Honda SPORTS

恩師とともに目指す初のニューイヤー駅伝 ルーキー2人の現在地

~ 大志田 秀次 エグゼクティブアドバイザー・丹所 健 選手・イェゴン・ヴィンセント 選手 インタビュー ~

ニューイヤー駅伝で2022年、23年と2連覇しているHonda陸上競技部。年始には3連覇も期待されています。個人としても今年、青木涼真選手や小山直城選手など、国内外での活躍が目立っています。今回は、今年チームに新しく加入した丹所健選手、イェゴン・ヴィンセント選手、そしてエグゼクティブアドバイザーの大志田秀次氏の3人に話を聞きました。

強い先輩たちと必死に練習 丹所「初心に戻った気分」

丹所とヴィンセントは4年間、東京国際大学で大志田とともに陸上に向き合ってきました。大志田のエグゼクティブアドバイザー就任が4月になってから発表されたこともあり、丹所は「まさかここでも一緒になるとは思いませんでした」。大志田も「全く想像していませんでしたね」と笑顔を見せます。入社して半年が過ぎ、それぞれの取り組みや心境の変化が徐々に出てきました。

大志田: 丹所は実業団に入って競技を続けるということを決めていましたので、「自分でなんでもできるように」と指導してきました。練習もだいぶチームメートと一緒にできるようになってきたので、大学から教えたものを実業団に入って実行しているところだと言えます。ヴィンセントに関しては、学生駅伝を終えて、次は世界を見るということで、個人に特化した練習に変わってきていますね。目標をしっかりと持って歩み始めたなと感じています。

丹所: 学生の時、特に4年生では僕がチームを引っ張るケースが多かったんですが、Hondaに入ったら先輩が強い方ばかりで、初心に戻った気分です。高校から大学に入る時にも、「死にもの狂いで食らいついていけば、自ずと結果が出る」という気持ちでいたので、とにかく1年目は食らいつこうと思っています。

ヴィンセント: Hondaに入ってみて、チームにいるどのランナーも高い完成度を持っているなと思いました。それぞれの種目で得意とすることを共有しているので、それが強い結束力につながっていると感じています。

2人がHondaを選んだのには、それぞれの想いがありました。

丹所: 一番は同じ大学出身の伊藤達彦さんの存在です。何より大志田さんに、「ヴィンセントと達彦さんと自分の襷リレーが見たい」と言われたのが一番の決め手になったなと思います。それから、今一番勢いのあるチームだなと感じたのもあります。

ヴィンセント: 入社を決めたのはニューイヤー駅伝で優勝する前でしたが、非常に強いチームだと認識していて、チームに勢いを感じました。拠点が大学と同じ埼玉県内にあって、大きく環境を変えずにいられると感じたのも大きいですね。

大志田: 2人を育てた僕のやり方は、もともとHondaで培ってきたものです。小川(智)監督と副部長の大澤(陽祐)さんも一緒にやったことがありましたし、選手の意見も聞きながら、会話ができるチームだなと思っていたので、丹所に関してはそういった部分が合っていると思いました。ヴィンセントの場合は「世界に行きたい」という思いが強かったので、選手を世界の舞台に送り出している優秀なスタッフもいますし、大学も近いということで(Honda側と)お話をさせてもらいました。

丹所: 僕は、ゆくゆくはマラソンをやりたいと思っているので、それを考えてもHondaに入るのが一番の近道なのかなと思いました。

世界に通用する選手を育てる 大志田が描き続ける「夢」

大志田は中央大学を卒業後、Hondaに入社し実業団選手として活躍。引退後は陸上競技部のコーチを務めていましたが、2002年に退いてからは8年ほど社業に専念していました。その間も、叶えたい「夢」がずっと心にあったと話します。

大志田: 「世界に通用する選手を育てたい」と、ずっと思っていました。部を離れてから20年以上経ちましたが、今年からエグゼクティブアドバイザーとして戻ってくることができて、世界を目指せる選手とともに歩んでいけるのはうれしいですね。彼らがどう世界を目指していくのか、夢に向かっていくのかをしっかりと聞き出し、その夢に共感して一緒に向かっていくことが大事だと思っています。

丹所とヴィンセントも、Hondaで「夢」を追っています。

丹所: 10月のMGCは沿道に応援に行ったんですが、小山さんが優勝した瞬間はいろいろと込み上げるものがありました。感動しましたし、「自分もここに立たないといけないんだな」とも思わされました。やることは山積みですが、小山さんや木村(慎)さん、田口(雅也)さんの練習メニューを近くで見られるというのはすごくプラスだと思います。この練習をやっていけば強くなれるんだなという目標、お手本になる先輩がすぐそばにいるのは大きいです。いずれマラソンで世界と戦う「夢」に向かって、まずはトラックでもっと結果を出したいです。

ヴィンセント: 私の夢は、Hondaに入る前から一貫しています。来年の世界大会では10000mで、2028年にはマラソンでケニア代表として出場することです。Hondaに入ってよりその部分にフォーカスできていると感じます。

大志田: 僕はエグゼクティブアドバイザーとして、彼らの夢を共有し、そして、その夢が少しでもレベルアップできるように対話を続けていきたいと思っています。やはり選手自身が「伸びたい」「やりたい」という思いがないと、伸びてこないと思うので。2人にはルーキーという立ち位置をうまく使いながら、思いきりいろいろなことを経験して、その先につなげていってほしいと思います。

