Honda エコ マイレッジ チャレンジとは

Honda エコ マイレッジ チャレンジは、速さを競うのではなく、1リッターのガソリンで何キロ走行できるかを競う、自由な発想であらゆる可能性にチャレンジするモータースポーツです。競技大会では、規定周回数(距離)を決められた時間のなかで走行し、燃料消費量から1リッターあたりの燃費を算出。燃費性能の高さで順位を競います。

1981年に鈴鹿サーキットで行なわれた第1回大会の記録は292.5km/Lでした。以後、大会を経ることに記録は向上し、第5回大会(1985年)では1000km/Lを突破。第14回大会(1994年)には3000km/Lの壁を越えています。現在の最高記録は第31回(2011年)全国大会で記録された3644.869km/Lです。

競技大会にはチームで参加します。Honda製50cc4ストロークエンジンを使用したオリジナルマシンで競う中学生クラス(グループI)、高校生クラス(グループII)、大学・短大・高専・専門学校生クラス(グループIII)、社会人を対象にした一般クラス(グループIV)、2人乗りクラスに加え、150cc以下のHonda製4ストロークエンジンを使用するニューチャレンジクラス、50ccの市販車両をベースにした二輪車クラスがあります。

世界的な気候変動への対応として、Hondaは「2050年にHondaの関わるすべての製品と企業活動を通じて、カーボンニュートラルをめざすこと」を公表しています。この流れを受け、2024年には既存の7クラスにカーボンニュートラル燃料(CN燃料)を使用するクラス(CNグループI/CNグループII/CNグループIII/CNグループIV/CNニューチャレンジクラス/CN2人乗りクラス/CN二輪車クラス)が新設され、計14クラスで構成されます。

大会に参加するチームは増加の一途をたどっており、2000年代以降は400を超えるチームが参加したことも。モビリティリゾートもてぎの全長2.4kmのオーバルコースで開催される全国大会には、海外からのチームも参加し、国際的なイベントに発展しています。

各チームは、アイデアを持ち寄りながら究極の効率を求めて車両を製作し、大会に向けて車両のポテンシャルを最大限引き出す戦略を立案。ドライバーは、チームが立てた戦略を遂行しつつ、周囲の状況に応じて臨機応変に対応する操縦テクニックが要求されます。好記録を得るためには、車両の設計や形状の最適化に加え、戦略や走り方など、チームの総合力が求められます。

Honda エコ マイレッジ チャレンジ
Honda エコ マイレッジ チャレンジ
Honda エコ マイレッジ チャレンジ
Honda エコ マイレッジ チャレンジ
Honda エコ マイレッジ チャレンジ
Honda エコ マイレッジ チャレンジ
Honda エコ マイレッジ チャレンジ
Honda エコ マイレッジ チャレンジ
Honda エコ マイレッジ チャレンジ
Honda エコ マイレッジ チャレンジ

主なレギュレーション

参加チームは車両規則に則って車両を製作する必要があります。規則の範囲内でさまざまなアイデアを投入し、効率化を追求します。主な規則は以下のとおりです。

≪グループI/CNグループI/グループII/CNグループII/グループIII/CNグループIII/グループIV/CNグループIV/ニューチャレンジクラス/CNニューチャレンジクラス/2人乗りクラス/CN2人乗りクラス対象≫

●参加車両は3輪以上とし、停車時・走行時にかかわらず自立できる構造とする必要があります。また、平坦な所で全輪が常時路面に接地しなければなりません。
●車両サイズは全高1.8m以下、ホイールベース1.0m以上、全長3.5m以下、トレッド0.5m以上、全幅1.7m以下、排気管はボディ端面より5cm以上出ないこと(ボディ後方からの排気を推奨)と規定されています。
●エンジンはHonda製4ストローク50ccをベースとし、一部改良が認められています。Honda二輪車正規取扱店では、Honda エコ マイレッジ チャレンジに使用する目的に限り、電子制御燃料噴射システム(PGM-FI)を採用した、スーパーカブのエンジンをベースとする競技用の空冷単気筒50ccエンジンを販売しています。
●燃料噴射方式はPGM-FIまたはキャブレター式、どちらを使用しても可。
●ニューチャレンジクラス/CNニューチャレンジクラスのエンジンは、50cc以上150cc以下のHonda製4ストロークエンジンの使用が義務づけられています。
●計測誤差を限りなく小さくするため、PGM-FIを選択した参加チームは、Honda エコ マイレッジ チャレンジ事務局が無償貸与するダイヤフラムポンプの使用が義務づけられています。
●燃料タンクは大会当日に主催者から貸与されます。容量180ccの透明な円筒形のガラス製です。

車両寸法

車両寸法

エアー加圧式ダイヤフラムポンプシステムとは

エアータンクに貯められた圧縮空気を利用し、ダイヤフラムポンプを介してインジェクターに定圧の燃料を供給するポンプシステムです。

エアー加圧式ダイヤフラムポンプシステム図

【エアー加圧式ダイヤフラムポンプシステムの特長】
本ポンプは、電動燃料ポンプと違いポンプ作動時の燃料温度上昇が極めて少なくなっています。
燃料配管内に電動燃料ポンプ及びプレッシャーレギュレーターが無い為、燃料配管内に大きな圧力が発生しないので、燃料蒸気の発生もありません。
タンク~インジェクター間の燃料容量が少なく、周囲の温度変化による燃料の体積膨張変化が少なくなっています。

※注意 当ポンプは、Honda エコ マイレッジ チャレンジ専用に開発されたポンプです。1回のエンジン始動で加速可能な時間は、ダイヤフラムポンプが押し出す1回のポンプ量(約2.0cc)を消費する時間になります。

