
素晴らしいデザインに国や地域の違いはない
──CUV e:はインドネシアでの発表となりましたが、そもそも同国での上市を前提として開発されたものだったのでしょうか?
栗城
いえ、CUV
e:はグローバルに展開していくモデルで、最初に上市するのがインドネシアだということです。製品開発は日本で行いましたが、グローバルのデザインメンバーと一緒にプロジェクトを推進しました。インドネシアはもちろん、タイや欧州などからデザイナーが参加し、デザインを検討しました。


──それだけの規模でデザイナーが集まると、意見の相違が出てくることもあったのではないでしょうか?
栗城
意見にズレがあればそのたびに判断していかなければならないのですが、今回はコンセプトメイキングの段階でも認識や捉え方にズレはありませんでした。従来は国や地域ごとに好まれるデザインがあると言われていましたが、実は大きな違いがなかったのです。これが今回のプロジェクトを通して得た、最大の気づきでした。
ただし、最終的なアプローチには少し差異があり、議論しながら進めていきました。誰かの意見を押し通すという形ではなく、例えばタイと欧州の意見が違った場合は日本やインドネシアなどの他地域のメンバーが客観性を持って合意形成をしていく形で、誰かが不満を残したまま進めることはありませんでした。

──そのスケッチを見ると、屋内や寝室といった住空間にコミューターが置かれるなど、生活の中に溶け込むような世界観が描かれていますね。
栗城
ASEAN地域の多くのお客様にとっては、二輪車は「ファミリーカー」の役割も担っています。ガソリン臭がしてもICEを屋内に駐輪するご家庭も珍しくありません。日本でもクロスバイクを土間の壁に掛けている方がいらっしゃいますが、それと同じようにASEAN地域の方にとっては生活に寄り添う存在。加えて、最近では配達業務のようにパーソナルでビジネスをされている方もいらっしゃいますので、そういった場面でも使っていただけるモデルを想定しました。
キャラクターラインと灯火器でシンプルななかにも個性を表現


──CUV e:は「Honda Mobile Power Pack e:」が2個搭載されています。それはデザインにどう影響していますか?
栗城
従来のICE搭載車と比べると、シート下にHonda Mobile Power Pack
e:を2個搭載していますので、収納スペースが制約されてしまいます。そのなかでも万国共通で必要とされる雨合羽と書類の収納スペースを確保したうえで、ICE搭載車同等のコンパクトなパッケージングを実現しています。それらのボリュームを守りながら、無駄のない絞り込んだボディーになっています。
Hondaのデザインアイデンティティと電動二輪車の未来

──そうした機能美とカッコよさの両立というのがHondaのデザインアイデンティティですが、どういったところに込められていると感じますか?
栗城
デザインでいうと「Fit your sustainability」というキーワードがある中で、特に今回のモデルでは「Simplicity and
Emotion」を目指しました。コンパクトにしつつ、シンプルな表現だけにしていくと個性が弱まってしまうので、灯火器やスタイリング、パーツ構成を特徴的にすることで、アイデンティティを確立できたと考えています。
──今年、Hondaは電動グローバル元年として、多様な電動二輪車を展開し始めています。今後、電動のコミューターが増えていく未来が想定されますが、ご自身としてはどういったデザインを生み出していきたいとお考えですか?
栗城
ICE製品がゼロになる社会はまだまだ先の話です。今後電動二輪車がICEと同じように普及してきたときに、どういった新しい価値をお客さまに提供できるか。遊び心があるものなのか、あるいはビジネスに寄ったものなのか、そういったところでアプローチはどんどん広がります。
当面は、ICEとEVが共存していく中で、デザインとしてもどう違いを生み出していくかが課題になるはずです。ICEとEVの大きな違いでいえば、やはりエンジンの有無。EVはバッテリーとモーターで駆動しますので、レイアウトの自由度が上がる可能性もある。その自由度により、さらに使い勝手が良いものや、より特徴的なデザインが実現できると期待しています。
Profiles

栗城 大亮
モーターサイクル・パワープロダクツ
プロダクトデザイナー