栄光を飾ったマシン

追い風に乗って2度の表彰台を獲得

2019Red Bull Toro Rosso-Honda STR14

レッドブルの支援と独自の空力開発で
コンストラクターズ選手権6位に躍進

トロロッソとのジョイント2年目を迎えたHondaは、レッドブルにもパワーユニットを供給開始。2チーム4台が同じパワーユニットを使うメリットはHondaにとっても両チームにとっても大きいものとなった。2チーム供給で製作や現場作業などは倍になるが、得られるデータ量も倍以上になりRA619Hの熟成や今後の開発に大きな成果をもたらした。2年目とはいえ、トロロッソがHonda製パワーユニット専用の車体を投入できたのはこのシーズンからで、レッドブル・テクノロジーズの協力を得ながら開発を進めマシンの完成度は高く、追い風が吹くのなかでシーズンはスタートした。

17年ワイドボディ化への大変更の後、19年にも大きなレギュレーションの変更が施行された。主に空力に関する事項で、フロントウイングの最大幅が1800mmから2000mmに拡大され、車体の最大幅と同じになる。同時にフロントウイング上にカスケードウイングを設置することが禁止され、翼端板はシンプルな形状にしなければならなくなった。また、バージボートの最大高を125mm低くし、リヤウイングの最大幅は100mm広く最大高は70mm高く制限値が細かく変更された。これらはオーバーテイクを促進する目的である。また最低重量は10kg増え743kgとなり、HALOの追加により軽量化に苦しんでいた各チームには朗報だった。

トロロッソにとって、レッドブルと同じパワーユニットを使うことは大きなメリットがある。一方、レッドブルにとっても1年早くHonda製パワーユニットを使っていたトロロッソの持つデータは有効だった。また、初年度は急遽決まったHonda製パワーユニットに対応しきれない部分もあったが、2年目は最初から専用開発ができる。相乗効果と提携関係を活かしレッドブル・テクノロジーズからはギヤボックスや前後サスペンションが支給され、STR14の開発においてチームは主にレギュレーションが変更された空力開発に注力することができた。レギュレーション変更によってシンプルになったフロントウイングは、翼端板に向けて低くなっていくテーパー型を採用。これはこの年のフェラーリやアルファロメオが採用した新機軸かつ最先端のアイデアで、その他バージボードやリヤウイングなどもトロロッソは空力開発を独自に進め、レッドブルと一線を画す仕上がりを見せている。

Hondaは2チーム供給となっても4台に同等のパワーユニットを供給することを表明し、4人のドライバーに平等に対応することを実行した。アップデートについて若干のタイミング差は生じたが、この対応はシーズンを通して堅持され、チームやドライバーから不満が出ることもなく、真摯な対応に賞賛の声もあがっている。

RA619Hは、レッドブルとのジョイントに際し、Hondaが前年のRA618Hスペック3から採用した高速燃焼を継承してパワーアップを図り、そのパワーを活かすために耐久信頼性を大きく改善した仕様である。さらに性能向上を狙ったスペック3は、レッドブルでは大8戦フランスGPから2台とも投入したが、トロロッソはダニール・クビアト車のみ搭載。2台ともスペック3となったのは第9戦オーストリアGPからだった。このバージョンアップはチーム成績の底上げにつながっている。

2019年シーズンのドライバーは、レッドブルに昇格したピエール・ガスリーの後釜としてアレクサンダー・アルボンを起用。新たなドライバーと新たなマシンとのマッチングがスムーズに行かない部分もあり、レース成績は伸び悩んだ。前半戦のハイライトは雨で波乱の展開となった第11戦ドイツGPで、クビアトが14番グリッドから3位表彰台を獲得。天候に翻弄されるドライバーが多いなか、抜群のタイミングでタイヤ交換を行い、ウェットでの巧者ぶりを発揮したクビアト快心のレースだった。

シーズン後半、アルボンとガスリーのトレードが決まり、ガスリーがトロロッソに戻ってきた。安定して入賞はするものの、上位進出という好結果を出せずにいたトロロッソだが、シーズン最大のハイライトは第20戦ブラジルG Pにやってきた。セーフティカーの導入で混乱する終盤戦、激しいポジション争いのなかで、6番グリッドからポジションを上げていたガスリーが上位のアクシデントで2番手に浮上。最終周、背後からオーバーテイクを仕掛けるメルセデスのルイス・ハミルトンをわずかに抑え切り2番手を死守し、Honda製パワーユニット搭載車の1-2フィニッシュを成し遂げたのである。チェッカーフラッグ直前、上りストレートで展開されたメルセデスと並走となったパワー勝負で勝ったことは、Hondaにとって大きな感激と自信をもたらした。