≪二輪車クラス/CN二輪車クラス対象≫

●Honda製4ストローク50ccの市販車をベースに、必要最低限の改造で参戦できるクラスです。
●原則として、本田技研工業株式会社が発行するカタログおよびリリースに記載されたフレーム形式、懸架方式、始動方式、タイヤサイズ(前/後)、変速機形式、ブレーキ形式(前/後)、軸受形式の変更は認められていません。
●灯火類は転倒時にガラス等が飛び散る恐れがあるため、テーピングを施すか取り外す決まり。また、風防やカウル類の装着は認められていません。

燃費を追求する車両づくりのヒント

燃費を追求するには、走行抵抗を小さくするのが基本です。走行抵抗低減に大きな効果を発揮するのは軽量化です。車体を軽くするほど、エンジンの負担が小さくなって燃料消費を抑えることができるからです。車両を構成する部品の駄肉を削ったり、軽い素材を採用したりして軽量化に取り組みます。無理な軽量化は信頼性の低下につながるので、注意が必要です。

また、カウルの形状を工夫して空気抵抗を減らしたり、抵抗の小さなタイヤや軸受を選んで転がり抵抗の低減を図ったりするのも、定番の取り組みです。

競技大会では平均車速が25km/h以上であることが求められています。走り方の主流は、40km/h程度まで加速したらエンジンを停止し、あとは惰性で走ること。20km/h程度に車速が落ちたら再度エンジンを始動。この動作を繰り返します。エンジン始動と停止の制御、その際のクラッチの制御など、ソフトウェアの開発も燃費向上に大きく寄与します。

取り組みたい課題がたくさんあるからといって、すべてを一気に解決しようとするのは禁物。効果の高い課題から順に取り組み、着実に成果を挙げていくのが燃費向上への近道です。

[開発コンセプト]
●走行抵抗(機械抵抗+空気抵抗)の低減を図り、エネルギー効率の向上を目指す。
●Honda エコ マイレッジ チャレンジでの燃費向上に関して最も効果が高いのは、エネルギー効率の向上。
●エネルギー効率の向上に効くのは軽量化。車体を軽くするほどエンジンの負担が軽くなり、燃焼消費を抑えることができるから。

[軽量化のヒント]
●鉄をアルミ、アルミを樹脂にするなど、比重の小さな材料を採用する。
●材料は変えず、構造の工夫で強度や剛性を担保し、使用する材料の量を減らす。
●強度や剛性を確認しながら、肉抜き・肉盗みをしていく(フレームやホイールリムに穴を開けたり、ホイールのスポークを減らしたりする)。

[機械抵抗低減のヒント]
●転がり抵抗の小さなベアリング(軸受)を採用する。
●転がり抵抗の小さなタイヤを採用する。
●ホイールリムの幅やリム径は、転がり抵抗と空気抵抗の兼ね合いを考慮して決める。
●駆動系を切り離せるクラッチ機構(圧搾空気作動やワイヤーによる手動などの手段も検討課題)をハブに搭載すると、惰行走行時に機械抵抗を大幅に低減できる。

[空気抵抗低減のヒント]
●前面投影面積を小さくする。
●車体の後方で(空気抵抗増につながる)強い乱流が生じないようなカウル形状を考える。
●車体表面を平滑にし、空気がスムースに流れるようにする(段差やすき間ができないようにする)。

[エネルギー効率向上のヒント]
●キャブレター式(機械式)の燃料噴射方式がいいのか、インジェクション(電子制御)がいいのか、検討して決める。どちらもセッティングが燃費向上のカギを握る。
●点火のタイミングや空気と燃料の混合などを調整し、燃費のいい燃焼を追求する。
●ピストンや燃焼室の形状を変え、圧縮比を向上する。この場合、燃焼室が偏平になって燃えにくくなるので、その対策も考える。
●撹拌抵抗が小さくなるような、オイルの潤滑方式を検討する。
●スタート前にエンジンを暖機〜保温する策を考える。

<走らせ方>
●競技大会では平均車速が25km/h以上であることが義務付けられています。走り方の主流は、40km/h程度まで加速したらエンジンを停止し、あとは惰性で走ること。20km/h程度まで車速が落ちたら再度エンジンを始動。この動作を繰り返すのが定番。
●競技中、エンジンを掛けている時間をできるだけ短くするのが、燃料消費を抑えるコツ。
●エンジンの停止と再始動は自動(制御)で行なうのか、手動がいいのか。どちらが効率良く、かつ安全に走れるのか検討したうえで決めたい。
●一気に加速するのか、緩やかに加速するのか、再始動後の加速の程度も燃費に影響するため検討に値する。
●コースの特性に合わせて最適な減速比(スプロケット)を設定したい。

<注意点>
●多くの課題を一気に解決するより、効果の高そうな課題から順に選択し、集中的に取り組むのが、成績向上への近道です。
●対費用・対時間効果を考えた場合、軽量化→機械抵抗低減→エンジンの順に改善に取り組むといいでしょう。
●過度な軽量化は信頼性や走行安定性の低下につながるので、注意が必要です。
●前面投影面積を減らしたいからとトレッドを狭くすると、走行安定性が低下する恐れがあるので、注意が必要です。
●競技では他の競技車両と間合いを取りながら走る必要があります。カウルを設計する際は視界の確保に留意しましょう。
●ドライバーの体重管理も含め、開発活動に無理・無茶は禁物。完走することが第一です。

参加車両紹介

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