2026年 F1レギュレーション解説

Jan 26, 2026新シーズン解説

F1のレギュレーションは主に競技やその運営に関するスポーティングルールと、マシンの技術的な規定に関するテクニカルルールがあります。
2026年、テクニカルルールはF1史上もっとも大きな変革が実施され、新規定によってF1マシンは生まれ変わります。新規定の方向性は、レースをより面白くするために、マシンの運動性能を向上させ、オーバーテイクしやすい機能を持たせることによって、多くのバトルシーンを演出すること。そして環境にも配慮した、シンプルで持続可能なパワーユニット(PU)に変更することです。主な変更点を、車体とPUそれぞれに分けて解説します。

PU

電動化の強化 — MGU-K とバッテリー出力、回生の機能拡大

  • ・ベースとなる内燃エンジン (ICE) は 1.6 リットル V6 ターボで、これは2014年に導入された形式を継続します。
  • ・PU構成は大きく変わります。複雑な「MGU-H」は廃止され、代わりに電動モーターMGU-K (Motor Generator Unit – Kinetic)とバッテリーの比重が大幅に上がります。
  • MGU-Kの電気出力はこれまでの120kWから最大 350 kW にまで大幅に引き上げられます。
  • ・ブレーキング時などに回生できるエネルギー量も大きく増加します。1周あたりに回生可能なエネルギー量は、従来のほぼ2倍となる見込みで、約 8.5 MJ/周になります。
  • ・これにより、PU全体の「電気による駆動・アシスト」の比率が飛躍的に高まり、「ハイブリッド50:50」、つまりICEと電気モーターがほぼ半々でパワーを供給するシステムです。

従来のハイブリッド仕様の基本線は維持しつつ、電動の比重を大幅に高め、システム全体を簡素化かつ効率化する設計となり、これまでより「モーター + バッテリー + 回生」による性能と効率が格段に上がることとなります。この新規定は、環境負荷の低減 (脱炭素) と、将来技術への適合 (市販車へのフィードバック) を重視したものです。

燃料のサステナビリティ化

  • PU に使われる燃料は 完全にサステナブル (カーボンニュートラル) な燃料に変更され、旧来の化石燃料は使用禁止となります。
  • ・燃料の製造や使用には厳格な認証プロセスが導入され、FIAによる事前/事後のサンプリングと分析が義務付けらます。
  • ・従来のような単に質量あたりの燃料流量ではなく、燃料が持つエネルギー量に応じた流量管理 (=燃料の“質”+“エネルギー密度”で管理) という、新しい運用方式が採られます。

この転換によって、それぞれの燃料性能が重要になるとともに、“スピードと環境責任の両立”という近未来的目標を明確に掲げることになります。

PU開発製造にも予算制限が設定され、性能差に応じてADUOが発動

  • ・PUマニュファクチャーにも、チーム同様に厳格な予算制限が設定されます。
  • ・PUの性能差が大きい場合は、ADUO (Additional Development and Upgrade Opportunities)という追加開発・アップグレード機会制度が設けられます。これはPU(特にICE)の性能を測定し、一定基準より低い性能のPUには改善機会を与える制度です。具体的には6戦毎にその間の各メーカーのICE平均パワーを測定し比較し、他メーカーより2〜4%以上性能が低いと判定された場合、当該メーカーには追加の開発権利を付与するものです。

2014年に新規定のPUが導入された際、あまりに大きな性能差によってレースに格差が生じたことが、この導入の理由とされています。これは、性能の高いPUに制限を儲けるのではなく、性能の低いPUを救済する措置とされますが、具体的な救済内容は未定とされています。

これら主な変更を踏まえ、PUの構成要素がどのように変化するか、それぞれについてみてみましょう。

内燃エンジン(ICE:Internal Combustion Engine)

  • ・現行の基本レイアウトを踏襲した1.6L V6 ターボ
  • ・最大出力は流量制限により最大約400kW(=約540PS前後)にダウン
  • ・100%持続可能燃料(Sustainable Fuel)を使用
  • ・圧縮比は16:1に制限(従来は18:1)し、可変吸気機構は禁止

ターボチャージャー(TC:Turbocharger)

  • ・現行同様のシングルターボ
  • ・MGU-Hが廃止されたため、ターボラグ対策が技術的課題になる

MGU-K(Motor Generator Unit – Kinetic)

  • ・新規定の最重要ポイントで、出力は現行の約3倍となる最大350kW(約470PS)を発生
  • ・回生量も強化され、減速時のエネルギー回収量が大幅に増加

ES(Energy Store:バッテリー)

  • ・リチウムイオンバッテリー(現行と同じ基本概念)を使用
  • ・MGU-Kの大幅強化に伴い、容量は変わらないものの使用量が増加。それとともに劣化や放電などバッテリーの性能差が勝負の分かれ目になる可能性大

CE(Control Electronics:コントロールエレクトロニクス)

  • ・バッテリー、MGU-K、ICEのエネルギー流れを統合制御を行う
  • ・電動パワーの使い方(デプロイ)がレース戦略の要になるため、エネルギーマネジメントの重要性が大きく上昇

車体

マシン全体のコンセプト変更 — 小さく、軽く、機敏に

  • 車体サイズが小型化され、ホイールベースは –200 mm の約 3400 mm、幅も2000 mm から約1900 mmに縮小されます。
  • 車重は約30 kg軽減され、最低重量は 768 kgになります。
  • ・部分的フラットフロア と 低効率ディフューザー により、過度なグラウンドエフェクトを低減。コンパクト化と合わせて、全体でダウンフォースは約 30% 減少し、空気抵抗(ドラッグ)は 約 55% 減少が見込まれます。
  • ・これらの改定で、以前よりも機敏で、運動性能が高いマシンを目指し、バトルやオーバーテイクがしやすくなるよう設計される。

空力とオーバーテイクの新アプローチ — アクティブ・エアロと新システムの導入

  • ・従来の可変リアウィング (DRS=Drag Reduction System) は廃止され、代わりにフロントとリアの前後ウィングが可動するアクティブ・エアロ (可変空力) を導入します。
  • ・このアクティブ・エアロにはモード切替があり、ストレート重視の“低ドラッグモード (X-mode)” と、コーナー重視の“高ダウンフォースモード (Z-mode)” を使い分けが可能となります。なおモードの呼称については、ファンにわかりやすいものに変更が検討されています。
  • ・「マニュアル・オーバーライド・モード」と呼ばれる、後続車が定められた使用可能なゾーン内で先行車に近づいた時、ドライバーの操作によって一時的に電動出力のアップと空力的なアドバンテージを得られるシステムを導入予定です。これにより、 オーバーテイクの機会が大きく増えると期待されています。

これらの新規定によってPU、車体ともに大きく変貌を遂げる2026年のF1マシン。実際のレースでもこれまでとは異なるシーンが多くなることが予想されています。実際にどのようなビジュアルで、どのようなパフォーマンスを見せ、レースはどのように変わるのか、大いに注目が集まっています。