東レとナイロン樹脂の水平リサイクルに関する共同実証を開始

~リソースサーキュレーションの実現に向けて~

 株式会社本田技術研究所(代表取締役社長:大津 啓司 以下、Honda)は、東レ株式会社(代表取締役社長:大矢 光雄 以下、東レ)と、使用済み自動車(End-of-Life Vehicle 以下、ELV)から回収したナイロン6樹脂※1(以下、ナイロン樹脂)の水平リサイクル※2に関する共同実証を開始しました。なお、本実証は環境省の脱炭素型循環経済システム構築促進事業※3の認定を受けており、樹脂処理量500トン/年規模のパイロット設備の導入と実証を行い、2027年頃の実用化を目指します。

 近年、日本においても「プラスチック資源循環法」が施行されるなど、飲料容器や衣料品にとどまらず、廃棄プラスチックの再資源化への社会要請は高まっています。一方、これまで自動車のナイロン樹脂廃材の処理においては、分別回収やリサイクルの技術的難度の高さから、焼却の際に発生する熱エネルギーを回収・利用するにとどまっていました。

 こうした中、Hondaは東レと共同で、亜臨界水※4を用いて、回収したナイロン樹脂を分子状態に戻すモノマー化に成功しました。この技術を活用し、今回の共同実証では日本国内で、ELVから回収したインテークマニホールドを再生原料とする水平リサイクルに取り組みます。溶媒に亜臨界水を用いることで、従来の酸触媒と比べて環境負荷を低減しながら、短時間に高い収率※5でバージン材と同等の性能・品質のリサイクル材に転換できる水平リサイクルのスキーム構築を目指します。

【今回の水平リサイクルの技術実証スキーム】

Honda・東レによるナイロン樹脂の水平リサイクル技術 主な特長

・エンジニアリングプラスチック※6原料となるモノマーを再生材料から直接作り出すことが可能
・モノマー製法は、溶媒に水を用いることで、従来の酸触媒に比べて環境にやさしく、約5分の1の時間で高効率な製造が可能

 また、この技術はナイロン樹脂以外のエンジニアリングプラスチック原料におけるモノマー化へも応用することが期待できます。今回の共同実証では衣料やフィルムなど自動車以外の用途も含め、広くサーキュラーエコノミーへの貢献効果についても検証します。

 Hondaはモビリティを進化させるために注力するキーファクターのひとつとして、リソースサーキュレーションを掲げており、こうしたパートナーシップなどを通じて、積極的にリサイクル資源を活用することで、環境負荷ゼロの実現を目指します。

ナイロン樹脂の一種。強度や耐熱性、耐薬品性に優れることから、熱にさらされ、ガソリンやオイルなどに接することが多い自動車部品向けに適している

リサイクルする対象の使用済み製品を原料として用いて、再び同じ種類の製品を製造するリサイクルのこと

環境省令和5年度脱炭素型循環経済システム構築促進事業(うち、プラスチック等資源循環システム構築実証事業)(補助)

水の臨界点(374℃、22MPa)よりもやや低い領域の高温・高圧状態の水

化学的な方法で原料物質から目的物質を取り出そうとするとき、理論的に予想される量に対して、実際に得られる量の割合

機械・自動車・電子機器などの部品に多用される、機械的強度・耐熱性・耐摩耗性に優れたプラスチック

実証事業について

事業名:
環境省令和5年度脱炭素型循環経済システム構築促進事業
(うち、プラスチック等資源循環システム構築実証事業)(補助)
https://www.env.go.jp/press/press_01945.html

期間:
2023年7月~2026年3月(予定)

代表事業者:
東レ株式会社

共同実証事業者:
株式会社本田技術研究所