RB20

Oracle Red Bull Racing RB20

2024
斬新コンセプトで4連覇を後押し

レギュレーション収束に向け
空力性能をアグレッシブに改良

2023年に22戦21勝という記録的な大勝を挙げたレッドブルは、2024年シーズンにチャレンジングなエアロコンセプトを持つRB20をデビューさせた。マシンのベースは前年のRB19を正常進化させたものだが、そのフォルムは大きく異なる。フロントノーズはウイング最下段フラップまで接続され、サイドポンツーンのエアインレットは極限まで小型化。代わりにモノコックやコクピットサイドにインテークが設けられた。特徴的なのはマシンリヤ部で、エンジンカバー上部に大きな左右の張り出しを持ち、サイドポンツーンのダウンウォッシュ部分と空気流を切り分けた通称「キャノンデッキ」となった。サイドポンツーン上面と側面、および下面、そしてリヤウイングへの気流を3つに分けるというエアロコンセプトは、ポンツーン全体が小型化したことと合わせて、R20をこれまでとはまったく違うマシンと印象付けるものだ。

前年の実績に頼らず、あえて挑戦的なコンセプトとフォルムを作り出したアイドリアン・ニューウェイは「RB20はメカニカル、ビークルダイナミクス、エアロダイナミクスなどすべての面で改良を施したマシン」とコメントしており、「常にライバルに対して優位に立つためには、一瞬も立ち止まってはならない」と付け加えている。

このRB20のポテンシャルの高さは、シーズン序盤から前半にかけての結果が証明した。開幕戦と第2戦でレッドブルは1-2フィニッシュ。第3戦は思わぬマシントラブルでマックス・フェルスタッペンがリタイアとなったが、第10戦までにフェルスタッペンは7勝を挙げて王者の貫禄を示した。このシーズンから4月開催となった第4戦日本GPでもフェルスタッペンは勝利し、セルジオ・ペレスが2位とHondaの地元グランプリで1-2フィニッシュを成し遂げ、日本のファンは大いに盛り上がった。シーズン序盤で3度目の1-2フィニッシュをマークしたが、これ以降その快挙を見ることはなかった。

しかし、F1マシンはシーズン中のアップデートの成否が大きく勝負に影響する。レッドブルは、ライバルがアップデートを重ねて競争力を上げていくなかで、アップデートで逆にエアロバランスを崩し、セッティングのスイートスポットがとても狭くなり、ピーキーな挙動が顔を出していった。それでもフェルスタッペンは高いドライビング技術で対応したが、ペレスは中盤以降不振が続き、相対的に競争力を失っていった。

RB20に搭載されたパワーユニットはHonda RBPTH002とネーミングされ、Honda・レーシング(HRC)が製造とメンテナンスを行う。2022年のホモロゲーションをもってスペックフリーズ(開発凍結)されているため、ポテンシャルを上げる開発や改良はできないが、信頼性を突き詰めることで限界性能を引き上げる作業や、コースやドライビングよって最適な制御を詰める作業によって、実走でのパフォーマンス向上は可能。HRCは、前年に起きた不具合の修正と信頼性をブラッシュアップしてHonda RBPTH002を仕上げた。

HRCにとって予想外だったのは、マシンの底打ちによる突き上げによってパワーユニットが大きなダメージを負うことが頻発したことだ。走行中に高めの縁石に乗り上げたり、コースアウトする際に縁石などを乗り越えた際にその現象が発生した。そのため、ペレス車は第12戦イギリスGPで、フェルスタッペン車は第14戦ベルギーGPで年間使用規定数を超える5基目のICE(内燃エンジン)を投入。ペナルティを課されるとともに、シーズン後半から終盤にかけての不安要素となってしまった。フェルスタッペンは第21戦ブラジルGPでも6基目となるICEに交換し、レースではペナルティにより決勝17番手スタートとなったが、悪天候による波乱のレースを制しタイトル連覇に大きく前進している。

シーズン後半はライバルとの接戦や劣勢となる戦いが多く、第10戦以降優勝からは遠ざかってしまう。第13戦ハンガリーGP以降ボディワークも大きく変更を加えるなど、マシン開発の伸びしろに悩み続ける一面も見せた。しかし、序盤から前半戦での貯金を活かし、レース巧者ぶりを発揮してポイントを重ねたフェルスタッペンは、第22戦ラスベガスGPで4年連続ワールドチャンピオンの座を確定した。2024年の年間9勝、後半戦劣勢は予想外で、レッドブルの圧倒的優位の時代は終わったようだった。それを象徴するように、レッドブルはコンストラクターズランキング3位に終わり、目標だったダブルタイトル連覇は逃している。

ハロの付け根に見えるエアダクト。RB20はコクピット周辺で生じる乱れた空気流をこのダクトで吸い込み、ボディカウル内で整流してマシン後部から吐き出してリヤウイングやビームウイングの空力効率を向上させている。

ハロの付け根に見えるエアダクト。RB20はコクピット周辺で生じる乱れた空気流をこのダクトで吸い込み、ボディカウル内で整流してマシン後部から吐き出してリヤウイングやビームウイングの空力効率を向上させている。

高い空力性能が要求される鈴鹿サーキット開催の日本GPで、レッドブルは2022年のグランプリ再開以降負け知らず。2024年もフェルスタッペンとペレスで1-2フィニッシュを飾り、圧倒的な強さを見せつけていた。

高い空力性能が要求される鈴鹿サーキット開催の日本GPで、レッドブルは2022年のグランプリ再開以降負け知らず。2024年もフェルスタッペンとペレスで1-2フィニッシュを飾り、圧倒的な強さを見せつけていた。

タイトコースのハンガロリンクからボディワークを大幅変更。前年同様リヤを大きく絞り込み、グラウンドエフェクトカーの特性である回頭性の悪さに対策。シーズン後半戦はストレート重視以外のサーキットではこの仕様で戦った。

タイトコースのハンガロリンクからボディワークを大幅変更。前年同様リヤを大きく絞り込み、グラウンドエフェクトカーの特性である回頭性の悪さに対策。シーズン後半戦はストレート重視以外のサーキットではこの仕様で戦った。

シャシー

フロントサスペンション ダブルウィッシュボーン、プルロッド式
リヤサスペンション ダブルウィッシュボーン、プッシュロッド式
トランスミッション 油圧パワーシフト及びクラッチ動作システムを備えた
縦置き8速ギヤボックス
燃料 エッソ・シナジー製
オイル モービル1
ERS レッドブル・パワートレインズ製
ブレーキシステム カーボン:カーボンコンポジットディスク&パッド
ブレーキキャリパー ブレンボ製
ホイール径/リム フロントおよびリヤともに18インチ/BBS独占供給品
タイヤ ピレリ製

エンジン

エンジン名 Honda RBPTH002
型式 90度V型6気筒ターボチャージャー
バルブ数 気筒あたり4バルブ
排気量 1,600cc
最大出力 900馬力
最大回転数 15,000rpm
MGU-H最大回転数 125,000rpm
MGU-K最大出力 160馬力
MGU-K最大回転数 50,000rpm