Hondaは、人間と共存、協調できる新たなモビリティーを目指して、実環境のなかで、すばやく状況を判断して、機敏に行動することを可能とする次世代ASIMOの技術を発表した。
主な技術としては、
1)人間と同様な自然な走りを実現する新姿勢制御技術※
2)自律で連続移動する技術
3)人と同調してスムーズに動作する技術
1.新姿勢制御技術
移動の高速化に伴う足のスリップや空中でのスピンを防止しつつバランスを取るために、上半身の曲げやひねりを積極的に用いる新姿勢制御理論と、新開発の高応答ハードウエアにより、時速3kmの走りを実現した。同時に、歩行速度も従来の時速1.6kmから、時速2.5kmへと向上させた。
2.自律で連続移動する技術
床面センサにより得た周囲情報とあらかじめ記憶しておいた地図情報とを、歩きながら照合することによって経路ズレを補正し、立ち止まることなく目的地まで移動する。
また、同センサや、頭部の視覚センサなどにより障害物を発見した場合は、自らの判断により他の経路に迂回する。
3.人と同調してスムーズに動作する技術
頭部の視覚センサや手首に新たに追加した力覚センサなどから人の動きを検知することで、物の受け渡しや、相手の動きに合わせた握手、さらには手を押し引きされた方向への足の踏み出しなど、人の動きに同調した動作を可能とした。
Hondaは、これらの新技術を発展させて、人に役立つASIMOを目指す。
このモデルの主な仕様
1. 走り
3km/h(跳躍時間 0.05秒)
2. 通常歩行速度
従来1.6km/h→2.5km/h
3. 身長
130cm(現行120cm)
4. 体重
54kg(現行52kg)
5. 稼動時間
1時間(現行30分)
6. 関節自由度数
34自由度(現行26自由度)
- ・腰回転関節:
走り、および歩行時、脚を振ることによって発生する反力をキャンセルする為に、腕の振りに加えて、積極的に腰の回転をさせることで、更なる歩行のスピードアップを実現した。 - ・手首の曲げ関節:
手首にさらに2軸が追加されたことで、手首まわりの柔軟な動きが可能となった。 - ・親指関節:
従来はひとつのモーターで5指を駆動させていたが、親指用を独立して動かすためのモーターを追加したことで、色々な形の物が持てる様になった。 - ・首関節:
首関節に新たに1軸追加したことにより、表現力が増えた。
- ※新姿勢制御技術について
走りを実現するにあたって、二つの大きな課題があった。ひとつは、正確な飛躍と着地衝撃の吸収、もうひとつは、高速化に伴うスピン・スリップの防止であった
- 1.正確な飛躍と着地衝撃の吸収
ロボットにおいて走りを実現するためには、足の蹴り・振り出し・着地動作を、極めて短い周期で遅れなく繰り返すとともに、着地時に発生する瞬間的な衝撃を吸収する必要があった。Hondaは、新開発の高速演算処理回路、高応答・高出力モーター駆動装置、軽量・高剛性の脚機構によって、従来比4倍以上の高精度・高応答なハードウエアを完成させた。 - 2.スピン・スリップの防止
足が地面を離れる直前と足が地面に着いた直後は、足底と地面との間の圧力が低いのでスリップやスピンが生じやすい。
これを克服することが、走りのスピードアップにおける制御上の最大の課題であった。これに対し、Hondaは従来のHonda独自の二足歩行制御理論に加え、新たに上半身の曲げやひねりを積極的に用いることで、滑りを防止しながら、安定した走りを実現する新しい制御理論を開発した。
これらにより、人間の様に滑らかな時速3kmの走りを実現した。また、歩行速度も従来の時速1.6kmから、時速2.5kmへと向上させた。
なお、人間の走りは、速度に応じて一歩の周期(走行周期)が0.2~0.4秒、両足が浮いている時間(跳躍時間)は0.05~0.1秒に変化する。
今回のASIMOの走行周期は0.36秒、跳躍時間は0.05秒で、人のジョギングと同等である。