
「シンプル・クリーン」に込めた想い
――渡邉さんはこれまでどんなキャリアを歩まれたのでしょうか?
渡邉
ずっと二輪車のデザインに携わってきました。主にカラーリングやスタイリングを担当し、これまでに米国と中国に駐在して経験を積んできました。最初はいわゆるFUNモデルを多く担当し、クルーザータイプの大型バイクやロードスポーツモデルのデザインに関わってきました。
中国では特にスクーターやコミューターといった実用性を重視した製品に携わり、都市部での利便性を意識したデザインを学びました。EM1e:も、そうした経験を活かした製品の一つです。EM1e:はベースモデルを中国で開発していますが、私はその担当マネージャーとしてデザインをリーディングしました。


――Hondaの電動パーソナルコミューターであるEM1e:は、どのような都市でどのように使われることをイメージされましたか?
渡邉
中国でスタートしたプロジェクトでしたので、自然と中国の街並みが頭にありました。ただし、特定の地域に限定せず、広く利用されることを意識しました。これにより、EM1e:は結果的にグローバルな展開を成功させることができたと思います。
デザインで語る「使いやすさ」と「高品質」
――特にどの部分が「シンプル・クリーン」を体現していると思いますか?
渡邉
形状に関しては、やさしい印象を保つために視覚的な攻撃性を排除しています。たとえば、直線基調の中にも丸みを持たせた構成は、親しみやすさを感じて頂けるかと思います。
また、適度に広い塗装面積を確保することで、製品全体に統一感と高品質な印象を与え、視覚的な満足感を高める効果を狙っています。このバランスが「シンプル・クリーン」の根幹を支えています。
細部にもこだわり、後部のグラブレールは二重構造とし、車体と同色にすることで、車体との一体感と実用性を確保しています。


毎日の相棒としての信頼性
――どんなユーザーにも使いやすい普遍性を目指しているように感じます。その点で意識された部分は?
渡邉
外観ではユニセックスでニュートラルなデザインを心がけました。同時に、膝周りの空間やシートの高さ、フロアサイズなどの調整も徹底的に行いました。これらの細かな工夫により、性別を問わず、幅広い層のお客様に長く使っていただけるデザインや実用性を実現できたと考えています。


EVデザインで変わること、変わらないこと
――電動車ならではの課題や楽しさはありましたか?
渡邉
ハードウェアから来るデザインの違いは確かにありますが、二輪車を作るという本質的な部分での違いはありません。車体構成に関しては、基本的に従来のガソリン車と近い構成となっています。
もちろん、パワーユニットが変わることで、デザイン上の新しい要件が生じることはあります。


――今回のデザイン・開発を通じて得られた発見や学びはありますか?
渡邉
要件に応じて製品を作るという本質的な部分は、デザイナーとして変わらない姿勢です。今回の経験を通じて、細かな制約の中でもユーザーにとっての使いやすさを追求することが、最終的に大きな成果に繋がると再確認しました。デザイナーとして、これからもそのプロセスを楽しみながら取り組んでいきたいと思います。
Profiles

渡邉 健志
モーターサイクル・パワープロダクト
プロダクトデザイナー