RB19

Oracle Red Bull Racing RB19

2023
歴史的大勝を成し遂げたレッドブルとフェルスタッペン

22戦21勝の圧勝劇でダブルタイトル連覇達成
パワーユニット名にHondaが復活

2023年、レッドブルとマックス・フェルスタッペンはF1史に残る記録を成し遂げた。シーズン22戦中レッドブルは21勝、フェルスタッペンは19勝を挙げてダブルタイトル連覇を達成。ともにシーズン最多勝利数の新記録となった。

2022年からの新車体によるF1は、2年目を迎えて混戦の様相を深めていた。しかし、レッドブルだけは別格で、前年のアドバンテージをさらに高め、ライバルを大きく引き離す。チャンピオンの風格漂うフェルスタッペンは、圧倒的な速さとさらに進化したレース戦略で他を寄せ付けない戦いをシーズン最後まで続けた。

RB19は、前年にそのポテンシャルの高さを見せつけたRB18のコンセプトを踏襲した進化版である。シーズン序盤は改良点を見つけるのが難しいほど酷似しており、シーズン中の空力パーツのアップデートによってRB19としての進化が見て取れた。シーズン中2度に渡りサイドポンツーンのデザイン変更を行い、このボディワークによってマシンの空力効率をさらに高めている。特徴的なフロントにプルロッド、リヤにプッシュロッドのサスペンション構成はRB18同様で、非常に複雑な構成となるものの、重心を下げることによって得られる空力的なメリットを優先させたと思われる。

RB19最大の進化は軽量化だった。RB18がオーバーウエイトだったことから、チームは軽量化を最重点項目として開発を進めた。これによりRB19は最低車両重量を下回る仕上がりを成し遂げ、これがパフォーマンス向上の最大要因とされている。

一方で空力的なアドバンテージを活かすために、低い車高で効果的に大きなダウンフォースを発生させるRB19にとって、車高を上げなければならないバンピーな路面のコースや長いストレートによって高いダウンフォースが発生するコースは苦手の部類となった。ハイダウンフォースのコース、一例としてはシルバーストンやスパ・フランコルシャンではマシン下部のスキッドプレートの摩耗が激しく、レース後の規定違反対策として車高を上げざるを得ない。バンピーなコースではより顕著となり、本来のダウンフォースを生み出せないこととなる。実際、レッドブルがシーズン中唯一勝利を逃したのは、バンピーなロードコースであるシンガポールGPであった。

パワーユニットについては、パワーアップにつながる開発は凍結されており、信頼性を上げる改良のみが認められる。パワーユニットを引き続き供給するHRCは、信頼性をさらに高め、それにより従来のポテンシャルをさらに引き上げることを目指して2023年型を仕上げた。名称はこの年からHonda RBPTH 001とされ、Hondaの名がF1に復活している。

また、Hondaはこの年の5月に2026年からパワーユニットサプライヤーとしてF1活動を再開すると発表した。新たなパートナーはアストンマーティンであり、すでにフォードとの共同開発を公にしていたレッドブルとのジョイントは2025年で終わり、2026年からはそれぞれの道を行くことが決定している。

この年レッドブルが成し遂げた22戦中21勝の内訳は、フェルスタッペン19勝とセルジオ・ペレス2勝。フェルスタッペンの完走率と入賞率はともに100%で、ポールポジションもシーズン最多の12回を獲得した。チャンピオンシップポイントは575で、2位セルジオ・ペレスの285ポイントにダブルスコア以上の大差をつけ、3年連続チャンピオンに輝き、シーズン中10連勝、表彰台最多登壇数21回など、さまざまな歴代記録を更新している。

ペレスは2回のポールポジション、入賞19回を果たし、レッドブルのランキング1-2達成に貢献。チームはコンストラクターズポイント860を獲得し、409ポイントで2位となったメルセデスに、やはりダブルスコア以上の大差でコンストラクターズタイトルを連覇した。

2022年型RB18の最終仕様とほぼ見分けがつかないRB19初期型。それだけすでに、初期コンセプトから空力ソリューション的には完成形に近づいていたのだろう。この後も過激にアップデートしていくが、シーズンを通して空力的アドバンテージは絶対で、全22戦中21勝という大記録を可能にした。

2022年型RB18の最終仕様とほぼ見分けがつかないRB19初期型。それだけすでに、初期コンセプトから空力ソリューション的には完成形に近づいていたのだろう。この後も過激にアップデートしていくが、シーズンを通して空力的アドバンテージは絶対で、全22戦中21勝という大記録を可能にした。

第21戦ラスベガスGP仕様のフロアエッジ。フロア先端の4つのフィンのうち、外側ふたつのフロアトンネルはパネル中央から排出される。この形状もディフューザー効果を狙って進化し、いまや「サイドディフューザー」と呼ばれる。サイドポンツーン自体もシーズン中、さらに小型薄型化が図られた。

第21戦ラスベガスGP仕様のフロアエッジ。フロア先端の4つのフィンのうち、外側ふたつのフロアトンネルはパネル中央から排出される。この形状もディフューザー効果を狙って進化し、いまや「サイドディフューザー」と呼ばれる。サイドポンツーン自体もシーズン中、さらに小型薄型化が図られた。

高く持ち上げられたRB19のリヤサスペンション。リンクやダンパー類をギヤボックス上に置くプッシュロッド式にしたのは、システムによってフロアデザインが阻害されることを嫌ってのことだろう。ディフューザー面積をなるべく確保するため、ロワアームが非常に高い位置に取り付けられている。

高く持ち上げられたRB19のリヤサスペンション。リンクやダンパー類をギヤボックス上に置くプッシュロッド式にしたのは、システムによってフロアデザインが阻害されることを嫌ってのことだろう。ディフューザー面積をなるべく確保するため、ロワアームが非常に高い位置に取り付けられている。

シャシー

シャシー RB19
モノコック 未発表
フロントサスペンション 未発表
リヤサスペンション 未発表
トランスミッション 未発表
ホイール BBS製
ブレーキキャリパー ブレンボ製
タイヤ ピレリ製
エレクトロニクス 未発表
燃料 エッソ・シナジー
規定最低重量 798㎏(うちドライバー分80kg/燃料は除く)

パワーユニット

パワーユニット Red Bull RBPTH001
パワーユニットコンポーネント ICE(内燃エンジン)/TC(ターボチャージャー)/MGU-K/MGU-H/ES(エネルギー貯蔵装置)/CE(コントロールユニット)
シリンダー数 6(以下レギュレーションに準拠)
排気量 1,600cc
最高回転数 15,000rpm
バンク角 90度
バルブ数 24
最大回転数 15,000rpm
最大燃料流量 100kg/時(10,500rpm)
燃料搭載量 105kg
燃料噴射方式 直噴(1シリンダーあたり1噴射器、最大500bar)
過給機 同軸単段コンプレッサー、タービン
燃料、潤滑油 エクソン・モービル製
エンジン規定最低重量 150㎏
エネルギー回生システム
機構 モーター・ジェネレーター・ユニットによるハイブリッド・エネルギー回生。MGU-Kはクランクシャフトに、MGU-Hはターボチャージャーに接続
エネルギー貯蔵装置 リチウムイオンバッテリー(重量20~25kg)。1周あたり最大4MJを貯蔵
MGU-K

最大回転数
50,000rpm

最大出力
120kW

最大回生量
1周あたり2MJ

最大放出量
1周あたり4MJ

MGU-H

最大回転数
125,000rpm

最大出力
無制限

最大回生量
無制限

最大エネルギー放出量
無制限