Honda SPORTS
挑戦し続け、人の心を動かす存在でありたい 陸上競技部が体現する「Hondaらしさ」
~ 小川 智 監督・伊藤 達彦 主将 インタビュー ~
ニューイヤー駅伝で2022年、23年と2連覇しているHonda陸上競技部。年始には3連覇も期待されています。個人としても今年、青木涼真選手や小山直城選手など、国内外での活躍が目立っています。今回は小川智監督と、主将の伊藤達彦にインタビュー。抱いている「夢」や、その実現に向けた「挑戦」、ニューイヤー駅伝への思いについて聞きました。
小川智監督「世界に挑戦していこう、と取り組んできた」
2019年の就任当初から、社内外から存在を期待されるチームにしていきたいと考えていた小川。結果を出し続けることで「なんかやってくれそう」と思わせる、ワクワク感のあるチームにしたいと、ここまで取り組んできました。
小川:
「Hondaだからできるよね」と言われるチームにしていきたいなと思っていました。そのために、中距離でもマラソンでも、各カテゴリーの全てで日本のトップを取りたいと考えてやってきて、それが徐々に実現しつつあります。ここからはもっと世界に挑戦していきたいなと思っています。
私としては、このチームから世界で頂点に立つような選手を出すことが大きな夢であり目標です。日本ではトップレベルになってきましたが、まだ世界には遠く及びません。なんとしても成し遂げたいですね。
また、今年4月に伊藤を新しい主将に指名しました。普段から寮の食堂など、選手の生活空間にはあえて行かないようにしているという小川。食堂のスタッフの方や、合宿地の宿の方からの評判も伊藤の主将指名を後押ししました。
小川: 競技の成績だけではなく、人間性も重要だと考えました。彼はいつもチームの話題を作って中心にいる存在で、それをいろいろな方から言われることも多いです。「伊藤くんはいつも挨拶してくれるね」「いつも明るくみんなと話しているね」と。そして泥臭く努力している姿をみんなが見ているからこそ、彼が主将になることにみんなも納得したと思います。
どんどん結果を出し続ける陸上競技部ですが、チームの方針としては「継続」と「凡事徹底」をぶらさずに掲げています。当たり前のことを当たり前に。今期は個人それぞれの目標に向かって取り組む時期が長く、4月から一度も全員が集まっての練習をしていません(10月中旬の取材時点)。それでもつながっているのがHonda陸上競技部の強さだと小川は言います。
小川: 実際に、外部の方からも「Hondaに入って本当にみんな伸びるよね」と言っていただき、それが誇りでもあります。これは社風ともつながるのですが、私たちは「誰々のメソッド」や「誰々の指導を受け継いだ」ということはなく、オリジナルで選手それぞれの「個」を尊重して工夫しながらやってきました。それが今、結果という見える形になってきているのだと思います。
結果が出ることで、見据える目標も高くなってきました。
小川: 昨年は「超戦」というスローガンを掲げていましたが、今年はよりシンプルに「挑戦」とし、世界に挑戦していこう、と取り組んできました。先日小山がMGCで優勝しました。巷では「伏兵」と言われることもありますが、確実に着実に1年1年強くなってきていたので、レース前からいけるという自信はありました。彼はまさにHondaがグローバルブランドスローガンとして掲げる、「The Power of Dreams」を体現してくれたと思っています。
MGC当日は選手たちが2人1組になって沿道で応援していました。「このチームから代表選手を出そうぜ!」と仲間を応援するパワーが小山を後押しし、従業員もたくさん沿道に立って応援しました。みんなが一体となり、一つの夢や目標に熱き想いを持って挑戦していくことが「Hondaらしさ」だと、小川は言います。
3連覇への期待を背負って臨む戦いは、ライバルも力をつけてきていて簡単なものではありません。しかし、チャレンジすることに価値があるという思いを持ち続け、頂点を狙っていきます。
小川: ここ数年、社内外からの期待がどんどん高まっているのを感じます。期待されることでプレッシャーも感じますが、それが適度にいい緊張感を生んでいると思います。厳しい時もチャレンジしていく、立ち向かっていくことも「Hondaらしさ」だと思っています。初優勝した時も社長の三部さんから「Hondaを体現してくれてありがとう」と言葉をかけてもらいました。改めて、やってきてよかったなと思います。
ニューイヤー駅伝で優勝したあとは、驚くほどの反響がありました。寮の近所の人たちが声をかけてくれるようになったといい、「従業員やファンの方に応援されるのとは、また違った嬉しさがありますね」と小川は顔をほころばせます。合宿先でも、「せっかく毎年皆さんが来てくれているから、車を買い替える時にHondaの車にしたよ」という声をいただくこともあるそうです。
Hondaがグローバルブランドスローガンに掲げる「The Power of Dreams」、そして新たな副文「How we move you.」。陸上競技部だからこそ、体現していける形があると小川は言います。
小川:
