2003年05月20日 ニュースリリース
追突を予測し、ブレーキを制御する世界初の「追突軽減ブレーキ」を新開発
衝突前にシートベルトを巻き取る「E-プリテンショナー」と組み合わせ6月発売のインスパイアに搭載
Hondaは、走行状態、前走車との距離や相対速度から追突の危険性を判断し、警報によりドライバーに回避操作を促すとともにブレーキを制御して速度の低減を行う、世界初の「追突軽減ブレーキ」(CMS:Collision Mitigation brake System)を新開発した。この「CMS」に、衝突前に自動的にシートベルトを引き込む「E-プリテンショナー」を組み合わせ、本年6月発売の新型インスパイアに搭載する。
「CMS」と「E-プリテンショナー」は、ミリ波レーダーで前方およそ100mにわたって車両を検知し、車間距離、相対速度、予測した自車の進路などから追突の危険性を判断、警報音や体感警報により、ドライバーに認知や回避操作を促す。さらに、ドライバーの踏力不足を補うブレーキアシストと乗員拘束力を高めるシートベルト制御や、衝突前のブレーキ制御による速度低減などにより衝突した場合の被害を軽減する。
Hondaは、安全を車づくりの最重要課題の一つとして位置づけ、運転者の教育・啓蒙を主としたゼロ次安全から、衝突を未然に防ぐことを主とする一次安全(アクティブセーフティー)、そして衝突時の傷害軽減を主とする二次安全(パッシブセーフティー)など、それぞれの分野で積極的に取り組んできている。
これに加え、衝突を予測しその被害を軽減する「Honda プリクラッシュセーフティーテクノロジー」の研究開発を進めてきたが、今回の「CMS」と「E-プリテンショナー」は、その第一弾として、追突の危険をドライバーに知らせ回避を支援し、衝突が避けられない状況では被害を軽減するシステムとして開発した。
「CMS」、「E-プリテンショナー」作動概要
(1) 一次警報
前走車に衝突する危険性がある場合や、車間距離が短い場合にブザー音と、メーター内のマルチインフォメーションディスプレイの「BRAKE」表示でドライバーに認知や回避操作をうながす。
(2) 二次警報
さらに前走車に接近した場合、「CMS」は軽い自動ブレーキングを、「E-プリテンショナー」は弱く2~3回シートベルトの引き込みを行うことにより、ドライバーに体感的に危険を知らせる。またこの時点でドライバーがブレーキを踏むと緊急制動と判断し、ブレーキアシストを作動させ、回避操作を支援する。
(3) 衝突被害軽減
回避が困難と判断すると「E-プリテンショナー」は強い引き込みを行い、ベルトの緩みや衣服のふくらみを抑えて、衝突時に作動する火薬式シートベルトプリテンショナーの乗員拘束効果を高める。また「CMS」は強いブレーキングを自動的に行い衝突速度を低減する。
また、「E-プリテンショナー」は「CMS」が作動していない場合でも、ドライバーの急ブレーキによりブレーキアシストが作動すると、シートベルトの引き込みを行う。
「CMS」、「E-プリテンショナー」システム構成
ミリ波レーダー
前方およそ100メートル、左右16°の範囲で車両を検知する。
各種センサー
ヨーレートセンサー、舵角センサー、車輪速センサー、ブレーキ圧力センサーなどで走行状態を把握する。
CMS制御ECU
レーダーの情報から得た前走車との距離や相対速度、各種センサーの情報から予測した自車進路をもとに衝突危険性を判断し、警報やブレーキ作動の指示を出す。「E-プリテンショナー」、VSA、メーターユニットなどと随時情報のやりとりを行っている。
VSA-ECU一体型油圧ユニット
各種センサーの情報をCMS制御ECU等、他のECUに送る。また、CMS制御ECUのブレーキ指示に基づいてブレーキ油圧ユニットを制御し、ブレーキをかける。
E-プリテンショナー制御ECU
CMS制御ECUのブレーキ指示信号と電子制御式ブレーキアシストの信号に基づき、E-プリテンショナーにシートベルト巻き取り指示を出す。
E-プリテンショナー
E-プリテンショナー制御ECUからの指示により、内蔵モーターでシートベルトを巻き取る。火薬式プリテンショナーと一体となっている。
メーターユニット
CMS制御ECUからの信号を受け、ブザー音とディスプレイ表示で警報する。