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調和という思想から生まれた初代ACCORD(1976年) – 低公害エンジンが実現した「環境との調和」
1976年5月に発売された初代ACCORD。1.6L EF型直列4気筒SOHCのCVCCエンジンを搭載
「調和」を意味するACCORD(アコード)は1976年に誕生しました。Hondaは1972年に日常の扱いやすさを最大の目的とし、「世界に通用するベーシックカー」を目指して開発したCIVICを発売。翌1973年には、当時最も厳しいとされていた排出ガス規制の米国マスキー法1975年規制を世界で初めてクリアしたCVCC※1エンジン搭載モデルを追加設定しました。
※1 複合渦流調速燃焼のことで、Hondaが独自に開発した燃焼技術。副燃焼室に濃い混合気を供給して着火性を確保し、主燃焼室に噴出する火炎によって薄い混合気を効率良く燃焼させる。これにより排ガスに含まれる有害物質のCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)を大幅に低減させる
ACCORDは低公害のCVCCエンジンを搭載しつつ、オイルショック後の社会が求めた「ゆとり」を付加し、環境と社会との調和を図りました。クルマに求められる機能を満足させるだけでなく、機能や性能に加え情緒面で余裕をもたらし、新たな価値を創出しようとしたのです。初代ACCORDの開発の狙いについて、当時のHondaのプレス資料では次のように説明しています。
『ACCORDとは、「調和」です。
ここにご案内する<ACCORD>は、若々しい精神をもつ現代人のクルマとして、ホンダが開発した新鮮な<ハッチバック・セダン>。
載る一体への「ゆとり」とクルマをとりまく環境への「調和」を提供することを基本テーマとした<新しい主張のあるアダルトカー>です。
CIVICに求めたクルマの原点を変えることなく新しい価値をクルマに与え、ヒューマンなクルマとしての豊かさをもたせて完成しました。』
CIVICが搭載するCVCCエンジンの排気量は1500ccですが、ACCORDに搭載するにあたって排気量を1600ccに拡大。低公害性はそのままに、フラットで粘り強いトルク特性による優れた運動性能と、低燃費を合わせ持たせました。また、エンジンマウントを新設計することで、室内に伝わる振動・騒音を極めて小さくしています。快適な長距離走行を可能にするための「ゆとり」を実現するためでした。
1978年には昭和53年規制に対応した1.8LのEK型エンジンを搭載
1978年9月には、CVCCエンジンの排気量を1750ccに引き上げた「1800」シリーズに刷新。副燃焼室の構造を改良して火炎伝播特性の向上を図り、より希薄な混合気でも確実で滑らかな燃焼が得られるようにしました。この結果、加速時を中心に低速回転から高速回転まで全域にわたり、使いやすく安定したトルク特性が得られるようになりました。
1980年5月にはCVCC-Ⅱエンジンを搭載
CVCC-Ⅱエンジンでは、希薄燃焼をさらに進め副燃焼室を主燃焼室のほぼ中央に配置
1980年5月にはエンジンをCVCC-IIに進化。希薄燃焼方式をさらに一歩進め、燃焼室の端にあった副燃焼室を主燃焼室のほぼ中央にレイアウトするセンタートーチ方式とするとともにトーチ孔を多孔化。これにより燃焼効率を高めるとともに、走行条件に合わせて希薄混合気とEGR(排ガス再循環)の率を最適に制御するラピッド・レスポンスコントロールシステムにより、燃費とレスポンスを両立させました。
1977年にノッチバックの4ドア・サルーンを追加
ベーシックであることを旨として開発したCIVICは、全長と全幅は最小限に抑えながら、大人4人がきちんと座れる居住空間を確保することをターゲットとしていました。このターゲットを実現するため、2ボックス型のボディにFF(前輪駆動)方式のパワートレーンを選択しました。
Hondaのクルマづくりの根幹にある考え方は「人間中心」です。それを象徴するのが、「人のためのスペースは最大に、メカニズムのためのスペースは最小に」を意味するM・M思想(Man-Maximum、Mecha-Minimum、マン・マキシマム/メカ・ミニマム)です。
FFを選択すると、エンジンをフロントに搭載して後輪を駆動するFR(後輪駆動)のようにプロペラシャフトを床下に通す必要はなくなり、そのぶん居住空間を広くすることができます。
ACCORDでは、M・M思想のコンセプトはそのままに快適性を加えました。ACCORDのホイールベースはシビック比で180mm長い2380mmとしました。これにより、後席の居住性に「ゆとり」をもたらしたのです。
2代目ACCORD(1981年) – エレクトロニクスが拓いた新価値
ACCORDは1981年にフルモデルチェンジ、2代目に進化。ボディタイプは3ドアハッチバックと4ドアサルーン(セダン)が設定
