最終戦で奇跡の逆転勝利、悲願のタイトル獲得
2021年5月23日
第5戦モナコGP
ターニングポイントで主導権掌握
フェルスタッペンがモナコGP初優勝
© HRC前年、2021年シーズンをもってF1活動を終了すると発表したHondaは、ラストイヤーに悲願のタイトル獲得を目指し、新開発のパワーユニットRA621Hを投入した。「新骨格」と称されるこのパワーユニットは、ほぼすべての部品を新たにしたもので大幅な性能向上を実現。しかしながら、非常に短期間での開発製造で仕上げられたため、信頼性に不安を抱えてのシーズン開始となっている。
その不安を払拭する快走をマックス・フェルスタッペンは開幕戦から展開する。バーレーンでの開幕戦ではポールポジションを獲得し、レースも序盤はトップを走行。タイヤ交換でポジションを落とすが、その後トップを奪い返した。しかしオーバーテイクの際にトラックリミットを超えてしまい、ポジションを明け渡して僅差の2位に終わった。続く第2戦エミリア・ロマーニャGPで、雨の難しいコンディションを制してシーズン初優勝を挙げると、その後の2戦は2位を確保しポイントを重ねていた。開幕戦、そして第3、4戦のウィナーは、最大のライバルであるメルセデスのルイス・ハミルトンだ。レッドブルホンダとフェルスタッペンは、そのライバルと互角の勝負ができることを示すとともに、その手強さを改めて実感していた。
久々の日本人ドライバー出現
またこのシーズンは、アルファタウリから角田裕毅がF1デビューを果たしていた。Hondaの育成ドライバーとしてFIA-F3、FIA-F2で経験と実績を積み、久々の日本人F1レギュラードライバーとしての参戦だ。デビューレースとなる開幕戦では9位入賞を果たし、その将来性に期待が持たれていた。
© HRC第5戦モナコGP。Honda陣営はこの戦いをシーズン前半戦のターニングポイントと捉えていた。「モナコを制する者がシーズンを制する」というジンクスだけでなく、ここまでの4戦、ハミルトン3勝に対しフェルスタッペンは1勝で、シーズンの流れを掴むにはここでの勝利が絶対的に必要だと考えていたのである。
モナコGPでの勝利がないフェルスタッペンも初優勝を狙って精力的にセッションをこなしていくが、そこに思わぬ伏兵が登場する。スタートポジションがレースに重要な意味を持つモナコで、ポールポジションを狙ったフェルスタッペンを超えたのは、モンテカルロを地元とするフェラーリのシャルル・ルクレールだった。予選Q3でルクレールは、トップタイム更新を狙ったラップでクラッシュ。赤旗となりセッションは終了し予選トップが確定した。2回目のアタックを潰されたドライバーは不満を口にしたが、順位に変動はなかった。しかし、ルクレールのマシンはダメージを負っており、特にギヤボックスが深刻だったようだ。交換によるグリッド降格を避けたフェラーリだったが、決勝レース直前グリッドに向かう途中でトラブルが発生し、ルクレールはレースを欠場。ポールシッター不在でレースはスタートすることになった。
© Rec Bull Content Pool両選手権ともランキングトップに
これで実質的なポールポジションからスタートとなったフェルスタッペンは、磐石なレースでトップを守り切りモナコGP初優勝を飾った。この勝利でフェルスタッペンはドライバーズ・ランキングでトップに浮上。それに加え、このシーズンからチームに加入したセルジオ・ペレスも4位になり、コンストラクターズ・ランキングでもレッドブルが首位に立った。アルファタウリではピエール・ガスリーが6位、モナコ初参戦の角田は16位だった。
Hondaの思惑通り、この勝利でシーズンの流れは一気に変わり、レッドブルホンダはその後第9戦まで5連勝を成し遂げ、タイトル獲得を大きく引き寄せる戦いを見せていくことになる。
2021年11月7日
第18戦メキシコGP
フェルスタッペンがシーズン9勝目
Honda搭載ドライバー年間最多勝を更新
© Rec Bull Content Pool一進一退を続けるタイトル争い
5連勝でシーズンの流れを引き寄せたかに思えたレッドブルホンダだったが、第10戦イギリスGPでマックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンが首位攻防中に接触し、フェルスタッペンはリタイア、ハミルトンは優勝という結果が流れを変えた。優位を保ってサマーブレイクに入りたいという思惑は、第11戦ハンガリーGPで起きたスタート直後の多重クラッシュにレッドブルホンダの2台が巻き込まれ脱落したことで崩れることとなる。このレースで両選手権ともランキングトップはメルセデスとハミルトンが奪い返した。
サマーブレイク明けは一進一退の激しい攻防戦となった。雨で短縮された第12戦ベルギーGP、母国戦となるオランダGPでフェルスタッペンが連勝すると、第15戦ロシアGP、第17戦トルコGPではメルセデスが連勝。第18戦アメリカGPは、当初のメルセデス優位の予想を覆してフェルスタッペンが勝利し、セルジオ・ペレスも3位に入り大量得点を得た。
© HRC迎えた第19戦メキシコGP。メキシコ・シティはHondaがF1で初優勝を達成した地であり、高地でのレースは得意とするところであることは、以来変わっていない。
