- 開催日 2018年9月8日
- 山梨県 小菅村
- これまでに植えた苗:3600本
- 苗木の種類:ミズナラ、ケヤキ、ヤマモミジ
東京の水源・山梨県小菅村
- 東京から多摩川をさかのぼると、やがて東京の西の端、奥多摩湖と呼ばれて親しまれている「小河内貯水池」に辿り着きます。多摩川上流をせき止めて作られた貯水池は、古くから東京の水源・多くの人々の水道水として使われてきました。
多摩川は、山梨県にある丹波川や小菅川が、奥多摩湖で合流して始まります。その多摩川の源流を持つのが、人口約700人の山梨県小菅村です。Hondaと公益財団法人オイスカ、そして小菅村が相談し、総面積の94%が森林という山間の小さな村で、Hondaの水源の森づくりが始まりました。
Honda主体で始まった小菅村の
「水源の森保全活動」
- これまでは自治体やNPOが中心となってやってきた森づくりを、企業が主体となって育成・保全し、安定した成長を目指す「企業の森」。今では多くの企業が取り組む、森づくりの形のひとつですが、そういった考え方が世の中に広まる前、Hondaが主体となって小菅村での保全活動が動き出しました。
企業が森づくりを行うという前例がなかったため、活動候補地である自治体の理解をなかなか得られず、苦労したといいます。当時の話を、第1回担当者の坪川さんと公益財団法人オイスカの田中さんに伺いました。
「企業の森」という考えが無かった時代の苦労
- (OB 坪川)「Hondaの事業所がある東京。その水源となっている森を育て、守りたい」とオイスカさんに相談し、小菅村に決定するまで粘り強く動いていただきました。豊かな水を未来へ繋ぐための「水源の森」保全活動。Honda主体の小菅村での活動を開始するにあたり、我々にはノウハウがなかったため、適切な場所を探すのが非常に難しかったのです。
- (オイスカ 田中)活動が始まったころは、「企業の森」という前例が無く、企業が森に入って何をするんだ?という時代でした。私どもと縁のあった山梨県から小菅村をご紹介いただき、村の担当者さんとお話したのです。当初は企業が山に入ると開発をすると思われていたため、話し合いは難航。しかし、「環境保全をしたい」というHondaさんの真摯な姿勢を理解していただくために、徹夜で話し合いをし、ついに「実は、うまくいかなくて困っている場所がある。そこでいいか」と場所を提供してくださいました。
13年間を振り返って
- 小菅村には、人工林を皆伐したあとに放置されていた斜面がありました。その荒地を、水源の森として再生するため、2005年5月に水源の森保全活動がスタート。当初は8年の契約でしたが、鹿害や暴風雨による被害の対応等のために5年延長されました。
特に鹿の害は大きく、苗を守るためのガードをつけたり、森全体を囲うネットを張るなどして被害を抑えました。森づくりの最後は参加者全員での歩道づくり。歩道を設置することで山を歩けるようになり、鹿の踏み荒らしでサラサラになった表土の流出を食い止めることができました。3ヘクタールの土地に、水を多く蓄えられるケヤキやミズナラ、ヤマモミジといった広葉樹を植え、斜面の色がさまざまな緑になったことを確認し、活動は終了。 13年間で行った活動回数は計26回。合計900名を超える方に参加いただきました。
急斜面・荒地だった小菅村の森、そして現在の姿
- (OB 坪川)初めて現地を訪れたとき、約30度の急斜面に驚きました。皆伐されたあとで、なおかつ急。北都留森林組合さんに「これほどの急斜面で一般の方が作業できますか?」と尋ねたところ、「こんなの平らですよ」と言われて、活動を開始したのです。参加者の安全を最優先に考え、北都留森林組合さんには毎回必ず安全についてのレクチャーをしていただき、事故なく回数を重ねられたのは喜ばしいことでした。今、日本の森は痛み、災害時の被害も拡大しています。微々たる貢献ではあっても、森林保全に力を入れていけば、より良い日本を作っていけるのではないでしょうか。今後も別の森で、活動を続けていきたいと思っています。
- (オイスカ 田中)我々もHondaさんと出会い、真摯な社会貢献とはなんぞやを実践できました。小菅村の森は、まだ成木にはなっていないけれど、当初の目的だった、水源保全にはなっていると思います。伐採されたまま放置されていた荒地は、13年かけて回復しました。ぜひ森に訪れ、風や風景を体全体で感じ、癒やされてください。
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2005年
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2018年
「小菅村ホンダの森」完了セレモニー
- 2018年9月8日、13年間の完了を記念して「小菅村森林保全活動完成記念式典」が開催されました。
記念看板の除幕式と足跡確認ツアーは再生された森で行う予定でしたが、残念ながら2018年8月の台風20号により、森へ向かう林道が一部崩壊。セレモニーは、箭弓神社(やぎゅうじんじゃ)での「焼き板づくり」体験と、小菅村中央公民館での式典の2つが行われました。
活動を振り返りながら、思い思いの焼き板づくり
- 石膏(せっこう)で絵や文字を描いた丸太を斜めに輪切りした板をバーナーで焼き、石膏を削り落とすことで文字が浮き出るというネームプレート。焼いた部分を磨くと、ツヤが出ます。参加者はそれぞれローマ字やかなで好きな名前を描き、焼き板プレートの制作を楽しみました
公民館で記念館版の除幕式
- 森林保全活動に参加した小菅村、オイスカ、Hondaの代表者による記念看板の除幕式。看板は、森の入口に建てられます。また、Hondaから小菅村へ発電機「EU18i」、ブロワー「HHB25」、そして刈払機「UMK425」が送られ、小菅村からは感謝状が贈られました。この感謝状は、小菅村の森を悩ませた鹿害にちなみ、鹿の皮で作られました。