Hondaは創業時から「積極安全思想」※2を掲げ、安全技術の開発に精力的に取り組んでいます。ACCORDは半ドアやブレーキランプの不灯などがひと目でわかるセーフティインジケーターや、点検時期を記憶表示するメンテナンスインジケーターを装備しました。また、通常は体を締め付けず動きが自由で、装着にわずらわしさがない3点式ELR(エマージェンシー・ロッキング・リトラクター)シートベルトを設定し、2方向衝撃吸収ハンドルを採用しています。高い安全思想は初代でさらに強く意識され、以後脈々と受け継がれることになります。
※2 Hondaの基本理念の一つである「人間尊重」から派生する創業以来の「人命尊重」思想に基づき、事故が起きた後の対処ではなく、「事故を未然に防ぐ」ことを最優先する安全思想
初代ACCORDは1976年5月の発売以来、世界を代表するFF小型車として日本をはじめ北米や欧州など約90ヵ国の人々に愛用され、累計生産は150万台に達していました。1981年9月に発売した2代目ACCORDは、時代の要請である「省資源」「省エネルギー」に加え、「快適性」や「走り」をより高次元に引き上げることで、ワールドカーとして大きく飛躍すべく開発は行われました。
2代目ACCORDの開発にあたっては、当時のプレス資料には開発コンセプトが次のように書かれています。
『Hondaは、新型ACCORDの開発にあたって、この「快適哲学」をさらに徹底し、すべての人々に新しい次元に高めた快適さを味わっていただくため、価値ある装備を標準化させた「ワールド・クォリティ・カー」を念頭におきました。』
新型ACCORDはクルマ本来の基本機能(走る、曲る、止まる)において最高度の水準を保った上で、乗る人すべてが素直に実感できる高い快適性を実現。加えて、使い勝手の良さを一段と高め、しかもトップクラスの優れた燃料経済性を実現し、総合的な高品質化を図りました。
このトータルなハイ・クォリティは、あきらかにFF小型車界において世界的な新しい価値基準となり得るものと確信します。
2代目ACCORDは、上級車種らしくさまざまな先進装備を設定
ACCORDの価値を大きく引き上げる手段として注目したのは、エレクトロニクスでした。ただし、クルマが持つ機能の一部を機械から電子に単純に置き換えるだけではお客様に喜んでいただけない。従来のクルマにはない新しい機能を持つことが、お客様の支持を得る上で重要だと考えました。4ドアサルーンとハッチバックの2つのボディタイプを設定した2代目ACCORDが搭載する代表的な新技術は以下のとおりです。
世界初のカーナビゲーションシステム「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」を2代目ACCORDにオプション設定
全車に標準装備したクルーズコントロール
クルーズコントロールは、あらかじめインストルメントパネルのスイッチをオンにしておき、希望速度でステアリングホイール上のセットスイッチを押すことで機能します。ブレーキやクラッチペダルを踏むとセットは一旦キャンセルされますが、車速が45km/h以上であればリジュームスイッチを押すだけで元のセット速度に戻って定速走行する仕組み。全車に標準装備としたのは日本初でした。
ステアリングホイールの右側に「RESUME加速」「SET」のボタンを設置
さらに運転しやすくするための
車速応動型バリアブルパワーステアリング
初代ACCORDには車速応動型パワーステアリングが設定されており、オーナーの約87%※3がこれを選択したとするデータがありました。これを受け、運転のしやすさをより高めるべく開発したのが、車速応動型バリアブルパワーステアリングです。ステアリングシャフトの中にトーションバーを採用したバリアブル機構を設けることにより、低速では軽く、かつクイックに切れ、高速では手応えが増し、かつ穏やかな動きになるようにしました。
※3 Honda調べ(1976年1月~7月までの型式E-SV・型式E-SMの販売累計)
日本初の2ポスチュア・4ホイール オートレベリングサスペンション
2P・4Wオートレベリングサスペンション(2段階車高調整機構、4輪自動・車高制御装置)は、マイクロコンピューターの制御により、自動的に車高を一定に保つ機能です。従来のサスペンションに空気ばねを付加した構造とし、前後輪に設置したセンサーによって荷重状態の変化を検出することで、空気圧を自動的に調整し、車高を一定レベルに補正します。ハイト機構も装備しており、インストルメントパネルのスイッチ操作で車高を30mm上げることが可能。悪路や雪道での走破性確保に寄与します。
世界初のカーナビゲーションシステム「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」
ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータは現在のナビゲーションシステムの原型とも言えるシステムです。GPS(衛星利用測位システム)もインターネットも民間では利用できなかった時代、ガスレートジャイロ※4を使って方向の変化を検知し、走行距離センサーからの情報と合わせて起点からの走行軌跡を車載コンピューターに記憶させ、CRT(ブラウン管)に表示させます。画面の前にセットした透明地図シートに軌跡を重ね合わせることで自車位置を確認する仕組みです。紙地図を開かなくても自車の現在位置と方位がわかる、新たな価値を提示した技術でした。
ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータは、ナビゲーションシステムの世界標準を築いた功績が認められて2017年に「IEEE(アイトリプルイー)マイルストーン」に認定されました。IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)とは、米国に本部を置く、電気・電子・情報・通信分野における世界最大の学会です。
※4 ノズルから噴出させたヘリウムガスが直進しようとする慣性力を利用し、方向の変化を感知するセンサー
このように、2代目ACCORDはエレクトロニクス技術をはじめとする最先端の技術をふんだんに盛り込んで快適性と調和させ、従来の高級車の概念を超える価値を世界に提示しました。
走りと技術を進化させた3代目ACCORD(1985年)
1985年にフルモデルチェンジ、ACCORDは3代目に進化
Hondaが持つ技術と人間の感性を調和させ、さらに時代の先取り感覚との調和を図ったのが、1985年6月に発売した3代目ACCORDです。2代目と同様、クルマの本質である「走り」に磨きをかけつつ新技術を惜しみなく投入し、革新的な価値を生み出すことを狙いました。
当時のプレス資料には開発コンセプトがこう説明されていました。
「Hondaにおける3代目ACCORDのコンセプトは大きく言って3つあります。1つは、競合他車との明快な差別化としてのハイ・ポテンシャル。2つ目は、技術を、単なる技術というだけでなく人間の感性のレベルにまで達したヒューマン・オリエンテッド(人間重視設計)なものにすること。そして3つ目は21世紀に向かった、時代の先取り感覚です。この3つがすべて満足されていなければ、3代目ACCORDとしてはふさわしくない。Hondaはこう考えました。」
3代目ACCORDのサスペンションはFF車で世界初の4輪ダブルウィッシュボーン式を採用(左)、3ドアハッチバック版だったACCORDエアロデッキのリアサスペンション(右)
FF世界初 四輪ダブルウィッシュボーンサスペンションを採用
初代と2代目ACCORDのサスペンションは前後ともストラット式です。3代目ではFF車として世界で初めて4輪ダブルウィッシュボーン式を採用しました。ストラット式のようにダンパー&スプリングユニットを車輪の支持に使わなくて済むため、フリクション(軸摩擦)によるロスがほとんどなく、サスペンションをショックの吸収という本来の目的にのみ使えるのがこの方式の利点です。また、構成するリンクを自在に配置できる設計自由度の高さから、望みどおりの乗り心地や走行安定性が得られやすい特性があります。
ストラット式に比べてボンネット高を低くできるのも、ダブルウィッシュボーン式を採用した大きな理由でした。3代目ACCORDのサスペンション設計にあたっては、フロントはアッパーアームとロワーアームのスパンを大きくとりながら低ボンネット内に収まるサイズで成立させ、リアもミニマムスペースで成立させることで、居住空間を犠牲にせずに狙いの性能を実現しています。
3代目のエンジンは、電子制御燃料噴射装置:PGM-FIを採用
Honda独自の電子制御燃料噴射装置PGM-FIを採用したDOHC16バルブエンジン
エンジンはHonda初となる2.0L直列4気筒DOHC16バルブPGM-FIを新開発し設定しました。PGM-FIはHonda独自開発による電子制御燃料噴射装置で、走行時の様々な状態に合わせて最適な空燃比になるよう計算し、各シリンダーに最適なタイミングで噴射するシステム。1984年に、2代目ACCORDに設定されていたSOHC12バルブの1800シリーズにPGM-FIを搭載した新タイプを追加しています。このPGM-FIを新開発の2.0L直列4気筒DOHC16バルブエンジンと組み合わせて3代目ACCORDに設定しました。
燃焼室形状は、ペントルーフ型。DOHCで1気筒あたり吸気2/排気2の4バルブを採用
このエンジンは燃焼効率を向上させるため、小さなボアとペントルーフ形状を採用し、燃焼室を小型化。さらにセンタープラグを採用して燃焼室全体にまんべんなくスピーディに火炎が伝播するようにしました。4バルブ方式を採用したのは、ボア径に対して最大限にバルブ面積をとり吸排気効率を高めるため。また、アルミシリンダーブロックを採用することにより、鋳鉄ブロック比で大幅な軽量化を実現。これにより前後重量配分の適正化に寄与することになり、車両運動性能の向上に貢献しています。
当時最先端のデジタルメーターを採用
環境と社会の調和を図ることから始まったACCORDは、クルマとしての基本性能の高さに新たな価値が加わったことで人々の支持を得、ワールドカーとしての地位を確立。2代目、3代目ではその時代の最新技術を従来技術と単に置き換えるのではなく、人間の感性との調和を図ることで、持ち前の快適性と走りをさらに向上させていきました。
テクノロジー ACCORD 50年の技術革新 環境と社会の「調和」 世界の価値観を変えたCVCCとFFパッケージ





