Chapter 32022-2025

記録を塗り替える勝利を成し遂げ、真の頂点へ

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2021年シーズンに念願のタイトル獲得を果たしF1活動を終了したHondaの動きに対応し、レッドブルはレッドブル・パワートレインズ(RBPT)を設立して、独自のパワーユニット開発製造を行う体制を構築。レッドブルとHondaは、Hondaのパワーユニット技術をRBPTによる開発製造に活用することで合意し、HondaはRBPTとの技術提携を通じレッドブルのF1活動を支援することとなった。その後、この支援形態を現行パワーユニット規定最終年の2025年まで継続させることも決まった。

2022年、F1マシン規定には大きな変更があった。コロナ禍によって先送りされていた新規定で、車体についてはマシンフロアでダウンフォースを稼ぐグランドエフェクトカーを採用し、後方乱気流を制御することでオーバーテイクを増やすことを狙った。パワーユニットについては、環境に配慮したE10燃料(10%の再生エネルギー燃料を含んだガソリン)の使用が義務付けられ、シーズン前のホモロゲーションを受けた仕様で開発は凍結。2025年シーズンまでそれを使用することとした。ただし、凍結されたのはパフォーマンス向上に関わる開発やパーツ交換で、安全性確保の視点から安全性、信頼性向上の変更は限られた範囲で認められている。Hondaはチャンピオンシップを獲得したRA621Hをベースに、E10燃料仕様に改良する作業を急ピッチで進めたが、ポテンシャルを維持したうえでの仕様変更は想定以上に困難な作業となった。

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このシーズンは、シャシーの新規定にうまく対応したレッドブルが席巻した。開幕当初こそライバルの台頭を許したが、ポテンシャルの高い車体に、レースを重ねるごとに適切なアップデートを施すチーム力の高さによって、シーズン後半には最速マシンとなっていった。Hondaの技術が活用された新仕様のパワーユニット「RBPTH001」が、そのパフォーマンスに大きく貢献したことは言うまでもない。

そして前年に初のチャンピオンを獲得したマックス・フェルスタッペンの突出したドライビングテクニックが光るレースが続き、シーズン22戦15勝という最多勝の記録を更新する圧倒的な強さで連覇を達成。タイトルを決めたのは第18戦日本GPで、日本のファンにとっては印象的なシーンとなった。そしてレッドブルはコンストラクターズ・チャンピオンにも輝いた。撤退後ではあったがHondaは念願のダブルタイトル獲得に大きく貢献した。
コロナ禍を乗り越えたF1はほぼ以前の状態に戻り、マシンのレギュレーション変更が施行され新たな時代を迎えた。その象徴が連覇を果たしたフェルスタッペンで、速さと強さによって新時代の王者に君臨したシーズンであったとF1史に記録されるだろう。

22戦21勝を成し遂げ、記録にも記憶にも残るシーズン

2023年シーズン、HondaによるRBPTへの技術支援という形態は変わらないものの、パワーユニットは「Honda RBPTH001」という名称となり、Hondaのバッジネームが復活。前年の勢いをさらに増してレッドブルは圧倒的な強さで序盤から確固たるリードを築いた。開幕戦バーレーンGPでフェルスタッペンが優勝、セルジオ・ペレスが2位で1-2フィニッシュを成し遂げると、その後もレッドブルは連勝を続けた。

アルファタウリは、ビザ・キャッシュアップ・RBとチーム名を変更し、角田裕毅は同チームで3年目のシーズンを迎え、随所に速さを見せていた。

レッドブルの連勝はとどまる気配を見せず、それが途絶えたのは実に第16戦シンガポールGPだった。続く第17戦日本GPでレッドブルのコンストラクターズ・チャンピオン連覇が決まると、第18戦カタールGPのスプリントでフェルスタッペンがドライバーズ・チャンピオン3連覇を確定。その後も勝利を積み重ねたレッドブルとフェルスタッペンは、チームとしてシーズン22戦中21勝、フェルスタッペン単独で19勝を挙げ、連勝、最多勝、獲得ポイントなどのF1史上記録を大きく更新する歴史的なシーズンとなった。

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そして2023年5月24日、Hondaは2026年からアストンマーティンとのジョイントによるF1参戦を発表した。同年からのパワーユニット新規定がカーボンニュートラルを目指すHondaの方向性に合致していること、そして最高峰であるF1への挑戦がHondaの技術を磨き、人材を育成するために必要だという理由で復帰を決断したと説明。すでに新レギュレーションに対応する技術の研究開発を実行中であることも公表した。F1活動を担うHRCは、9月にアメリカでモータースポーツ活動を行うHonda Performance Development(HPD)を統合し、その規模と活動範囲を拡大。Hondaブランドの価値を高め、常に勝利を目指す組織として体制を整えていた。

