Sayano Toshiaki
佐矢野 利明 選手
1987年12月8日、大分県生まれ。
Hondaアスリートクラブ所属。車いすハーフマラソンから2014年にメイン種目を車いす短距離(100m)に変更し、2015年に世界選手権に出場。第33回日本パラ陸上競技選手権大会 100m 5位(2022年)。
Honda特例子会社「ホンダ太陽株式会社」
(所在地:大分県)にある、
障がい者スポーツのトップアスリートたちが所属する
「ホンダアスリートクラブ」。
今回、アスリートクラブがサポートしている、
障がいのある子ども達の
スポーツ活動支援
プロジェクト「キッズスポッチャ」の夏合宿を
取材しました。
合宿に参加したアスリートクラブの
佐矢野選手や子ども達、
そして活動を支える人たちの想いに迫ります。
障がいのある子ども達のスポーツ活動を支援するプロジェクトです。NPO法人キッズスポッチャが主体となって運営しており、アスリートクラブ選手の他、理学療法士や作業療法士、看護師、介護士、学校の先生などがボランティアでコーチやスタッフとして参加。陸上競技をメインにさまざまなスポーツの体験と、仲間との交流の場を提供しています。Hondaは「スポーツの楽しさを通じて個々の能力や可能性を引き出し、夢へのチャレンジのきっかけにしてほしい」という想いからこの活動を協賛しています。
たくさん汗を流し、たくさん笑った
二日間でした!
Sayano Toshiaki
1987年12月8日、大分県生まれ。
Hondaアスリートクラブ所属。車いすハーフマラソンから2014年にメイン種目を車いす短距離(100m)に変更し、2015年に世界選手権に出場。第33回日本パラ陸上競技選手権大会 100m 5位(2022年)。
自身の経験を踏まえ、レーサーに置くクッションの位置をアドバイスする佐矢野選手
自身の経験を踏まえ、レーサーに置くクッションの位置をアドバイスする佐矢野選手
今年の夏合宿はコロナ禍のため中止という案も出ていましたが、運営の方々が頑張って実現してくださったおかげで、子ども達も、私も楽しい時間を過ごせました。子ども達は暑い中、室内練習にも屋外練習にも積極的に取り組み、とても頑張っていたと思います。
合宿ではレーサー(陸上競技用の車いす)の漕ぎ方や漕ぐ際の姿勢などを見てアドバイスしていました。その際、「こうしなさい」ではなく「こうしてみたらどう?」と改善案を投げかけるように心がけました。受け身ではなく、子ども達自身でいろいろと試しながら自分に合うスタイルを見つけてほしいからです。私自身の観察力を養うことにもつながるので、キッズスポッチャは私にとっても良い勉強の機会になっています。
練習する子ども達のサポートをするNPO法人代表の加藤和恵さん
きっかけはNPO法人代表の加藤和恵さんと、ホンダアスリートクラブの渡辺習輔さんとの縁です。加藤さんは私が小学1年生の頃に通っていた病院でリハビリを担当してくれていた理学療法士として出逢いました。そして14歳の頃にリハビリの一環で車いす陸上を始めたのですが、その時に指導したり、大会に連れていってくれたりしたのが渡辺さんです。加藤さんがキッズスポッチャを立ち上げ、渡辺さんも一緒に活動されていたので、二人への恩返しのつもりで、私もプロジェクト立ち上げ当初からお手伝いさせていただくようになりました。
練習する子ども達のサポートをするNPO法人代表の加藤和恵さん
憧れの選手から指導を受け、交流できる機会は子ども達の励みに
憧れの選手から指導を受け、交流できる機会は子ども達の励みに
私がキッズスポッチャに取り組む理由は大きく2つあります。一つは、障がいを持つ子ども達にスポーツの楽しさを伝えるため。もう一つは、普通に仕事をしながらアスリートとしてやっていけるのだという子ども達の「将来の見本」になるためです。実は私も養護学校に通っていた頃は、漠然と「将来は授産施設(※)に行くのかな」と思っていました。でも、幸運にも渡辺さんに出会い、ホンダ太陽という一般企業に勤めながら車いす陸上にも取り組む姿を見て「すごくいいな」と思って。そこから世界が広がったんです。渡辺さんのように、子ども達にとっての将来の見本になりたい、その想いが私がアスリートを目指した最初のきっかけでした。だからこそ、キッズスポッチャの活動には大きなやりがいを感じています。それに、ここは子ども達と親御さんにとって情報の発信や共有ができる良い機会にもなっているので、私が経験してきたことをできるだけたくさんお伝えしていきたいと思っています。
