栄光を飾ったマシン

新体制で臨んだ第4期F1の第2幕がスタート

2018Red Bull Toro Rosso-Honda STR13

トライ&エラーを繰り返したシーズン
過渡期の苦しみのなかで、大きな進歩が成果となる

試練の3年間を経て、Hondaはトロロッソを新たなパートナーとし起死回生を期すシーズンを迎えた。これに伴いF1体制を刷新し、HRD Sakuraの開発責任者に浅木泰昭、トラックサイドのレーシングディレクターに田辺豊治、チームなどとの交渉を担うマネージングディレクターに山本雅史を起用するというトロイカ体制の布陣とした。浅木と田辺は第2期F1に関わる経歴を持つエンジニアで、総監督制から3人の責任者によって役割を分担し、それぞれの分野で迅速かつ質の高い活動を図る狙いがあった。

前年シーズン後半に決まったHondaとのジョイントに際し、トロロッソは短い開発期間でHondaのパワーユニット搭載に対応しSTR13を作り上げた。前年施行された新車体レギュレーションに対応したSTR12は、当時圧倒的な速さを見せていたメルセデスを手本としワイドボディによるハイスピード化に対応し、フロントサスペンションのアッパーアームをハイマウント化、インダクションポッドの開口部をワイド化し3分割にするなどメルセデスとの共通性を持っていた。

18年は新たなコクピット安全デバイスの「HALO」装着が義務付けられた初年度でもあった。STR13はSTR12の正常進化版として開発されながらも、HALO装着による重量バランスの見直しと、ルノー製からHonda製にパワーユニットを換装したことによる負担は思いのほか大きく、RA618Hはコンパクトに仕上げられていたとはいえ特にターボチャージャーのレイアウトが異なるため、吸排気やその他取りまわしの最適化という点で万全とはいかない仕上がりであったことはやむを得ないことだった。

シーズン中は空力面のバージョンアップに注力し、特にフロントウイングとバージボード周りの変化は大きく、数多くの新パーツが投入された。これらのアップデートにより空力面の向上は成果を見せたが、この年から7種類に増えた(従来は5種類)タイヤコンパウンドをうまく使いこなせず、レースでは結果になかなか繋がらなかったシーズンとなった。

RA618Hは、新開発でパフォーマンスを上げたRA617Hの進化版で、基本コンセプトと骨格を踏襲。しかしながら各所に改良や新パーツを投入し、進化の度合いを高めている。特に大きな変更は、吸排気バルブの鋏角を小さくしたことである。これにより燃焼室をコンパクトにし形状も変更して圧縮比を高めることに成功した。信頼性向上の改良は各所に施された。開発責任者の浅木は特にウィークポイントだったMGU-Hの信頼性確保に注力し、オールHonda体制のもとHonda Jet開発陣の助力を得て、格段の進歩を成し遂げている。

Hondaにとって第7戦カナダGPがこの年の大きなターニングポイントだった。ルノーとの関係が悪化していたレッドブルが、19年からHonda製パワーユニットを採用するか否かをこのレースを期限に判断すると伝えてきたのである。HondaはこのカナダGPにスペック2を投入。燃焼に手を入れ、排気系を見直し、新型のMGU-Hを採用したスペック2は、レッドブルとのパートナーシップをかけた渾身のパワーユニットだった。レース結果はともなわなかったが、各種の走行データはレッドブルを納得させるパフォーマンスを示し、提携関係構築に大きな前進を果たしている。

第16戦ロシアGPに投入したスペック3は特筆すべき進化を遂げた。新たな燃焼コンセプトを採用したことで、大幅な出力向上を実現。「高速燃焼」と呼ばれる新たな燃焼システムは、この後に示されるハイパフォーマンスのベースとなっている。

レースのハイライトはシーズン序盤の第2戦バーレーンGPだった。ピエール・ガスリーが好走を見せ、予選ではキャリア初のQ3進出から6位(5番グリッド)、決勝で4位入賞を果たし、新生チームに大きな希望と期待をもたらす。しかし、結果的にこの4位がシーズン最高位となり、大きな変化と進化途上にあったチームとHondaは、この後なかなか結果を出すことができずレース成績は低迷を続けた。

