Sustainable Impacts2021/05/31
Hondaらしさは、私らしさ──エネルギーの力で拡げる、モビリティの可能性
ライフクリエーション事業本部に所属する後藤 絢は、一度Hondaグループ外の会社に勤めたものの“Honda流”の仕事や考え方に共感し、再び戻ってきた社員です。複数の会社で経験を積んで感じたことや、Hondaの新規事業推進部で見つけた楽しさについて、後藤が語ります。
後藤 絢Aya Goto
ライフクリエーション事業本部 新事業推進部MPP事業課
2006年にグループ会社の株式会社ホンダコムテックに入社。その後、ホンダソルテック、ホンダトレーディングを経て、一度は外部の太陽電池モジュール製造販売メーカーに転職。しかし、Hondaに惹かれる気持ちを持ち続け、2019年にHonda(本田技研工業株式会社)に中途入社。Honda eのV2LやV2H※の販売企画に携わった後、2020年10月より現職。
※V2L・V2H…クルマから外部に電力を供給するシステム。V2L (Vehicle to Load)はクルマから家電に、V2H (Vehicle to Home)はクルマから住宅等に電力を供給する。
モノづくりへの興味から、エネルギーの道へ
ライフクリエーション事業本部に所属する後藤は、Honda Mobile Power Pack※という着脱可能な可搬式バッテリーを、モビリティ以外の製品に活用するプロジェクトを担当しています。
※Honda Mobile Power Pack…再生可能エネルギーを利用して発電した電気を蓄え、小型電動モビリティの動力や、家庭での電源として活用する、着脱可能な可搬式バッテリー。詳細はこちら
Mobile Power Pack (以下MPP)の活用拡大は、電動モビリティとエネルギーサービスをつなぎ「自由な移動の提供」と「再生可能エネルギーの利用拡大」に貢献する「Honda eMaaS(イーマース)」のコンセプトの実現に欠かせないものです。
現在、MPPのプロジェクトを担当する後藤は、2019年にHondaに中途入社する以前から、長きにわたりエネルギー商品の販売企画に携わっています。
後藤 「グループ会社のホンダコムテックには派遣社員として入社し、商品企画部に配属されました。最初はホンダレーシングのウェアやグッズの企画をしていました。その後Hondaで働き続けたいという想いが強く、太陽電池の製造を手掛けるホンダソルテックへ入社しました」
しかし、後藤はもともと、自動車やエネルギーの分野に興味を持っていたわけではありませんでした。
後藤 「学生時代は、服飾デザインを学びました。今振り返ると、Hondaとはまったく縁がないところにいたんですよね(笑)
ただ、幼少期より両親からモノをつくる楽しさ、それを使う楽しさ、そして周囲のみんなと一緒に楽しむということをたくさん学びました。そこからモノづくりに興味が湧き、その興味がだんだんとデザインに向き、Hondaへ向かっていったんだと思います」
太陽電池事業のホンダソルテックでは営業部に所属し、総務や経理、販促業務を担当しました。2014年に事業が終了したため、事業の立ち上げから終わりまでに関わったことになります。
後藤 「太陽光発電はエネルギーという見えない価値をお客様に提供するので、難しくもあり楽しくもあると感じました。それ以降も15年ほどエネルギー分野に携わっていますが、エネルギーの価値をどう引き出すか、今でも手探りで仕事を進めています。試行錯誤することに楽しさを感じますね」
さらに、多様なバックグラウンドを持つ人たちと話しながら事業を進められるのも、自動車業界と比べるとまだ歴史の浅いエネルギー業界ならではの楽しさです。
後藤 「現在所属しているMPP事業課のメンバーは、半数以上が中途入社ということもあり、様々なバックグラウンドを持っています。ディスカッションや打ち合わせでは、前職の経験や考え方を学んだり、長くHondaにいる方からHonda流の仕事の進め方を学んだりできて、すごく刺激的です。互いに混ざり合って進んでいけるところが、新規事業ならではの魅力だと思いますね」
一度は離れたものの、“Honda流”の仕事がしたいと考え再入社
▲前職時代、電力会社と合同で取り組んだプロジェクト
Hondaが好きだった後藤は、ホンダソルテックの事業が終了した後、海外物流を担うホンダトレーディングで働くことにしました。しかし、自分が活き活きと働けるのはエネルギーの分野だと感じ、太陽電池モジュール製造販売メーカーに転職したのです。
ただし、Hondaとのつながりが完全に途切れたわけではありませんでした。
後藤 「転職先では、営業戦略や営業企画を担当していました。そして太陽光発電だけでなく、家や電気自動車など、色々な商品や商流を組み合わせて新しいパッケージ提案をしようというプロジェクトを立ち上げることになったんです。電力会社などと組み、再生エネルギーとエネルギー機器の普及拡大をするために、新しい売り方にも挑戦しました。一方で、今ならHondaと一緒にプロジェクトができるかもしれないと思い始めていました」
別の会社にいながらHondaでプロジェクトをやりたいと考えたのは、後藤のなかに“Honda流”が染み付いていたからでした。
後藤 「現場・現物・現実を重視するHondaの三現主義が染み付いていて、転職してからも現場へ足を運ぶことがよくありました。Hondaでやってきたことが自分のなかでしっくりきていたので、新たなプロジェクトもHondaで挑戦したいと思ったんです」
その後出展したイベントで、知り合いのHonda社員と話す機会があり、Hondaが目指している世界観を教えてもらいました。そのことがきっかけとなり、Hondaの中途採用に応募したところ、縁がつながり2019年に中途入社することになったのです。
後藤 「入社後、新事業推進部エネルギー事業課に配属されました。メガソーラーの事業管理や水素自動車や電気自動車につなげることで、クルマに貯めた電気を使うことができる製品の販売促進、Honda eの日本での販売に合わせたエネルギー機器のパッケージ提案の仕組みづくりを担当しました。
