e:HEV パワートレーンの進化
独創の技術で進化を続ける、Hondaのハイブリッドシステム
Hondaのハイブリッドシステムは1999年の初代インサイトから始まりました。世界一の燃費性能(当時)と走りを両立させるため、アルミボディーの採用と、軽量・コンパクトでエンジンとの親和性も高い、1モーターのパラレル方式によるHonda独自のハイブリッドシステム「IMA」を開発しました。2012年には、1モーターでありながらエンジンとモーターを切り離して走ることでEV走行を実現した「SPORT HYBRID i-DCD」、世界最高効率(当時)を実現した2モーターの「SPORT HYBRID i-MMD」、V型6気筒エンジンと高出力3モーターを組み合わせ、高効率ながら走りの喜びを追求した「SPORT HYBRID SH-AWD」の、3つのハイブリッドシステムを発表。ハイブリッド車の選択肢を広げました。
そして、2020年から2モーターハイブリッドシステムは「e:HEV」としてシリーズを展開。Hondaの電動化コア技術として進化を続けています。
環境性能と走行性能を高水準で両立するe:HEV
e:HEVは、圧倒的な燃費の良さ(環境性能)と、大出力モーターによる上質で爽快な走り(走行性能)を両立する、Honda独創の2モーターハイブリッドシステムです。
バッテリー電力のみで走行する「EVドライブモード」、エンジンで発電しモーターで走行する「ハイブリッドドライブモード」に加え、エンジンとクラッチを直結してタイヤを駆動する、Honda独自の「エンジンドライブモード」の3つのモードをシームレスに自動で切り換えることで、あらゆるシーンで高効率な走行を実現します。
「五感」に響く技術で磨き上げた、次世代e:HEV
次世代e:HEVでは、小型モデル用・中型モデル用それぞれにおいて、エンジン、ドライブユニットをはじめとする構成部品および制御技術の刷新を行い、ドライバーの操作にシンクロした制御の追求、電動AWDの採用など「五感」に響く技術によって、更なる環境性能と上質で爽快な走りの向上を目指します。
環境性能の進化
エンジンは1.5L、2.0Lともに燃焼を進化させ、出力を低下させることなく全域ストイキを実現します。特に1.5Lエンジンは直噴システムをはじめ2.0Lエンジンの技術を適用し、高効率領域を大幅に広げます。
エンジンモードでは、エンジン直結時のトルク伝達効率向上やストイキトルク向上により、エンジンモード頻度を増やすことで燃費を向上。EVモード、ハイブリッドモードにおいても電力変換効率およびエンジン効率を高めたことで、パワートレーン効率で世界最高効率を実現し、中型ではプラットフォームの進化と合わせて、小型、中型ともに、10%以上の燃費向上を実現します。
走行性能の進化
e:HEVが持つ走りの魅力は、大出力の走行用モーターによる軽快なレスポンスと伸びのある加速、優れた静粛性にあります。さらに、車速の上昇に合わせてエンジン回転数を段階的に制御することで、有段トランスミッションのようにリズミカルにシフトチェンジするようなエンジンサウンドを実現するリニアシフトコントロールは、e:HEVの特徴的な技術です。
リニアシフトコントロールは、加速時に走行用モーターにより ダイレクトでシームレスな駆動を行うと同時に、発電用モーターによってエンジン回転を制御。これを可能にするには高効率領域の広いエンジンと高効率なモーター、緻密な制御技術が求められます。
次世代e:HEVではこのリニアシフトコントロールをさらに進化。エンジンの高効率領域を広げるとともにモーターやバッテリーの制御技術を進化させ、強い加速時だけでなく、より多様なシーンで効果を得られます。一方でゆるやかに加速するシーンでは、より長いEV走行に加え、より低いエンジン回転で要求トルクを出せるため、ロードノイズよりも低いレベルにエンジン音を抑えられ、静かで上質な空間に寄与します。
次世代中型モデル用 e:HEVシステム
2.0L 直噴アトキンソンサイクルエンジン
Euro7などのグローバル環境規制に対応した2.0L直噴アトキンソンサイクルエンジンを新開発。全域ストイキ燃焼を実現し、高効率燃焼領域を2018年モデル比で30%拡大を目指します。
シリンダー内の強いタンブル流を生成する高流動吸気ポートや、タンブル流を保持・強化する新形状の流動保持ピストン、最大4回の高圧多段燃料噴射などにより急速燃焼を実現し、出力を維持しながら全域ストイキによる燃費性能の向上を実現します。また、エンジン骨格やクランクシャフトの剛性を最適化することで、急速燃焼による振動・騒音増加を抑え、出力と静粛性を両立します。
フロントドライブユニット
モーターやトランスミッション、PCUで構成されるドライブユニットは、高効率化と小型化によるパッケージ効率を追求します。
中型e:HEVシステムのフロントドライブユニットには平行軸配置2モーター内蔵電気式CVTを採用。ハイ/ロー2段のエンジン直結ギアを備え、高速クルーズ時の燃費・静粛性と牽引性能を両立します。
