エンジン供給+車体共同開発で第3期活動開始

電動パワステをF1で初搭載
初年度ランキングは5位に
1998年12月、HondaはF1に再び参戦することを発表し、車体開発も自ら行うワークスチームでの復帰を発表した。しかし、車体開発の中核を担うハーベイ・ポスルズウェイト氏の急逝やその他の事情から1999年4月にワークス体制を断念し、ブリティッシュ・アメリカン・レーシング(BAR)へのエンジン供給と車体の共同開発にその役割を変更。7年間のブランクを経て2000年からF1グランプリの舞台にHondaエンジンを搭載したマシンを登場させた。
参戦2年目となるBARは、2000年シーズンに向けて前年のBAR001を改良したBAR002を投入。BAR001の設計開発を担ったレイナードのマルコム・オスラーが引き続き開発改良を行い、主に信頼性向上を狙った正常進化版となっている。コンパクトかつ低重心に仕上がったHondaエンジンを搭載することで、マシンのエンジンカバーを含むリヤ周りやサイドポンツーン、そしてリヤサスペンションもコンパクトに設計することが可能となり、BAR001に比べて低くコンパクトなフォルムを実現。また、これらの開発にはHondaも協力し、エンジニアを数名送り込み実際の共同開発をスタートさせている。
Hondaは1992年シーズンで第2期F1活動を終えたが、その後F1活動を行なっていた無限が持つ知見や経験を活かし、高い新たなエンジンとしてRA000Eを開発しBAR002に搭載した。RA000Eは自然吸気の3ℓV10エンジンで、可変吸気やエアバルブを用いて十分なパワーを発揮し、信頼性向上をも図った完成度の高いエンジンとなっていた。公称馬力は800PS以上とされたが、当時ベンチ計測では880PSは絞り出していたと言われている。
Hondaはイギリス・ブラックネルにあるHonda・レーシング・デベロップメント(HRD)を第3期F1活動のヨーロッパ拠点とし、エンジニアの派遣や設備の増強など目標達成に向けて準備を整えていった。
第3期初年度、開幕戦こそジャック・ビルヌーブ、リカルド・ゾンタの両ドライバーが健闘し4位と6位でダブル入賞を果たしたものの、信頼性向上のために増加した重量が負担となりスピード不足やコーナリング時の挙動など問題点が露見するようになる。その対策として、チームは積極的に空力パーツのアップデートによる性能向上を施した。
シーズン中盤を過ぎた第9戦フランスGP(マニクール)には、サイドポッドからリヤ周りに大幅な変更を施したアップデートを行った。より低くなったサイドポッドと、それによって設けられたリヤトーションバーをカバーする突起、ディフーザーの形状変更が外観からもはっきりわかる変更点だった。これらアップデートの成果が現れ、フランスGPではビルヌーブが4位入賞を果たし、シーズン後半に向けて期待値が上がる。
チームはさらに空力パーツの改良と追加による戦闘力アップを狙い、第11戦ドイツG P(ホッケンハイム)にはフロントのウィッシュボーンに水平にマウントされたプレートを付け加えアップデートを投入。これは、タービュランスを軽減させるとともに、旋回時の安定性向上を図るものである。
それ以外にもレースを追うごとにサイドポッド上のウイングレットやターニングペインなど細かな空力パーツの追加や変更を施し、シーズン終盤にはそれらによって全体の戦闘力が上がり、連続入賞を果たすなど好結果を得ている。
Honda F1の第3期初年度は、最高位4位で終わりひとつの目標であった表彰台には届かなかった。しかしながら、両ドライバーによってもたらされた20ポイントにより、コンストラクターズランキングは11チーム中5位と2年目のチームとしては大健闘で、次年以降の活躍に期待が持てる成績を残してシーズンを終えた。

Hondaはこのシーズンの第14戦イタリアGPで第1期活動から数えて200戦目のグランプリを迎えた。鈴鹿に向けたスペシャルエンジンを前倒しで投入し、ビルヌーブが予選4位とBAR設立以来の最高位グリッドを手にした。

前年までラッキーストライクとステートエクスプレス555のデュアルカラーリングだったが、この年よりラッキーストライクがメインカラーとなり、555はエアポッドに小さく記載されるにとどまった。エースドライバーのジャック・ビルヌーブはこのシーズン、4位入賞4回を含む17ポイントを上げランキング7位。

BAR002はライバル車がモノコック下面をスクエア形状にしていたのに対し、ラウンド形状を採用し空力を意識。フロントサスペンションのロワアームはモノコック最下部で接続されている。そのためノーズ下部も丸く少し垂れ下がったデザインが特徴。この後ハイノーズ化が加速したため、残念ながらこの処理も一代限り。
シャシー
全長×全幅×全高 | 4470×1800×950㎜ |
ホイールベース | 3108㎜ |
重心高 | 259㎜ |
メインモノコック重量 | 61㎏ |
シャシーマテリアル | カーボンファイバー成形&ハニカムコンポジット構造 |
フロントサスペンション | ダブルウィッシュボーン、プッシュロッド式 |
リヤサスペンション | ダブルウィッシュボーン、プッシュロッド式 |
ステアリング | レイナード製 |
トランスミッション | XTRAC製・油圧式シーケンシャル・セミオートマチック6速 |
ギヤボックスケーシング | アルミニウムケーシング |
クラッチ | APレーシング製 カーボンディスク |
ブレーキ | APレーシング製 カーボン・ベンチレーテッドディスク 6ピストンキャリパー |
コクピット計器 | ステアリングに内蔵されたPIリサーチ製 |
ホイール | OZレーシング製 |
タイヤ | ブリヂストン製(F:265/55R13 R:325/45/R13) |
規定最低重量 | 600㎏(ドライバー含む) |
エンジン
エンジン名 | Honda RA000E |
型式 | 88度V型10気筒自然吸気 |
排気量 | 2,995.6cc |
ボア×ストローク | 94.4×42.8φ |
圧縮比 | 13.4 |
エンジン重量 | 112㎏ |
最大出力 | 800馬力以上 |
最大回転数 | 17,000rpm以上 |
電子制御 | Honda製 |
燃料 | 日石三菱石油(現エネオス)製 |
RA000E
