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MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2003年3月号

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PROFILE
1959年、東京都生まれ。日本大学理工学部交通工学科卒業後、日本大学に籍を置きながら東京大学工学部の中村英夫教授(現運輸政策研究所所長)の指導を受け、修士課程を修了。日本大学大学院理工学研究科交通土木工学の博士課程修了後、同理工学部助手を経て、アジア工科大学院助教授としてタイに派遣。2000年より現職。専門は交通計画、国際開発工学、交通プロジェクト評価。(財)国際交通安全学会会員。 |
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開発途上国の交通問題に取り組むなかで、福田さんは日本のODA(政府開発援助)のあり方に疑問を抱くことがあるといいます。ひとつは、「アジアはものすごく遅れている」と考える日本人が多いことです。
「それは10年前に訪ねた人の感覚。アジアは猛スピードで変わっています。たとえば都市交通は、欧米では300年、日本では戦後50年かけて積み上げてきたものが、アジアは、わずか20年。今やインフラ整備からITや環境までが、一気に同時進行しようとしています」。日本では実用化にこぎつけたばかりの自動料金システムは、バンコクの首都高には95年から導入済みだといいます。
このように急速に発展するアジアの国々に対し、日本は何ができるのでしょうか。
2年前、福田さんは国土交通省の事業で、バングラディシュの首都ダッカにエコトランスポート(※1)を導入するための調査研究に携わりました。そのとき、「いきなり日本の例を持ってこられても飛躍していて現実味がない。むしろ、あなたがバンコクでやってきた話をしてほしい」と訴えられたといいます。考えてみれば、現在のダッカの経済状況、人口、都市面積、パラトランジット(※2)の数などが、60年代のバンコクと酷似しています。福田さんは、「過去の開発援助の経験や成果の見直しが重要である」ことを痛感したといいます。開発援助先進国とでも呼べるタイやフィリピン、インドネシアでの取り組みは、すでに次の段階に行っており、近隣諸国の事例の方が地域的にも心理的にも受け入れやすいからです。
SJ3月号では、福田さんが東南アジアの交通問題に取り組む中で気づいたことや、日本に対する期待などについて紹介します。
エコトランスポート(※1)…環境に優しい交通手段
パラトランジット(※2)…東南アジア諸国等にみられる中小型の道路交通車両を用いた公共交通機関。可能輸送人員はバスとタクシーの中間的存在。 |