発電用モーターはトポロジー最適化を用いた磁石配置の最適化や、絶縁紙形状の変更によるステーター巻線の占積率アップによってトルク密度を向上し、磁石量も低減。走行用モーターは重希土類フリー磁石を採用しながら磁石トルクとリラクタンストルクを有効活用した新形状の磁気回路によってトルク密度を高め、小型化と磁石使用量低減を実現します。
従来、空冷だったHEVフルードクーラーを水冷化するとともに、PCU(パワーコントロールユニット)の冷却システムと統合します。フローシャッターバルブによってHEVフルードクーラーへの冷却水量を制御することでHEVフルード温度をコントロール。HEVフルード温度が低いときに昇温制御を行い、HEVフルードの粘度を下げてフリクションを低減することにより燃費性能向上に貢献します。
※HEVフルード:HEV専用のミッションオイル
直流/交流の変換や昇降圧を行い2つのモーターをコントロールするPCUは、2016年~採用しているトランスミッション直載技術を踏襲した小型化、低コスト化に加えて、パワーモジュールの高密度実装により、リアモーター駆動用インバーターの内蔵を可能にし、荷室の拡大に貢献します。
バッテリーパック
Hondaはバッテリーパックを自社開発している強みを活かし、車両骨格部品との機能統合を図ることで、現行セダンのリア席下配置のバッテリーパック比で全高を20%低減。SUVにおいても、プロペラシャフトが不要な電動AWDの採用と合わせ、現行の荷室下からリア席下への配置を可能として荷室の拡大に貢献します。
小型化している一方、バッテリーセルや制御技術の進化により出力は約10%向上します。
次世代小型モデル用 e:HEVシステム
1.5L 直噴アトキンソンサイクルエンジン
グローバル環境規制に対応する、1.5L直噴アトキンソンサイクルエンジンを新開発し、出力性能と環境性能の向上を目指します。
2.0L 直噴エンジンで具現化した燃焼コンセプトを適用し直噴システムを採用した上で、高流動吸気ポートや流動保持ピストンによって乱流強度を高めノックを抑制することで急速燃焼を実現します。これにより全域ストイキ燃焼で燃費性能を高めながらもストイキトルクを40%向上します。急速燃焼により増加する燃焼加振力に対しては、クランクシャフトの曲げ剛性を8%高めるなどエンジン骨格部品の固有値を分散させ振動・騒音を抑制します。
フロントドライブユニット
小型e:HEVシステムのフロントドライブユニットには同軸配置2モーター内蔵電気式CVTを採用します。発電用モーターは高回転化することで同じ出力を得るための性能の適正化を図ることができ、小型化と磁石使用量の低減を実現。走行用モーターは中型e:HEVシステム同様に重希土類フリー磁石を採用するとともに、新形状の磁気回路によりトルク密度向上による小型化や磁石使用量低減、高効率化を実現します。
トランスミッションにおいては、ファイナルギアに鏡面加工を施しギアでの損失を低減。低粘度のHEVフルードと合わせ低燃費化に貢献します。
走行用/発電用モーターをコントロールするPCUは、中型e:HEVシステム同様に小型化。リアモーター駆動用インバーターを内蔵しながらトランスミッション直上への搭載を可能にし、荷室の拡大に貢献します。
バッテリーパック
バッテリーモジュールを小型化するとともに、中型e:HEVシステムと同様に車両骨格部品をバッテリーパックのカバーとして機能させるなどの機能統合を図り、全高を20%低減。Honda最薄のバッテリーパックを実現します。その上で、現行の荷室下からフロント席下への配置を可能として荷室の拡大に貢献します。
バッテリーセルは新しい世代を採用し、小型化しながら使用容量を15%増加。さらに制御技術の進化により出力は同等を確保します。
電動AWDシステム
中型モデルまで対応する出力50kWクラスのユニットを採用。高精度・高応答といった電動メリットを活かし、より高い走行性能の実現を目指します。
これまで機械式AWDで培った前後駆動力配分制御をさらに進化させ、タイヤの接地荷重に合わせて前後配分を最適化。例えば、後輪荷重が増加する加速時には後輪への配分を増やし、旋回時には接地荷重が減少する旋回内輪のグリップ限界を見極めながら適切に配分します。
高精度で応答性の高いモータートルク制御によって、タイヤのスリップを緻密にコントロールすることで 、 路面の状態を問わずライントレース性や操縦安定性を向上。コーナリングのターンインでは回生ブレーキを活用して回頭性重視、旋回中は安定性重視、コーナー出口ではトラクション重視の配分とするなど、意のままの走りを実現します。
また、状況に応じて電動AWDの駆動力をアドオンする事で より力強い発進加速性能を提供します。
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