※授産施設とは、身体上、精神上の理由、または世帯の事情で就業能力の限られている要保護者に対し、就労や技能の修得のために必要な機会を与え、自立を支援する施設です。
子ども達は合宿中、自分なりの目標を定めて熱心に練習していました
子ども達にはキッズスポッチャを通して、自分でできることを一つでも多く増やしてほしいと期待しています。というのも、養護学校では時に、親が子どもに対して過保護になっている部分があると思うからです。それが全て悪いわけではありませんが、子ども達は将来、自分の力で社会に出ていかなければいけません。そのためにも子どもの頃からいろいろなことにチャレンジしておくことが大切で、目標を持ってスポーツに取り組むことはその練習になります。スポーツというと競技成績に目が行きがちですが、キッズスポッチャではスポーツを楽しみながら、仲間やスタッフ、家族との交流を通して子ども達の世界をさらに広げていくことを大事にしています。
子ども達は合宿中、自分なりの目標を定めて熱心に練習していました
昨年の第40回大分国際車いすマラソンで疾走する佐矢野選手
昨年の第40回大分国際車いすマラソンで疾走する佐矢野選手
キッズスポッチャの子ども達は、大分国際車いすマラソンの大会前に応援の手紙を、当日は沿道から声援を送ってくれるので、いつも「頑張らなきゃ」という気持ちになります。大きな力になっていますね。今年もハーフマラソンに出場予定なので、みんなの応援を力に、優勝という目標に向けて精一杯走りたいと思います。また、大会にはキッズスポッチャの子ども達も何名か出場するので、それぞれの目標に向けて、子ども達と一緒に走ることがとても楽しみです。
スポーツは大好き。合宿ではダッシュの練習がきつかったけど、教えてもらったことをやったらタイムがどんどん縮まっていくので楽しいです。
和氣佳汰さん
(東京の国際大会金メダルの)マルセル・フグ選手に憧れて、陸上のレースのビデオを何回も繰り返し見て研究しながら、熱心に練習しています。子どもが目標を持つのはうれしいですね。
和氣さんのお父さん
私にとってキッズスポッチャの原点は、同じ車いすの人たちとのコミュニケーションの場だということ。最初は友だちづくりのために参加し、それから車いす陸上にはまっていきました。キッズスポッチャはいろんな人に来てほしい場所です。
内田琢馬さん
参加して一番良かったのは、同じ境遇の友だちができたこと。障がい者スポーツの世界は、最初の一歩が難しいだけで、踏み出せば仲間も増え、世界が広がります。親同士も含めたコミュニティづくりにつながっています。
内田さんのお父さん
合宿ではコーチからいろいろ教わりました。印象に残っているのは、同じペースで漕ぎ続けることの大切さ。今年の大分国際車いすマラソンに出場するので、教わったことを活かして頑張りたいです。
清原大輝さん
アスリートの方のアドバイスをふまえ、自分なりに姿勢など工夫しながら取り組むようになりました。これからも家族二人三脚でサポートしながら、応援していきたいです。
清原さんのご両親
コロナ禍での開催に悩みましたが、合宿ではアスリートに質問しながら子ども達が頑張る姿を見て、逆に私たちがパワーをもらいました。
キッズスポッチャの活動において、アスリートたちの力はとても大きいものです。特に渡辺選手、佐矢野選手は活動当初からずっとサポートしてくれています。技術的な指導はもちろんですが、子ども達にとって仕事と陸上競技を両立しているアスリートは憧れの存在であり、彼らとの交流が自身の目標を見つけるきっかけになることも。アスリートだけではなく、通常の活動にはホンダ太陽の従業員の方が参加してくれることもあり、保護者にとっては、リアルな体験談がお子さんの将来を考える上でとても参考になります。これからもキッズスポッチャを通して、スポーツの楽しさを味わってもらいながら、障がいのある子ども達とその家族の世界を広げるお手伝いをしていきたいと考えています。
Hondaが目指すもの、それは障がい者一人ひとりが
自身の個性を活かし、
全力で夢にチャレンジできる環境の創造です。
その一環としてHondaはホンダアスリートクラブの
選手たちを応援。
そして彼らは、障がいを持つ子ども達の
スポーツ支援を行う
キッズスポッチャをサポートし、
子ども達のチャレンジ精神を育む
お手伝いをしています。
「障がいを持つ人たちの可能性を広げたい」
同じ想いを持つ人たちが、
企業・団体・地域の垣根を越えて出会い、
つながり、交流することで、可能性はもっと
広がっていくはずです。
Hondaはこれからもさまざまな人たちと
手を取り合いながら
誰もが全力で夢にチャレンジできる環境づくりに
努めて参ります。