アドバンテージを失いつつも善戦

前年歴史的な勝利を挙げたレッドブルの優位は揺るがないと思われた2024年シーズン。序盤はフェルスタッペンが勝利を重ねたものの、シーズン中盤を前にその優位が崩れ始め、接戦ながら第10戦スペインGPまでシーズン6勝を挙げるが、次の勝利は第21戦ブラジルGPと苦しい戦いを強いられた。ライバルのマシンパフォーマンスが大きく向上したのに対し、レッドブルはアップデートがあまり機能せず、前年までのアドバンテージは消滅していた。Hondaは想定外の展開にできる限りの対応を行なったが、開発凍結下においてレッドブルの挽回に寄与できる部分は少なかった。レッドブルはマシンの空力性能向上のため車高をギリギリまで下げる仕様を採ったが、これによりコースアウトなどで底打ちをするとパワーユニットが大きなダメージを負い、その対応に追われることが多かった。

シーズン後半、勝利から遠ざかるフェルスタッペンの4連覇に黄信号が灯ったかに見えたが、前半戦に重ねたポイントと、フェルスタッペンの巧みなレース運びによって第22戦ラスベガスGPでチャンピオンを確定させた。しかし、不調を印象付けたレッドブルはコンストラクターズ・ランキング3位に終わり、連覇は途絶えることとなった。

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現行レギュレーションのラストイヤーとなる2025年シーズン、レッドブルは序盤戦から苦戦を強いられる展開となる。フェルスタッペンは第3戦日本GPで異次元のパフォーマンスを見せ完璧なポール・トゥ・フィニッシュを成し遂げ、待ち望んだシーズン初優勝を果たした。また、日本GPでは、Hondaの育成プログラム出身の角田裕毅がトップチームであるレッドブルに昇格し、ワールドチャンピオンのチームメイトの座を得た。この抜擢は世界中の注目を浴びるとともに、鈴鹿でのレッドブルデビューに日本のファンを大いに沸かせることとなった。フェルスタッペンは第6戦エミリア・ロマーニャGPでも見事なレース運びで2勝目を挙げた。その後、フェルスタッペンは勝利が得られない苦しい展開ながらも、着実にポイントを重ね、5連覇達成を諦めない姿勢を示しシーズン前半戦を終えた。

サマーブレイクが終わり、シーズンは後半戦を迎えた。第15戦オランダGPでは、2位に終わり母国連覇こそ逃したフェルスタッペンだが、レッドブルの努力によりマシンの競争力が上がってきたことは明らかだった。各チーム、2026年からの新規定マシンの開発にウェイトを移すなか、レッドブルはこのシーズンを諦めない姿勢でマシンのアップデートを進めていた成果である。その努力が実り、第16戦イタリアGP、第17戦アゼルバイジャンGPでフェルスタッペンは完璧な連勝を果たした。予選、決勝ともフェルスタッペンのドライビングが冴え渡り、危なげない勝利をライバルに見せつけた。超高速のモンツァ、市街地コースのアゼルバイジャンと、まったく性格の違うコースでの完勝は、レッドブルのマシンがかつての速さを取り戻した証明だった。2023年唯一勝利を逃し、レッドブルにとって不得意と思われた第18戦シンガポールGPでも、フェルスタッペンは予選、決勝ともに2位となる。第19戦アメリカGPでは完勝劇が復活し、危なげなくシーズン5勝目を挙げた。シーズン後半、5戦を終えて3勝、2位2回という結果は、チャンピオン争いに名乗りを上げる凄まじい巻き返しとなった。シーズンは残り5戦となり、フェルスタッペンはランキング3位、トップとの差は40ポイントにまで縮まっている。

シーズン最終盤に入り、レース巧者のフェルスタッペンは着実にポイントを重ねた。第20戦メキシコGP、第21戦サンパウロGPで3位表彰台を得ると、第22戦ラスベガスGP、第23戦カタールGPで連勝を飾り、サマーブレイク明けの9戦ですべて表彰台を獲得し、そのうち優勝5回という驚異的な結果を残した。

劣勢だったシーズン前半戦から一転、チャンピオン争いは最終戦までもつれ込み、ランキングトップとフェルスタッペンの差は12ポイントにまで縮まっていた。勢いに乗るフェルスタッペンは、最終戦アブダビGPでも速さを見せつけポールポジションを獲得し、決勝でも危なげなく圧勝を飾り、シーズン8勝目を挙げた。しかし、チャンピオン争いでは、僅か2ポイント届かず、フェルスタッペンは5連覇を逃すこととなった。

最終戦の直前、来季レッドブルのリザーブドライバーに就くことが発表された角田裕毅は、最終戦でもフェルスタッペンの逆転タイトル獲得に向けて献身的にアシストし、最後までチームへの貢献に努めた。

レッドブルとHondaのパートナーシップは、2025年最終戦において優勝という素晴らしい結果で、そしてこれまでの記録的な成果を象徴するレースで幕を閉じた。

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