学生時代の4年間、ともに陸上に向き合ってきた大志田がHondaのスタッフになったことは、「大きな強み」だと、丹所とヴィンセントは口を揃えます。

ヴィンセント: 大志田さんは学生時代から私のことを誰よりも理解してくれて、私にとって大きな強みになっていました。Hondaでまた大志田さんと一緒になれたことは、本当に幸運なことだと思います。

丹所: 大志田さんが来てくれたことは、自分自身にとってプラスしかないと思っています。「自分の扱い方を知っている」というか、練習メニューやフォームもずっと見てきてくれたので、ちょっと違うなということもすぐ教えてくれますし、練習メニューも相談しながらできています。

初出走を目指すヴィンセント「3連覇に貢献する走りをしたい」

個人の結果にフォーカスするのはもちろんですが、やはりチームとしては元旦のニューイヤー駅伝で結果を出すことが求められています。丹所は「1年目はどの区間でもいいので走って、優勝メンバーの一員になりたい」と意気込みます。

丹所: 秋になってしっかり練習も積めるようになってきたので、メンバー争いにしっかりと絡んでいきたいなと思っています。3連覇がかかっているので、そのチームの一員に入れたらかっこいいなと。周りからも「すごいな」と評価されると思うので、そこは確実に入っていきたいです。

ヴィンセント: ニューイヤー駅伝には外国人選手を起用できる区間(4区)があるので、そこで結果を出していきたいです。他のチームの強い選手と走るのも楽しみですね。

大志田: 来年は一部区間の距離が変わりますが、この2人は「駅伝を知っている」という意味で期待できると思います。2人の良いところを活かしていけるように私も頑張らなければと思います。駅伝はチーム全体でやるべきですが、やはり18歳から指導しているメンバーが3人(伊藤、丹所、ヴィンセント)もいるので、できれば3人とも走ってもらえたらすごくうれしいですね。

それから、彼らの頑張りでHondaのファンや、従業員の皆さん、彼らの家族、たくさんの方々に勇気を与える存在になってほしいなと思います

丹所は特に、Hondaに入社してから周りの応援の大きさに驚いたといいます。

丹所: 朝練で寮の周りを走るんですけど、毎朝「丹所くーん!」と声をかけてくださる方もいます。それから、全日本実業団対抗選手権に出場した時、結果はあまり良くなかったんですが、従業員の方から「見てるよ」「応援してるよ」と声をかけていただいて、より頑張らなくちゃいけないなと思いました。陸上競技部が愛されているんだなと感じていて、その声援を力に変えて頑張りたいなと毎日、毎朝思っています。

個人それぞれの目標に向かっていたチームは、11月に入りニューイヤー駅伝に向けて集まって練習をするようになってきました。3連覇が期待されますが、他にも強いチームが複数ある中で、より「盤石」なチームをつくろうとしています。

大志田: 実は昨年の秋にもHondaの練習を見る機会があって、「(今年のニューイヤー駅伝、)大丈夫かな?」と思ったんです。でもスタッフには「12月から上がってきます」と言われ、その通りになりました。2人はその上昇気流をまだ感じていないと思うので、その中に入れた時にもっともっといいチームができあがってくると思います。

本当に駅伝っていろいろなことがあって、「絶対」はないので。我々のチームは一人ひとり怪我なく、体調不良もなくやっていければ、他のチームと対等以上にできる戦力があるので、それが大事かなと思います。

丹所: 大志田さんがおっしゃったように、12月から他の選手の調子が上がってくると聞くので、まずはちゃんと自分自身が走れるんだぞっていうところを見せたいと思います。今の自分の強みは一定のペースで押していけることですが、勝負所での切り替えがうまくできないことが課題だと感じています。そこをもっと克服していきたいです。

ヴィンセント: 私はスピードとスピード持久力をもっと強化していかないといけないと感じています。それから走行距離も足りないので、しっかり走り込んでいきたいです。

それぞれが新しい環境となり、初めてのチームとして戦う大きな大会。あらためてニューイヤー駅伝への意気込みを聞きました。

ヴィンセント: チャンピオンチームの一員として「ミスは許されない」というプレッシャーは感じますが、チームメートとともに戦うことをミッションの一つとして、まずは楽しんでいきたいです。そして、3連覇に貢献する走りをしたいです。

丹所: もし自分が出られなくてチームが優勝しても、うれしいとは思うんですが、心から喜べるかといったら、ちょっと違うかなと思います。やはり自分がしっかり走って、大志田さんにも恩返ししたいなと思います。

大志田: いやいや(笑)。

大志田: 改めて、やはり従業員やファンの皆さんに応援されるのはすごくありがたいですね。選手たちはみんな3連覇に向けて順調に練習を積んでいますので、引き続き応援いただけるとうれしいです。

ヴィンセント: 皆さんの応援が本当に力になっています。

丹所: ニューイヤー駅伝に向けて、選手一人ひとりが同じ目標に向かって頑張っています。自分たちの頑張りはもちろんですが、ファンの皆さんや、従業員の皆さんの声援も必要です。声援を力に変えて頑張っていきたいと思いますので、引き続きの熱い応援をよろしくお願いいたします。