Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える

[特別対談] 不確実な未来だからこそ“人の力”を高める人事変革を

2021年2月5日、人事部 人事部長(取材当時:人事部 人材開発課長)の大野 慎一が、株式会社ニトリホールディングスの永島 寛之氏とともに、グロービス社主催のオンラインカンファレンス「激動期における人事の改革と挑戦」にてHondaにおける取り組みをご紹介しました。今回はHonda大野の人材育成にかける想いとトークセッションの模様をお届けします。

大野 慎一Shinichi Ohno

人事部 人事部長(取材当時:人事部 人材開発課長)

1998年京セラに入社し人事領域での経験を経て、2003年、Hondaに中途入社。鈴鹿製作所、労政企画部での全社の人事労務企画を経て、2014年~2017年Honda of Canada Manufacturingに駐在。帰国後、現職にて人リソースの最大化に向けた人事戦略全般をリードする。

永島 寛之Hiroyuki Nagashima

株式会社ニトリホールディングス 組織開発室 室長

東レを経て2007年ソニー入社。米国マイアミ赴任時にダイバーシティ組織の運営を通じてグローバル組織構築に興味を持ち、2013年に米国出店を果たしたばかりのニトリに入社。その後、店長、人材採用部長、採用教育部長を務め、2019年3月から現職。「個の成長が企業の成長。そして、社会を変えていく力になる」という考えのもと、社員のやる気・能力を高める施策を次々と打ち出す。

井上 陽介Yosuke Inoue

株式会社グロービス グロービス・デジタル・プラットフォーム マネジング・ディレクター

大学卒業後、消費財メーカーに入社し、海外部門にて中国工場のオペレーション管理等に携わる。グロービス入社後はグロービス・コーポレート・エデュケーション(GCE)部門にて、さまざまな業種の企業に対してコンサルティング及び研修プログラム提供を行う。

Hondaの答えは「自分のために働け」

コロナ禍は、多くの企業に対して想定を大きく上回る変化を突きつけました。

リモートワークをはじめDXの推進が急務となり、企業と働く人との距離感や関係性にも変化の兆しがみられます。そして、その中心として、人事関連領域でも変革と挑戦が否応なしに求められています。

モビリティ業界では、従来の延長線とはまったく異なる次元での変化、変革への対応が不可避なのです。

もう“トンデモナイ”ことになっている、と大野は言います。

大野 「近年はMaaS(Mobility as a Service)やCASE(Connected・Autonomous・Shared&Sevices・Electric)といったキーワードで示されるように、クルマやバイクは単なる乗り物としての価値以上のものが求められるようになっています。異業種との競争および共創が必須となり、さらなる変化を遂げていかなければなりません」

変化のための第一歩は、現状の問題を知り、課題設定すること。
アセスメントやヒアリングを実施したところ、さまざまな課題が浮き彫りになってきました。

大野 「たとえば、リーダー層であれば『見えない将来を展望した独自のビジョンや想いを描けているのか?』『自ら学ぶ姿勢や知的好奇心を周囲に見せているか』といったことです。支援型・参加型のリーダーシップの在り方にも、課題があると考えられます。

また、他社と比較すると、当社は『人材の長期育成』『20代の成長環境』が低い傾向が見られます。今、人材育成の見直しに踏み切らなければ、Hondaはこの先も生き残っていけないのではないか……という大きな危機感を持っています」

今、変わらなければならない。

誰しもが頭ではわかっているはずです。しかし、一人ひとりが心の底からそう思えているか?人事はそこまで意識して踏み込み、発信できているか?施策に織り込めているか?

