コロナ禍とHonda F1活動終了発表
2020年8月9日
第5戦70周年記念GP
(イギリス・シルバーストン)
レッドブルの総合力で
成し得たシーズン初優勝
© Red Bull Content Pool2019年末から懸念されていた新型コロナウイルス感染症の影響が全世界に拡大した2020年、F1も異例のシーズンを強いられた。3月に開幕予定だったオーストラリアGPが金曜の走行開始直前になって急遽キャンセル。開幕戦は7月まで引き延ばされ、無観客か厳しい入場者制限を前提に開催可能なサーキットでの全17戦にスケジューリングし直された。F1関係者全員の尽力により、なんとかチャンピオンシップを成立させたシーズンだった。
前年、レッドブルと3勝を挙げたHondaは、2月のプレシーズンテストを順調に終え、いよいよ目標であるタイトル獲得を目指したが、コロナ禍による緊急規定に翻弄されることとなる。Hondaは状況悪化を見越し4月に翌年の開発を中止。FIAもマニュファクチャラーの経済負担軽減を考慮し、パワーユニットは事実上シーズン中のアップデート禁止に近い開発制限をとることとなった。この緊急措置は、シーズンを通してのアップデートにより競争力を上げる計画を立てていたHondaにとって、大きな痛手となってしまったのである。
開幕から5戦目でシーズン初優勝
7月にオーストリア・レッドブルリンクでの連戦でシーズンは幕を開けた。得意と思われたコースながら、開幕戦でマックス・フェルスタッペンはレース序盤に電気系トラブルからのリタイアを喫し、チームメイトのアレクサンダー・アルボンもレース終盤に同様のトラブルに見舞われた。翌週、同じコースで行われた第2戦ではフェルスタッペンが3位、アルボンが4位となり、なんとか踏み止まった感のある開幕2戦となった。
フェルスタッペンのシーズン初優勝は第5戦、イギリス・シルバーストンで行われた連戦2戦目となる70周年記念GPのことだった。メルセデスが優位を築き上げるシーズン序盤、レッドブルホンダは苦戦が続いていたが、一矢報いるレースを展開したのだ。
© Rec Bull Content Pool予選4位、セカンドロウからスタートしたフェルスタッペンは、すぐさま3番手にポジションを上げると、タイヤマネージメントに気を配りながら前を行く2台のメルセデスとの差を詰めていった。ハードタイヤでスタートしたフェルスタッペンは、タイヤ交換をできるだけ先延ばしにし、ミディアムタイヤの劣化に苦しんだメルセデスがピットインした15周目のタイミングでトップに立った。2回目のタイヤ交換を引き延ばしたメルセデスのルイス・ハミルトンに一時トップを奪われるが、ハミルトンのピットインでフェルスタッペンは再びトップを取り戻し、52周のレースを制したのである。1週間前に同じシルバーストンで開催されたイギリスGPでタイヤトラブルが頻発し、この一戦ではタイヤの内圧指定が上がったことに対するレッドブルの見事な対応、気温の高いレースでハードタイヤを巧みに使いこなしたフェルスタッペンのドライビングが、予想外にタイヤ消耗に苦しんだメルセデスを凌駕した結果だった。Hondaはパワーサーキットとなるシルバーストンで新品のパワーユニットを投入し、レッドブルホンダのシーズン初優勝に大きく貢献している。
© Rec Bull Content Pool2020年9月6日
第8戦イタリアGP
ジョイント50戦目に訪れた歓喜の瞬間
波乱のレースをアルファタウリのガスリーが制する
© HRC伝統のモンツァで開催されるイタリアGPは、2020年は第8戦での開催となった。このシーズンからトロロッソはレッドブルが新展開するアパレルブランド「アルファタウリ」のネーミングに変更され、このイタリアGPがHondaとのパートナーシップ50戦目となる。
そんな記念すべきグランプリは上位陣が総崩れとなる予想外の展開となり、幸運にも恵まれる一面はあったものの、予選10位から劇的にトップまで進出したアルファタウリホンダのピエール・ガスリーが制することとなった。
10番グリッドからスタートしたガスリーは、序盤ポジションをキープし前を狙うレースをしていた。9番手争いが膠着したことで、19周目に早めのピット作業を行い新品のハードタイヤに履き替えた。結果的にこの判断がガスリーに栄冠をもたらす大きな要因となる。