この年よりエイドリアン・ニューウェイがF1開発に本格的に復帰し、レッドブルとトロロッソの両マシンに携わることとなり、テクニカルディレクターのジェームス・キーは離脱。STR14からレッドブル・テクノロジー供給パーツを増やすことになった。しかし、レッドブル前年パーツが主ではあった。

この年よりエイドリアン・ニューウェイがF1開発に本格的に復帰し、レッドブルとトロロッソの両マシンに携わることとなり、テクニカルディレクターのジェームス・キーは離脱。STR14からレッドブル・テクノロジー供給パーツを増やすことになった。しかし、レッドブル前年パーツが主ではあった。

RA618Hで投入された高速燃焼のパフォーマンスに耐えられ、最大限に活かせるよう改良されたRA619H。第4戦アゼルバイジャンGP、第8戦フランスGPと立て続けにアップデートし、第9戦オーストリアGPで優勝するまでに進化。STR14も第20戦ブラジルGPでは2位を射止める活躍を見せる。

RA618Hで投入された高速燃焼のパフォーマンスに耐えられ、最大限に活かせるよう改良されたRA619H。第4戦アゼルバイジャンGP、第8戦フランスGPと立て続けにアップデートし、第9戦オーストリアGPで優勝するまでに進化。STR14も第20戦ブラジルGPでは2位を射止める活躍を見せる。

マシンが発生する後方乱気流によって失われるオーバーテイク機会を復活させるため、前後ウイングの追加デバイスを大きく制限。フロントウイングは5枚のフラップ形状のみで構成しなければならなくなった。このためSTR14では画期的な「への字」型フラップを採用。現在までのトレンドの先鞭をつけた。

マシンが発生する後方乱気流によって失われるオーバーテイク機会を復活させるため、前後ウイングの追加デバイスを大きく制限。フロントウイングは5枚のフラップ形状のみで構成しなければならなくなった。このためSTR14では画期的な「への字」型フラップを採用。現在までのトレンドの先鞭をつけた。

シャシー

シャシー STR14
モノコック スクーデリア・トロロッソ製カーボン・コンポジット・モノコック
フロントサスペンション スクーデリア・トロロッソ/レッドブル・テクノロジー製。カーボン・コンポジット・ウィッシュボーン、プッシュロッド式インボード・トーションバー&ダンパー
リヤサスペンション レッドブル・テクノロジー製。カーボン・コンポジット・ウィッシュボーン、プルロッド式インボード・トーションバー&ダンパー
ステアリング スクーデリア・トロロッソ/レッドブル・テクノロジー製。パワーステアリング
ギヤボックス レッドブル・テクノロジー製。縦置きカーボン・コンポジット・メインケース、8速油圧式
ディファレンシャル 油圧式マルチプレート
クラッチ 油圧式カーボン製マルチプレート
エキゾーストシステム Honda製
ブレーキシステム スクーデリア・トロロッソ/レッドブル・テクノロジー製
ドライバーズシート スクーデリア・トロロッソ製ドライバー専用カーボン・コンポジット
タイヤ ピレリ製
燃料システム スクーデリア・トロロッソ/レッドブル・テクノロジー製
規定最低重量 743㎏(うちドライバー分80kg)

パワーユニット

パワーユニット Honda RA619H
パワーユニットコンポーネント ICE(内燃エンジン)/TC(ターボチャージャー)/MGU-K/MGU-H/ES(エネルギー貯蔵装置)/CE(コントロールユニット)
シリンダー数 6(以下レギュレーションに準拠)
排気量 1,600cc
最高回転数 15,000rpm
バンク角 90度
バルブ数 24
最大回転数 15,000rpm
最大燃料流量 100kg/時(10,500rpm)
燃料搭載量 105kg
燃料噴射方式 直噴(1シリンダーあたり1噴射器、最大500bar)
過給機 同軸単段コンプレッサー、タービン
燃料、潤滑油 エクソン・モービル製
エンジン重量 145kg
エネルギー回生システム
機構 モーター・ジェネレーター・ユニットによるハイブリッド・エネルギー回生。MGU-Kはクランクシャフトに、MGU-Hはターボチャージャーに接続
エネルギー貯蔵装置 リチウムイオンバッテリー(重量20〜25kg)。1周あたり最大4MJを貯蔵
MGU-K

最大回転数
50,000rpm

最大出力
120kW

最大回生量
1周あたり2MJ

最大放出量
1周あたり4MJ

MGU-H

最大回転数
125,000rpm

最大出力
無制限

最大回生量
無制限

最大エネルギー放出量
無制限

Honda RA619H