我々はそこにこそ向き合いたいのだ、と大野は言います。
そして、そのための道しるべは、創業者・本田 宗一郎によって示されていました。

──自分のために働け。

個人のキャリアが重視される社会を迎えた今こそ、その言葉は古くて新しい響きを持っていたのです。

採用から育成、能力開発まで変革をやり抜き、可能性を解き放つ

一言で表すならば、まず目指すことは「採用から育成まで一貫した人事改革」です。

前例の通用しない世界で自ら考え、行動できる能力と意思を有する人材を採り、育てるにはどうすべきか。

大野はその問いに、真摯に向き合いたいと考えています。

大野 「今一度、全体観を描き出し、紡いでいく必要があります。一言で人事といっても、母集団形成から面接対応、内定から入社、育成と領域は幅広い。

さらに最近ではインターンもあり、グローバルでのタレントマネジメントがあり、HRテックの活用や組織開発までも。

そこで、我々としてはまず自分たちの領域で改革に挑み、その波を徐々に大きくしていこうと考えました。“キャリア”を軸に一貫性をもった人事制度への転換をめざしていくことにしたのです」

たとえば能力開発では、Hondaらしさと企業としての生き残りの両立を図るべく「専門性強化」を軸とし、対象層別に効果的な育成強化を進めています。

大野 「効果を最大化させるために大切なのは“面”で施策を打つこと。不確実な時代の変化、求められる専門性の変化に対するケイパビリティに重点を置き、Hondaの将来への適応力を高めることを重視しています。

また、能力伸長の意欲を刺激し、そういった人材の母数を増やしていくことで、Hondaの総合力を高めていく。この両軸で、能力開発の在り方を見直しています」

変革は始まったばかり、まだまだ「実践に向けた“試行錯誤のど真ん中”」だと、大野は言います。

大野 「特に大切にしたいのは、社員の内発的な学びにつなげていくこと。Hondaらしくチャレンジ精神を焚き付けるような仕組みや、学びの場を提供していきたいです。

そして、やはりHondaという会社は専門性で際立つ企業でありたい、との想いは揺るぎません。働く人、組織を際立たせていくことを人事のポリシーと考え、他部署や多くの関係者を巻き込みながら前進していきたいと考えています」

キャリアを軸に、社員の生き方に貢献していくこと。

そして、三現主義をはじめ、Hondaが大切にしてきたことを“今”に合わせてそのかたちを変えていくこと。

その上で、自由になるために自分たちでやり抜くことを諦めないし、社員には諦めてほしくない。

Honda社員の可能性を解き放つ——。

これが、人事としての想いのすべてなのです。

社会の変化を捉えながら、社員を育て、伸ばすための工夫を

トークセッションでは、グロービスの井上氏、ニトリの永島氏と両社の取り組みを語りました。

井上 「特に2020年は緊急事態宣言を受け、リモートワークの導入が進み、多くの会社で対応に追われたかと思います。この環境下での変化についてお二人はどのように捉えていらっしゃいますか?」

永島 「リモートワークでは、適正なメンバーに適正な業務を適正に振り分けられるかが重要で、マネジメント手腕がリアルに浮き彫りになりました。日ごろからメンバーのスキルや志向を把握しておくこと、あとはジョブディスクリプションの重要性を再認識したと思います」

大野 「Hondaではリーチングアウトを成長の機会と捉え、状況に応じて業務をアサインするケースが多いんです。ジョブ型雇用の推進といったキーワードを耳にするようになってきましたが、ジョブディスクリプションをきっちり定めるよりは、柔軟に対応していく傾向が強いかもしれません。今後に向け、どうあるべきか改めて考えていかなければなりません」

また、配置転換についてのスタンスでは、両社のビジネスを反映した違いが如実に表れていました。

永島 「当社では基本的に3年に1回の頻度で配置転換を行なっています。ニトリのビジネスモデルは、お客様のご不満やご不便を解決する商品をつくり、販売し、お届けする仕組み。サプライチェーン全体のどこにかかわってもお客様の目線が大切になることから、多様なプロセスを経験する手立てとして配置転換を位置づけています」