ガスリーがピットアウトした20周目、コース上にストップしたマシンが出てセーフティカーが導入された。マシンが止まったのがピットロード入り口だったため、すぐにピットはクローズドされたのだが、これを見逃したトップ走行のルイス・ハミルトンが際どいタイミングでピットに滑り込み、これが違反と判定され10秒加算ペナルティが科された。22周目にピットが解放され、ライバル勢は続々とピットイン。それを尻目にステイアウトしたガスリーは3番手まで上昇。さらにトップのハミルトンはペナルティを抱えていたため、実質2番手だ。
24周目にレースは再開されるが、直後の最終コーナーでフェラーリのシャルル・ルクレールがクラッシュ。再びセーフティカーが導入され、その後赤旗中断となる波乱の展開になっていった。
© HRC最終盤バトルを僅差で逃げ切る
27周目をフォーメーションラップとして、28周目にスタンディングスタートでレースは再開。ガスリーは3番グリッドからスタートとなった。トップのハミルトンは再開直後にペナルティ消化のため翌周にピットインして脱落。好スタートで2番手に進出していたガスリーがトップに踊り出た。30周を終え、7番手を走行していたフェルスタッペンはパワーユニットトラブルでリタイア。ローダウンフォース仕様のセッティングに失敗したレッドブルは、超高速コースのモンツァでは精彩のないレースとなってしまった。
レース最終盤、トップのガスリーをマクラーレンのカルロス・サインツが猛追し、残り2周でDRS圏内に迫る。しかし、ガスリーは必死の防戦でトップを守り切り、サインツをわずか0.415秒差で抑えきって自身初優勝を遂げたのであった。
Hondaにとって2020年シーズン2勝目は、予想外にもアルファタウリのガスリーが飾った。トロロッソにパワーユニット供給を開始してからの節目のレースでの勝利、そしてチームにとって2008年以来の2勝目に関係者全員が歓喜した。
© HRC2020年12月13日
第17戦アブダビGP
フェルスタッペンがポール・トゥ・フィニッシュ!
完璧なレースでシーズン2勝目を飾る
© Rec Bull Content Poolコロナ禍の混乱の下、F1は無観客大会や徹底した検査体制を敷いて困難を乗り越え、最終戦を迎えた。この10月にHondaは2021年シーズンをもってF1活動を終了すると発表し、パドックの関係者を驚かせていた。2020年にタイトル争いを目指していたレッドブルホンダにとって、王者メルセデスに突き放されたようなシーズンだったが、それでも諦めず、最後まで全力を尽くして臨んだ最終戦だった。そしてラストイヤーとなる2021年につながる好結果を望んでいた。その思いが通じたのか、最後の戦い場では状況が好転していた。
フリープラクティス1からトップに立ったマックス・フェルスタッペンは、勢いそのままに予選でもトップタイムをマーク。実に今シーズン初のポールポジション獲得だった。2、3番手はメルセデスで、すでに第14戦でタイトル連覇を決めていたルイス・ハミルトンは、新型コロナ感染で前戦を欠場していたが、回復して最終戦に参加していた。
メルセデス勢の追撃をフェルスタッペンがどこまで退けるかに注目が集まったが、レースが始まるとそんな懸念はあっけなく消え去る。フェルスタッペンはスタートから危なげなく、そしてレースを通して安定して速かった。結局一度も首位の座を脅かされることなく、2位バルテリ・ボッタスに16秒近い大差をつけてフィニッシュ。圧倒的かつ完璧なレース運びでシーズン2勝目を飾ったのである。
© Rec Bull Content Pool2021年に向け飛躍を確信
それだけではなかった。チームメイトのアレクサンダー・アルボンが4位、アルファタウリホンダのピエール・ガスリーが8位となり、Honda勢は3台が入賞を果たした。ダニール・クビアトは一歩及ばず11位に終わったが、4台すべてがしっかり走り切り、しかも誰ひとりパワーユニットの年間使用規定基数を超えずにシーズンを終えたことは、Honda製パワーユニットのパフォーマンスと信頼性の高さを証明していた。
最終戦でようやく待ちわびた完璧な勝利を手にしたことは、HondaにとってF1最終年となる2021年シーズンに向けて明るい兆しであり、大きな希望と自信を取り戻す契機となった。
© HRC