第19戦 メキシコシティGP プレビュー

海抜2000m超での高地バトル、鍵は冷却対策
2026年シーズン第19戦は、北米大陸縦断3連戦の2戦目となるメキシコシティGPです。長い歴史あるメキシコでのグランプリは、2015年に大改修されたメキシコの首都メキシコシティ近郊のエルマノス・ロドリゲス・サーキットで開催されます。ヘルマン・ティルケの再設計により、かつて野球場だったフォロ・ソルをスタジアム・セクションとして利用する独特なコースに生まれ変わり、改修にはメキシコ政府が全面的にバックアップしました。しかし、開催契約が切れる直前の2019年、メキシコ政府は財政支援の打ち切りを発表し、2020年以降のメキシコGP開催継続が困難となりました。開催継続を望む声は大きく、メキシコ人F1ドライバーのセルジオ・ペレスとその支援企業などがバックアップし、民間の支援とメキシコシティのサポートを得ることで、開催継続が実現した経緯があります。これにより2020年からは大会の正式名称はメキシコシティGPとなっています。

熱狂がこだまするスタジアム
エルマノス・ロドリゲス・サーキット最大の特徴は、海抜2240mの高地に位置することです。空気密度は平地の約75%にまで低下し、この空気の薄さでエンジンはもちろん、空力や冷却に大きな影響を及ぼします。空力面で言えば、ダウンフォースは大幅に低下し、ドラッグ(空気抵抗)も同様に低下、大きなウイングを装着しても最高速が伸びる現象が起こります。エンジン面では空気が薄いため、より多くの空気を押し込むことが必要になり、ターボチャージャの性能や効率が重要です。もっとも大きな問題は冷却で、ラジエーターやインタークーラー、オイルクーラ、そして現在ではバッテリーの冷却が厳しくなり、それらの対策が必要となります。
ホームストレートは1km以上と長く、スタートラインからも900mほどあり、スタート直後の加速競争は見どころです。予選での最高速度は時速360kmを超え、モンツァと並ぶ高速コースです。直角に近い右コーナーのターン1は強いブレーキングが必要で、このコース最大のオーバーテイクポイントです。

そして、ターン1からターン3にかけて、S字状の連続コーナーとなります。ターン3を抜けるとストレートで、シケイン状のターン4、ターン5、ヘアピン状のターン6が連続します。ターン7からターン11までは、1980年代から続く高速S字区間で、このサーキットの見どころのひとつです。鈴鹿サーキットのS字コーナーに比べ緩やかなカーブの連続で、より高速での切り返すF1マシンを見ることができます。ターン12で大きく右に曲がると、そこからスタジアム・セクションに入ります。

かつてフォル・ソロと呼ばれた野球場のフィールド部分にコースを設置し、観客席をそのまま利用したスタジアム・セクションは、エスマノス・ロドリゲス・サーキット最大の特徴です。歓声がトンネル内のように反響するこの区間は、メキシコGPの象徴と言えるセクションで、複合コーナーのスタジアム・セクションを抜けると、最終コーナーであるペラルターダを迎えます。かつてのペラルターダは高速バンクでしたが、安全面を考慮し2015年に改修、その後半部分だけを生かしたレイアウトに変更されました。それでも高速コーナーとしての面影は残し、ストレートのスピードを左右する重要なコーナーです。
全長約4.3kmと短く感じますが、高地であることと長いストレートで独特の趣と難しさを持ち、F1が開催されるなかでもエルマノス・ロドリゲス・サーキットは特殊なサーキットとされています。
Honda F1が初優勝を刻んだ地
1965年、HondaがF1で初めて優勝を成し遂げたのが第10戦メキシコGPでした。RA272改を駆るリッチー・ギンサーが予選3位からスタート直後にトップに立ち、全周トップを快走するという当時としては奇跡的な展開でHondaはF1初優勝。高地対策を施したエンジンは、他の追随を許さず快走を続け、真っ先に歴史的なチェッカーフラッグを受けたのです。HondaはF1デビューから1年3カ月、わずか11戦目での快挙でした。

そして、Hondaにとって今年のメキシコシティGPが501戦目の大会となり、かつて初優勝を挙げた地で、新たな一歩を踏み出すこととなります。
2026年シーズンは終盤戦に入り、タイトルやランキング争いが勝負所を迎えています。アストンマーティン・アラムコ・F1(AMAF1)とHondaは、メキシコシティGPに向けて車体、パワーユニットに高知対策を施しポイント獲得を狙い、コンストラクターズ・タイトルにおけるランクアップを目指します。また、AMAF1はメキシコシティGPのFP1で、リザーブドライバーのジャック・クロフォードを起用することを発表しています。
Honda F1 トラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニア 折原 伸太郎のコメント
メキシコシティは標高約2,200mに位置しており、F1カレンダーの中でも最も標高の高いサーキットでのレースとなります。そのため、パワーユニットにとっても非常に厳しい環境です。
高地では空気密度が低下するため、平地と同等の吸気量を確保するには、ターボチャージャーをよりハードに稼働させる必要があります。したがって、メキシコではターボをどれだけ効率的に動かし、海抜0mに近い条件でエンジンを稼働させられるかがカギとなります。
さらに、今年はMGU-Hによるアシストがないため、ターボチャージャーの役割はこれまで以上に重要です。
また、今シーズンの新レギュレーション下では、実際にサーキットを走行するまで状況を完全に把握することが困難です。フリー走行を通じて、メキシコ特有のコンディションに適応していくことが最優先事項となります。日本のHRC Sakuraと連携して進めてきた準備を活かし、今週末に臨みます。