特にHonda eのパッケージ提案は、自分がやりたいと思っていたことでした。自身の太陽光ビジネスの経験を活かし、『クルマ』と『エネルギー』を結び付けた、『クルマとエネルギーのサービスパッケージ提案』に携わりました。V2Hシステム機器は、クルマの大容量バッテリーから電気を取り出し、家庭内の様々な家電製品を稼働させることができます。クルマとつながり、クルマに新たな価値を付加することで、停電などの非常時にも使える機器です」
後藤にとって、部門をまたいで営業領域のプロモーションチームと仕事をすることは初めてでした。戸惑いや葛藤もたくさんありました。そんななかでも、電動自動車とエネルギー機器をつなげることで新たな価値が生まれることを認知してもらうことや、お客様が関心を抱いたり欲しいと思ったりしたときに、クルマと一緒に提案できることに重点を置いて懸命に取り組みました。
後藤「実際に太陽光発電を設置しているお客様からHonda eとV2Hを検討されているという相談の問い合わせをいただいたり、Honda eのホームページに掲載しているV2Hのパンフレットが、発売と合わせて想像を上回るダウンロード数を記録したり、たくさんの人に関心を持ってもらえたんだなと実感することができました。
この1年の実体験はとても大きかったです。エネルギー市場の変化は、近年速度が上がっていますが、目指すエネルギー社会に向けて、一歩ずつコツコツと取り組むことが大切であると感じています」
改めて受け継ぎたいと感じた、Hondaの考え方や社員の熱量
2020年にMPP事業課へ異動した後藤は、新たな課題や難しさを感じています。
後藤 「今までの事業は二輪、四輪、ライフクリエーションに分かれていましたが、MPPはバッテリーによって全てのプロダクトと結びつくことができます。
新しい事業を構築するためには、前例がないことに取り組まなくてはなりません。どのように既存事業を整備していくか考えながら、一つひとつ手探りで進めています」
難しさを感じる一方、MPP事業には新規事業ならではの醍醐味があります。
後藤 「新しい領域なので、切り拓いていくのはおもしろいと思っています。Hondaのように多岐にわたる製品を製造している会社は少ないです。二輪、四輪、ライフクリエーションがつながることで、新しい売り方や広げ方を見つけていくということにやりがいを感じています
また、Hondaに長くいる社員と中途入社の社員が協力して円滑にプロジェクトを進めていけるのも、MPP領域のおもしろいポイントです。長くいる方が道標を示してくれるなかで、中途のメンバーが新しい領域について瞬発的に話を進められています」
一度外に出てからHondaに戻ってきた後藤は、改めてHondaの考え方に共感し、良いところを受け継ぎたいと考えています。
後藤 「お客様第一主義であり、地球環境問題の解決に早くから取り組んできたところは特に共感しています。また、私が思うHondaの良いところは、Hondaについて熱く語れる社員がいることです。
他社に行くと、自分の会社のことを熱く語れる人は多くないと感じます。Hondaという会社はこれまで様々な挑戦を行い、それを社員たちが誇りに思っています。流れを絶やしてはいけないと考えています」
時には専門家ではない立場から価値を伝える
後藤がほぼエネルギー業界一筋でこれまで歩んでくることができたのは、ホンダソルテックで働いていたとき上司に言われた言葉が支えになったからでした。
後藤 「今では当たり前のように太陽光発電が設置された家を見ることができますが、当時はそこまで普及していませんでした。さらに、電気や建築についても専門的な知識を持っていなかったため、エネルギー業界の道を歩むことが難しいと悩み、諦めようかと思ったことも何度もありました。
そのとき上司に『全員が専門家にならなくていい。製品を普及・拡大させていくためには、その製品に今はまだ興味のない方にも価値を伝えなければならない。それができるのは、専門家ではない人だよ』と言われたんです。
専門家でないことは強みにもなると言ってもらえたからこそ、今はまだ興味のない方にも興味を持っていただけるように、またその方が次の誰かに価値を語り広めてもらえるように、『商品の価値をシンプルに分かりやす伝えること』を日頃から心がけるようになりました」
後藤は一度他の会社を経験したからこそ、Hondaの弱みと強みを客観的に分析しています。
後藤 「Honda eMaaS実現のためには、モビリティとモビリティ以外を組み合わせる必要があり、そのために事業を横串で通すような活動をしなくてはなりません。それはこれまでHondaがあまりやってこなかった弱い部分かもしれません。
一方、他の会社には負けない強みもあります。新規事業をやるにしても、バッテリーを使い終わった後のことや環境保護など、Hondaには社会への影響といった大きな視点で見なくてはならない責任があるのです。二輪、四輪、ライフクリエーションといったこれまでの経験があるからこそ、責任感を持って新たなビジネスを構築していけるのは強みですね」
エネルギー業界は、まだ成長中です。後藤はこれまで自身が積み重ねてきた経験を活かし、Hondaらしいアプローチ、Hondaでしかできないこと、Hondaだからこそできることを考えています。
後藤 「Honda eMaaSの世界観は、MPPというひとつのシステムがモビリティやモビリティ以外の数多くの商品に活用されていくというものです。再生可能エネルギーの普及拡大とともに、MPPの活用の拡大を図りたいと思います。そのためにはまだエネルギー機器に関心のない方への普及を進めることも重要だと考えています」
Hondaの考え方に共感し、Honda流の仕事術を身につけ、新規事業を推進するため奮闘する後藤。
目指す未来の実現に向けて、今後もエネルギー業界の道を歩んでいきます。