技術者に光を当て、議論で磨く──
Honda R&D Technical Forum

Honda R&D Technical Forum(HTF)は、本田技術研究所が毎年開催する“社内の学術講演会”で、Hondaの技術者が拠点や領域を越えて集い、発表と議論を通じて学び合う場です。日本のみならず、ヨーロッパ。アメリカ、さらにはインド、タイなどの海外拠点から、1,300人以上の技術者が集まります。

2025年度は、対面でのコミュニケーションをさらに強めるとともに、大学など外部研究者を招く「オープンフォーラム」を初めて実施しました。

研究を深めるだけでなく、研究を“開く”ことで何が起きるのか──HTFの価値は、まさにそこにあります。

HTFの目的:技術者の活性化と、相互研鑽の場づくり

HTFが一貫して大切にしてきたのは、技術者と技術に光を当て、ネットワーキングと議論で互いを磨くことです。

発表する人、聴く人、偶然立ち寄った人。立場を越えて言葉が交わり、違う領域の視点が流れ込むことで、研究の解像度が上がっていく。HTFは、そうした“相互研鑽の空気”を、意図して立ち上げています。

またHTFには、Hondaフィロソフィーに根ざしながら、未来に向けて「世界一」「世界初」の技術を真剣に議論する場でありたい──というメッセージも込められています。技術が速く進む一方で、人や社会はすぐには変われない。だからこそ、受け入れられ、使われ、価値になる技術とは何かを、正面から問い直す。HTFは、そのための“議論の舞台”でもあります。

2025年度のフォーマット:Face to Faceで、技術が交差する3日間

2025年度のHTFは、12月に3日間の日程で開催。テーマは、「Human Centric Technology」。
昨年は過去のHuman Centric Technologyを中心にHondaの歴史を振り返り、今年は、「未来のHuman Centric Technology」に焦点をあてて技術を議論する場に。現地参加を基本とし、講演・聴講ともに対面で実施することで、Face to Faceのコミュニケーションを強く打ち出しました。

初日、本田技術研究所社長の大津啓司による基調講演では、将来技術の紹介やHondaの技術者として持つべきマインドが熱く語られました。それに続く特別講演では、Googleで研究開発領域のVice Presidentを務められたアルフレッド・Z・スペクター博士によって、AI時代における技術者のあるべき姿勢について語られ、会場のボルテージが高まります。

これを皮切りに、会場内では講演会場が7つ同時並行で動き、領域ごとに編まれたオーガナイズドセッション(OS)は25(オープンフォーラム含む)、講演数は約280件、そのうち海外からは約70件に上ります。扱うテーマもクルマに限らず、デザイン/AI/ロボティクス/エネルギー/材料など先進領域まで横断。Hondaの技術と知を集約する“総合知プラットフォーム”とも言えるようなイベントになっています。

会場を歩くと、次のセッションへ急ぐ人が廊下を行き交い、ホワイエでは立ち話が自然に始まる。興味のある講演を追いかけているうちに、ふと隣の領域に足が伸びてしまう——HTFの面白さは、こうした“回遊”が自然に起きるスケール感にあります。

また、対面での議論を強めるために、講演・聴講は現地参加を基本とする一方で、社内ネットワーク上のオンデマンドコンテンツを充実させ、現地の熱量と、後日の学び直しを両立させています。「その場で議論が生まれること」を最優先に置いたフォーマットです。

<ポスターセッション:偶然の出会いを増やす“中央広場”>

HTFでは、ポスターセッションを単なる補助企画にしません。
大ホールに集約し、中央にコミュニケーションエリアを置くことで、コーヒー片手の気軽な対話が生まれる。意図しない技術にぶつかり、思わず足が止まり、そこから議論が始まる。
その「活気」こそが、領域横断のスイッチになります。

<ポスターセッション:偶然の出会いを増やす“中央広場”>

毎晩の交流会は、単なる懇親の時間ではありません。日中のセッションで生まれた問いを、もう一段深くする時間。

リラックスしたムードの中で、ざっくばらんに話すからこそ、立場や領域の壁が一度ほどける。ジャズの演奏など、空気づくりまで含めて“議論が生まれる場”として設計されているのが、HTFらしさです。実際に「発表者と直に話せた」「他領域の技術者と交流でき、自分の技術が別領域で活かせることに気づいた」といった声も上がっています。

<2025新企画:オープンフォーラム──研究を“開く”第一歩>

2025年、HTFは初めて、大学・研究機関の研究者を招いた 「オープンフォーラム」 を実施しました。
ポイントは、“全部を開く”のではなく、開ける範囲を精密に設計して成立させたことです。
• 外部参加は、大学・研究機関に対して会場と時間を限定
• 外部参加者には、機密情報を含む他セッションへの参加は遠慮いただく
• 発表内容は、最新技術の中から外部公開できる内容に限定
“社内で起きていた化学反応”を、社外へ拡張する。その第一歩が、2025年のオープンフォーラムでした。

HTFが残すもの:技術を強くするだけでなく、技術者を強くする

HTFが目指しているのは、年に一度の「発表の場」を整えることではありません。

技術者が光を浴び、議論で磨かれ、新たな挑戦に繋げる。そして、そこで得たつながりを起点に、自分から動けるようになる。HTFは、Hondaの技術を強くするだけでなく、技術者を強くする“文化の装置”として、進化を続けています。