で『Hondaのインフラを使って世の中のために何かできることをしませんか』という声が上がってきました。他の部門にも相談してみると、すぐに有志が集まってくれたんです」