前年までのルノー製パワーユニットから、急遽Honda搭載に設計変更されることになったSTR13。Hondaのリクエストによりエアポッドの形状が改められたものの、HALO装着義務付けによる全体的な重量配分見直しなど手直しをする部分が多く、基本的には前年型改良の域を出ない車体であった。

前年までのルノー製パワーユニットから、急遽Honda搭載に設計変更されることになったSTR13。Hondaのリクエストによりエアポッドの形状が改められたものの、HALO装着義務付けによる全体的な重量配分見直しなど手直しをする部分が多く、基本的には前年型改良の域を出ない車体であった。

RA618Hは、前年RA617Hのコンセプトを基本的に踏襲しながら細部を見直した正常進化モデル。スペック3から投入した「高速燃焼」は大幅な出力アップを生み出したが、高めたはずの対信頼性でも耐えられず、出力を絞って対応した。ひとつの技術的ブレイクスルーを果たしたパワーユニットと言っていい。

RA618Hは、前年RA617Hのコンセプトを基本的に踏襲しながら細部を見直した正常進化モデル。スペック3から投入した「高速燃焼」は大幅な出力アップを生み出したが、高めたはずの対信頼性でも耐えられず、出力を絞って対応した。ひとつの技術的ブレイクスルーを果たしたパワーユニットと言っていい。

STR13の外観上の大きな進化点はノーズ形状。それまでの細身のショートノーズから当時スタンダードだった幅広のショートノーズ+クラッシャブルストラクチャー型とした。フロントウイングはアウトウォッシュを促進させるため翼端板後半を解放するなど、シーズン中も多くのトライがなされた。

STR13の外観上の大きな進化点はノーズ形状。それまでの細身のショートノーズから当時スタンダードだった幅広のショートノーズ+クラッシャブルストラクチャー型とした。フロントウイングはアウトウォッシュを促進させるため翼端板後半を解放するなど、シーズン中も多くのトライがなされた。

シャシー

シャシー STR13
モノコック スクーデリア・トロロッソ製コンポジット・モノコック
フロントサスペンション スクーデリア・トロロッソ製。カーボンファイバー製ウィッシュボーン、プッシュロッド式トーションバー、アンチロールバー
リヤサスペンション スクーデリア・トロロッソ製。カーボンファイバー製ウィッシュボーン、プルロッド式トーションバー、アンチロールバー
ステアリング スクーデリア・トロロッソ製(パワーステアリング)
ギヤボックス スクーデリア・トロロッソ製カーボン・コンポジット製ケース、縦置き
トランスミッション 8速シーケンシャル・アクティブ・ハイドロリック・オペレーション
エキゾーストシステム Honda製
ブレーキキャリパー ブレンボ製
ブレーキ・バイ・ワイヤ スクーデリア・トロロッソ製
ドライバーズシート スクーデリア・トロロッソ製
タイヤ ピレリ製
燃料システム ATL製タンク、スクーデリア・トロロッソ製
重量 733㎏

パワーユニット

パワーユニット Honda RA618H
パワーユニットコンポーネント ICE(内燃エンジン)/TC(ターボチャージャー)/MGU-K/MGU-H/ES(エネルギー貯蔵装置)/CE(コントロールユニット)
シリンダー数 6(以下レギュレーションに準拠)
排気量 1,600cc
最高回転数 15,000rpm
バンク角 90度
バルブ数 24
最大回転数 15,000rpm
最大燃料流量 100kg/時(10,500rpm)
燃料搭載量 105kg
燃料噴射方式 直噴(1シリンダーあたり1噴射器、最大500bar)
過給機 同軸単段コンプレッサー、タービン
燃料 エクソンモービル製ハイパフォーマンス無鉛燃料(5.75%はバイオ燃料)
潤滑油 エクソン・モービル製
エンジン重量 145㎏
エネルギー回生システム
機構 モーター・ジェネレーター・ユニットによるハイブリッド・エネルギー回生。MGU-Kはクランクシャフトに、MGU-Hはターボチャージャーに接続
エネルギー貯蔵装置 リチウムイオンバッテリー(重量20〜25kg)。1周あたり最大4MJを貯蔵
MGU-K

最大回転数
50,000rpm

最大出力
120kW

最大回生量
1周あたり2MJ

最大放出量
1周あたり4MJ

MGU-H

最大回転数
125,000rpm

最大出力
無制限

最大回生量
無制限

最大エネルギー放出量
無制限

Honda RA618H