第10戦 ベルギーGP プレビュー

超高難易度のスパ・フランコルシャン

かつてはサマーブレイク明けの後半初戦が定位置だったベルギーGPですが、2023年の新たな契約とともに、7月開催となっています。また、2031年まで契約延長していますが、ローテーション開催とされ、2028年と2030年は実施されないことが決まっています。

ベルギーGPの舞台であるスパ・フランコルシャン・サーキットは、「オールド・コース」として、鈴鹿サーキットとともにドライバーや世界中のファンから高い人気を誇っています。多彩なコーナーと急激なアップダウンが織りなす難易度の高い、チャレンジングなコースとして知られています。マシンとドライバーのポテンシャルが試され、迫力あるF1™の走りとバトルが味わえます。そして、「スパ・ウェザー」といわれる天候の不安定さも、スパ・フランコルシャンの大きな特徴です。コースの限定した箇所に現れる不安定な天候と突然の激しい降雨が、予選やレースの不確定な要素となることもしばしばありました。

名物オー・ルージュは腕と度胸の見せどころ

スパ・フランコルシャンの最大の名物コーナーはオー・ルージュです。急激な登り右コーナーのオー・ルージュは壁を駆け上がるような感覚で、登り切った先の緩い左コーナー、ラディオンとともにマシンの姿勢をコントロールすることが難しく、ドライバーの腕と度胸が試され、ファンにとっては迫力ある走りが最大の見どころとなります。

ラディオンを抜けると緩やかに上るケメル・ストレートを迎えます。ここはスピード勝負のオーバーテイク合戦が繰り広げられ、電動化が進んだ今シーズンからは、エネルギーマネジメントとオーバテイクモードの使い方が見どころです。非常に長いストレートなので、抜いてもすぐに抜き返される場合もあり、どのタイミングでオーバーテイクを決めるかがドライバーの腕の見せどころになります。そして、ケメル・ストレートエンドからレ・コームと呼ばれる急角度の右コーナーが、コースの最も高い地点であり、最大のオーバーテイクポイントです。レ・コームからマルメディとシケイン状の連続コーナーを越え、下りのセクションとなります。下りでは中高速コーナーが多く、最後にグランプリコースでも屈指の高速コーナーであるブランシモンを迎えます。このコーナーはアクセル全開で抜けることがドライバーにもマシンにも求められる難所です。ブランシモンを抜けると最終コーナーとなるバスストップ・シケインです。ブランシモンからのスピードを活かしたオーバーテイクが見られ、オーバースピードでコースオフするシーンもよく見られます。

高速コースならではの電気のやりくりに注目

そして、スパ・フランコルシャンの大きな特徴のひとつが、シリーズ中もっとも長い7kmという1周の長さです。

高速コースであるため、予選などのラップタイムは通常のコースに比べて10秒〜15秒程度のプラスにしかなりませんが、実際には7kmのコース長は予選、レースにおいて大きな影響を及ぼします。

まずはエネルギーマネジメントで、高速区間が多いことからも電気のやりくりに各チーム知恵を絞ることになります。フルブレーキングは2箇所のみで、レースでは回生による発電が足りなくなり、パーシャル回生を駆使しても電気不足が見込まれます。それを補う走りと展開が見どころです。

予選では、ウォームアップやクーリングに時間がかかり、うまくいかないとアタックの回数が減る可能性があります。また、ミスをした場合は時間的に再アタックが難しくなり、ドライバーにプレッシャを与えます。レースでは、VSC(バーチャルセーフティカー)やSC(セーフティカー)が導入された場合、ラップタイムは極端に遅くなり、タイヤの温度管理が非常に難しくなります。また、VSCやSC導入時にピットインを行った場合、タイムロスの低減は他のコースに比べて大きくなります。ピットインを有利にするためには、これらが導入された時に自分がコースのどこを走行中かがもっとも重要になりますが、これは運でしかありません。

マシンやタイヤに不測の事態が起こり、スロー走行でピットに戻る場合も、コースが長いため大きなタイムロスになります。ケメル・ストレートの終わりからレ・コームとその先での接触がもっとも多く、空力パーツにダメージを負った場合、下りセクションでのペースダウンは避けられません。

部分的な天候不良も、地形と長いコースゆえであり、スパ・フランコルシャンには、独特の難しさ、面白さが詰まっているのです。

ハンガリーでのアップグレードに向けデータを収集

Aston Martin Aramco Formula One™ Team(AMAF1)の代表エイドリアン・ニューウェイは、第11戦ハンガリーGPにアップグレードした車体を投入すると明らかにしました。HondaはADUO(Additional Development Upgrade Opportunities/追加開発アップグレードの機会)を活用した新たなバージョンのパワーユニットの開発を進め、サマーブレイク明けの第13戦オランダGPから投入する予定で、これらによるAMAF1のパフォーマンス向上に期待がかかります。第10戦ベルギーGPはそのアップグレードの一歩手前の、データの収集や運営の準備レースとなり厳しい戦いが予想されますが、明るい先が見えた状況にチームの士気は上がっています。

Honda F1 トラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニア 折原 伸太郎のコメント

スパは2026年シーズン最長のサーキットであり、複雑なコーナーセクションを持つテクニカルなコースとして、ドライバーやファンから人気のサーキットのひとつです。ロングストレートと高速コーナーが組み合わさっており、ドライバーのアクセル操作の予測や、1周を通じたエネルギーマネジメントの最適化という観点で、エンジニアにとっても非常にチャレンジングなサーキットです。
サーキットの長さに対して回生可能な電気エネルギーの量が非常に限られるため、エネルギーマネジメントに関してPUマニュファクチャラーにとって重要な評価の場となります。そのため、ロングストレートでのMGU-Kの出力を含めたデプロイメント戦略がより重要となります。またPUへの負荷も大きく、パフォーマンスだけでなく信頼性も求められます。
オランダGPでの新エンジン投入まで残り2レースとなる中、現行スペックで得られるデータや経験を最大限蓄積することも重要です。ここで得られた知見は、今後新PUを使用するサーキットの中でも、モンツァのようなロングストレートを持つコースで活かしていきます。
さらに不確定要素となるのが、変わりやすい天候です。シルバーストンではドライコンディションが続きましたが、今回初めて本格的なウェットコンディションでのセッションになる可能性があります。天候に関しては何が起こってもおかしくないと考えています。