スライドで振り返る、森の13年間
- 式典の後は、鹿肉のハンバーグや小菅村で採れたきのこ汁やこんにゃくなどの食材を使ったバイキング形式のパーティー。地元の手作り料理に舌鼓をうちつつ、北都留森林組合の中田さん、小菅村源流新興課の中川さんのスピーチ、その後、スライドショーで13年間を振り返りました。
- 全25回の活動について、「5回目くらいからはみなさん余裕ができ、急斜面をものともせずにピースで記念撮影をしたり、こちらが下請をお願いしたいくらい、みなさんの作る道はパーフェクトでした。今後は森林生態系の豊かな明るい森を作っていきたい」と振り返られた田中さん。
中川さんは、「大きな目標に少しずつ向かうHondaのものづくり精神が作業と合っていたのかなと思います。13年間の活動で、小菅村ホンダの森は見守る段階、必要なときに手を掛けてあげるだけのサポート段階にきました。比較的東京から近い村なので、ぜひ森を見に来たり、温泉に入っていただいたり、訪れる皆さまとの交流を続けて行きたいです」と締めくくりました。
小菅村は人口702人(2018年8月現在)という過疎の村ですが、毎年5月4日に行われる「多摩源流まつり」には1万人を超える人で賑わう。Hondaも子ども達にダンボールクラフトを楽しんでいただく教室などで協力。「小菅村ホンダの森」活動で小菅村が大好きになったという参加者の中には、お祭りにも参加し、山伏の格好をしてたいまつに着火する役を演じたことも。
参加者の声
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13年間、夫婦で休まず参加!
Honda OB 坪来さんご夫婦第1回から、ほぼ皆勤賞で参加しています。急斜面でただ立っているだけだと、ツルツルと滑っちゃうところもありました。私と母ちゃんは田舎育ちだから、どういうところに足を置いたら大丈夫か分かって作業をしていましたが、ボランティアで参加した方は、初めての方もいたんじゃないかな。そんな方でもケガが無いよう、安全面をしっかりサポートしていたのは、Hondaらしいなと感じましたね。
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過酷な作業の連続!森づくりの大変さを体感
Honda IT本部 パーツシステム課 加藤さんバイクで奥多摩へ行くこともあるので、少しでも森づくりの力になりたいと思い参加しました。ベランダで植物を育てるくらいかなと思っていましたが、想像を超える作業量!
木を植えるより、植えるための下地を作ったりネットで囲ったりしていました(笑)。
大変な思いをしたからこそ、森を育てる難しさを肌で感じ取ることができました。
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次世代へ受け継ぎたい、Hondaスピリット
Honda OB 杉田さん水源の森活動への初参加は50代のころ。社会に恩返ししたいと思い、社会活動を始めました。Hondaに根付く、本田宗一郎スピリットが自分のベースにあり、社会になにか、貢献したくなったんでしょうね。
我々OBや、今の現役世代が活動できなくなっても、若い世代に続いてもらいたいですね。自然を守るという桁違いに大きなことは、何10年という長いスパンで育てていかなければ続きませんから。
主催者の声
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無事完了した「小菅村ホンダの森」をお手本に、
全国に森づくりの取り組みが広がって欲しい
Honda 総務部 部長 仁藤さん初めてHondaが主となって動いた森林保全活動の地・小菅村の森では、鹿の食害対策、遊歩道づくりなど、民間企業による森づくりのパイオニアとして、森のノウハウを学ばせていただきました。これは大きな財産です。森づくりの事例として、全国に小菅村での活動が広まって欲しいと思います。今回で、小菅村での水源の森保全活動は終了ですが、小菅村の森づくりはまだまだ続きます。リピーター率が高く、一度訪れたらファンになると評判の村なので、また森を訪れてください。多くの人に支えられて、森は保ち続けられるのですから。 水源の森保全活動は、企業と地域が一体となって活動する、心が豊かになる貴重な機会です。これからも一人でも多くの方に参加していただきたいですね。
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多くの方の協力でできた、水源の森保全活動
Honda 総務部 社会活動推進室 山口さん小菅村の森はいろいろな出来事や自然のいたずらがあり、計13年の活動になりました。継続的に参加してくれた方がコアとなってくれたおかげで、無事、目標とする森になれたのだと思います。参加者のお弁当も多くの地元の方に協力してもらい、汁や野菜料理を作っていただいたことで、地域とつながり、ほんの少しでも地域経済に貢献できたのは我々としても嬉しいところです。水源の森保全活動は、小さなことの積み重ねかもしれないけれど、自分たちの手で作業し汗を流すことで、森林保全の意識が高まり、今後森林環境の改善につなげられると実感しています。一度参加していただければ、その素晴らしさが伝わるはずですね。
樹木が生い茂る森からの恵みである“水”。「きれいな水を未来へ残したい」と考えたHondaは、まずは森づくりに着手。
古くから東京都の水源として大切にされてきた多摩川源流の森の育成を、自治体と共に進めてきました。従業員・OB・地域の方々の協力を得て、手探りながらも活動を続けてきた13年。木々がしっかりと地に根付いたため、今回の記念セレモニーで活動は区切りを迎えます。今後はHondaから地域へバトンタッチ。多くの方に見守られながら、小菅村の森は成長を続けるでしょう。
Hondaは次世代へ豊かな水を受け継ぐため、「水源の森保全活動」を全国各地で続けてまいります。