イノベーション
アキュラの挑戦:アニメとレースの融合
![アキュラの挑戦:アニメとレースの融合](/content/dam/site/global-jp/stories/cq_img/137-2406-acura-marketing/social.jpg)
POINTこの記事でわかること
- Acuraは、日系他社のプレミアムブランドに先駆けて北米で誕生したHondaの「ハイパフォーマンスブランド」
- Acuraが掲げるのは「Precision Crafted Performance(精緻に作り込まれたパフォーマンス)」というコンセプト
- 走る楽しさを伝えるブランドPRアニメ『Chiaki’s Journey(チアキのジャーニー)』がアメリカで大ヒット
独自性を打ち出し北米で支持されているHonda(ホンダ)のハイパフォーマンスブランド「Acura(アキュラ)」。多くの自動車メーカーやブランドが競い合うクルマ業界で、Acuraはどのように独自性を打ち出し、現在の知名度を獲得してきているのでしょうか。
ブランドの世界観を活かしたエンターテインメントやレースなど、北米でのAcuraの活動に迫るとともに、そのブランドコンセプトやブランド立ち上げの背景をご紹介します。
HondaがAcuraを立ち上げた理由。他社のプレミアムブランドとの違いは?
「Precision Crafted Performance(精緻に作り込まれたパフォーマンス)」を標榜するブランド「Acura」が北米で産声を上げたのはほかの日本車メーカーのプレミアムブランドが立ち上がる以前の1986年のことでした。
米国の自動車市場が既に成熟期を迎えるなか、お客様はクルマに新たな価値を求めるようになっていました。そのようなお客様の期待に応えるべくHondaが米国市場に投入したのが、新ブランドAcuraだったのです。
Acuraの製品コンセプトは若さやエネルギッシュ、そしてスポーティーを前面に押し出した「ハイパフォーマンスブランド」であって、ほかのプレミアムブランドのようなラグジュアリーさを狙ったものではありません。
「Precision Crafted Performance」という「質実剛健」といっても差し支えのないキャッチフレーズのもと、新たな価値をHondaのロイヤルカスタマーに向けて提供する。それこそ、HondaがAcuraを導入した狙いだったのです。
![新しい電動化時代の幕開けを象徴するかのような、躍動感あふれる2023年のブランドキャンペーン「New World. Same Energy.」](/content/dam/site/global-jp/stories/cq_img/137-2406-acura-marketing/01.webp)
アメリカ経済が後退するなか、苦境を乗り越えたカギは「原点回帰」
2000年代に入ってからアメリカの経済は、さまざまな不安を抱えながらも、金融緩和政策や住宅ブームに支えられながら拡大の一途をたどり、バブル景気の様相を呈していました。
こうした好景気を背景に、各自動車メーカーも高級車路線を推進。これに背中を押されるような格好になったAcuraも、本来の立ち位置から離れ、次第に高級車路線に向かうようになり、ブランドのポジションが不明確になっていきました。
そうしたなか、アメリカでは、サブプライムローン問題に端を発するリーマンショックが発生。これによって国内の経済は後退していき、各自動車ブランドは高級路線の見直しを強いられます。
米国経済の減速を乗り越えるカギとしてAcuraが目指したのは、ほかのラグジュアリーブランドのような高級路線ではありませんでした。Acuraはまず、「Precision Crafted Performance」のコンセプトを再興させ、本来のAcuraの原点に立ち返ることから始めました。
![2015年にAcuraセールス部門のゼネラルマネージャーに就任したJon池田(現HRC US Senior Vice President)。北米におけるAcuraブランド原点回帰の立役者](/content/dam/site/global-jp/stories/cq_img/137-2406-acura-marketing/02.webp)
Acuraは挑戦者たちを応援する——『サンダンス映画祭』への協賛、『Chiakiʼs Journey』の制作
前述のとおり、北米においてAcuraはほかの高級車ブランドとは一線を画した、独自のブランドコミュニケーションを行なっています。
立ち上げ時に目指したブランドコンセプトに忠実に、「独立精神」、「ハイパフォーマンス」、そして「走る楽しさ」といった要素を通じ、ブランドの姿勢を表現しています。
また、若い購買層に対して「親しみやすい」ブランドであることをアピールしているのが特徴です。
その表現方法は、アニメに代表されるようなポップカルチャーやエンターテイメント性の高いコンテンツの活用などさまざま。レースへの情熱と製品の魅力を掛け合わせながら伝えることで、幅広い顧客層の興味を引きつけています。