予選までレッドブルホンダとメルセデスによる一進一退のタイム争いが続くが、Q3ではアクシデントの影響を受けてメルセデスにフロントロウを与えてしまう。セカンドロウを占めたレッドブルホンダにとっては想定外の結果だったが、レースでは優位を取り戻すことに成功。フェルスタッペンはスタート直後にターン1でアウト側から一気にメルセデス2台を抜き去りトップに立った。その後メルセデスのバルテリ・ボッタスがアクシデントで脱落すると、ペレスが3番手に浮上した。
完勝フェルスタッペンが選手権のリードを広げる
トップ奪還を狙うハミルトンだったが、フェルスタッペンとの差は徐々に広がり、背後のペレスをマークするのが精一杯という状況でレースは進む。タイヤ交換のピットインを経てもこの序列は変わらず、フェルスタッペンはハミルトンに16秒以上の大差をつけてトップチェッカーを受け、ペレスはハミルトンとの差を1秒強に追い詰めて3位でフィニッシュした。ペレスにとっては、嬉しい母国GPでの表彰台獲得だった。そして4位にはアルファタウリのピエール・ガスリーが入り、Honda勢が1-3-4位と上位を占め、メキシコが得意のコースであることを改めて示す結果となった。
© Rec Bull Content Poolこの勝利はフェルスタッペンにとってシーズン9勝目となり、Hondaパワーで戦うドライバーの年間最多記録を更新。ドライバーズ・ランキングではハミルトンとの差を19ポイントに広げ、コンストラクターズ・ランキングではトップのメルセデスに1点差に迫り、シーズン終盤に向けて勢いをつけるグランプリとなった。
2021年12月12日
第22戦アブダビGP
最終戦でフェルスタッペンが初王者
Hondaは有終の美を飾る
© Rec Bull Content Pool同ポイントで最終戦決戦へ
メキシコGPを終えシーズンは残り4戦となった。マックス・フェルスタッペンのタイトル獲得は濃厚と見られていたが、終盤戦でルイス・ハミルトンが反撃に出た。ハミルトンは、第19戦ブラジルGPでは24グリッド降格という絶望的な状況から圧倒的な速さで勝利を得ると、第20戦カタールGPでも優勝し、フェルスタッペンに8ポイント差にまで迫った。第21戦サウジアラビアGPでは、両者の激しい戦いが展開され、37周目にショートカットによりポジションを明け渡そうとしたフェルスタッペンと、譲られる側のハミルトンが接触。ダメージを負いながらもハミルトンは首位を守り、フェルスタッペンは2位に甘んじることとなった。これにより、両者のチャンピオンシップポイントは同点となり、決着は最終戦に持ち越された。
© Rec Bull Content PoolHondaとって第4期F1活動のラストレースは、悲願のタイトル獲得がかかる緊迫した戦いとなった。予選でポールポジションを獲得したのはフェルスタッペン、2番手はハミルトンで、主役のふたりがフロントロウを占めた。サーキット全体が異様な緊張感に包まれるなか、決勝レースがスタート。好ダッシュを決めたハミルトンがトップに立ち、フェルスタッペンが首位奪還を狙って背後につく。しかし、ミディアムタイヤのハミルトンとソフトタイヤのフェルスタッペンの攻防は、レースが進むにつれてハミルトンが優位となり、その差を広げていった。2セット目はともにハードタイヤに履き替えたが、ハミルトンは前半に築いたマージンを維持し、フェルスタッペンに打つ手はなくなっていた。
© Rec Bull Content Poolセーフティカーが奇跡を呼んだ
トップ2台がタイヤ交換を行い、セルジオ・ペレスが首位を走行。ハイペースで追い上げてきたハミルトンを、ペレスは鬼神のごときブロックで押さえ込み、僚友フェルスタッペンをアシストした。この大格闘により、フェルスタッペンはハミルトンとの差を大幅に詰めることに成功。レッドブルが一丸となってタイトル獲得を狙う様子にファンは感動した。
レースは最終盤に入り、ハミルトンは優位を確固たるものにし連覇確定と思われたが、劇的な展開が待っていた。
クラッシュしたマシンが出てセーフティカーが導入されると、フェルスタッペンはすぐさまピットへ滑り込みソフトタイヤに交換し、2番手を確保したままコースへ復帰した。ステイアウトせざるを得なかったハミルトンは、トップを走行するも使い古したハードタイヤのまま。追うフェルスタッペンはフレッシュなソフトタイヤで、両者の優劣は明らかだった。後に物議を醸す再スタートが切られたのは残り1周の時点。フェルスタッペンはファイナルラップでハミルトンを圧倒的なスピード差でパスし、トップチェッカーを受けた。それはフェルスタッペンが初のチャンピオンになるもので、Hondaにとって悲願のタイトル獲得の瞬間だった。
© Rec Bull Content Poolあまりに劇的な幕切れに、サーキットには一瞬静まりかえったが、すぐに歓喜の声に包まれた。激しく、苦しい戦いが最後まで続いたシーズン、最後に栄冠を得たのはフェルスタッペンだった。レッドブルホンダはコンストラクターズ・ランキング2位に終わったが、Hondaはラストイヤーのラストレースで、有終の美を飾ったのである。
© Rec Bull Content Pool