RB15

Aston Martin Red Bull Racing RB15

2019
期待と不安の先に、待望の第4期初優勝の歓喜が

レッドブルとのジョイントがスタート
進化を果たしたRA619Hによって大きな成果を得る

レッドブルへのパワーユニット供給が実現した2019年、Hondaは大きなプレッシャーにさらされていた。前年4勝を挙げ、マックス・フェルスタッペンというトップドライバーを擁し、2010年から4年連続ダブルタイトル獲得を成し遂げてきたレッドブルに対し、F1復帰後の4年間表彰台すら一度も経験のないHondaは不相応なパートナーといえた。しかし、単なるグランプリ勝利ではなくタイトル獲得を目標に置くHondaにとっては、絶好のチャンスであり、高いハードルを自らに課し背水の陣での戦いを迎える。

Hondaにとって前年投入したRA618Hスペック3で採用した高速燃焼が大きな武器であり、RA619Hはそれを踏襲し高出力を実現。その高出力に耐えうる骨格を含めた各部の強化と信頼性の向上に重点を置き、期待と不安の入り混じるシーズンがスタートした。

レッドブルRB15は、チーフテクニカルオフィサーであるエイドリアン・ニューウェイが設計を指揮し17年のワイドボディ化に適応したRB13の流れを汲む車体で、センターラインクーリングの採用により車体全体をスリム化するとともに、レーキエアロの開発を深め効率的にダウンフォースを生み出すのが特徴である。Honda製パワーユニット搭載に際して、レッドブル側はパワー優先の方針を採り入れ、インダクションポッドを大型化しより多くの空気を取り入れる改良を行なっている。吸排気、冷却の効率を上げパワーユニットの性能向上を支援するための改良は随所に施されていた。

RB15の特徴はフロントサスペンションを大きく改良したことだった。レッドブルの車体は、車体の前傾角度(レーキ角)を大きく取り、それによってフロアで発生するダウンフォースをコントロールするレーキエアロがコンセプトであり、RB15はそれを継承するとともに、アッパーウィシュボーンの取り付け位置を下げて制動時のノーズダイブを抑える効果を強化。これによりフロントウイングと路面とのクリアランスをできるだけ一定に保ち、空力的にマシンのピーキーな挙動を抑える目的での改良である。しかし、コーナーリング時の不安定な挙動はなかなか収まらず、大きな課題として残った状態だった。

高速燃焼のハイパワーと、耐久信頼性の確保に手応えを感じ自信を持ったHondaは、第8戦フランスG Pにスペック3を投入。燃焼を改良し、コンプレッサーをアップデートし、それまでの信頼性確保から出力アップに再び舵を切り替えた仕様だった。スペック3のデビュー戦はヨーロッパの異常な熱波という事態に対応できずに不発に終わったが、わずかなインターバルで対策を施した真価が発揮され、第9戦オーストリアG Pでフェルスタッペンが劇的な逆転勝利を飾り、レッドブル・ホンダとして、そして待望のHonda第4期での初優勝を成し遂げた。特にコンプレッサーの改良によって効果を得た高地でのアドバンテージが、Hondaにとって待望の瞬間を迎えることに大きく貢献した。

開幕戦でフェルスタッペンが3位となり、早々にHondaは第4期初の表彰台を獲得したことは、勝負をかけたパワーユニットの性能向上に手応えと自信、そして安堵をもたらした。しかし、善戦は続くが王者メルセデスの牙城は高く、勝利はなかなか見えないままシーズンは中盤へ進む。状況を打開すべく投入したRA619Hスペック3が起爆剤となり、第9戦オーストリアGPを始め、第11戦ドイツGP、第20戦ブラジルGPとシーズン3勝を挙げた。

一方で、チームは不安定な状況でもあった。トロロッソから昇格したピエール・ガスリーが、プレシーズンテストでの大クラッシュからなかなか立ち直れず、不安定なマシンの挙動に適応しきれないまま結果を残せず、シーズン前半でトロロッソへ降格となる。代わってトロロッソに起用されたばかりのアレクサンダー・アルボンがレッドブルに昇格し、随所に好走を見せるも表彰台獲得には至らずに終わった。扱いづらいとされるマシンで安定した速さを見せるフェルスタッペンとは裏腹に、チームメイトにとっては苦難のシーズンだった。

