電動パワーユニットeGX
一体型「GXE2.0H」/ セパレート型「GXE2.0S」

GXエンジンの2kWクラスを電動化

世の中の電動化の流れをリードすることを目指し、Hondaはさまざまな製品の電動化に取り組んでいます。そのひとつとして、Hondaの汎用エンジンのなかで、優れた信頼性により1983年の発売以来約40年間支持され続けているGXシリーズを電動化したのが、電動パワーユニット「eGX」です。
刈払機や歩行芝刈機など軽作業用1kWクラスのパワーユニットに比べると、使用環境条件の厳しく、電動化が進んでいなかった建設機械等の重作業機に使用される2kWクラスでの製品化を、このeGXで実現しました。大容量クラスのパワーユニットを電動化することで、汎用エンジンの排気ガス削減による環境への貢献と、振動の低減による作業者保護を目指しました。

汎用エンジン/GXエンジンについて

汎用エンジンとは、各種作業機に搭載するために製造されるエンジンのことです。Hondaは、1953年に初の汎用エンジンを発売。その後も進化を続け、1983年に汎用エンジンに革命をもたらしたといえるGXエンジンを発売しました。当時汎用エンジンは、サイドバルブ機構を採用することが常識でした。高出力、低燃費、耐久性、静粛性、信頼性の高さを大幅に進化させるにはオーバーヘッドバルブ(OHV)機構が有利でしたが、コンパクト化が難しく部品点数が多くなるという課題を抱えていました。GXエンジンはその課題を克服し、コンパクトで高性能なOHV機構の汎用エンジンとして登場。以来、世界のさまざまな作業機に搭載され、今日まで進化を続け高い信頼性を獲得しています。

1983年に発売されたGX110

工事現場で見かける建設機械のランマー(左)とプレートコンパクター(右)へのeGX搭載イメージ(アクリルモデル)

数十Gの荷重が掛かる建設機械で過酷な耐久テストを実施

地面を衝撃で押し固めるランマー。地面を押す反作用でランマーに同じ衝撃が返ってくる

建設現場で使用される、衝撃を加えて地面を固める建設機械のランマーやプレートコンパクターなどは、地面を押す反力で、ときには数十Gにも及ぶ衝撃が機械に伝わります。エンジンとは異なりオイルによる潤滑機構がなく、精密な制御用電子機器を搭載する電動パワーユニットであるeGX。シャフトの支持方法、モーター内の部品の剛性向上、バッテリーと制御系へのゴムマウントによる防振構造の導入など、GXエンジン同等の耐久性を確保すべくさまざまな工夫を施しています。

見て触って安心感とコンパクトさを感じるデザインへのこだわり

パワープロダクツ製品のロングセラーモデルで、永く培われてきたGXエンジンの信頼感のあるデザインを新しいeGXで表現するために、地面に対して水平に見える安定した水平基調のデザインを採用。また、GXエンジンと変わらない安心感や後継であることを表現するために、センター軸がある場所を赤くしてエンジンらしいアイコンを強調したデザインとし、内部をメンテナンスできるハッチとして活用しています。
加えて、建設機械は作業者が機械に触ることが多いため、至るところで丸みを持たせ、触れても痛くないよう配慮しました。

水平基調のデザイン。各部の角を取り、塊としての剛性を確保し、触っても安心できるデザインにしている

モーター内部にファンを置く2段階の冷却構造

eGXは精密な電子機器を搭載しているため、エンジンより高いレベルの冷却を行う必要があります。エンジンの場合は約150℃程度まで許容できますが、モーターの場合はモーター内部のセンサー、モータードライバーのパワーユニット、バッテリーの制御システムなどを構成する電子基板の半導体が壊れないように80~100℃以下で使わなければなりません。そこで、モーターの内部にファンを配置して内部の空気を対流させ、外側のアルミ製のモーターハウジングに伝達。熱を受け取ったモーターハウジングを外部のファンで冷却する2段階の冷却構造を開発しました。構造が複雑になりますが、過酷な条件で使われる電動パワーユニットを成立させるために採用しました。モーターがHonda内製であることから、意志を入れて実現できた技術といえます。