なかでも代表的なのが、アメリカ・ユタ州で毎年1月に開催される『サンダンス映画祭』へのスポンサー契約です。Acuraはインディーズ映画の登竜門である同映画祭のスポンサーを13年務め、才能ある次世代の挑戦者たちを応援してきました。
また、このイベントにあわせて2022年にはショートアニメーション『Chiaki’ Journey(チアキのジャーニー)』を製作しました。これは、Acura Type Sシリーズを駆る主人公のチアキが、数々の苦難を乗り越えながらレーシングドライバーとしての道を歩んでいくという物語で、挑戦する人々を応援するAcuraらしい作品となっています。
![主人公の女性チアキは、北米Acuraのキャンペーン名にもなっている「Less Talk, More Drive(多くを語らず、走れ)」を体現](/content/dam/site/global-jp/stories/cq_img/137-2406-acura-marketing/03.webp)
本作は将来に向け、潜在顧客獲得を目指したPR動画として制作されるとともに、Acuraの精神でもある「楽しい、走りが好き」という気持ちを表現することで、誰もが楽しめる作品に仕上げています。また、レースの躍動感をハイパフォーマンスラインであるType Sシリーズを使って訴求している点も見どころの一つです。
![Chiaki’s Journey第1話がYouTubeに公開されたのは、2022年1月。サンダンス映画祭とのパートナーシップの中で生まれた。Acuraブランド部門シニアマネージャーのMeliza Humphreyは「この作品は、娯楽を求める映画ファンとつながることを目的に制作しました。Acuraが長きにわたってサンダンス映画祭のクリエイティブ・コミュニティと関係性を築いてきたことで、アニメという斬新な方法で新しいパフォーマンスモデル『Type S』を訴求することができたのです。 いまやチアキは北米Acuraになくてはならない存在です」と語る。](/content/dam/site/global-jp/stories/cq_img/137-2406-acura-marketing/04.webp)
また、主題歌には日本人のガールズヘヴィメタルバンド「Nemophila(ネモフィラ)」を起用。
「世界中の若者が熱狂する日本のアニメ」という文化を駆使し、Acuraが日本発信のブランドであることを伝えた『Chiakiʼs Journey』は、その人気により、すでにシーズン2が公開されています。
![アニメ2nd Season第1話ではバンド名の由来にもなっている花「ネモフィラ」のカットが挿入されているなど、随所にギミックが凝らされているのも見どころだ](/content/dam/site/global-jp/stories/cq_img/137-2406-acura-marketing/05.webp)
![チアキは第1話ではTLX、第3〜4話ではNSXを運転し、ドライビングテクニックを磨きながら勝利していく](/content/dam/site/global-jp/stories/cq_img/137-2406-acura-marketing/06.webp)
「ロングビーチグランプリ」の命名権獲得、そしてレースでも好成績を残す
このように独自の魅力を放つAcuraは、幅広い層への知名度を高めるためにさまざまな活動を進めています。そしてその活動は、レースの世界でも。
Acuraはハイパフォーマンスブランドであることを証明するべく、アメリカ屈指の公道レースである「ロングビーチグランプリ」に2018年からAcuraの名のもと参戦しています。
またレース参戦に加え、2019年からは前述のロングビーチグランプリの冠スポンサーとなり、大会名が『Acura Grand Prix of Long Beach』(※)となりました。このようにAcuraはアメリカのレースシーンにおいても存在感を発揮しています。
※ Acura Grand Prix of Long Beachについて詳しくはこちら
TIPSロングビーチグランプリにおけるAcuraの参戦歴
- 2018年に耐久選手権IMSAにレーシングカーのAcura ARX-05で参戦し、2019年、2020年と連続してタイトルを獲得
- 2021年、2022年にデイトナ24時間レースを制覇
- 2023年にはARX-05後継のARX-06がデビュー戦のデイトナを制覇
![アニメでは実在するロングビーチのレースコースを走る場面も](/content/dam/site/global-jp/stories/cq_img/137-2406-acura-marketing/07.webp)
来(きた)るべき電動化時代へ向けて、これからもAcuraは挑戦を続けていくことでしょう。
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