一方、Hondaではやはり専門性強化の観点で配置や所属を捉えています。

大野 「当社の場合、職種が変わる配置転換は少ないですね。ただ、それぞれの専門領域の幅を広げるために新しい業務や職種に挑戦する、というケースは存在します」

さらに人事研修においては、インプットとアウトプットのバランスを重視し、両社ともグロービスのコンテンツを活用しながら展開されていました。

大野 「たとえば新入社員研修では、セールス関連のコンテンツを受講した直後に営業部門のワークショップを実施する……など、インプットしたらすぐにアウトプットできる設計を心がけました。他部門に協力をあおぎながら、より実践的な感覚を養う研修設計にしています」

永島 「確かに、自律性を高めるにはアウトプットの訓練が必要ですよね。大野さんがおっしゃったように具体的な業務に紐づけることは大切だと思います。加えて、当社ではアウトプットに用いるフレームワークも学べる設計にしています」

セッションではさらに、DX活用からHRテック、データ活用といった話題へと展開していきました。 

HRテックを活かし、心を見つめる。人事部門の挑戦は終わらない

HRテックという領域の注目度に合わせて、Hondaでもニトリでも人事領域でのデータ活用の可能性を模索しています。

大野 「たとえば、何を学ぶか、どう学ぶかがわからない状態であるなら、データやテックを活用してその段階からサポートするのも、我々の役割だと考えています」

井上 「デジタルな学びの機会を提供するというのは素晴らしいことだと思いますが、本人がやりたいと思っていないと、なかなか、一人ひとりのアクションにつながらないことも起こります。

会社の制度として必ず受けなければいけない研修もありますが、究極的には、自分のために働けて、自律的にどんどん学習していく状態をつくっていくのが理想ですよね」

永島 「人材の発掘にも活用できますよね。抜きん出た人は何もしなくても目立ちますが、顕在化する前の光る原石のような人材も見つけたい。そこで、ぜひデータやテックを活用したいです」

また、会社と社員の距離感を示す上で「遠心力・求心力」というキーワードも上がりました。

永島 「ビジネスモデル上、ニトリはそこまでリモートワーク率が高くないものの、組織的にはどうしても遠心力が働きやすいと痛感する1年でした。会社としての求心力を高めるためにも、改めて足場を固めなければいけないと感じています」

大野 「確かに、個人のキャリアを大切にしてほしいと望んで支援を行った結果、
自律的に考えるようになり、組織を離れるという選択につながることもありますからね。

モビリティ業界で言えば、異業種からも新しい人材を獲得していくことが求められる状況です。その中で、Hondaという会社の求心力をベースに、以前からいた人、新たに飛び込んでくる人との融合なども、大きな課題になっていくでしょう。

そのときに求心力となりうるものは、『Hondaだからこそできるんだ』と思ってもらえるような環境づくりではないかと思いますね」

そして何より大事なものとして「一人ひとりと向き合うこと」と、両社は声を揃えて言います。

永島 「人事ってどうしても経営に近い位置になりやすいですが、目線は必ず個人に合わせるのが大事です。私は面接でも比較ではなくその人個人を見るよう心掛けていますし、その姿勢は今後も変わらないですね」

大野 「当社もかなり泥くさくて(笑)。個人にとことん向き合うのは、Hondaの良さとして大切にしていきたいと思っています。やっぱり人事である以上、社員の成長や可能性を経営や会社が信じられる状態にしたいですね」

目指すものをしっかりと見つめ、できることを着実にやっていく。その重要性は、時代が変わろうとも変わらないものなのかもしれません。

永島 「人事の仕事に100点満点はなくて、常にベターを探って最適化していくのが本質ですよね。それでも、ゴールを見据えてやり続けるしかない。そんな姿勢で進んでいきたいです」

大野 「未曽有のスピードで変化する今だからこそ、人事が変革できることはたくさんある。これほどに人事がフォーカスされている時代はないと感じています。想いを胸に、多様な手段を駆使して、どんどんチャレンジし続けていきたいと思います」

変革の時代、奮闘する人事のチャレンジは続いていきます。

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