フェルスタッペンはシーズン3勝を挙げ、さらに第12戦ハンガリーGPではHonda第4期初のポールポジションを獲得、第20戦ブラジルGPではトロロッソのガスリーが2位に入り、Honda製パワーユニット搭載車による1-2フィニッシュを成し遂げ、大きな成果を得た飛躍の年となった。レッドブルに対してはフェルスタッペンが前年と同じ3勝を挙げたことが「最低限のノルマ」を果たした結果となり、Hondaにとっては高いハードルを乗り越え、その先に明るい光がはっきりと見えたシーズンとなった。

レッドブルに初のHonda製パワーユニット搭載となったRB15。シルエットは前年RB14から大きく変わらないが、フロントウイングの追加デバイス禁止にともないノーズ下に大型のケープを装着し、インウオッシュを試行錯誤。また、よりコンパクトなRA619H搭載でリヤの絞り込みは大きくなった。

レッドブルに初のHonda製パワーユニット搭載となったRB15。シルエットは前年RB14から大きく変わらないが、フロントウイングの追加デバイス禁止にともないノーズ下に大型のケープを装着し、インウオッシュを試行錯誤。また、よりコンパクトなRA619H搭載でリヤの絞り込みは大きくなった。

レッドブルが先鞭をつけたレーキエアロをさらに追求するため、RB15からフロントサスペンションのアッパーアームは前後分割式に変更。このレイアウトによりフロントレッグとリヤレッグの角度を大きくつけることが可能となり、ブレーキング時の姿勢変化を極力抑えることができるようになった。

レッドブルが先鞭をつけたレーキエアロをさらに追求するため、RB15からフロントサスペンションのアッパーアームは前後分割式に変更。このレイアウトによりフロントレッグとリヤレッグの角度を大きくつけることが可能となり、ブレーキング時の姿勢変化を極力抑えることができるようになった。

開発自由エリアであるフロアフロント部では、大型のバージボードと2段構えのポッドウイング、そしてカナードウイングの組み合わせが目を見張ったRB15。終盤戦カナードウイングは2枚重ねとなり、ミラー形状を含めて緻密な後方気流の制御がなされている。この構成は基本的に2021年RB16Bまで続いた。

開発自由エリアであるフロアフロント部では、大型のバージボードと2段構えのポッドウイング、そしてカナードウイングの組み合わせが目を見張ったRB15。終盤戦カナードウイングは2枚重ねとなり、ミラー形状を含めて緻密な後方気流の制御がなされている。この構成は基本的に2021年RB16Bまで続いた。

シャシー

シャシー RB15
モノコック オリジナル・カーボンファイバー/ハニカムコンポジット複合素材モノコック
フロントサスペンション アルミニウム合金アップライト、カーボンファイバー・コンポジット・ダブルウィッシュボーン
リヤサスペンション アルミニウム合金アップライト、カーボンファイバー・コンポジット・ダブルウィッシュボーン
トランスミッション レッドブル・レーシング製。8速縦置き油圧式
ホイール OZレーシング製
ブレーキキャリパー ブレンボ製
タイヤ ピレリ製
エレクトロニクス MESL標準エレクトロニック・コントロール・ユニット。およびHonda製
燃料 エッソ・シナジー
規定最低重量 743㎏(うちドライバー分80kg/燃料は除く)

パワーユニット

パワーユニット Honda RA619H
パワーユニットコンポーネント ICE(内燃エンジン)/TC(ターボチャージャー)/MGU-K/MGU-H/ES(エネルギー貯蔵装置)/CE(コントロールユニット)
シリンダー数 6(以下レギュレーションに準拠)
排気量 1,600cc
最高回転数 15,000rpm
バンク角 90度
バルブ数 24
最大回転数 15,000rpm
最大燃料流量 100kg/時(10,500rpm)
燃料搭載量 105kg
燃料噴射方式 直噴(1シリンダーあたり1噴射器、最大500bar)
過給機 同軸単段コンプレッサー、タービン
燃料、潤滑油 エクソン・モービル製
エンジン重量 145kg
エネルギー回生システム
機構 モーター・ジェネレーター・ユニットによるハイブリッド・エネルギー回生。MGU-Kはクランクシャフトに、MGU-Hはターボチャージャーに接続
エネルギー貯蔵装置 リチウムイオンバッテリー(重量20~25kg)。1周あたり最大4MJを貯蔵
MGU-K

最大回転数
50,000rpm

最大出力
120kW

最大回生量
1周あたり2MJ

最大放出量
1周あたり4MJ

MGU-H

最大回転数
125,000rpm

最大出力
無制限

最大回生量
無制限

最大エネルギー放出量
無制限