Honda SPORTS

第80回 都市対抗野球大会 Honda 硬式野球部

決勝

第80回都市対抗野球大会

9月1日(火) 18:00
試合会場:東京ドーム

チーム名 1 2 3 4 5 6 7 8 9
Honda硬式野球部 0 0 3 0 0 0 0 0 1 4
トヨタ自動車 0 0 0 0 2 0 0 0 0 2
バッテリー Honda トヨタ自動車(豊田市)
投手:筑川-坂本-須田

二塁打
三塁打
本塁打多幡

強力打線と安定した投手力で、Honda13年ぶり2回目の優勝

 3回、ツーアウトから川戸と長野のタイムリーで3点を先制
 先発筑川は5回にホームランで2点を失うも、6回までヒット2本に抑える好投をみせる
 1点差のまま迎えた8回ウラ、ワンナウト2・3塁のピンチを代わった須田が無得点に抑える好救援
 すると9回表、5番多幡がソロホームランを放ち、貴重な追加点をあげる
 そのままHondaがトヨタ自動車を4-2で敗り、13年ぶりの都市対抗野球大会優勝を果たした。


 いよいよ決勝戦。決勝の相手はトヨタ自動車ということで、自動車対決というかハイブリッド対決である。両チームとも、昨年末から不況の嵐の中、それでも何とか限られた条件の下で、チーム存続をしてきただけに、今年のシーズンにかける思いは強かったであろう。
 また、この試合の先発投手は、エース同士は筑川利希也は東海大相模で2000年、トヨタの大谷は報徳学園で2002年に、いずれも春のセンバツで全国制覇の経験のある甲子園優勝投手対決でもあった。
 そんな興味も膨らむ試合は、午後6時過ぎにプレーボールとなったが、Honda応援団はこの時点でも、まだまだどんどんと入り続けていた。

 決勝の緊張感もあって立ち上がりHonda自慢の強力打線もやや硬いという印象だった。というよりも、決勝戦独特の雰囲気の中で、両投手がいい滑り出しだったといえようか。2回を終わって両チーム3人ずつで終わり、どちらも走者なしだった。
 3回もHondaは簡単に2死となってしまったが、小手川喜常(大分商→立正大)は粘って四球を選ぶ。落合成紀(報徳学園→東海大=JFE東日本)は中前へチーム初安打を放って一、二塁とする。そして、二番川戸洋平(日大藤沢→日大)はカウント2-1と追い込まれながら、三塁線を巧みに破る二塁打で先制する。さらに、二、三塁という場面で、今大会6割近い打率の長野久義(筑陽学園→日大)が勝負強さを発揮して、中前打で二者を迎え入れた。この試合も序盤で先制するという、今大会を通じ示しているHondaらしい展開となった。
 このリードで筑川も自分のリズムで好投。4回までは強力なトヨタ打線を無安打2ランを許した。それでもまだ1点リード。筑川は気持ちを切り替えて、後続を抑えた。7回からは、コーチ兼任のベテラン坂本保(佐伯鶴城)が引き継いだ。そして8回、四死球で無死一二塁となったところで、今大会抑えのエースとして頼れる守護神ぶりを発揮している須田幸太(土浦湖北→早稲田大=JFE東日本)を投入。須田は、期待に応えて3人を抑えてピンチを切り抜けた。

 こうして迎えた9回、Hondaはこの回先頭の多幡雄一(星稜→立教大)が、ここはスライダーしかないと読みきって初球を叩くと打球は、「多幡ガンバレ」のプラカードを掲げていた左中間に飛び込んだ。試合を決定づけるような大きな価値ある一発が、職場の上司が毎年激励の意味で作ってくれるというプラカードめがけて飛んでいったのだ。まさに、声援に応えた一発だった。「あの場面は、とにかく塁に出ることだけを考えて、自分のスイングをすることを心がけていました」という一打だったが、気持ちが乗った一本だった。文字通り、「ピンチのあとにチャンスあり」を示した。
 これで、気持ちも楽になった須田投手は9回、2本の安打こそ打たれたものの、しっかりと抑えてHondaに13年ぶり2度目の優勝をもたらした。

 3階席まで埋め尽くした応援席も、歓喜に沸いた。試合開始前から、Hondaは応援団の数でもパワーでもトヨタを圧倒している感じがあったが、3回の先制時にはドーム内は壊れんばかりの大声援で包まれた。つないで得点していこうという気持ちは、そのまま応援席にも気持ちをつなぐ形で伝わっていた。
 優勝を決めた後のインタビューで安藤強監督は最初に、「いろいろな人たちに支えられて、ここまで来られました。スタンドの皆さんの応援も大きなあと押しとなりました」と周囲の支援や応援団に感謝の気持ちを述べた。「楽には勝たしてはもらえないと思っていました。8回のピンチは須田がよく抑えてくれました。3回の最初のチャンスをものにできたのは大きかったです。川戸はよく打ってくれましたし、長野は勝負強さを出してくれました。多幡の本塁打は効きましたね。筑川が本塁打で失った2点は仕方ないです。本当に、選手たちがよくやってくれました」と、選手たち一人ひとりを称えながら苦しい試合を振り返った。

 橋戸賞(MVP)を獲得した筑川投手は、「初戦から不本意な投球だったのに、こんな賞をもらって、本当にボクでいいのかという気持ちです。でも、安藤監督を日本一の男にしたいという気持ちで投げました」と思いを語った。東海大から入社5年目、安藤監督の後輩でもある。3回戦では左太ももの後ろを傷めるアクシデントもあったが、それらも振り切っての見事な好投だった。