「4つの心地よさ」を軸に開発された新型FIT
- 藤井
- 今回のテーマは『これからの移動と暮らしの「あたらしいふつう」を考える』です。新型コロナウイルスの影響により様々な不自由が生じている一方で、新しい流れも出てきており、これをポジティブに捉えるような、未来を語る場が必要かなと思っています。そこで、2月に発表された新型FITを題材にしながら「夢のチカラでつくるあたらしいふつう」を考えていきたいと思い、新型FIT開発責任者の田中健樹さんと、開発チームのメンバーに集まっていただきました。

- 藤井
- 皆さんに加えて、新型FITのオーナーの方々にも参加していただきます。

- 藤井
- 田中さん、新型FITで一番やりたかったことや、叶えたかったことはどういうことですか?
- 田中
- 新型FITは、人に寄り添うことを目指した車です。人が感じる価値、感性価値に徹底的にフォーカスし、お客様から「これならコンパクトカーを積極的に買おう」と思っていただけるような車にしたかったんです。
- 藤井
- 開発チームメンバーの意思を共有するための、大事なコンセプトがあったと聞いています。
- 田中
- 新型FITのコンセプトは「心地よさ」です。開発メンバーには「心地よい視界」「座り心地」「乗り心地」「使い心地」の4つの心地よさにフォーカスを当てて開発をしようと伝えました。ただ、心地よさと言ってもなかなか伝わらないんですよね。なので、考えた末に、開発のコンセプトをビジュアル化したムービーを作ることにしました。
- 藤井
- どんなムービーだったのでしょうか?
- 田中
- 私が書き出した言葉に、若いスタッフが映像を当ててくれました。ルールは、できるだけ車の映像を使わないこと。家でリラックスしている映像などを使い、心地よさを表現することにトライしてくれました。

- 藤井
- コンセプトを皆さんで共有してから、それを実現するまでの苦労について、ぜひ伺っていきたいと思います。まずは、エクステリア設計開発担当の山口さん、いかがでしょうか。
- 山口
- コンセプトの「心地よい視界」を実現するために、我々が挑んだのが、極細フロントピラーです。先代FITのフロントピラーは約116mmでしたが、新型FITのフロントピラーはその半分以下の55mmを目標に開発しました。ここまで細くなると、ちょっと極端な表現ですが、フロントピラーがないような感覚になるんじゃないかと思います。
- 藤井
- 全面ガラス張りといったイメージでしょうか。半分以下って、簡単にできることではないですよね。これは、田中さんが「55mmにしよう」って提案したということですか?
- 田中
- そうですね。 55mmにすれば、フロントピラーが視界をジャマしなくなることがわかっていたので、そこを目指していこうと提案しました。
- 藤井
- 続いて、Honda CONNECT開発担当の川上さんにお話を伺いたいと思います。
- 川上
- Hondaが総力を挙げて、新型FITから日本初搭載したのがHonda CONNECTとなります。Honda CONNECTは、ひと言で言うと「つながる車」ですね。いくつかサービスがありますが、今回は緊急サポートセンターについて紹介したいと思います。事故が起きたとき、ドライバーは警察や消防、保険会社、ロードサービス、家族など色々な人に連絡をしなければなりません。新型FITでは、ボタンをワンプッシュするだけで緊急サポートセンターのオペレーターにつながり、連絡など全て対応してくれます。
- 藤井
- こういった新機能は、ハイクラスの車から搭載していくイメージがあります。なぜ、一番量産されているモデルに搭載したんでしょうか。
- 田中
- グローバルで販売するモデルから入れるというのは、開発としてもすごく大変な部分がありました。それでも、やっぱりお客様に広く届けられるこの商品から、という思いが強かったんです。
- 藤井
- Hondaの挑戦文化がすごくにじみ出ていますよね。続いて、シート開発担当の堀江さんにお話を伺います。
- 堀江
- シート開発では、ワンランク上の上級セダンのような質感と座り心地を追求してきました。結果として、フロントシートもリアシートも、これ以上ないシートが開発できたと自負しています。
- 藤井
- なるほど、苦労の賜物ですね。最後に、開発責任者代行の奥山さん、いかがでしょうか?
- 奥山
- シートをはじめ、今回のFITは良い素材を投入しています。日本ではアコードから2モーターのハイブリッドシステムe:HEVを採用していますが、そういったひとクラス上のパワートレーンを、この新型FITにも採用しています。開発当初は、試作車を作ってもなかなか思うような動きになりませんでしたが、速度無制限のドイツのアウトバーンでしっかり走り込み、車を作り上げていきました。
- 藤井
- いまの皆さんの開発秘話から、世界で戦える車を作るっていうのはこういうことなんだと、苦労や達成感が伝わってきました。