コイルが巻いてあるステーターの右にあるのがお椀型のローター。その右が内側のファン。外側のファンは描かれていない。右端はフィンの付いたアルミ製のモーターハウジング

セパレート型のeGX。赤いメッシュの奥に外部ファンが見える。フィンがあるのがアルミ製のモーターハウジング

バッテリーまわりもきめ細かな工夫を実施

世の中にある電動製品の多くは、バッテリーが機器本体の中か保護ケースに入っています。eGXのバッテリーは、単体で10m以上の高さから落とす試験をクリアできるほど優れた強度を確保しているため、保護ケースなどに入れずそのまま搭載しました。これにより、ケースの蓋を開けるためのスペースが不要となり、上部にガソリンタンクがあるGXエンジンと同様に、eGXでもバッテリーをモーターの上部に搭載できました。上方から給油するのと同じイメージで上方からバッテリー交換可能です。さらに、各部の角を取ることで前後左右に張り出さないコンパクトなレイアウトとし、GXエンジン同等の搭載性を確保。認証機関の防水・防塵の規格をベースとし、塩水に対する耐性もテストで確認しています。

バッテリーの中身は、リチウムイオン電池が俵状に四角く積み上げられていて、そのまわりにデザインと協調しながら空気の通り道を設け冷却する構造としています。冷却するのは、リチウム電池はある一定温度以下でなければ充電そのものができず、冷却無しでは急速充電が不可能という特性があるからです。
完全に密閉した状態だと冷却に2時間以上かかるため、バッテリーの下部に空気口を設け、冷却風を内部に流すことで10分ほどで冷却できるようにし、トータル1時間で80%ほど充電できるバッテリー容量を設定。その容量でeGXを30分〜1時間ほど稼働できるため、バッテリーが3つあれば絶え間なくeGXを回すことができます。バッテリーの容量を増やせばもっと長時間回せますが、重くなり値段も高くなってしまうため、eGXではあえて複数のバッテリーを交換しながらの使用法を想定しました。

バッテリーの下面には冷却用の空気の通り道となるスリットが開けられている。急速充電時に、およそ10分で充電可能な温度までバッテリーの温度を下げる

バッテリーを支える構造物は、硬過ぎず、柔らか過ぎず、ほどよいクッション性を追求。しっかりと固定しながら衝撃を和らげる効果を実現している

電動化による新たなニーズの可能性

eGXを使ってまず驚かれるのが、ボタンをワンプッシュするだけで簡単に始動できること、そしてモーターだからこその静粛性です。さらに、操作が簡単で、ガソリンを入れたり、オイルやエアクリーナーを交換するメンテナンスの煩わしさ、手が汚れる煩わしさから解放されます。しかし、電動パワーユニットを使うメリットはそれだけではありません。マンションやビルの工事は昼間から夜まで行うことが多いため、夜は近隣に配慮してできない作業もあり工期に影響します。そうした工事を、電動の静かな作業機を使うことによって、夜や早朝に作業ができ、工期の短縮にも貢献も可能となります。

電動パワーユニットのeGX(左)と汎用エンジンのGX120(右)。建設機械のパワーユニットも遠くない将来電動が主流になる時代が来ると予想できる

また、使いやすさとメンテナンス不要のメリットから、いままで想像していなかったような作業機械や、大変と感じながら人の手で行っていた作業に、「こんなに簡単なら電動パワーユニットを使いたい」という新たなニーズが生まれることも考えられます。カーボンフリーの気運が高まり、今後の各国の環境規制などを考えると、エンジンを提供できない時代が来ると考えられます。そのとき代わりに載せられるのがこの電動パワーユニットです。Hondaは、今後2kWのeGXを皮切りに、電動化をさらに加速していきます。

GXエンジンと電動パワーユニットeGXの始動手順・静粛性・振動の比較

GXエンジンとeGXを稼働させ、始動手順・静粛性・振動を比較した映像。電動パワーユニットeGXは、始動のしやすさ、静かさ、振動の少なさを追求しました

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