「The Power of Dreams」については、夢と目標を実現していく選手たちの姿で、わかりやすく体現していけるのではと考えています。「How we move you.」は、私たちを見てくださった方々が、一歩踏みだすきっかけになる「move」に少しでもなれればなと思っています。それからmoveには「movement」の意味もあると思っています。陸上競技部が会社の先陣を切って、movementを起こしていく存在でありたいと思っています。
各職場の方々が良くしてくださっていて、それが本当に嬉しいです。小山が優勝した直後には、前職場の方も含め、「祝勝会を開くぞ!」と声をかけてくださいました。レースの前には激励会も開いてくださり、感謝しています。いろいろな部分でのつながりを、今後もより大事にしていきたいと思っています。
Hondaの創業者・本田宗一郎がこの会社を設立したのは、「人の役に立ちたい」という思いがあったからで、その想いが会社全体に流れていると小川は感じています。自分たちもその心の部分の一助になりたい、という思いは年々強くなっています。
小川: ニューイヤー駅伝は、勝ちます。「連覇」ではなく、一つひとつの勝ちを積み重ね、チャレンジし続けていきたいですね。応援してくださる皆さんの応援がいつも大きな力(我々の夢)になっていて、自分たちを動かしてくれています。これも「The Power of Dreams - How we move you.」だなと、身をもって感じています。今後もどうぞ、陸上競技部への応援をよろしくお願いいたします。
伊藤達彦主将「自分が頑張っている姿を見せて、少しでも勇気を与えられたら」
伊藤は小川から主将に指名された時のことをこう思い返します。
伊藤: 寮のエレベーターに監督と乗っている時に「4月から主将をやってくれないか」って言われたんですよ。「ここで言うんだ!」って思いましたが(笑)。年齢もメンバーの中では真ん中ぐらいで、先輩もたくさんいるので大丈夫かな?と少し思いましたが、自分ができるなら、と引き受けました。
普段からチームメートとたくさん話すという伊藤。メンバーのことは「同じ家に住んでいるし、練習がバラバラでもご飯の時間には誰かがいるのでしゃべったり。家族みたいですね」と話します。以前から悩みを打ち明けられることもあったといい、「おしゃべりな性格なので、話しやすいんだと思います」と笑います。主将になってからは、前にも増してコミュニケーションを心がけるようにしています。
高校時代は静岡で無名だった伊藤。東京国際大学に入ってコツコツと練習を継続してきたことで、実力が花開いていきました。まだ強い選手とは言えなかった大学1年の時から、大志田秀次監督(現・Honda陸上競技部エグゼクティブアドバイザー)の縁でHondaの練習に参加。明るい雰囲気、挑戦をしていく精神が自分に合っていると感じていました。
伊藤: このチームでやりたいな、とずっと思っていました。正直なところ、Hondaに入れなかったら競技をやめてスポーツショップの店員になろうと思っていたんです。
大学4年時に大活躍した選手とは思えない驚きの一言。それだけ伊藤のHondaへの思いが強かったとも言えます。そんな伊藤だからこそ、チームメートを「家族」と呼び常に明るい雰囲気を放っているのだと思わされます。
伊藤は入社2年目で、世界の舞台にチャレンジをしましたが、そのレベルの高さを痛感しました。直近の夢を尋ねると、「来年の世界大会に出場して、少しでも以前の自分を超えたい」と語ります。そのために、まずは12月10日の日本選手権10000mでの優勝を狙っています。
伊藤: 自分が世界を目指せるような選手だとは、思ってもいませんでした。ですが、Hondaに入って学生の時とは視野が変わってから、「目指せるんじゃないか」と思うようになりました。トラックで活躍したら、ゆくゆくはマラソンもやりたいなと思います。僕は本当に最初は力のない選手でしたが、そういう選手が世界で戦う姿、「続けていればいつか夢や目標を実現できることもあるんだよ」という姿を見せ続けて、今落ち込んでいたり、ネガティブになっていたりする人たちに少しでも勇気を与えられたらな、とも思っています。
活躍するにつれて応援してくれる人の数も増え、「この人たちのためにも頑張らないと」と思うようになり、頑張る理由が自分だけではなくなりました。Hondaの従業員として、個人の目標はもちろんですが、ニューイヤー駅伝での活躍も期待されています。
伊藤:
駅伝はずっと好きです。陸上はチームでやる種目といったら、リレーか駅伝ぐらいなので……。みんなでやるのって、やっぱり楽しいなって思うんですよね。
日本選手権のあとで疲労が溜まっているのでは、とも言われますが、ある程度強い選手がいるチームなら、その選手が日本選手権に出ていますし、どのチームも条件は一緒だなと思っています。今後は主将として、競技でももっとチームを引っ張っていきたいなと思います。
伊藤にとってチームメートは家族のような存在ですが、他の従業員との交流もまた、力になっています。職場に出勤した時には陸上のことを聞かれることが多く、「自分に興味を持ってくれることがとても嬉しい」と笑顔を見せます。
伊藤: ニューイヤー駅伝では3連覇を目指して、チーム一丸となってやっていきます。Hondaファンの皆さんや従業員の皆さんの期待に応えられるように頑張りたいです。それから、できれば応援の時は名前を呼んでくれるとすごく力が出るので、ぜひ僕に限らず、走っている選手の名前を呼んでの応援をお願いします。